AIの基礎

【IPA・総務省データ】AIコンサルの相談範囲と成果物、支援会社の選び方|DXの成果指標を設定している企業は23.9%(2025年度調査)

AIコンサルに相談できる範囲を3段階で整理し、成果物4種類と初回相談の質問、支援会社の確認項目をIPA・総務省の公的資料をもとにまとめました。

【IPA・総務省データ】AIコンサルの相談範囲と成果物、支援会社の選び方|DXの成果指標を設定している企業は23.9%(2025年度調査)(概念図)

この記事の対象

  • AIコンサルへの相談を検討している中小企業の経営者
  • 社内でAI活用の推進役を任されたIT部門・管理部門の担当者
  • 支援会社の選定や見積もり比較を担当する発注側の担当者

流れ

  • 白書が示す3段階(環境・ルール整備/業務プロセス設計/システム・データ連携)のどこを相談するか決める
  • 自社がAI利用者かAI提供者かを確定し、社内に残す作業を書き出す
  • 成果物を現状整理・ルール文書・業務プロセス設計・評価指標の4種類で依頼する
  • 範囲・成果物・費用・体制の4グループで初回相談の質問を用意する
  • AI事業者ガイドライン第1.2版の共通の指針と別添7を使って納品物の抜けを確認する

AIコンサルという言葉を目にする機会が増えました。ただ、いざ相談を検討すると、次のような点で手が止まりがちです。

  • AIコンサルに何をどこまで相談できるのか、範囲のイメージが持てない
  • 相談しても何が納品されるのか分からず、社内に残る作業量が読めない
  • 支援会社を比べる基準がなく、初回相談で何を聞けばよいか決まっていない

結論を先にお伝えします。AIコンサルへの相談は「環境とルールの整備」「業務プロセスの設計」「社内システム・社内データ連携」の3段階に切り分けると、外部に出す範囲と社内に残る範囲を決めやすくなります。

この3段階は、総務省の令和8年版情報通信白書が示す「AI導入・活用による効果創出のステップ」に沿った整理です(2026年公表)。相談の前にこの地図を持っておくと、見積もりの比較もしやすくなります。

この記事のポイント

  • AIコンサルの相談範囲は、情報漏えい対策を施した生成AI環境とルールの整備/業務プロセスの設計/社内システム・社内データ連携の3段階に切り分けると、発注範囲を決めやすくなります(総務省 令和8年版情報通信白書、2026年公表)。
  • 成果物の中心はルール文書・業務プロセス設計・評価指標です。DXの成果指標を「設定している」企業は23.9%、設定していない理由の最多は「評価指標の設定方法がわからない」36.0%でした(IPA「DX動向2026」2025年度調査)。
  • 支援会社への質問は、AI事業者ガイドライン第1.2版の3つの主体区分と10の「共通の指針」、別添7のチェックリスト・ワークシートを土台に作れます(総務省・経済産業省、令和8年3月31日公表)。
  • 従業員100人以下の企業でDXに取組んでいる割合は41.6%で、取組んでいない理由では「わからない」にあたる回答が54.0%と最多でした。外部に相談する前に、自社で決める範囲を言葉にしておく必要があります(IPA「DX動向2026」2025年度調査)。
  • AIコンサルの費用相場や利用率にあたる公的統計は確認できませんでした。そのため本記事では相場の数値を扱わず、見積もりで確認する項目の整理にとどめます。

AIコンサルへの相談が増える背景は、小規模企業のDX取組41.6%と「何をすればよいか分からない」54.0%にある(2025年度調査)

AIコンサルへの関心が高まっている背景には、企業規模によるDXの進み方の差があります。IPAの調査では、何らかの形でDXに取組んでいる企業は全体で75.7%に達しました。

一方で、従業員100人以下の企業では41.6%にとどまります(2025年度調査)。この差は「やる気の差」ではなく、進め方を決める知識と人の不足として調査結果に表れています。

従業員100人以下のDX取組は41.6%、1,001人以上は98.7%で二極化が続く

まず全体像を数字で押さえておきましょう。IPA「DX動向2026」は国内企業1,799社を対象にした調査で、調査期間は2026年4月17日から6月12日までです。

従業員規模 DXに取組んでいる企業の割合
全体 75.7%
100人以下 41.6%
1,001人以上 98.7%

出典: DX動向2026 広がるAI導入、DXは変われるか(IPA) 2.2 DXの取組状況(図表2-1・図表2-2、2025年度調査)

