情シスとは?仕事内容や求められるスキル、社内SEとの違いまで徹底解説

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情シスは具体的にどのような仕事をするの?

社内のIT担当として、ひとりで何でもこなしている

最近はクラウドやセキュリティも自分が担当に…

このような状況に心当たりがある人は少なくないでしょう。情シスはどの企業にも不可欠な存在ですが、役割が非常に広範なうえに、理解されにくい立場でもあります。

結論、情シスは企業のIT業務を支える社内の情報システム担当者のことです。筆者は、3年間情シスの現場を経験しており、社内システムの運用やセキュリティ対策、ネットワーク構築などさまざまな実務経験があります。

この記事では、情シスの基礎知識から具体的な業務、必要スキル、社内SEとの違いまで解説します。

記事を読めば、情シスの具体的な役割や今後のキャリアの方向性が明確になるでしょう。

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目次

情シスとは企業のIT業務を支える社内の情報システム担当者のこと

情シスとは、情報システム部門や情報システム担当者の略称であり、企業のITインフラやシステム管理、情報セキュリティ対策を担うポジションです。

業務内容は幅広く、システムの導入や運用保守、社内の問い合わせ対応(ヘルプデスク)から、IT戦略の立案まで多岐にわたります。

とくに中小企業では、情シスが1人または兼任で運用されるケースも多く、「ひとり情シス」や「兼任情シス」といった形態が一般化しています。

経済産業省のIT人材育成の状況等についての画像

経済産業省の「IT人材育成の状況等について」によると、2030年には最大約79万人のIT人材が不足すると報告されており、現状すでに採用が難しいと感じている企業も少なくありません。

企業にとってIT環境の安定稼働は生産性や競争力に直結するため、情シスは現代において不可欠な存在といえるでしょう。

情シスの主な仕事内容

情シスの仕事内容

情シスの主な仕事内容は、以下のとおりです。

それぞれ詳しく解説します。

関連記事:情シスの仕事内容とは?求められるスキル・資格、社内SEとの違いもまるごと解説!

社内システムの管理・運用

情シスは、社内で導入しているシステムの管理や運用をおこないます。

業務で使うグループウェアやメールシステム、販売・会計・人事などの業務システムが正しく動作するように、設定やライセンス管理、ユーザーアカウントの作成・削除、障害対応などが主な仕事です。

たとえば、Microsoft 365やGoogle WorkspaceといったSaaSの導入後も、定期的な設定確認やセキュリティポリシーの適用などの運用が欠かせません。

社員がシステムを意識せずにスムーズに仕事を進められるよう裏で支えているのが、情シスの社内システム管理といえます。

情報セキュリティ対策

情シスは、ウイルス対策ソフトの導入やファイアウォールの設定、アクセス制御、ログの監視などを通じて、外部からの攻撃や内部不正から情報資産を守ります

情シスが実施するセキュリティ対策
  • ウイルス対策ソフトの導入
  • ファイアウォールの設定
  • ログ監視
  • EDRの導入
  • 従業員へのセキュリティ教育

加えて、標的型攻撃やランサムウェアへの備えとして、EDR(Endpoint Detection and Response)やゼロトラスト型ネットワークの導入を進める企業も増加しています。

技術的な対策のみではなく、従業員へのセキュリティ研修の実施やパスワードポリシーの策定、フィッシングメール訓練なども情シスの役割です。

社内インフラの構築・運用・保守

社内インフラとは、ネットワーク機器、サーバー、ストレージ、Wi-Fi環境、VPNなど、ITを支える土台のことです。

情シスは社内ネットワークの整備やVPN環境の構築・運用・保守をおこない、社員が安定して業務を行える環境を維持しています。

たとえば、新たにオフィスを開設する場合には、LAN配線や無線ルーターの設置、IPアドレス設計、NASやファイルサーバーの導入など、設計から構築まで情シスが担当するケースが少なくありません。

