【2025年 総務省調査】クラウドのメリットは企業の89.4%が効果を実感|利用理由 主要8項目の順位と5年推移

クラウドのメリットを社内で説明しようとして、手が止まった経験はありませんか。ベンダーのサイトを見ればメリットは並んでいますが、その根拠になる数字はなかなか見つかりません。

  • クラウドのメリットは調べれば出てくるが、どれが本当に効いているのか分からない
  • 「コストが下がります」と説明したいが、根拠になる数字が手元にない
  • 上長に出す資料に、出典のはっきりした数値を1つでも入れたい

結論から言うと、クラウドにメリットがあるかどうかは、公的なデータではすでに決着しています。総務省の通信利用動向調査によると、2025年調査時点でクラウドサービスを利用している企業の89.4%が効果があったと回答しました。出典は総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2です。

この記事では、企業が実際にどのメリットを挙げているのかを、総務省調査の選択率と5年分の推移で整理します。ベンダーが独自に並べた「メリット10選」ではなく、公表されている主要8項目とその順位で確認していきましょう。

なお通信利用動向調査(企業編)の調査対象は、常用雇用者が100人以上の企業です。中小企業を含めた全企業の姿ではない点だけ、先に押さえておいてください。

この記事のポイント


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目次

クラウドを利用する企業の89.4%が効果を実感している(2025年調査)

効果を実感

まず押さえたいのは、クラウドの効果はすでに多くの企業が実感しているという点です。2025年調査では、クラウドサービスを利用している企業の89.4%が「効果があった」と回答しています。

内訳は「非常に効果があった」が36.0%、「ある程度効果があった」が53.5%です。この2つを合計したものが、効果があったと回答した企業の割合になります。なお端数処理の関係で、公表されている2つの値を単純に足した数字とは0.1ポイントずれます。

ただし、この設問に答えているのはクラウドサービスを利用している企業だけです。全企業を分母にした数値ではありません。

メリットの有無を議論する段階は、すでに過ぎています。 これから考えるべきなのは、自社がどのメリットを狙うのかという選択です。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2

効果を実感する企業の割合は5年間87〜89%台で動いていない

効果の実感は、最近になって高まったものではありません。2021年調査から2025年調査まで、5年間ずっと87〜89%台で推移しています。

クラウドを利用する企業の効果実感の推移(2021〜2025年)。2025年は「非常に効果があった」36.0%と「ある程度効果があった」53.5%の内訳を併記

調査年 「非常に」または「ある程度」効果があったと回答した企業の割合
2021年 88.2%
2022年 89.0%
2023年 88.4%
2024年 87.3%
2025年 89.4%

出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」ほか各年調査より作成。2025年の値は令和7年通信利用動向調査の結果 別紙2によります。2021年・2022年・2023年・2025年は無回答を除く集計、2024年のみ無回答を含む集計です。

この表は集計基準が1年だけそろっていません。2021年・2022年・2023年・2025年は無回答を除く基準、2024年の87.3%だけが無回答を含む報告書の基準です。基準をそろえた系列は、このあとの見出しで示します。

いずれの年も、クラウドを使っている企業の9割近くが効果を認めています。「最近のクラウドが良くなった」のではなく、以前から効果を実感する企業が大半だった、と読むのが正確です。

内訳は「非常に効果があった」36.0%、「ある程度効果があった」53.5%

89.4%という数字は、分解して見ると印象が変わります。2025年調査で「非常に効果があった」と答えた企業は36.0%、「ある程度効果があった」は53.5%でした。

2つの選択肢のうち、企業が多く選んだのは「ある程度効果があった」のほうです。

この内訳から読み取れるのは、効果があったと答えた企業の多数派は「ある程度」の側にいて、劇的な成果を得た企業は3割台にとどまるという点です。

ただし「ある程度」を弱い評価と読むのは解釈にすぎません。選択肢の設計上、中間的な回答に集まりやすいだけの可能性も残ります。

集計基準をそろえると、2024年からの上昇は1.5ポイントになる

経年比較では、無回答の扱いで値が変わります。同じ2024年でも、令和6年報告書と令和7年別紙2の再集計とで下1桁が0.1ポイントずれます(例:「場所を選ばない」50.1%と50.2%)。利用理由の4項目はいずれもこの0.1ポイント差にとどまります。

一方、効果の設問では基準差がもっと大きく、2025年の値は無回答を含む基準で88.8%、除く基準で89.4%と0.6ポイント違います。無回答を含む同じ基準でそろえると、効果の推移は次のとおりです。