1,001人以上の98.7%と100人以下の41.6%という差が、二極化として続いている点が特徴です。 大企業では専任組織や社内の推進人材を抱えられますが、小規模な企業では同じ体制を作りにくいのが実情です。

だからこそ、外部の支援をどこまで使うかという判断が必要になります。AIコンサルの検討は、この体制差を埋める選択肢のひとつとして位置づけられます。

取組まない理由は100人以下で「わからない」系が54.0%、101〜300人では知識・人材の不足が上位

同じ調査の「DXに取組んでいない理由」を従業員規模別に見ると、傾向が分かれます。従業員100人以下の企業では、図表2-4において「わからない」にあたる回答が54.0%と最も高くなっています(2025年度調査)。

101人以上300人以下では、「DXに取組むための知識や情報が不足している」「DXの戦略立案や統括を行う人材が不足している」「DXを現場で推進、実行する人材が不足している」がいずれも上位に並びます。

つまり小規模な企業では「何をすればよいか分からない」という入口の課題が、少し規模が大きくなると「知識と人が足りない」という実行の課題に移ります。 相談する側としては、自社がどちらの段階にいるかを先に見極めておくと話が早く進みます。

なお、選択肢の正確な文言と集計対象の区分は報告書の図表でご確認ください。本記事では報告書の図表2-4を読み取った範囲で記述し、未確認の点は後段の「この記事の範囲と未解決事項」に記載しています。

DX推進人材の量が不足している企業は85.5%で、外部に委ねる範囲の検討につながる

人材面の数字も押さえておきたいところです。同調査では、DXを推進する人材の「量」について「やや不足している」「大幅に不足している」の合計が85.5%でした(2025年度調査)。

この水準は2023年度・2024年度とほぼ変わっていません。AI関連人材についても、「現場の知見と基礎的なAI知識を持ち、自社へのAI導入を推進できる従業員」など多くの人材種別で「不足している」が過半を占めています。

不足が続いているという事実は、社内だけで全部を抱える前提が成り立ちにくいことを示します。 外部に委ねる範囲を決める作業は、人材計画の一部として考えると整理しやすくなります。

出典: DX動向2026 広がるAI導入、DXは変われるか(IPA)、国内企業のDX動向・AI活用動向のポイント(IPA、2026年7月16日)

AIコンサルの相談範囲は、環境・ルール整備/業務プロセス設計/システム・データ連携の3段階で切り分ける

相談範囲を決めるときは、白書が示す順序をそのまま枠組みとして使うのが簡単です。総務省の令和8年版情報通信白書は、AI導入・活用による効果創出のステップを段階的に示しています(2026年公表)。

この3段階に沿って「どこまでを外部に任せ、どこから社内で引き受けるか」を書き出すと、見積もりの比較軸がそろいます。

AIコンサルへの相談範囲を3段階に分け、外部に任せる範囲と社内に残る範囲を並べた整理(概念図)

出典: 令和8年版情報通信白書 AI導入・活用による効果創出のステップ(総務省)を基に整理

段階 主な取組 外部に任せやすい部分 社内に残りやすい部分
第1段階 情報漏えい対策を施した生成AI環境と利用ルール・ガイドラインの整備・周知 ルール文書の原案作成、研修の設計 周知と運用、違反時の対応
第2段階 人の判断を補助するタスクと自律実行させるタスクの切り分け、業務プロセス設計 業務の棚卸しの進め方、プロセス設計の支援 現場の実態の提供、設計の合意形成
第3段階 社内システム・社内データとの連携 要件整理、技術的な実現方法の提示 投資判断、データの整備方針

出典: 令和8年版情報通信白書 AI導入・活用による効果創出のステップ(総務省)を基に整理(2026年公表)

第1段階は情報漏えい対策を施した生成AI環境と利用ルールの整備・周知

白書は、まず情報漏えい対策を施した生成AI活用環境を整え、利用時のルールやガイドラインを整備・周知して、個人作業の効率化から始める順序を示しています。

この段階は、AIコンサルに相談しやすい領域です。環境の選定基準やルールの骨組みは、他社でも共通する部分が多いためです。

ただし、ルールを配っただけでは運用は回りません。 周知の方法や、迷ったときの相談先を社内のどこに置くかは、社内側で決める作業として残ります。

同白書の企業アンケートでは、リスク対策の取組状況として「全社的な指針やガイドラインを整備している」が41.1%で最も高い回答でした(2026年調査)。指針の整備が最初の打ち手として選ばれやすいことが分かります。

