ひとり情シスとは?背景・課題や効果的な解決方法を解説

自社に情シス担当者が一人しかおらず、すべてのIT業務を抱えている
ITの知識が社内に共有されず、自分にしかわからない業務が増えている
トラブル対応で休憩も取れず、精神的にも体力的にも限界を感じている
このような悩みを持つ中小企業のIT担当者は少なくありません。近年、「ひとり情シス」と呼ばれる状況が急増しており、企業にとっても大きなリスクとなっています。
筆者は事業会社の情報システム部門として従事し、IT運用やシステム開発、情報セキュリティ対策などさまざまな業務に携わってきました。
関東部署を「ひとり情シス」に近い状態を経験していくなかで「ひとり情シス問題は、正しい対策と仕組みづくりで確実に解決できる」と感じました。
この記事では、「ひとり情シス」が生まれる背景から、担当者や企業が抱える課題、そして現実的で効果的な解決策まで網羅的に解説します。
ひとり情シスは放置してはいけない深刻な経営課題であるほか、自社のIT運用や情報戦略を進めていくためにも、ぜひ参考にしてみてください。
ひとり情シスとは?孤独なIT担当者に起きている現実
ひとり情シスとは、企業内のIT業務を一人でおこなう情シス(情報システム)担当者を指します。
社内のパソコンやネットワークの管理、システム導入、トラブル対応、セキュリティ管理まで、ITに関するすべてを1人でこなす必要があります。
本来、情シス部門は複数名で分担するのが理想です。しかし、中小企業やスタートアップなどでは人員や予算の都合で「ひとり情シス」にならざるを得ないケースが増えています。
- システム運用・保守のすべてが1人に依存している
- 属人化が進み、誰も手を出せないブラックボックス化が起きる
- トラブル時は昼夜問わず即対応を求められる
- 社内でITの相談ができる相手がいない
- 忙しさからスキルアップや情報収集が後回しになる
ひとり情シスは豊富な業務をひとりで担当するため、業務面・精神面の両方で高い負荷がかかるだけでなく、企業全体のITリスクを引き上げてしまう要因にもなります。

ひとり情シスが増加する背景

ひとり情シスが増えている背景には、人材不足・組織構造・技術進化による誤解など、複数の要因が複雑に絡んでいます。
ここでは、ひとり情シスが増加する具体的な背景について詳しく解説します。
ITの重要性が増す一方で、IT人材が不足している

ひとり情シスが増加する背景として、ITの需要に対してIT人材が不足していることが挙げられます。
経済産業省の調査によると、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると報告されています。
特に中小企業では、そもそもIT専門職の採用が困難で、既存社員が兼任で情シス業務を担っているケースも少なくありません。
IT人材不足が続くと、、自然と「1人しかいない情シス=ひとり情シス」という構図が定着するでしょう。
情シスがコスト扱いされ、投資対象になっていない
情シス部門は売上を直接生み出さないため、コスト部門として見られがちです。経営層から理解を得られにくく、人員の増強や教育・ツール導入に投資をしてもらえないケースが少なくありません。
特に「情シスに予算を割くよりも営業に投資した方が利益が出る」など短期的な視点が根強い企業では、ひとり情シスの改善は後回しにされる傾向があります。
クラウドサービスの普及
クラウドサービスの登場で、システム構築や運用の手間は以前よりも軽減されました。
クラウドサービスでは、オンプレミスのように自分でサーバーやネットワークの準備・保守対応などをおこなう必要がなく、ベンダーに業務を任せられます。
その結果、「情シスはもう1人でも十分では?」といった誤解が一部広まっています。
- アカウント・ID管理
- セキュリティ設定と関し
- システム連携とデータ保全
- 社内サポート対応
しかし、クラウドサービスが普及してもアカウント・ID管理やセキュリティ設定などの業務は情シスがおこなわければなりません。
自社開発ではないため、各種クラウドサービスに関する学習や日常的におこなわれるアップデートのキャッチアップも重要です。
情シスの業務はクラウド対応によって専門性と重要性が増しているといえるでしょう。
ひとり情シスが抱える5つの重大リスク