リモートワークやクラウド化が進む現代では、情シスの社内インフラ構築や運用は重要度の高い仕事といえるでしょう。

基幹システムの開発・運用・保守

基幹システムとは、企業活動の中核を担う「販売管理」「在庫管理」「会計」「人事給与」などの業務システムを指します。

情シスは、基幹システムを円滑に稼働させるために、開発から運用・保守に至るまで幅広く関与します。

とくに中堅〜大手企業では、自社専用にカスタマイズされたERP(統合基幹業務システム)を導入している場合が多く、要件定義やベンダー選定、受け入れテスト、障害対応など、マネジメントスキルも問われます。

日常運用では、定期的なバックアップやセキュリティパッチの適用、業務フローの変更に応じた改修なども求められます。

IT戦略の立案・実行

近年では、情シスは経営戦略とITを結びつけるIT戦略の立案や実行も重要な業務になっています。クラウド導入、DX推進、業務自動化(RPA)などの企画は、情シス主導で動くケースが増えています。

たとえば、「紙中心の業務をなくしたい」という経営課題に対し、情シスがGoogle Workspaceや電子契約システムの導入を提案し、全社展開の設計から社内教育まで主導するといった具合です。

IT戦略の立案や実行を成功させるためには、経営層や現場との信頼関係や密接なコミュニケーションが欠かせません。

ヘルプデスク業務

ヘルプデスク業務は、社内のITに関する問い合わせに対して、迅速かつ的確にサポートする情シスの重要な役割です。

よくある問い合わせ例
  • パソコンの電源が入らない・起動しない
  • Wi-Fiに接続できない
  • パスワード忘れた
  • スキャンできない

パソコンやプリンターのトラブル、アカウントのロック、ネットワークの不具合など、社員が業務を進める上で避けられないトラブルを解決します。

関連記事:ヘルプデスクとは?仕事内容や求められるスキル、社内SEとの違いまで徹底解説

情シスの形態は企業規模や業種で異なる

情シスの形態

情シスには企業規模や業種によってさまざまな形態があります。主な情シスの形態は、以下のとおりです。

それぞれ詳しく解説します。

ひとり情シス

ひとり情シスとは、企業内でIT業務をすべて一人で担当する体制のことを指します。

中小企業やベンチャー企業に多く見られ、パソコンの初期設定からシステムトラブル対応、サーバー管理、セキュリティ対策、ベンダーとのやりとりまで、あらゆる業務を一人でこなさなければなりません。

ひとり情シスは裁量権がある一方で、業務の属人化や激務になりやすいなどのリスクがあります。

また、技術的な相談相手が社内にいないため、業務上の孤独感や精神的負担が大きくなりやすいのも課題です。

関連記事:ひとり情シスの退職が招くリスクとは?原因と対処法・離職防止策を徹底解説

兼任情シス

兼任情シスとは、本来は総務や経理、営業など他の業務を担当している社員が、IT関連業務を兼務する形態を指します。

社員数が少ない企業では専任の情シスを置く余裕がなく、やむを得ず兼任体制となっているケースが多く見られます。

ITは本業ではないため、専門性や最新知識に乏しく、セキュリティや運用面でのリスクが顕在化しやすいのが課題です。

また、本来の業務と情シス業務が両立しづらく、作業が後回しになったり、突発対応に追われたりすることも多くなります。

複数人情シス

複数人情シスとは、情報システム部門が複数名で構成され、それぞれの担当者が役割分担をしながら業務を遂行する体制です。

大企業や比較的規模の大きい企業で採用されており、専門性の高い人材が集まりやすい傾向にあります。

情シスが複数いる状態では、インフラ、システム開発、セキュリティ、ヘルプデスクなどを担当ごとに分担できるため、各領域の深堀りや効率的な対応が可能です。

また、ナレッジ共有や相互フォローが行いやすく、属人化や業務停滞のリスクも比較的低く抑えられます。

情シスと社内SEの違い

情シスと社内SEはいずれも社内ITを支える重要な存在ですが、務範囲や専門性、立ち位置には違いがあります。

情シスは、社内のITインフラやシステム運用全体をマネジメントし、業務効率化や情報セキュリティ強化など、IT全体を俯瞰して支える存在です。

一方、社内SEはシステム開発やプログラミング、要件定義、テストなどに特化し、技術面での課題解決に深く関与する技術職です。

項目情シス社内SE
主な役割ITインフラの運用管理、IT戦略の立案システム開発、プログラム設計・実装
業務範囲社内全体のIT環境特定システムやプロジェクト単位
関与領域ネットワーク、セキュリティ、ヘルプデスク要件定義、設計、開発、テスト
スキル特性広範なIT知識、コミュニケーション能力専門的な開発スキル、論理的思考力
組織内の立ち位置管理部門寄り、全体最適を重視開発部門寄り、技術的解決を重視