第2段階は人の判断を補助するタスクとAIに自律実行させるタスクの切り分けと業務プロセス設計

次の段階は、業務のどこにAIを置くかという設計です。白書は「どのタスクはAIを人間の思考や判断の補助として用い、どのタスクはAIに自律的に実行させるべきか」を検討し、業務プロセス全体を設計する必要があると述べています。

ここは外部の知見が効く一方で、現場の実態を知らないと設計できない領域でもあります。判断の切り分けは、業務の責任の所在を決める作業でもあるため、社内の合意形成を外部に代行させることはできません。

相談するときは、「プロセス設計の進め方と中間成果物の形」を外部に、「現場ヒアリングへの協力と最終判断」を社内に、という分け方を提案に書き込んでもらうと役割がはっきりします。

第3段階の社内システム・社内データ連携は投資判断を含む組織的な取組として扱う

第3段階は、社内システムや社内データとの連携です。白書はこの段階を、投資判断を含めた組織的な取組として進めるものと位置づけています。

ここを最初の相談で一気に進めようとすると、判断材料が足りないまま金額が大きくなりがちです。段階を分けて、前の段階の結果を見てから次を決める形にしておくほうが安全です。

データの整備は日本企業の弱点として指摘されている点でもあります。 同白書の企業向け国際アンケート(日本n=326、米国n=276、ドイツn=270、中国n=293)では、「生成AIに社内データを学習させたり、生成AIが参照可能なデータベースを構築したりしている」という回答割合が、日本は他3か国より顕著に低い結果でした(2026年公表)。

「ルールや基準の作成が難しい」は39.7%で、ガバナンス整備は相談範囲に入りやすい領域

社内で手が止まりやすい箇所は、調査にも表れています。IPA「DX動向2026」のAI導入・運用上の課題では、「(AIを利用)するためのルールや基準の作成が難しい」が39.7%でした(2025年度調査)。

同報告書は、人材不足・リテラシー不足・ガバナンス整備の遅れを三大課題として整理しています。ルールづくりが難所であるなら、そこは外部の支援を使う価値が比較的はっきりしている領域だと言えます。

なお、この選択肢の完全な文言と集計対象は図表3-16で確認が必要です。数値の読み替えをせず、報告書の図表番号とあわせて社内資料に引用することをおすすめします。

出典: 令和8年版情報通信白書 第Ⅰ部第2章 企業等におけるAI利用の進展(総務省)、DX動向2026(IPA)

相談範囲から外して社内に残す作業を先に決めると、見積もりの比較がしやすくなる

見積もりが比べにくくなる原因は、たいてい範囲の書き方の違いにあります。先に社内に残す作業を決めておくと、各社の提案の差が見えやすくなります。

社内に残す作業として典型的なのは、次の3つです。

  • 自社がAIの利用者なのか提供者なのかという立場の確定
  • 社員が個人判断でAIを使う状況への対応方針の決定
  • 利用ケースごとに必要な安全策を定め、ベンダーに求めること

自社がAI利用者かAI提供者かで、求められる取組の範囲が変わる

総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIの事業活動を担う主体を3つに大別しています(令和8年3月31日公表)。

AI開発者はAIシステムを開発する事業者、AI提供者はAIシステムをアプリケーションや製品、既存システム、ビジネスプロセス等に組み込んだサービスとして提供する事業者、AI利用者は事業活動においてAIシステムまたはAIサービスを利用する事業者です。

自社がどの主体にあたるかで、求められる取組の範囲が変わります。 社内業務で使うだけならAI利用者ですが、AIを組み込んだサービスを顧客に出すならAI提供者としての取組も必要になります。

この切り分けは、外部に委ねる前に自社で決めておく事項です。立場が決まっていないと、提案の範囲も定まりません。

社員が個人判断でAIを使うシャドーAIへの対応は、社内運用側で担う領域

白書は、社員が個人の判断でAIを使う「シャドーAI」について、入力した機密情報の流出などのリスクがあると指摘しています(2026年公表)。

この対応は、ルール文書を作れば終わるものではなく、日々の運用として社内に残ります。 誰がどの端末でどのサービスを使っているかを把握する作業は、外部に丸ごと任せにくい領域です。

まずは「使ってよいサービス」と「相談してから使うサービス」の線を引いて、相談窓口を決めてみてください。AIコンサルに相談する場合も、この線引きの案を自社の言葉で持っているほうが議論が進みます。

