【2025年 総務省調査】クラウドERPの導入実態|会計・人事のクラウド化は56.3%、販売・購買・生産は16%台

「クラウドERPを検討したい」と社内で言われて、まず何から調べればよいか迷っていませんか。実際に調べ始めると、次のあたりで手が止まりやすいはずです。
- 「クラウドERP」と言われても、いま使っている会計システムと何が違うのか整理できない
- 他社がどこまで基幹業務をクラウドに移しているのか分からない
- 検索で出てくる「導入率◯%」が、どこの数字なのか確かめられない
先に結論をお伝えします。公的統計で見ると、基幹業務のクラウド化は領域によって進み方がまったく違います。2025年調査時点で、クラウドサービスを利用している企業のうち会計・人事に使っている割合は56.3%まで来た一方、受注販売は16.8%にとどまっています。
この記事では、総務省「通信利用動向調査」とIPA「DX動向2026」の数値を使います。クラウドERPの定義から導入実態、オンプレミスとの違い、進め方までを整理します。数字はすべて調査年と出典つきで示すので、社内説明の材料にもそのまま使えます。
この記事のポイント
- 2025年調査時点で、クラウドサービスを利用する企業の56.3%が給与・財務会計・人事にクラウドを使っています(出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙2)
- 一方で受注販売16.8%、購買16.7%、生産管理16.4%と、バックオフィスの外側は16%台にとどまります(同)
- 公的統計に「ERP導入率」という指標は存在しないため、本記事はこの4系列を代理指標として扱います
クラウドERPは基幹業務システムをインターネット経由で利用する形態