情シスは社内の幅広いIT業務をおこなう職種であり、社内SEは社内のシステム開発など専門性の高い業務を担当する職種といえるでしょう。

関連記事:社内SEとは?仕事内容や年収・将来性まで経験者が解説!

情シスに求められるスキル

情シスに求められるスキル

情シスには、以下のようなスキルが求められます。

関連記事:情シスに必要なスキル11選!効率よく知識・スキルを身につけるコツを解説

ITに関する幅広い知識・スキル

情シスはIT全般に関する知識・スキルが求められます。業務では、ネットワーク、サーバー、クラウド、アプリケーション、セキュリティ、端末管理など、あらゆるIT領域に関わる必要があります。

情シスに必要なIT知識・スキル例
  • OS(Windows/macOS)や端末管理ツールの操作
  • ネットワーク(ルーター/スイッチ/VPN)の構成理解
  • クラウドサービス(Microsoft 365、Google Workspaceなど)の管理
  • ファイアウォールやEDRなどのセキュリティ製品の運用
  • SaaS・オンプレミスシステムのアカウント管理
  • バックアップ、障害対応の基本知識

特定の分野に特化した技術者とは異なり、情シスは全体最適を意識しながら「つなぎ役」として社内のIT環境を構築・運用しなければなりません。

コミュニケーションスキル

情シスは、技術だけではなく現場や経営層など人とのコミュニケーションが多い仕事です。そのため、コミュニケーションスキルはすべての業務を円滑に進めるうえで欠かせません

たとえば、パソコン操作に不慣れな社員に対しても、専門用語を使わず、わかりやすく丁寧に伝える工夫が必要です。

また、ベンダーとの折衝や導入プロジェクトにおける社内調整など、対外的・対内的な交渉力も求められます。

社員一人ひとりのスキルや理解度はバラバラなので、状況に応じた言い換えや伝え方の工夫が必要です。

問題解決能力

情シスの業務は、突発的なトラブル対応の連続です。そのため、どのような状況でも冷静に対応し、原因を特定し、最適な解決策を導き出す問題解決能力が求められます。

パソコンが起動しない、ネットワークが不安定、メールが送れないといったトラブルでも、原因は機器の故障・設定ミス・ネットワーク障害・外部要因など、さまざまな可能性があります。

現場の人からの情報など限られた情報をもとに、迅速かつ的確に原因を切り分け、最短で業務復旧につなげる判断力と実行力が必要です。

プロジェクトマネジメントスキル

情シスは、日常の運用保守だけでなく、ITシステムの導入やクラウド移行といったプロジェクト型業務に関与するケースも多いです。

そのため、スケジュール管理、リスク評価、ベンダー調整、社内調整などを円滑に進める「プロジェクトマネジメントスキル」が必須です。

たとえば、勤怠管理システムの入れ替えを行う場合、以下のような工程を統括する必要があります。

情シスが対応する工程の例
  • 現場の要件ヒアリング
  • ベンダー選定・見積取得
  • 導入スケジュールの策定
  • テスト環境での動作検証
  • 社員への周知・トレーニング
  • 本番移行・サポート体制の構築