同白書の企業アンケートでは、生成AI活用に関して懸念されるリスクとして、日本では「社内情報の漏洩などのセキュリティリスクがある」が最も高く、次いで「出力結果の精度に問題がある」「著作権等の権利を侵害する可能性がある」が続きました(2026年調査)。

利用ケースごとに必要な安全策を定義し、ベンダーに求めるのは発注側の役割

総務省が公開する広島AIプロセス関連資料「中小企業におけるAI導入のためのツールキット」は、AI開発に特化した企業だけでなく、既存事業にAIを採用・統合する中小企業も対象にしています。

同資料は、AIシステムを業務に導入する前に想定されるリスクを検討し、利用ケースをガバナンス要件にマッピングして必要な安全策を定義し、それをベンダーに対して求める、という手順を示しています。

この「求める側が要件を持つ」という考え方は、AIコンサルの選定にそのまま使えます。 要件を持たずに提案を待つと、比較の軸が各社の得意分野に引き寄せられてしまいます。

出典: AI事業者ガイドライン(第1.2版)概要(総務省・経済産業省)、中小企業におけるAI導入のためのツールキット(総務省)

AIコンサルの成果物は、現状整理・ルール文書・業務プロセス設計・評価指標の4種類に整理できる

相談の結果として何が残るのかは、発注前にいちばん気になる点です。公的資料が示す取組の順序とガイドラインの構成から考えると、成果物は4種類に整理できます。

成果物を4種類に分けて、それぞれ「自社で更新できる形か」を確認すると、納品後に使えるかどうかが判断しやすくなります。

AIコンサルの成果物4種類と、それぞれの確認観点・社内での使い道を対応させた整理(概念図)

出典: AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(総務省・経済産業省)および令和8年版情報通信白書(総務省)を基に整理

成果物 中身の例 確認する観点
現状整理 業務の棚卸し、利用ケースの一覧、リスクの洗い出し 現場の実態が反映されているか
ルール文書 利用ガイドライン、入力してよい情報の基準、相談手順 ガイドラインの指針に対応づけられているか
業務プロセス設計 補助に使うタスクと自律実行させるタスクの切り分け、新しい手順書 責任の所在が書かれているか
評価指標 指標の定義、測定方法、確認の頻度 社内で測り続けられるか

出典: AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(総務省・経済産業省、令和8年3月31日)を基に整理

ルール文書の成果物はAI事業者ガイドラインの3主体区分と10の共通指針に対応づけて確認する

ルール文書を受け取ったら、公的な枠組みと突き合わせて抜けを探すのが確実です。AI事業者ガイドライン第1.2版は、各主体が取り組むべき事項を10の「共通の指針」として整理しています。

指針は、人間中心、安全性、公平性、プライバシー保護、セキュリティ確保、透明性、アカウンタビリティ、教育・リテラシー、公正競争確保、イノベーションです(令和8年3月31日公表)。

納品されたルール文書が、この10項目のどこに対応し、どこを扱っていないのかを一覧にしてもらうと、残る作業が見えます。 「うちはAI利用者だから提供者向けの事項は対象外」という整理も、文書に書いてあれば後から判断の根拠になります。

評価指標の成果物が要る理由は、成果指標の設定企業が23.9%、設定方法がわからないが36.0%という現状

評価指標は、後回しにされがちな成果物です。IPA「DX動向2026」では、DXの成果指標を「設定している」企業は2025年度で23.9%にとどまりました。

設定していない理由では「評価指標の設定方法がわからない」が36.0%で、2024年度の28.7%から約7ポイント上昇しています。「評価指標はこれから定める」も33.4%でした。

設定方法が分からないという回答が増えている領域は、外部に相談する価値がはっきりしている領域です。 指標の定義だけでなく、誰がいつ測るのかまで書かれた形で受け取ることをおすすめします。

指標の対象は内向きの業務改革80.0%に偏り、外向き33.5%・経営改革16.3%にとどまる

指標を設定している企業でも、対象は内向きに偏っています。同調査で成果指標の対象を見ると、次のような分布でした(2025年度調査)。

成果指標の対象 割合
内向きの業務改革(社内の効率化) 80.0%
システム改革(AI・データ利活用の度合い等) 55.4%
外向きの業務改革(新たなビジネスや顧客価値の創出) 33.5%
経営改革(デジタル事業売上高、市場シェア等) 16.3%