クラウドERPとは、会計や人事といった基幹業務システムを、ベンダーが用意したクラウド上で利用する形態を指します。ERPはEnterprise Resource Planning(企業資源計画)の略で、日本語では統合基幹業務システムと訳されます。ヒト・モノ・カネの情報を1つのデータベースで扱う仕組みです。
ただし、この定義そのものは公的統計に基づくものではなく、一般に使われている説明です。 総務省の調査には「ERP」という区分が存在しないためです。IPAの資料でもERPは経営管理システムの用語として挙げられているにとどまり、導入率を測る統計上の区分としては使われていません(IPA「情報処理技術者試験における知識の細目」)。
そこで本記事では、総務省「通信利用動向調査」にある4つの選択肢を代理指標として扱います。設問は「利用しているクラウドサービスの内容」です。2025年調査時点の割合は、給与・財務会計・人事が56.3%、受注販売が16.8%、購買が16.7%、生産管理・物流管理・店舗管理が16.4%でした。
なお調査対象企業(常用雇用者100人以上)全体のクラウドサービス利用率は、2025年調査時点で83.5%です。数値の土台を確認しながら順に見ていきましょう。
ERPが担う業務は給与・財務会計・人事、受注販売、購買、生産管理に分かれる
ERPが統合の対象とする業務は、大きく4つの領域に分けて考えると整理しやすくなります。総務省の調査も、クラウドの利用内容をこの4区分で把握しています。本記事に出てくる数値は、すべてこの4区分に紐づいています。
2025年調査時点の割合は次のとおりです。母数はクラウドサービスを利用している企業で、複数回答です。
| ERPが担う業務領域 | 主な業務の例 | クラウド利用割合(2025年調査) |
|---|---|---|
| 給与・財務会計・人事 | 給与計算、勤怠、会計帳簿、人事情報 | 56.3% |
| 受注販売 | 受注、出荷、請求、売上管理 | 16.8% |
| 購買 | 発注、仕入、支払管理 | 16.7% |
| 生産管理・物流管理・店舗管理 | 生産計画、在庫、倉庫、店舗運営 | 16.4% |
出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙2をもとに作成
製品の分類としては、全機能をまとめて導入する統合型と、領域ごとに選ぶコンポーネント型という分け方もあります。ただし、この分類ごとの公的データは存在しないため、本記事では数値を伴う解説はしません。
公的統計に「ERP導入率」という指標は存在しない
「クラウドERPの導入率は◯%」という数字を、本記事は一度も書きません。理由は単純で、その数字を計算できる公的統計が見当たらないためです。
総務省の調査は、ERPが担う領域を給与・財務会計・人事、受注販売、購買、生産管理・物流管理・店舗管理という4つの独立した選択肢に分解して尋ねています。統合基幹業務システムとして一体で導入しているかを問う設問はありません。しかも複数回答のため、4系列を足し合わせても重複を除けません。
一方で、クラウド利用率のほうには資本金規模別の内訳があります。2025年調査では資本金1,000万円未満が75.4%、50億円以上が99.8%といった具合です(いずれも無回答を除く集計)。同じ調査でも、指標によって切り出せる粒度が違うわけですね。
注意
正確には「公的統計に存在しない」ではなく、本プロジェクトで到達できた範囲の公的統計には見当たらないという表現になります。経済産業省の資料など、確認できていない一次情報が残っているためです。
クラウドサービスを利用する企業は2025年調査時点で83.5%
クラウドERPを検討する前提として、クラウドそのものはすでに大半の企業に入っています。総務省の調査では、常用雇用者100人以上の企業のうちクラウドサービスを利用している企業は、2025年調査時点で83.5%です。
過去5回の調査の推移は次のとおりです。
| 調査年 | クラウドサービスを利用している企業の割合 |
|---|---|
| 2021年 | 70.4% |
| 2022年 | 72.2% |
| 2023年 | 77.7% |
| 2024年 | 80.4% |
| 2025年 | 83.5% |
出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙1/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「通信利用動向調査(令和5年)」/総務省「通信利用動向調査(令和4年)」/総務省「通信利用動向調査(令和3年)」をもとに作成
この表の2024年だけは報告書の値(無回答を含む集計)で、ほかの年は各年の調査結果資料の値(無回答を除く集計)です。同じ2024年でも無回答を除く集計では80.6%となり、集計基準の違いについては最後の章であらためて扱います。
クラウドサービスを使うかどうかという段階は、この調査の対象である常用雇用者100人以上の企業では大勢が決まっています。 ただし同じ2025年調査でも資本金1,000万円未満は75.4%で、より小さい企業まで含めれば数字は変わり得ます。論点は「どの業務まで載せるか」に移っていて、そこで差がついているのが基幹業務です。次章から、その中身を見ていきます。
出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙2/総務省「通信利用動向調査」別紙1/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「通信利用動向調査(令和5年)」/総務省「通信利用動向調査(令和4年)」/総務省「通信利用動向調査(令和3年)」/総務省「情報通信白書 令和7年版」
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ERPが担う4領域のクラウド化は2024年調査を境にそろって上昇に転じた

基幹業務のクラウド化は、少しずつ増えているというより、直近2回の調査で足並みがそろって伸びています。4つの領域が同じ向きに動いているのが特徴です。
給与・財務会計・人事は2022年調査の46.5%から2025年調査の56.3%へ、受注販売は13.4%から16.8%へ上がりました。生産管理・物流管理・店舗管理は2024年調査の12.9%から16.4%へ、購買は13.5%から16.7%へ動いています。
総務省の令和6年報告書でも、2024年調査で受注販売と給与・財務会計・人事がそろって前年から上昇したことが本文に記されています。数値は受注販売が15.7%、給与・財務会計・人事が52.0%です。4領域が同時に上向いた点が、この期間の特徴です。