調査年 非常に効果があった ある程度効果があった 効果があった計
2023年 33.3% 54.6% 87.9%
2024年 33.3% 54.0% 87.3%
2025年 35.7% 53.1% 88.8%

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-5より作成(無回答を含む集計、2023年 n=2,138/2024年 n=1,941/2025年 n=2,136)

2024年から2025年への実際の変化は87.3%から88.8%への1.5ポイント増です。2024年の87.3%と2025年の89.4%を引き算した2.1ポイントには、この基準差が混ざっています。集計基準による差の大きさは設問ごとに違うため、そろえない経年比較は成立しません。

注意

社内資料で経年比較を作るときは、同じ集計基準の系列でそろえてください。ある設問で測った基準差の幅を、別の設問へそのまま当てはめることはできません。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」令和5年令和4年令和3年報告書(企業編)


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企業が挙げるメリットの1位は「場所、機器を選ばずに利用できる」で50.7%(2025年調査)

利用理由 第1位

ベンダーの記事は「クラウドのメリット10選」のように独自の項目を並べますが、順位の根拠までは示されません。総務省の通信利用動向調査には、クラウドを利用する理由を選ぶ設問があります。ここでは公表資料が掲載している主要8項目の選択率で確認します。

2025年調査で最も多く選ばれたのは「場所、機器を選ばずに利用できるから」で50.7%でした。

クラウドを利用する理由 主要8項目の選択率。2025年調査で選択率の高い順に、2024年と2025年を対比(複数回答、分母はクラウド利用企業)

クラウドを利用する理由(2025年調査、公表されている主要8項目) 選択率
場所、機器を選ばずに利用できるから 50.7%
安定運用、可用性が高くなるから 45.1%
資産、保守体制を社内に持つ必要がないから 42.8%
災害時のバックアップとして利用できるから 38.7%
サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策) 35.0%
システムの容量の変更などに迅速に対応できるから 32.6%
システムの拡張性が高いから(スケーラビリティ) 28.9%
既存システムよりもコストが安いから 19.4%

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2より作成(無回答を除く集計、n=2,131)

この設問は複数回答で、分母はクラウドサービスを利用している企業です。上位6項目はいずれも3割を超えており、企業はメリットを1つに絞らず、複数を同時に狙っています。

上位3項目は場所を選ばない・可用性・資産を持たないで、いずれも4割を超える

上位3項目は、情シスの実務の場面にそのまま対応しています。2025年調査で「場所、機器を選ばずに利用できるから」は50.7%、「安定運用、可用性が高くなるから」は45.1%でした。「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」は42.8%です。

1つ目は、社外や自宅からでも同じ環境で仕事ができることを指します。2つ目は、サーバーの障害対応や計画停止を自社で抱え込まなくてよいことです。3つ目は、機器の購入と保守要員の確保が不要になることを意味します。

この3つはいずれも4割を超えており、クラウドを選ぶ理由の中心にあります。 稟議書にメリットを書くなら、まずこの3項目から自社に当てはまるものを選ぶと実態に沿います。

2025年調査では公表されている主要8項目のうち7項目で選択率が上がっている

2024年と2025年を同じ集計基準で並べると、ほとんどの項目で選択率が上がっています。下がったのは「災害時のバックアップとして利用できるから」の1項目だけです。

クラウドを利用する理由(公表されている主要8項目) 2024年 2025年
場所、機器を選ばずに利用できるから 50.2% 50.7%
安定運用、可用性が高くなるから 40.4% 45.1%
資産、保守体制を社内に持つ必要がないから 42.6% 42.8%
災害時のバックアップとして利用できるから 40.2% 38.7%
サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策) 32.3% 35.0%
システムの容量の変更などに迅速に対応できるから 30.9% 32.6%
システムの拡張性が高いから(スケーラビリティ) 22.1% 28.9%
既存システムよりもコストが安いから 19.1% 19.4%

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2より作成。2024年・2025年とも同じ集計基準(無回答を除く)の値です。

この動きから読み取れるのは、特定のメリットが別のメリットに入れ替わったのではなく、1社が挙げる理由そのものが増えたという点です。導入時に想定するメリットが、単発から複合へ広がっていると考えられます。

ただし2024年と2025年では回答した企業の数が違います。新しく回答した企業の性質が違えば、選択率は全体として動きます。

また、この設問の選択肢は8つではありません。このほかに「その他」という選択肢があり、2025年調査では10.7%が選んでいます(令和7年通信利用動向調査報告書 図表3-4、無回答を含む集計)。本記事で扱うのは、公表資料が順位付きで掲載している主要8項目です。