出典: DX動向2026(IPA) 図表2-15(2025年度調査、成果指標を設定している企業が対象)

効率化だけを指標にすると、外向きの成果は評価の対象から外れます。 相談の段階で「どの対象の指標を作るのか」を決めておくと、成果物の方向がぶれません。

別添7のチェックリストとワークシートは自社向けカスタマイズ前提で、成果物の土台として参照できる

AI事業者ガイドライン第1.2版は、本編で「どのような取組を行うか」という指針を、別添で「具体的にどのようなアプローチで取り組むか」という実践を扱う構成になっています。

別添7として、事業者が自社向けにカスタマイズして使うことを前提としたチェックリスト(PDF)とワークシート(EXCEL)が公開されています。別添2では「第2部E.AIガバナンスの構築」に関連する資料が提供されています。

自社でカスタマイズして使う前提の公的資料があるので、成果物の土台として参照するのが現実的です。 支援会社の独自フォーマットだけで固めると、更新のたびに外部に頼る形になりやすいためです。

資料は総務省のAI事業者ガイドライン掲載ページから入手できます。本記事では内容の転載は行わず、参照とリンクにとどめています。

出典: AI事業者ガイドライン掲載ページ(総務省)、DX動向2026(IPA)

支援会社の選び方は、ガバナンス要件への対応・難所の扱い・社内に残す役割の3点で確認する

支援会社の比較は、実績の量だけでは判断しにくいものです。公的資料に沿って確認項目を作ると、話を同じ条件で聞けます。

次の3点を確認すると、提案の中身の差が見えやすくなります。

  • 利用ケースをガバナンス要件にマッピングし、必要な安全策を提案に含められるか
  • 中小企業にとって適用が難しいとされた原則への対応方針を説明できるか
  • 社内に残す役割を、公的な枠組みの言葉で定義して引き継げるか

導入前に利用ケースをガバナンス要件にマッピングし、安全策を提案に含められるかを見る

前述のツールキットは、導入前に想定リスクを検討し、利用ケースをガバナンス要件に対応づけて安全策を定義する手順を示しています。

この手順を提案に織り込めるかどうかは、確認しやすい比較軸です。「どの業務で、どのリスクに、どの安全策を当てるのか」という対応表が提案に含まれているかを見てみてください。

逆に、ツールの紹介だけで利用ケースの整理が出てこない提案は、第1段階の環境整備にとどまる可能性があります。それ自体が悪いわけではありませんが、範囲として認識しておく必要があります。

中小企業にとって適用が難しいとされた原則1・2・10への対応方針を確認する

同ツールキットでは、広島AIプロセス国際指針のうち、原則1(AIライフサイクル全体でのリスクの特定・評価・軽減)、原則2(導入後の脆弱性や悪用インシデントの特定と緩和)、そして原則10が、中小企業にとって適用が最も難しいと頻繁に指摘されたと整理されています。

難しいとされた箇所をどう扱うかは、支援の実力が出やすい部分です。 導入後の監視や、問題が起きたときの連絡と対応の流れについて、具体的な進め方を聞いてみましょう。

「導入時に設定して終わり」なのか、「運用に乗せるところまで設計するのか」で、必要な体制も費用の考え方も変わります。ここを提案書の文面で確認しておくと、後からの認識違いを減らせます。

社内に残す役割はデジタルスキル標準ver.2.0の共通の言葉で定義して引き継ぐ

支援が終わった後に社内で動かすには、役割の定義が必要です。IPAと経済産業省は2026年4月16日に「デジタルスキル標準ver.2.0」を公開しています。

これは、企業がDXやAIに関わる人材の役割とスキルを共通の言葉で定義するために参照できる公的な枠組みです。支援会社の独自の役割名ではなく、公的な枠組みの言葉で引き継ぎ先を定義しておくと、人の入れ替わりがあっても引き継ぎやすくなります。

詳しい公開資料はIPAのデジタルスキル標準のページにまとまっています。採用や育成の計画と合わせて読むと、社内に残す役割の設計に使えます。

出典: 中小企業におけるAI導入のためのツールキット(総務省)、デジタルスキル標準ver.2.0を公開(IPA、2026年4月16日)