出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「通信利用動向調査」別紙2をもとに作成
ポイント
- 基幹業務のクラウド化は、2024年調査と2025年調査で4領域そろって上昇しています
- 給与・財務会計・人事は上げ幅そのものが年々大きくなっています
- 4系列の母数は「クラウドサービスを利用している企業」で、企業全体ではありません
給与・財務会計・人事は2022年46.5%から2025年56.3%へ上がった
4領域のうち最も動いているのが、給与・財務会計・人事です。母数はクラウドサービスを利用している企業になります。
推移は2022年調査で46.5%、2023年調査で48.3%、2024年調査で52.0%、2025年調査で56.3%でした。3年間で9.8ポイント上がった計算です。
この数値から読み取れるのは、上げ幅そのものが年々大きくなっている点です。前年差は+1.8ポイント、+3.7ポイント、+4.3ポイントと段階的に広がっています。制度改正への対応が続く領域だけに、自社で改修を抱え続ける負担が重くなっている可能性があります。
ただし2024年の値は資料によって52.0%と52.1%の2通りがあり、後者で計算すると直近の前年差は+4.2ポイントになります。上げ幅が広がっている向き自体は、どちらで計算しても変わりません。
伸びが鈍る局面が来ていないため、次回調査でも上昇が続くかどうかが見どころです。少なくとも直近3年は、加速の方向で一貫しています。
受注販売は2023年に11.7%まで下がった後、2025年は16.8%へ戻した
受注販売は、まっすぐ増え続けてきたわけではありません。いったん下がってから折り返した形です。
2022年調査は13.4%、2023年調査は11.7%と1.7ポイント低下しました。その後、2024年調査で15.7%、2025年調査で16.8%へと回復しています。
ここは慎重に読む必要があります。2022年から2023年にかけての低下は、普及の停滞ではなく、回答企業の入れ替わりや選択肢の解釈のゆれで説明できる可能性があるためです。
それでも2024年以降の水準が2022年を上回っている点は事実です。受注販売のクラウド化は、2024年調査を境に一段上がったと見てよいでしょう。
生産管理と購買は2024年から2025年で3ポイント台の上昇
生産管理と購買も、直近1年で同じくらいの幅で伸びています。動きの形は受注販売とよく似ています。
生産管理・物流管理・店舗管理は2024年調査の12.9%から2025年調査の16.4%へ3.5ポイント上昇しました。購買は2024年調査の13.5%から2025年調査の16.7%へ3.2ポイント上昇しています。
それ以前を見ると、生産管理・物流管理・店舗管理は2022年調査12.7%から2023年調査11.6%へいったん下がり、購買も2022年調査11.5%、2023年調査11.6%とほぼ動いていませんでした。つまりこの2領域も、受注販売と同じく2024年調査を境に上向いた形です。
ただし1年ごとの振れ幅は1〜3ポイント程度で、上向きが続くかどうかは次回調査を待つ必要があります。2025年調査の値は別の資料(別紙2)から取っており、2022〜2024年の値とは集計基準がわずかに異なる点も、あわせて覚えておいてください。
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「通信利用動向調査」別紙2
クラウド化が進んでいるのは会計・人事に偏り、販売・購買・生産は16%台にとどまる

クラウドERPの記事では「全社のデータを一元管理できる」という説明をよく見かけます。ただ、統計上の到達点はそこまで進んでいません。
2025年調査時点で、給与・財務会計・人事にクラウドを使う企業はクラウド利用企業の56.3%です。これに対して受注販売は16.8%、購買は16.7%、生産管理・物流管理・店舗管理は16.4%にとどまります。
バックオフィスの外側にある3領域は、いずれも16%台で横並びです。 会計・人事だけが先に進み、モノと商流を扱う領域はその手前で止まっている状態と言えます。
自社が遅れているのではと感じている方も多いはずです。ただ統計を見るかぎり、基幹業務を丸ごとクラウドに載せた企業のほうがまだ少数です。まずは現在地を正しく把握するところから始めましょう。
給与・財務会計・人事と受注販売の差は39.5ポイントある(2025年調査)
同じERPの守備範囲でも、領域による差は極端です。2025年調査時点で給与・財務会計・人事は56.3%、受注販売は16.8%で、その差は39.5ポイントあります。倍率にすると3.4倍です。
しかも受注販売16.8%、購買16.7%、生産管理・物流管理・店舗管理16.4%の3領域は、0.4ポイント以内に固まっています。さらに、会計・人事の56.3%はデータバックアップの46.4%よりも高い水準です。
この並びから読み取れるのは、領域ごとの個別事情ではなく「バックオフィスの外側」という共通の線が引かれているように見える点です。会計・人事はすでに主要用途のひとつになった一方、部門をまたぐ業務はまだ手前で止まっています。
ただし反証もあります。会計・人事が高いのは、ERPパッケージではなく給与計算や勤怠管理といった単機能のSaaSを選んだ企業が多く含まれるためかもしれません。業種別のクロス集計が公表されていないため、この可能性は本データでは切り分けられません。

