情報システム部門のあるべき姿とは?守りから攻めへと進化するIT戦略部門の役割とは

情報システム部門の役割がよく分からない
日々のトラブル対応で手一杯
上層部からコスト削減してほしいと言われる
情報システム部門は、現代で重要なポジションでありながらも、矛盾した期待と現実の板挟みに苦しんでいます。
かつては社内システムを安定的に維持管理する役割でしたが、今後は企業の競争力を高める攻めのITとしての進化が求められるようになるでしょう。
この記事では、現代の情報システム部門が抱える課題と、その背景にある問題を整理したうえで、今後あるべき姿について解説します。
現代の情報システム部門が抱える課題

現代の情報システム部門は、以下のような課題を抱えています。
それぞれ詳しく解説します。
DX推進が進まないことで企業競争力が低下している
現代は企業間競争が激しくなっており、情報システム部門はITを活用してDX推進を進めていかなければなりません。
- IT人材不足
- 予算不足
- 高度化するサイバー攻撃へのセキュリティ対策
- ノンコア業務に時間を取られている
しかし、そもそもIT人材が不足していたり、DX推進のための予算が不足していたりして、本来情報システム部門が取り組むべきDX推進が進んでいないケースが多いです。
業務のデジタル化が遅れている企業では、顧客体験の向上や市場変化への柔軟な対応が困難なため、競合に遅れを取り、企業競争力が低下してしまいます。
AI技術の活用が進まず業務効率化が遅れている
AIやRPAなどの先端技術が普及している中、情報システム部門がうまく取り入れられていない場合は、大きな機会損失です。
とくに、生成AIは指示を出すだけでさまざまな業務をサポートしてくれる非常に心強いツールです。
- プログラミングの効率化が可能
- 生産性の向上につながる
- ITに関するアイディアが得られる
企業にとって魅力的な生成AIですが、最大限に効果を発揮するためには、情報システム部門が適切な対策を講じる必要があります。
たとえば、セキュリティ対策やプロンプトの指示を高めるなどが挙げられるでしょう。企業のDX推進にもつながるため、情報システム部門はAIの活用方法やリスクについて確認しておく必要があります。
人材・予算などのリソース不足
情報システム部門は営業職や開発職のように、直接利益を生む部門ではないため、経営層からコストセンターと見なされがちです。
予算は必要最低限、担当者はひとり情シスや兼任SEといった状況の企業も珍しくありません。限られた人材・予算で情報システム部門を回していると、次のような問題が発生します。
- セキュリティ強化やクラウド移行などの施策が後回しになる
- 教育・研修が行き届かず、技術力が向上しない
- ベンダー任せで自社にノウハウが蓄積されない
結果的に企業のDX推進が遅れ、競合と差が開くことになります。変化に対応できる柔軟な体制を整えるには、部門の価値を定量的に示し、経営層に重要度を理解してもらう努力が欠かせません。
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高度化するセキュリティ脅威に十分対応できていない
サイバー攻撃は年々巧妙化し、ゼロデイ攻撃やランサムウェアなどのリスクは企業の規模を問わず脅威となっています。
しかし、多くの情報システム部門は、専任のセキュリティ人材を確保できていない、あるいはセキュリティツールを導入して終わりといった状態にあります。
- 情報資産の漏えい
- 企業の信用失墜
- 法的トラブルへの発展
現代はセキュリティ対策を怠ると自社だけではなく、取引先や顧客まで被害が発展する可能性があります。
情報資産が漏えいすると多大な損失だけではなく、企業としての信頼も失われるため、情報システム部門は適切なセキュリティ対策を講じることが必要です。
従来の情報システム部門の役割

従来の情報システム部門には、以下のような役割があります。
それぞれ詳しく解説します。
既存システムの運用・保守
情報システム部門は、基幹システムや社内業務システムの安定稼働を維持する運用・保守業務をおこないます。
ミスや障害を未然に防ぎ、日々の業務が滞りなく進むよう支える役割は、従来から高く評価されてきました。
今後は既存システムの運用・保守も必要ですが、クラウドサービスを導入するケースが増えていくため、より対応できる範囲を広げておく必要があるでしょう。
ヘルプデスク業務
従業員からの「パソコンが動かない」「ネットに接続できない」「パスワードを忘れた」などの問い合わせに対応するのも情報システム部門の重要な仕事です。
とくに社内のITリテラシーがそれほど高くない企業の場合は、ヘルプデスク業務に多くの時間を割く必要があります。
- マニュアルや社内FAQを整備する
- チャットボットを導入する
- 対応の属人化を防ぐ
DX推進やIT戦略の立案など、今後の情報システム部門はコア業務に集中するためにも、ヘルプデスクの問い合わせを減らす工夫が重要です。
社内ITインフラの構築
社内ネットワークやサーバ、メール、ファイル共有、勤怠システムなど、業務に不可欠なITインフラの整備も、従来の情報システム部門の主要な役割です。
従業員が快適に業務に取り組むためには、安定したネットワークやサーバー環境の構築が必要です。
近年はクラウド化が進み、インフラ運用の負荷は軽減しつつありますが、システム全体を最適化する役割は現代でも求められています。
今後の情報システム部門のあるべき姿とは?

今後の情報システム部門は、従来の守りのIT部門から、企業価値を生み出す攻めのIT部門への転換が必要です。
ここでは、今後の情報システム部門のあるべき姿について解説します。
ITを活用した経営戦略の立案
今後の情報システム部門には、単なるシステム運用ではなく、経営にどのように貢献できるか考える視点が必要です。
経営課題をITでどう解決するか、売上や利益向上にどのように寄与できるかを考えることが不可欠です。
- 経営層にIT投資の意義と効果を説明できる
- 新規事業や市場拡大に向けたIT戦略の提案ができる
- 業務部門と一体となって業務改革をリードできる
経営層にITツールを導入する意義や具体的な効果を説明したり、企業価値を生み出すIT戦略の立案をしたりすることが今後必要になると考えておきましょう。
データを経営資源として扱い、ビジネス成長に活用する
ITを活用して企業価値を高めるためには、データの収集や分析、活用も必要です。
社内に散らばっている複数のデータを収集し分析することで、各データ間の相関関係や因果関係、将来的にどのような変化があるかなどの情報を得られる可能性があります。
情報システム部門は、データを活用してビジネスの成長に貢献することも役割のひとつであるといえるでしょう。
ITガバナンスの強化により統制と柔軟性を両立させる
多様な業務部門が自律的にITを活用する中で、情報システム部門には管理とサポートのバランスをとる役割が必要です。
全社横断のIT統制を保ちつつ、各部門に裁量とスピードを与えることが、ITガバナンスのあるべき姿です。
情報システム部門は、自社を統一するITポリシーを定めたり、クラウドサービスや各種サービスに関する適切な権限を付与したりする役割を担います。
まとめ | 情報システム部門は保守から攻めのITへとシフトチェンジする必要がある
情報システム部門は、従来の「守る役割」から「攻めの戦略部門」へと進化することが求められています。
経営と連携したIT戦略の立案やデータ活用による意思決定、柔軟なITガバナンスの構築などが今後の情報システム部門が取り組むべき課題です。
企業の成長をITで支えるために、今後情報システム部門として活躍する場合は、攻めのITを意識して立ち回りましょう。