初回相談に持ち込む質問は、範囲・成果物・費用・体制の4グループにまとめる

初回相談の時間は限られています。質問を4グループに分けて持ち込むと、聞き漏らしが減ります。

質問の目的は、相手を試すことではなく、同じ条件で比べられる状態を作ることです。

質問グループ 聞くこと 確認したい結果
範囲 3段階のどこまでを担当し、どこから社内が担うか 提案書に範囲の線が明記されること
成果物 納品物の形式、更新のしやすさ 自社でカスタマイズできる形かどうか
費用 見積もりの前提、追加費用が発生する条件 各社で条件がそろうこと
体制 誰が関与し、どの頻度で進捗を確認するか 社内側の負担が見積もれること

出典: 令和8年版情報通信白書(総務省)およびAI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(総務省・経済産業省)を基に整理

範囲の質問は、3段階のどこまでを担当し、どこから社内が担うかを明文化させる

最初に確認したいのは範囲です。白書が示す3段階のうち、どこまでを担当するのかを提案書に書いてもらいましょう。

「環境とルールの整備まで」「業務プロセス設計まで」「システム・データ連携を含む」のどれなのかが書かれていれば、金額の差の理由が説明できます。 口頭の説明だけでは、後から範囲の認識がずれやすくなります。

あわせて、社内が担う作業の見込み工数も聞いておくと安心です。現場ヒアリングへの同席や資料提供は、社内側の負担として必ず発生します。

成果物の質問は、納品物の形式と自社でカスタマイズ・更新できるかを確かめる

成果物は、形式まで聞いておくと扱いが変わります。編集できる文書やワークシートの形で受け取れるのか、閲覧用のファイルだけなのかを確認しましょう。

AI事業者ガイドラインの別添7が自社向けのカスタマイズを前提にしていることを踏まえると、納品物も「自社で書き換えて使い続けられる形」であるほうが実務に合います。

更新の想定も聞いてみてください。法令やガイドラインの改定があったとき、誰がどのように反映するのかを決めておくと、文書が古いまま残る事態を避けやすくなります。

費用の質問は、売上に占めるDX投資が2%未満で過半・5%以上も21.1%という幅を前提に条件を揃える

費用の話は、相場ではなく前提の確認から入るのが現実的です。AIコンサルの費用相場にあたる公的統計は確認できなかったため、本記事では金額の目安を示しません。

参考になるのは、企業ごとの投資規模の幅です。IPA「DX動向2026」では、売上に占めるDX投資額・費用の割合が次のように分かれています(2025年度調査、DXに取組む企業が対象)。

売上に占めるDX投資額・費用の割合 企業の割合
1%未満 27.8%
1%以上2%未満 31.0%
5%以上 21.1%

出典: DX動向2026(IPA) 2.5 DX投資の状況(図表2-17、2025年度調査)

2%未満が過半を占める一方で5%以上も21.1%あり、投資規模の差は大きいことが分かります。 他社の金額を基準にするより、自社の売上規模と範囲を示して条件をそろえた見積もりを取るほうが比較できます。

体制の質問は、経営者・IT部門・業務部門の協調と定期的な進捗確認の運び方を聞く

最後は体制です。IPA「DX動向2026」は、DXで成果が出ている企業の特徴として、経営者のデジタル見識が高いこと、経営者・IT部門・業務部門の協調が取れていること、全社レベルでの業務プロセス最適化に取組んでいることを挙げています(2025年度調査)。

白書のヒアリング事例でも、定期的な進捗確認の下で検討を続けた取組が報告されています。支援を受けるときも、誰が集まり、どの頻度で進捗を確認するのかを最初に決めておくほうが進みます。

会議体の設計を提案に含められるかどうかも、確認しておきたい点です。社内の巻き込み方まで提案に書かれていれば、運用に乗る見込みが立てやすくなります。

出典: DX動向2026(IPA)

伴走支援で成果が出た事例は、部門の課題起点と定期的な進捗確認を共通点としている

外部の支援をどう使うと進むのか、公的資料に載った例から考えてみましょう。総務省の令和8年版情報通信白書には、専門企業の伴走支援を受けた企業のヒアリング事例が収録されています(2026年公表)。

共通しているのは、技術から入るのではなく、各部門の課題認識から入っている点です。

経営者方針の下で課題と目標を設定し1年間検討した企業は、全10事業部で年間2,247時間の削減を報告

同白書のヒアリング事例では、経営者の方針の下で専門企業の伴走支援を受けながら、各事業部門の課題認識を起点にAIで解決したい課題と目標を設定したと報告されています。

定期的な進捗確認の下で1年間検討した結果、送迎ルート最適化システムの作成や問合せ対応のテンプレート化・自動化などにより、全10事業部の合計で年間2,247時間分の業務時間削減につながったとされています。