出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙2をもとに作成
全社的にクラウドを利用する企業は60.0%だが、基幹業務の統合とは別物
「うちは全社でクラウドを使っている」という状態と、「基幹業務が統合されている」という状態は別物です。ここを混同すると、現状認識を誤ります。
クラウドを全社的に利用する企業は、2024年調査の53.1%から2025年調査では60.0%へ6.9ポイント伸びました。一部の事業所・部門での利用は23.5%ですから、全社利用が大きく上回っています。
一方、その中身を用途別に見ると景色が変わります。ファイルサーバーのクラウド化にあたるファイル保管・データ共有は73.3%に達しています。しかし部門をまたぐ受注販売16.8%、購買16.7%、生産管理16.4%は16%台のままです。
ここから読み取れるのは、「全社でクラウドを使っている」は全社共通の情報共有基盤が入ったことを指すにすぎないという点です。基幹業務が統合されたことを意味しません。
なお全社利用率は企業全体を母数とし、用途別の割合はクラウド利用企業を母数としています。同じ土俵の比較ではないため、内訳として読むことはできません。
出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙2
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オンプレミスERPとの違いは、資産と保守体制を自社で持つかどうかに集約される

クラウドERPとオンプレミスERPの違いは、突き詰めるとサーバーという資産と保守体制を自社で持つかどうかです。ここが変わることで、費用のかかり方も導入の進め方も変わります。
一般的な比較軸としては、初期費用、導入期間、カスタマイズの自由度、運用担当者の負荷などが挙げられます。オンプレミスは自由度が高い代わりに調達と保守を自社で抱え、クラウドはその逆になります。オンプレミスとクラウドの違いを押さえておくと、ERPの検討でも判断が早くなります。
ここでは一般論だけでなく、企業が実際に何を理由にクラウドを選んでいるかを統計で確認します。 2025年調査では、安定運用・可用性が45.1%、資産・保守体制を社内に持つ必要がないことが42.8%で上位に並びます。拡張性は28.9%、コストの安さは19.4%でした。
クラウドを選ぶ理由の上位は可用性45.1%と資産・保守体制の不要42.8%
企業がクラウドを選ぶ理由は、コスト削減よりも運用に関わるものが上位に来ます。2025年調査における理由別の割合は次のとおりです。母数はクラウドサービスを利用している企業全体で、ERP用途に限った回答ではありません。
- 安定運用、可用性が高くなるから: 45.1%
- 資産、保守体制を社内に持つ必要がないから: 42.8%
- システムの拡張性が高いから: 28.9%
- 既存システムよりもコストが安いから: 19.4%
上位2項目は、いずれもオンプレミスで自社が負っていた役割そのものです。サーバーの調達、保守要員の確保、停止させないための冗長化といった負担が、そのままクラウドを選ぶ理由になっています。
オンプレミスERPとの違いを社内に説明するなら、費用の話より先にこの2点を置くほうが実態に近いと言えます。 基幹業務ほど、止まらないことと運用体制の負担が判断を左右します。
コストを理由に挙げた企業は19.4%にとどまり、直近1年でほぼ動いていない
クラウドERPの紹介記事では「初期費用が安い」が最初のメリットとして挙がりがちです。ただ、統計はコストを主要因として示していません。
同じ調査表の2年分を比べると、拡張性は2024年調査の22.1%から2025年調査の28.9%へ6.8ポイント上昇しました。安定運用・可用性も40.4%から45.1%へ4.7ポイント上がっています。一方でコストの安さは19.1%から19.4%へ0.3ポイントの動きにとどまりました。
同じ1年間に、生産管理・物流管理・店舗管理は12.9%から16.4%へ、購買は13.5%から16.7%へ伸びています。この2つの動きを重ねると、基幹業務ならではの判断軸が見えてきます。止まると業務が止まる領域では、安く済むことより落ちないことと後から広げられることが重視されやすい、と読めます。
ただしこれは同時期の2つの変化を並べたものであり、因果関係を示すものではありません。拡張性の伸びは、生成AI向けの基盤利用など基幹業務とは別の要因で説明できる可能性も残ります。