プロジェクトを円滑に進めるためには、コスト管理やスケジュール管理スキルに加え、WBSやガントチャートといったツールもうまく活用する必要があります。

現代の情シスが抱える課題とは

現代の情シスが抱える課題

現代の情シスは、以下のような課題を抱えています。

情シスと他部署のコミュニケーション不足

多くの企業で情シスが抱える悩みの一つが、他部署とのコミュニケーション不足です。

ITリテラシーの差、業務理解の不足、専門用語の多用などが原因で、意図が伝わらなかったり、誤解が生じたりすることが少なくありません。

たとえば、新しいセキュリティ対策を導入しようとしても、「面倒だからやりたくない」「なぜ必要なのか分からない」といった声が現場から上がることもあります。

情シスとしては企業のリスクを未然に防ごうとしているにもかかわらず、協力が得られない状況にストレスを感じることも少なくありません。

他部署とのコミュニケーション問題を解決するためには、単に技術を導入するだけでなく、なぜその施策が必要なのかを噛み砕いて説明するスキルが求められます。

情シス人材・スキル不足

経済産業省の「IT人材育成の状況等について」によると、2030年には最大約79万人のIT人材が不足すると報告されています。

ひとり情シス協会の調査

また、ひとり情シス協会の調査によると7割の企業が情シスの採用が困難となっています。

ITの専門性が高まり続ける一方で、情シス業務は何でも屋的な側面が強く、外部から人材を採用するのが難しい課題があります。

また、既存の情シス担当者も、クラウド、セキュリティ、RPA、DXなど、次々に登場する技術トレンドへの対応を求められ、スキルのアップデートが追いつかないケースも問題のひとつです。

情シスのスキルアップには「情シスカレッジ」がおすすめ

情シスカレッジの画像
情シスカレッジの特徴
  • 情シスの幅広い業務をカバーした専門カリキュラム
  • 短時間でスキマ時間に学習できる
  • 最新トレンドの研修が次々に更新される

自社の情シスをスキルアップしたい企業や、情シスを育成したいと考えている企業は、情シスカレッジの利用がおすすめです。

情シスカレッジは、ネットワーク・サーバーやIT資産管理、ヘルプデスクなど情シスに求められる知識・スキルを動画で学習できるサービスです。

ひとつの動画は1〜10分程度の短時間で公開されており、普段忙しい人でもスキマ時間に学習できます。

また、AIやクラウド、最新のクラウドサービスといった研修も次々と追加されていくので、長く利用を続けるほどお得です。

自社に情シスがいない企業で情シスを育成したい場合や、情シス自身スキルアップしたいと考えている場合は、ぜひ情シスカレッジを利用してみてください。

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情シスに関するよくある質問

情シスのキャリアパスとは?

情シスのキャリアパスは、以下のとおりです。

情シスのキャリアパス
  • 別会社の情シス
  • ヘルプデスク
  • ITコンサルタント
  • プロジェクトマネージャー
  • システムエンジニア
  • インフラエンジニア
  • CTO/CIO

具体的な内容については下記の記事にまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:情シスのキャリアパス完全ガイド|将来性・必要スキル・キャリアアップの道筋を解説

情シスが取得した方がよい資格はありますか?

情シスがスキルアップを目指すうえで取得しておいた方が良い資格は、以下のとおりです。

情シスが取得した方がよい資格
  • ITパスポート
  • 基本・応用情報技術者試験
  • 情報セキュリティマネジメント試験
  • ITILファンデーション
  • ネットワークスペシャリスト試験
  • Microsoft認定資格プログラム
  • プロジェクトマネージャー試験
  • クラウドに関する資格

ITパスポートや基本情報技術者試験といった資格は、ITの幅広い知識・スキルを効率よく取得するためにおすすめです。

関連記事:情シスが今すぐ取るべきおすすめ資格8選|転職・スキルアップに直結!

情シスの平均年収は?

求人ボックスの調査

求人ボックスの調査によると、社内SEの平均年収は約520万円と報告されています。

国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、令和5年における日本全国の平均年収は460万円です。

情シスの平均年収は日本全国のなかでも、比較的高水準であることがわかるでしょう。

まとめ | 情シスは企業のIT運用に欠かせない存在

情シスは、企業のIT基盤を支える重要な存在ですが、現代では経営に直結するほどです。

社内システムの安定稼働、セキュリティ対策、インフラ整備、DX推進まで、企業の安定したIT運用を実現するためには情シスが欠かせません。

一方で、その業務は見えにくく、属人化や人材不足、他部署との理解ギャップといった課題も抱えがちです。

情シス自身が自分たちの価値を正しく理解し、継続的なスキルアップや経営層・現場とのコミュニケーションを取り、企業の安定したIT運用を実現していきましょう。

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