伸びが大きいのは拡張性・可用性・信頼性の3項目

選択率が全体的に上がった中でも、伸び方には差があります。「システムの拡張性が高いから(スケーラビリティ)」は2024年の22.1%から2025年の28.9%へ上がり、6.8ポイントの増加で最も大きく伸びました。

続いて「安定運用、可用性が高くなるから」が40.4%から45.1%へ4.7ポイント上がりました。「サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策)」も32.3%から35.0%へ2.7ポイント上がっています。

一方で1位の「場所、機器を選ばずに利用できるから」は50.2%から50.7%とほぼ横ばいでした。「災害時のバックアップとして利用できるから」は40.2%から38.7%へ下がっています。

この数値から読み取れるのは、増えた分の中身が「システムが要求の変化に追随できること」に寄っているという点です。ただし2時点の比較にとどまるため、傾向として確立したとまでは言えません。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」


「場所や機器を選ばない」は5年間50%前後で動かない基礎的なメリット

場所を選ばない

1位のメリットは、一時的な流行ではありません。「場所、機器を選ばずに利用できるから」を理由に挙げる企業は、2021年調査から2025年調査まで50%前後で推移しています。

テレワークが急拡大した2021年から2022年にかけても、その後の出社回帰が語られた時期にも、この数値はほとんど動いていません。

およそ半数の企業が挙げ続ける、基礎的なメリットだと言えます。 リモートワーク対応という文脈だけで語ると、このメリットの位置づけを見誤ります。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」

2021年から2025年まで49.5〜51.1%の幅に収まっている

5年分を並べると、動きの小ささがよく分かります。

「場所、機器を選ばずに利用できるから」の選択率(50%前後で横ばい)とクラウドサービスの利用率(70.4%→83.5%)の推移。両者は分母が異なる

調査年 「場所、機器を選ばずに利用できるから」を挙げた企業の割合
2021年 50.2%
2022年 51.1%
2023年 49.5%
2024年 50.2%
2025年 50.7%

出典: 総務省「令和3年」「令和4年」「令和5年通信利用動向調査報告書(企業編)」「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2より作成(5年とも無回答を除く集計、2024年は別紙2の再集計値)

最も高い2022年の51.1%と、最も低い2023年の49.5%の差は1.6ポイントです。2021年と2025年はいずれも無回答を除く基準で、比較できます。ただし0.5ポイントという差は誤差の範囲で、増えたとは書けません。

この推移から読み取れるのは、およそ半数が挙げ続ける一方で、残りの半数は別の理由でクラウドを使っているという点です。「場所を選ばない」だけを訴求しても、社内の半分には響かない可能性があります。

クラウド利用企業が70.4%から83.5%へ増えた分だけ恩恵の裾野は広がっている

選択率が横ばいでも、恩恵を受けている企業の数は増えています。理由は、この設問の分母がクラウドサービスを利用している企業に限られるからです。

クラウドサービスを利用している企業の割合は、2021年調査の70.4%から2025年調査の83.5%へ上がりました。いずれも常用雇用者100人以上の企業を対象にした値です。選択率が変わらなくても、分母そのものが広がっています。

「場所、機器を選ばずに利用できるから」の選択率は、2021年の50.2%から2025年の50.7%までほぼ横ばいです。それでも分母が広がった分、実際にこのメリットを得ている企業は増えている計算になります。

この構造から読み取れるのは、テレワーク需要が落ち着いた後もこのメリットの重要性は下がっていないという点です。社内で説明するときは、選択率だけでなく分母の広がりも併せて示すと実態が伝わります。

なお全企業に対する広がりは「利用率×選択率」で概算できますが、2つの設問の分母が完全に一致する保証はありません。本記事では概算値を使わず、公表されている実数だけで説明しています。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1同 別紙2総務省「令和3年通信利用動向調査報告書(企業編)」


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拡張性をメリットに挙げる企業は22.1%から28.9%へ増え、前年からの増加が最も大きい

拡張性への期待

直近1年で最も動いたメリットは拡張性です。「システムの拡張性が高いから(スケーラビリティ)」を利用理由に挙げた企業は、2024年の22.1%から2025年の28.9%へ増えました。

総務省も令和7年調査の公表資料で、この項目の前年からの増加が最も大きいと明記しています。単年の振れではなく、公表資料が名指しした変化です。

読者にとっての意味は、判断軸が変わってきたことです。「クラウドで動くかどうか」ではなく「必要なときに増やせるかどうか」が問われる段階に入っています。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1同 別紙2