出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙2をもとに作成
クラウドの利用効果を認める企業は89.4%で、5年間ほぼ横ばい
「いまから移行しても遅いのでは」と考える必要はありません。効果を認める企業の割合は、長期間ほとんど変わっていないためです。
2025年調査では、クラウドサービスの利用効果について「非常に効果があった」「ある程度効果があった」と答えた企業の合計が89.4%でした。これは無回答を除く集計です。2022年調査でも89.0%と、ほぼ同じ水準にあります。
2021年調査は88.2%、2023年調査は88.4%で、いずれも同じく無回答を除く集計です。2024年調査は報告書の値で87.3%(無回答を含む集計)でした。
遅れて着手した企業でも、得られる手応えは変わっていないと読めます。 早く始めた企業だけが効果を得ているという構図にはなっていません。
なお、この設問に答えているのはクラウドの利用を決めた企業です。導入を選んだ側の評価であるという偏りは残ります。またERP用途に限定した効果ではなく、クラウド全般に対する評価である点にも注意してください。
出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙2/総務省「通信利用動向調査」別紙1/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「通信利用動向調査(令和5年)」/総務省「通信利用動向調査(令和4年)」/総務省「通信利用動向調査(令和3年)」
導入を見送る理由の最多は「必要がない」の46.0%で、改修コストが29.6%で続く

社内で反対意見が出たとき、何が争点になるのかを先に知っておくと準備がしやすくなります。ここではベンダー側が挙げる一般的なデメリットではなく、クラウドを利用していない企業自身の回答を見ます。
2024年調査で、クラウドサービスを利用しない理由の上位3項目は次のとおりです。母数はクラウドサービスを利用していない企業で、複数回答です。
| クラウドサービスを利用しない理由 | 回答した企業の割合(2024年調査) |
|---|---|
| 必要がない | 46.0% |
| クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい | 29.6% |
| 情報漏えいなどセキュリティに不安がある | 24.9% |
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」をもとに作成
最多は「必要がない」の46.0%で、費用や不安よりも必要性の説明が先に問われる構図です。 クラウドERPの提案でも、まず何が困っているのかを示すところから始めると通りやすくなります。
既存システムの改修コストを障壁に挙げた企業が29.6%(2024年調査)
クラウドERPで最大の壁になりやすいのは、月額の利用料ではなく移行にかかる費用です。2024年調査では、クラウドを利用しない理由として既存システムの改修コストが大きいことを挙げた企業が29.6%ありました。
これは「必要がない」の46.0%に次ぐ2番目の理由です。実務の感覚とも合うのではないでしょうか。
オンプレミスのERPを長く使うほど、個別の改修や周辺システムとの連携が積み上がります。移行時にはその積み上がりを整理し直す必要があり、そこに費用と時間がかかります。
クラウドERPの見積もりでは、月額費用と並べて移行費用を最初に置いてください。 利用料の比較だけで判断すると、後から想定外の費目が出てきます。
セキュリティへの不安を挙げた企業は24.9%で、改修コストより低い
セキュリティは社内で必ず論点になりますが、統計上の順位は最上位ではありません。2024年調査でセキュリティへの不安を挙げた企業は24.9%で、既存システムの改修コストの29.6%より4.7ポイント低い結果でした。
心理的な障壁として語られやすいセキュリティより、実務ではコストのほうが上位に来ています。 反対意見への備えを用意するなら、費用の説明を厚くしておくほうが実態に合います。
もっとも、この数値からクラウドが安全とも危険とも言えません。あくまで導入を見送った企業が何を理由に挙げたかを示すデータです。
注意
この3項目の母数はクラウドサービスを利用していない企業です。クラウドを利用する企業が大半を占めるため、回答企業数は他の設問より大幅に少なくなります。順位の傾向として読み、割合そのものを他の指標と直接比べないでください。
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企業規模と業種によって、クラウド利用の状況にはまだ差が残っている