ひとり情シスが抱えるリスクは、以下の5つです。
ひとり情シスの状態を放置すると、担当者の疲弊だけでなく、企業全体のIT基盤が崩れるという深刻なリスクを招きます。それぞれのリスクに関して、詳しく見ていきましょう。
担当者の業務負担が大きい
ひとり情シスは、担当者の業務負担が非常に大きいです。
- 情報セキュリティ対策
- 社内ネットワークの構築
- ヘルプデスク業務
- 社内システムのアカウント発行・管理
- 社内システムの開発・運用・保守
- ソフトウェアのアップデート・パッチ適用 …etc
社内のセキュリティ対策やネットワーク構築、社員からの問い合わせ対応など、情シスの業務範囲は多岐に渡ります。
特に、問い合わせ対応のようなノンコア業務が増加すると、本来やるべき業務改善や企画業務に時間を割けなくなる問題が発生します。
トラブル対応が遅れて業務全体に支障が出る
ITトラブルは常に発生するリスクがありますがひとり情シスの場合、対応が遅れて業務全体に支障が出る可能性があります。
担当者が不在のときにネットワーク障害やサーバートラブルが起きれば、業務が完全に停止することも珍しくありません。
外部との連携が取れなくなることで、顧客や取引先からの信用低下にもつながりかねません。
迅速なトラブル対応ができない体制は、企業全体のパフォーマンスと信頼性をそこなう可能性があるため注意が必要です。
セキュリティ対策が後回しになる
日々の業務対応に追われるひとり情シスでは、セキュリティ対策が後回しにされがちです。企業がサイバー攻撃を受けると、個人情報の漏えいや企業信用度の低下につながるリスクがあります。
- パスワードの強度チェックがされていない
- 社内端末にウイルス対策ソフトが未導入
- 外部アクセス制限が不十分
- 退職者アカウントの削除漏れ
特に中小企業は大手企業と比較するとセキュリティ対策が不十分なケースが多く、サイバー攻撃や内部不正の被害を受けやすいといえます。
業務が属人化し、引き継ぎや体制強化が困難になる
ひとり情シスの環境では、業務内容や管理方法が「その人しか知らない状態」になりやすく、属人化につながります。
マニュアル化や情報共有が後回しにされ、業務の全貌がブラックボックス化するため、担当者不在時や退職時に業務の継続が困難になる可能性があるでしょう。
また、退職の際には引き継ぎが必要になりますが、後任者に適切な情報共有やノウハウが蓄積されていなければ、社内のIT運用に支障が出ます。
休職・離職につながりやすい
ひとり情シスに課せられる業務量は膨大です。日々のトラブル対応に追われるだけでなく、責任の重さやプレッシャーも加わり、精神的・肉体的なストレスが大きくなりやすいでしょう。
- 業務過多で休憩も取れず、慢性的な疲労が蓄積
- システム障害時の責任を1人で背負わされる
- 成果が見えにくく、評価されない
- 他に相談できる人がいない孤独な環境
ひとりで業務を抱えるため、相談相手もおらず孤独感を感じやすい点や適正な評価を得られずに不満を感じ、離職してしまうケースも多いです。
教育機会がないため、知識とスキルが伸びない
情シス業務は日々進化するIT技術に対応する必要がありますが、ひとり情シスでは業務に追われるあまり学習の時間を確保できない問題があります。
- 情報セキュリティ
- クラウド
- ネットワーク・サーバー
- システム開発・保守・運用
- ハードウェア・ソフトウェア …etc
教育機会が得られず成長できなければ、日々アップデートされるIT環境についていくことができず、非効率な運用やセキュリティリスクの温床になりかねません。

ひとり情シスの課題を解決する方法

ひとり情シスが抱える課題は、個人の努力だけに頼らない「仕組み化」が重要です。ひとり情シスの課題を解決するためには、以下の方法を実践してみてください。
それぞれ詳しく解説します。
業務効率化ツールを導入する
日常のIT業務のなかには、自動化・効率化できる作業が多数存在します。業務効率化ツールを導入することで、ひとり情シスの負担は大幅に軽減されます。
- 資産管理ソフト:PCやライセンスの一元管理
- RPA:定型業務の自動処理
- チャットボットやチケット管理システム:ヘルプデスク業務の効率化 …etc
情シスの業務負担が減少し、労働環境が改善されれば、離職の防止にもつながるでしょう。
外部の情シス支援サービスを活用する
社内で解決できない部分は、専門家の力を借りることも有効です。アウトソーシングサービスを活用すれば、ヘルプデスク業務など、ノンコア業務を委託することができます。
- 情シスのコア業務に集中できる
- 外部から専門的なノウハウを取り入れることができる
- 人件費や固定費の削減につながる
また、外部から専門的なノウハウを取り入れることが可能なため、自社に必要なシステムや戦略など情シス業務がよりスムーズになります。
人件費や不要な業務に対するコストの削減につながる点も、アウトソーシングを活用する大きなメリットといえるでしょう。
組織全体のITリテラシーを高める
ひとり情シスの業務負担が大きくなる原因の一つに、組織全体のITリテラシーが低い点が挙げられます。
社員一人ひとりが最低限のITリテラシーを持っていれば、日常的なトラブルや問い合わせが激減し、情シスの負担は大幅に軽減されます。
- パスワードの適切な管理(定期変更・複雑化など)
- セキュリティ意識(不審メールの見分け方、情報の取り扱い)
- ソフトウェアや機器の基本的な操作方法
- バックアップの考え方と重要性の理解
- よくある問い合わせ(ネットワーク繋がらない・プリンター使えない など)の対処方法
ITリテラシー向上のためには、マニュアルの整備や社内研修、eラーニングの導入が効果的です。
また、経営層にもITがコストではなく投資と捉えてもらえるように、ITの重要性を全社的に伝えていくことが重要です。
情シス担当者を教育・育成する
ひとり情シス問題を根本的に解決するためには、情シス担当者の教育・育成がおすすめです。
しかし、担当者の業務は忙しく、情シス担当者の教育に時間を割くことができないと悩みを抱える企業は少なくないでしょう。
情シス担当者を育成するためには、以下のような方法で教育環境を整備するのがおすすめです。
- オンライン学習サービス(動画・LMS)の活用
- 専門資格の取得支援制度の導入
- 業務の一部委託による“学びの時間”の確保
- IT系セミナーや勉強会への参加促進
- 社内プロジェクトでの裁量権付与による実践経験の積み重ね
教育体制の整備方法は複数ありますが、自社の予算や状況に応じた方法を取り入れる必要があります。
教育を通じて情シスのスキルを可視化することができれば、上司や経営陣からの評価も得やすくなり、離職防止にも効果があります。
情シスカレッジを利用して情シス担当者を育成しよう!