ここで参考になるのは数値そのものより、進め方の順序です。 経営者の方針、部門ごとの課題設定、目標の設定、定期的な進捗確認という流れが揃っています。

なお、これは白書に掲載された一社の例であり、同じ取組をすれば同じ結果になるという性質のものではありません。自社の条件に置き換えて読む必要があります。

全社の業務プロセス最適化に取組む割合は成果あり53.8%・成果なし29.5%

進め方の差は、統計にも表れています。IPA「DX動向2026」では、全社レベルでの業務プロセス最適化に取組んでいる割合が、DXの成果が出ている企業で53.8%、成果が出ていない企業で29.5%でした(2025年度調査)。

この差は、個々のツール導入ではなく業務の流れ全体を見直しているかどうかの違いとして読み取れます。 AIコンサルに相談する範囲を第1段階にとどめるか第2段階まで広げるかの判断材料になります。

ただし、この数値は取組の有無と成果の有無の関係を示したもので、因果関係を示すものではありません。自社の優先順位は、現場の負荷と合わせて決めてみてください。

DXとAIを個別に取組む企業が約4分の1あり、位置づけの整理自体が相談対象になる

もうひとつ気になるのが、DXとAIの関係です。IPAのプレス発表資料では、AI利活用のDX推進に対する位置づけとして「DXの推進の一部としてAIを活用している」と「DXの推進のためAIを中心に活用している」の合計が54.2%でした(2025年度調査)。

一方で「DXとAIは個別に取組んでいる」が、DXに取組む企業の約4分の1を占めています。AIの取組が既存のDX計画と切り離されている状態なら、その位置づけの整理自体が相談のテーマになります。

別々に走っていると、指標も予算も二重管理になりがちです。相談の冒頭で、既存の計画との関係を整理してもらうとよいでしょう。

出典: 令和8年版情報通信白書(概要)(総務省、2026年7月)、国内企業のDX動向・AI活用動向のポイント(IPA)

発注前に確認する公的資料は、AI事業者ガイドライン第1.2版と人工知能基本計画の支援策

発注の前に目を通しておくと判断が楽になる公的資料があります。無料で公開されているので、社内の検討資料にそのまま使えます。

ガイドラインで要件の枠組みを押さえ、基本計画で支援策の方向を確認する、という二段構えが扱いやすい組み合わせです。

AI関連法(令和7年法律第53号)の全面施行を受け、ガイドライン第1.2版が統一的な指針を示す

AI事業者ガイドライン第1.2版の本編は、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(令和7年法律第53号)が2025年6月に公布され、同年9月に全面施行されたことを踏まえた内容になっています。

本編は、我が国におけるAIガバナンスの統一的な指針を示すものと位置づけられています(第1.2版、令和8年3月31日公表)。支援会社の提案がこの指針を参照しているかどうかは、確認しやすい観点です。

条文の解釈や個別の法的判断については、本記事では扱いません。必要な場合は専門家にご確認ください。

人工知能基本計画はデジタル化・AI導入補助金など中小企業のAI導入促進を掲げている

支援策の方向は、内閣府の「人工知能基本計画」(令和7年12月23日閣議決定)で確認できます。同計画は具体的な取組として、「デジタル化・AI導入補助金を始めとする中小企業におけるAI導入促進の円滑化」や、中小企業政策・税制措置の活用を掲げています。

計画に掲げられている方向性と、個別の補助金の公募内容は別のものです。 具体的な要件や金額は、各制度の最新の公募要領で確認する必要があります。

本記事では、個別の補助金の採択要件や金額には触れません。支援会社に相談するときは、計画に挙がっている方向を踏まえつつ、最新の制度は一次情報で確かめるという姿勢が安全です。

日本は生成AI活用で「組織的な取組はない」が約3割弱、学ぶ環境やデータ整備の回答が他3か国より低い

最後に、日本企業の置かれた状況を国際比較で確認しておきましょう。令和8年版情報通信白書の企業向け国際アンケート(日本n=326、米国n=276、ドイツn=270、中国n=293)では、生成AI活用による業務変革について、日本は「組織的な取組はない」が約3割弱と他3か国より高い結果でした。

環境整備の項目では、「業務プロセスの見直しや生成AI活用検討に必要なスキルやノウハウを学ぶ環境がある」「生成AIに社内データを学習させたり、生成AIが参照可能なデータベースを構築したりしている」の回答割合が他3か国より顕著に低くなっています(2026年公表)。