自社の立ち位置を測るときは、規模と業種の違いを踏まえたほうが正確です。ただし、ここでひとつ断りを入れておきます。
ERPが担う4領域には、規模別・業種別の内訳が公表されていません。そのため本章では、クラウド利用率全体の内訳で代替します。「製造業のクラウドERP導入率」といった数字は、公的データからは作れません。
そのうえで見ると、2025年調査では資本金1,000万円未満が75.4%、50億円以上が99.8%と規模による差が残っています。業種別でも金融・保険業96.2%と運輸業・郵便業78.3%で開きがあります。
加えてIPAの調査では、DXに取組む企業の割合が全体で75.7%でした。順に確認していきましょう。
資本金1,000万円未満は75.4%、50億円以上は99.8%で24.4ポイントの差
企業規模による差は、この1年で縮んでいます。総務省の同一表・同一集計基準(無回答を除く)で比べた結果です。
2024年調査では資本金1,000万円未満が61.5%、50億円以上が99.8%で、差は38.3ポイントありました。2025年調査では1,000万円未満が75.4%、50億円以上が99.8%となり、差は24.4ポイントに縮まっています。
この動きから読み取れるのは、大企業側が99.8%で頭打ちのため、差の縮小はもっぱら小規模側の上昇によるものだという点です。1年で13.9ポイントの上昇は大きな変化です。
ただし反証もあります。資本金1,000万円未満は回答企業数が少ない区分で、この上昇は回答企業の入れ替わりによるぶれの範囲に収まる可能性があります。
実際、2025年調査の1,000万〜3,000万円未満は74.8%で、1,000万円未満の75.4%とほぼ同じ水準です。小規模層全体が同じ幅で動いたとは言い切れません。

出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙2をもとに作成
業種別では金融・保険業96.2%と運輸業・郵便業78.3%で約18ポイントの差
業種による差も残っています。2025年調査(無回答を除く集計)の業種別クラウド利用率は次のとおりです。
| 業種 | クラウドサービスを利用している企業の割合(2025年調査) |
|---|---|
| 金融・保険業 | 96.2% |
| 情報通信業 | 94.8% |
| 不動産業 | 90.9% |
| 建設業 | 89.2% |
| 製造業 | 85.6% |
| 卸売・小売業 | 83.6% |
| サービス業、その他 | 79.3% |
| 運輸業・郵便業 | 78.3% |
出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙2をもとに作成
最上位の金融・保険業96.2%と最下位の運輸業・郵便業78.3%の差は17.9ポイントです。ERPと関わりの深い製造業85.6%と卸売・小売業83.6%は、いずれも全体の83.5%と同水準か、やや上に位置しています。
ここから「製造業のクラウドERP導入率」を推し量ることはできません。あくまでクラウド全体の利用率であり、基幹業務に限った数値ではないためです。