可用性45.1%・容量変更への即応32.6%も同時に上がっている

拡張性と同じ方向に動いた項目が、ほかにもあります。2024年から2025年にかけての変化は次のとおりです。

  • システムの拡張性が高いから: 22.1% → 28.9%
  • 安定運用、可用性が高くなるから: 40.4% → 45.1%
  • システムの容量の変更などに迅速に対応できるから: 30.9% → 32.6%

この3項目には共通点があります。いずれも「システムが要求の変化に追随できること」を評価した項目です。

止まらないこと、増やせること、すぐ変えられること。この3つが同じ年にそろって伸びています。 検討中のサービスを評価するときは、平常時の機能だけでなく、負荷が増えたときの挙動も確認しておきましょう。

同じ1年で全社的にクラウドを使う企業が53.1%から60.0%に増えている

同じ調査の同じ年に、クラウドの使われ方も変わっています。全社的にクラウドサービスを利用している企業は、2024年の53.1%から2025年の60.0%へ増えました。一方、一部の事業所・部門での利用にとどまる企業は2025年で23.5%です。

この2つは、クラウド利用企業ではなく回答企業全体を分母にした値です。前の見出しまでで扱った利用理由の選択率とは、分母が違う点に注意してください。

2024年から2025年にかけて伸びた主な指標。拡張性22.1%→28.9%、可用性40.4%→45.1%、信頼性32.3%→35.0%、全社利用53.1%→60.0%(設問・分母は異なる)

部門単位の試験導入なら、利用者数もデータ量も見通せる範囲に収まります。全社の基盤になると、部門の追加や繁忙期の負荷増に耐えられるかが現実の要件になります。

この2つの動きから読み取れるのは、クラウドの評価軸が「使えるかどうか」から「増やせるかどうか」へ移りつつあるという関係です。ただし2つは別の設問で分母も異なり、一方が他方を引き起こしたことを示すものではありません。

拡張性の伸びは、生成AI向けの計算資源の確保など、全社展開とは別の要因でも説明できます。全社に広げたあとのクラウドの運用体制は、拡張性とは別に検討が必要です。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1同 別紙2


コストの安さをメリットに挙げる企業は19.4%で、公表されている主要8項目で最も低い

コストは最下位

多くの記事はコスト削減をメリットの筆頭に置きますが、公的調査の結果は逆です。「既存システムよりもコストが安いから」を利用理由に挙げた企業は、2025年調査で19.4%でした。公表されている主要8項目の中で最も低い値です。

ここで誤解してほしくないのは、これが「クラウドにコスト削減効果がない」という意味ではないことです。コストの安さが、導入の動機としては選ばれにくいという意味です。

ポイント

  • 2025年調査で「既存システムよりもコストが安いから」を挙げた企業は、公表されている主要8項目のうち最も低い値でした
  • 上位を占めるのは「場所、機器を選ばずに利用できる」「安定運用、可用性が高くなる」「資産、保守体制を社内に持つ必要がない」の3項目です
  • 費用面で評価されているのは価格の安さではなく、資産と保守体制を社内に持たないことです

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」

コストを理由に挙げる企業は2024年19.1%・2025年19.4%で2年連続2割未満

コストの位置づけは、1年たっても変わっていません。「既存システムよりもコストが安いから」は2024年で19.1%、2025年で19.4%と、2年続けて2割を下回りました。

同じ2025年調査の上位項目と比べると、差ははっきりしています。1位の「場所、機器を選ばずに利用できるから」は50.7%、2位の「安定運用、可用性が高くなるから」は45.1%でした。3位の「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」は42.8%です。

この結果から読み取れるのは、コストはクラウドを使っている企業の動機ではなく、むしろ導入していない企業の障壁として現れるという構図です。この点はこのあと実データで確認します。

評価されているのは価格ではなく「資産と保守体制を社内に持たないこと」で42.8%

コスト項目が低いことと、費用面のメリットがないことは別の話です。「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」は、5年間一貫して4割台を保っています。

調査年 「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」を挙げた企業の割合
2021年 41.7%
2022年 42.5%
2023年 43.9%
2024年 42.6%
2025年 42.8%

出典: 総務省「令和3年」「令和4年」「令和5年通信利用動向調査報告書(企業編)」「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2より作成(5年とも無回答を除く集計、2024年は別紙2の再集計値)