学ぶ環境とデータの整備が弱いという結果は、外部の支援を使う場面を考えるうえでの手がかりになります。 なお、同じ設問の選択肢には「専門家によるアドバイスやサポート体制がある」も含まれますが、日本の回答割合は本記事の執筆時点で確認できていないため、数値には触れません。

出典: AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(総務省・経済産業省)、人工知能基本計画(令和7年12月23日 閣議決定)、令和8年版情報通信白書 第Ⅰ部第2章(総務省)

この記事の範囲と未解決事項

本記事は、公開されている一次資料をもとに、AIコンサルへの相談範囲・成果物の種類・支援会社への確認項目を整理したものです。検証した範囲と、扱っていない範囲を分けて書いておきます。

検証したのは、記事で引用した数値と記述が、IPA「DX動向2026」およびプレス発表資料、総務省 令和8年版情報通信白書、AI事業者ガイドライン第1.2版の本編・別添・概要、広島AIプロセス関連の中小企業向けツールキット、人工知能基本計画、IPAのデジタルスキル標準の公開情報に記載されているかという点です。各出典のURLは2026年10月1日に到達を確認しています。

主張していないことは次のとおりです。AIコンサルの費用相場、契約形態ごとの金額水準、外部支援会社の利用率、特定の支援会社やサービスの優劣、導入による効果の保証です。これらに対応する公的統計を確認できなかったため、本記事では数値を示していません。

未解決の事項も残っています。IPA「DX動向2026」の「わからない」54.0%(図表2-4)と「ルールや基準の作成が難しい」39.7%(図表3-16)については、選択肢の完全な文言と集計対象の区分を確認できていません。また、令和8年版情報通信白書の環境整備の設問にある「専門家によるアドバイスやサポート体制がある」の日本の回答割合は未取得です。

さらに、経済産業省・中小企業庁が公開する中小企業向けのAI導入ガイドブックや相談窓口の資料は、自動での到達確認ができなかったため出典に採用していません。そのため支援制度の記述は、人工知能基本計画に書かれている範囲にとどめています。白書のヒアリング事例に出てくる年間2,247時間の削減は、掲載された一社の報告であり、他社で同じ結果が出ることを示すものではありません。

AIコンサルの相談範囲・成果物・質問リストの整理(まとめ)

AIコンサルへの相談は、範囲を3段階に分けるところから始めると整理しやすくなります。情報漏えい対策を施した環境とルールの整備、業務プロセスの設計、社内システム・社内データ連携という順序です(総務省 令和8年版情報通信白書、2026年公表)。

成果物は、現状整理・ルール文書・業務プロセス設計・評価指標の4種類で考えます。特に評価指標は、設定している企業が23.9%、設定しない理由の最多が「評価指標の設定方法がわからない」36.0%という現状があるため、成果物として明示的に依頼する価値があります(IPA「DX動向2026」2025年度調査)。

支援会社の比較では、利用ケースをガバナンス要件に対応づけて安全策を示せるか、中小企業にとって難しいとされた原則への対応方針を説明できるか、社内に残す役割を公的な枠組みの言葉で引き継げるかを確認します。初回相談には、範囲・成果物・費用・体制の4グループで質問を持ち込むと比較条件がそろいます。

費用については、公表された相場の数値がないため、自社の範囲と前提を示して条件をそろえた見積もりを取るのが現実的です。まずは社内に残す作業を書き出すところから始めてみてください。

AI活用の進め方と社内の役割分担について相談する

自社でどこまでやり、どこから外部に任せるかの線引きは、現場の業務量や体制によって変わります。範囲の切り分けや、初回相談に持ち込む質問の整理でお困りのことがあれば、お問い合わせフォームからご相談ください。

ご相談の際は、現在取組んでいる業務の範囲と、社内で対応できそうな作業の見込みを共有いただけると、話を具体的に進めやすくなります。本記事で扱っていない費用の目安についても、条件を伺いながら一緒に整理していきます。

出典一覧

自社で試す前に確認したいこと

  • 提案書に担当範囲と社内が担う範囲の線が明記されているか
  • 利用ケースをガバナンス要件に対応づけた安全策が提案に含まれているか
  • 納品物を自社でカスタマイズ・更新できる形式で受け取れるか
  • 評価指標の定義と測定方法、確認の頻度が成果物に含まれているか
  • 社内に残す役割がデジタルスキル標準などの共通の言葉で定義されているか

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