- マイクロラーニング形式で無理なく学習できる
- サブスク制で研修動画が見放題
- 情シスに必要なテーマを幅広く取り扱っている
ひとり情シスが抱える「学べない」「相談できない」という課題を、現実的に解決できるのが『情シスカレッジ』の活用です。
情シスカレッジは、情シス業務に特化した研修動画をマイクロラーニング形式で提供するオンライン学習サービスです。
動画はすべて1分〜10分程度の短時間動画で構成されており、スキマ時間で無理なく学習できます。
- 情報セキュリティ
- クラウド
- ネットワーク・サーバー
- SaaS運用
- 情シス業務(ヘルプデスク、アカウント管理 など) …etc
さらに、月額制で動画が見放題のため、コストを気にせず何度でも復習・視聴できます。
情シスカレッジを導入すれば、個人のスキル向上と企業全体のIT体制強化を同時に実現可能です。
ひとり情シスの問題を根本的に解決したい場合は、情シス人材の育成を無理なくおこなえる情シスカレッジの利用がおすすめです。
\ ひとり情シスの課題を根本解決 /
ひとり情シスに関するよくある質問
ひとり情シスのメリットはありますか?
ひとり情シスのメリットは、以下のとおりです。
- 自分の裁量で作業できる
- 人件費を削減できる
少人数体制のため、意思決定が早く、柔軟に対応できるというメリットがあります。社内ITの全体像を把握しやすく、業務の優先順位も自分で決められるため、裁量が大きい点も魅力です。
また、企業にとっては情シス人材のコストがかからないため、人件費を削減できるメリットもあります。
情シスの仕事はきついですか?
情シスの仕事は企業の体制によっては、きついと感じる可能性があります。
特にひとり情シスの場合、トラブル対応・問い合わせ・機器管理・セキュリティ対策などをすべて1人で行うため、常に多忙で精神的プレッシャーも大きくなりがちです。
ただし、業務の仕組み化や外部支援の導入、社内のITリテラシー向上により、業務負担を大きく軽減することは可能です。
情シスカレッジの利用料金はどのくらいですか?
情シスカレッジの利用料金は4,980円(税込)です。
サブスクリプションなので、1ヶ月単位で更新されます。
まとめ | 情シス担当者を育てることが、ひとり情シス問題の根本解決につながる
ひとり情シスは、属人化や離職などさまざまなリスクが伴います。情シスは企業のIT業務全般を担当するため、ひとり情シスの場合は業務負担が大きくなりがちです。
情シスが働きやすい環境を整えるためにも、業務効率化ツールの導入や外部パートナーの活用、社内リテラシーの向上、情シス担当者の計画的な育成などの対策が必要です。
アウトソーシングする方法もありますが、ひとり情シス問題を根本解決するためには、情シス担当者の育成がおすすめといえます。
情シスカレッジのような動画学習サービスを活用すれば、日々の業務に追われながらでも無理なくスキルアップが可能です。
自社に適した対策を講じ、ひとり情シス問題を解決するようにしましょう。
\ ひとり情シスの課題を根本解決 /

成田 大輝
(株式会社ウェヌシス 代表取締役)
【保有資格】
・ITパスポート試験
・基本情報技術者試験
・情報セキュリティマネジメント試験
・MOS(Microsoft Office Specialist)
【経歴】
・2021年4月 〜
2022年7月:プログラマー
・2022年8月 〜 現在:
事業会社の情報システム部門
・2025年3月 〜 現在:
株式会社ウェヌシスの代表取締役
【紹介文】
新卒で大手SIerに入社後、半年間でスタートアップのSES企業で開発支援を経験。2022年8月より、従業員約3,000名・全国166拠点を展開する事業会社にて社内SEとして着任。業務効率化や情報セキュリティ対策、社内インフラ管理のほか、月間200件以上のヘルプデスク対応、約1,000台以上の社内端末・ネットワーク管理を行う。2025年3月には株式会社ウェヌシスを創業し、年間50社以上の中小企業に対して情シス内製化支援・教育・ITコンサルティング・アウトソーシングサービスを提供している。