出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙2をもとに作成
DXに取組む企業は従業員1,001人以上98.7%、100人以下41.6%
投資判断と体制を伴う段階になると、規模の差は大きく開きます。IPA「DX動向2026」(2025年度調査、有効回答1,799社)の結果を見てみましょう。
何らかの形でDXに取組んでいる企業は全体で75.7%でした。従業員規模別では1,001人以上が98.7%、100人以下が41.6%で、その差は57.1ポイントに達します。
この2つの調査を並べて読み取れるのは、段階による差の出方です。クラウドを使い始めること自体は規模を問わず広がった一方、基幹システムの刷新のように投資判断と体制を伴う段階では規模差が大きく残っています。
小規模な体制でERPの刷新まで踏み込みにくいという実感は、この統計の姿とも矛盾しません。ただしIPAの調査はDX全般を尋ねたものであり、情報システム部門の人数を調べたものではありません。
注意
総務省(常用雇用者100人以上・資本金別)とIPA(有効回答1,799社・従業員数別)は、調査主体も母集団も分類軸も異なります。前の見出しの24.4ポイントと、ここでの57.1ポイントを同じ格差指標として引き算することはできません。それぞれ別の調査の中での差として読んでください。
出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙2/IPA「DX動向2026」
統計上は会計・人事から着手する企業が多く、段階導入が現実的な選択肢になる

製品の比較表を作れる公的データはありません。そのかわり、統計は「どこから手を付けている企業が多いか」と「何を重視して選んでいるか」を教えてくれます。
2025年調査時点で、給与・財務会計・人事は56.3%に達している一方、受注販売は16.8%、購買は16.7%、生産管理・物流管理・店舗管理は16.4%です。この差は、全機能を一度に載せ替える進め方が多数派ではないことを示しています。
選定時の観点も変わってきています。拡張性を理由に挙げた企業は2025年調査で28.9%でした。
加えて、移行の障壁として既存システムの改修コストを挙げた企業が2024年調査で29.6%あります。この3点を踏まえて、検討の進め方を整理しましょう。
4領域のうち先行しているのは会計・人事で、そこから広げる形が多数派
着手の起点になりやすいのは会計・人事です。2025年調査では給与・財務会計・人事が56.3%に対し、受注販売16.8%、購買16.7%、生産管理16.4%でした。
この差から読み取れるのは、法改正への対応負荷が大きく、業務の型がある程度そろっている領域から入る企業が多いということです。会計・人事は他社と手順が大きく変わらないため、標準機能に合わせやすい領域でもあります。
給与・財務会計・人事は2022年調査の46.5%から3年で56.3%まで来ました。一方で残りの3領域は16%台のままです。「統合型で一気に一元管理」よりも、領域を区切って段階的に広げる進め方のほうが、統計の姿には近いと言えます。
ただし、この統計は着手の順序を直接調べたものではありません。あくまで各年の断面における利用割合です。自社の事情によっては、販売管理から入る判断も当然ありえます。
選定時の重視点は拡張性へ移りつつあり、段階導入と整合する
段階的に広げる進め方は、企業が重視する観点の変化とも合っています。拡張性を理由に挙げた企業は2024年調査の22.1%から2025年調査の28.9%へ6.8ポイント伸びました。
同じ期間に安定運用・可用性は40.4%から45.1%へ上がり、コストの安さは19.4%にとどまっています。後から範囲を広げられるかどうかが、選定の判断軸として重くなっていると読めます。
最初に会計・人事を載せ、その後で販売や購買へ広げる進め方を選ぶなら、拡張のしやすさは外せない条件になります。あわせて、移行時に既存システムの改修コストが障壁になった企業が2024年調査で29.6%いた点も見積もりに反映してください。
ポイント
- どの領域から載せるかを先に決める(統計上は会計・人事が先行)
- 既存システムの改修・データ移行の費用を初期段階で見積もる(2024年調査で29.6%が障壁に挙げています)
- 利用範囲を広げたときの契約形態と費用の伸び方をベンダーに確認する
- 停止したときの業務継続手段を用意する(※これは統計ではなく、実務上の注意点です)
出典: 総務省「通信利用動向調査」別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」
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「クラウドERPの導入率」という数字は、資料と集計基準まで確認してから使う

稟議や社内資料に数字を引用するなら、出所の確認まで済ませておきたいところです。同じ調査でも、資料や集計基準が違えば値が変わるためです。
たとえば2024年調査のクラウド利用率は、報告書では80.4%、情報通信白書では80.6%と記載されています。どちらも総務省の資料ですが、値は一致しません。
本記事では、2025年調査の数値は「通信利用動向調査」の別紙資料、業務領域別の2022〜2024年の推移は「令和6年通信利用動向調査報告書」、クラウド利用率全体の2021〜2023年の推移は各年の調査結果資料を出典としています。 どの資料を使ったかを書き残しておくと、後から検証できます。
同じ2024年調査でもクラウド利用率は80.4%と80.6%の2通りある
値のずれは1つの指標だけの話ではありません。同じ構造のずれが、複数の指標で起きています。
クラウド利用率は報告書が80.4%、情報通信白書が80.6%です。給与・財務会計・人事は確定値が52.0%、無回答を除く再集計値が52.1%でした。ファイル保管・データ共有も70.8%と71.0%の2通りがあります。
ここから読み取れるのは、ずれの原因が数値の誤りではなく、無回答を集計から除くかどうかという定義の違いにあるという点です。差は0.1〜0.2ポイントと小さいものの、同じ構造のずれが複数の指標で確認できます。
もちろん「誤差の範囲で実務上は同じ」という整理も成立します。公表値の丸め処理が影響している可能性もあります。
それでも出所を「総務省調査」としか書かないと、後から数字を追えなくなります。資料名まで残しておいてください。
民間調査の「導入率」「市場規模」は母集団と定義を確認しないと比較できない
検索すると「クラウドERP市場は◯億円」「導入率◯%」といった数字が見つかります。ただし、その多くは民間調査によるもので、母集団や定義が公開されていないことがあります。
すでに述べたとおり、公的統計にはERPという区分がありません。本記事が扱えたのは、給与・財務会計・人事56.3%や受注販売16.8%といった業務領域ごとの割合までです。
規模別の内訳が用意されているのはクラウド利用率のほうで、2025年調査では資本金1,000万円未満75.4%、50億円以上99.8%が公表されています。区分の粒度が違う以上、民間調査の「ERP導入率」と公的統計の数値を並べて比較することはできません。
注意
社内資料に数字を残すときは、資料名・調査年・集計基準・母集団の4点をセットで書いてください。この4点がそろっていない数字は、数か月後に自分で見返したときに根拠として使えなくなります。
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「情報通信白書 令和7年版」/総務省「通信利用動向調査」別紙2
まとめ

クラウドERPの検討で押さえておきたい点を、4つに絞って整理します。
まず、基幹業務のクラウド化は会計・人事から進んでいます。2025年調査時点で給与・財務会計・人事は56.3%に達しました。
次に、受注販売は16.8%で、販売・購買・生産の領域は16%台にとどまります。基幹業務を全社で統合するところまで到達した企業は、統計上まだ多数派ではありません。
3つ目に、移行の障壁は月額費用ではなく既存システムの改修コストです。2024年調査で29.6%の企業が理由に挙げています。見積もりの段階で移行費用を必ず並べてください。
最後に、公的統計に「ERP導入率」という指標は存在しません。規模別の内訳が公表されているのはクラウド利用率のほうで、2025年調査で資本金1,000万円未満75.4%、50億円以上99.8%といった数値が確認できます。目にした数字は、資料名と集計基準まで確認してから使いましょう。
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クラウドERPの検討は、会計・人事・販売・購買と部門をまたぐ調整を伴います。新人やひとり情シスが一人で判断するには重い領域で、前提となる知識の底上げが欠かせません。
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※出典