評価されているのは月額料金の安さではありません。サーバーを資産として持たないこと、保守要員を社内に抱えないことです。費用の「額」ではなく「持ち方」が変わる点が支持されています。

費用構造そのものの違いは、この記事では扱いません。詳しくはオンプレミスとクラウドの違いを整理した記事をご覧ください。

公的統計には削減額や削減率を示す数値が存在しない

稟議で求められる削減額の根拠は、公的統計からは出てきません。通信利用動向調査の効果に関する設問は、程度を選ぶ主観評価だけで構成されているからです。

2025年調査の「非常に効果があった」36.0%、「ある程度効果があった」53.5%という内訳が、まさにその形式です。コストが何割下がったか、運用工数が何時間減ったかを示す数値は含まれていません。

さらに、この設問に答えるのはクラウドを使い続けている企業だけです。効果が出ずに利用をやめた企業は分母から抜けており、その規模を示すデータもありません。

したがって、無回答を含む同じ基準でそろえた2024年の87.3%や2025年の88.8%という数値は、導入すれば大きな成果が出る証明ではありません。使い続けている企業の満足度の水準として読むのが正確です。コストの安さを理由に挙げる企業が19.4%である点とも整合します。

注意

削減額を求められたときは、自社の現行費用から積み上げてください。サーバーの償却費、保守契約料、運用の人件費を洗い出さないと、比較の土台が作れません。やめた企業の割合は分からないため、この偏りを根拠に9割という数値を否定することはできません。

移行コストを障壁に挙げる未導入企業は28.7%で、導入後の19.4%を上回る

コストは、導入していない企業では上位の論点になります。2025年調査で、クラウドサービスを利用していない企業のうち28.7%が「クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい」を理由に挙げました。最も多い理由は「必要がない」46.5%で、改修コストはこれに次ぐ2番目、セキュリティ不安は26.6%でした。

コストに関する評価の対比。未導入企業の障壁である改修コスト28.7%と、利用企業の導入理由であるコストが安い19.4%(2025年調査、分母は異なる)

一方、クラウドを利用している企業でコストの安さを理由に挙げたのは19.4%です。コストは導入前の障壁としては大きく、導入後の動機としては小さいという構図が見えます。ただし前者は未導入企業、後者は利用企業を対象とした値で、分母が異なるため単純比較はできません。

未導入企業を対象とした設問は回答企業数が少なく(2025年150社、2024年171社)、参考値として扱う必要があります。改修コストを挙げる割合は次のとおり振れが大きく、傾向としては読めません。

調査年 改修コストを理由に挙げた割合
2022年 31.2%
2023年 24.2%
2024年 29.6%
2025年 28.7%

未導入企業の理由や導入の進め方は、本記事では扱いません。詳しくはクラウド導入の実態をまとめた記事をご覧ください。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」「令和6年」「令和5年」「令和4年通信利用動向調査報告書(企業編)」「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2


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災害対策を理由に挙げる企業は減り、情報漏えい対策としての評価が上がっている

災害対策とセキュリティ

公表されている主要8項目のうち、2024年から2025年にかけて逆方向に動いた組み合わせがあります。「災害時のバックアップとして利用できるから」は40.2%から38.7%へ下がりました。

同じ期間に「サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策)」は32.3%から35.0%へ上がっています。BCPとセキュリティは、クラウドの説明で必ず出てくる論点です。

直近1年に限れば、災害対策の比重が下がり、情報漏えい対策としての評価が上がっている状態です。 ただし2時点の比較にすぎないため、傾向として断定はできません。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2

災害時のバックアップを理由に挙げる企業は40.2%から38.7%へ下がった

この項目は、公表されている主要8項目のうち唯一選択率が下がりました。2024年の40.2%から2025年の38.7%への変化です。参考までに、令和6年報告書での同じ項目の値は40.1%でした。

とはいえ、BCPを目的にクラウドを選ぶ企業が減ったと決めつけるのは早いです。用途としてのバックアップは、むしろ増えているからです。利用しているクラウドサービスの内容で「データバックアップ」を選んだ企業は、2023年の42.0%から2025年の46.4%へ増えました。この2つは出典が別ですが、令和7年報告書 図表3-3(無回答を含む集計)だけで並べても42.0%から46.4%で、集計基準による差はありません。

この動きから読み取れるのは、災害対策が特別な導入理由ではなくなり、日常の運用手段として選ばれる比重が増している可能性です。バックアップの用途そのものが減ったのではなく、あらためて動機として挙げられにくくなった、と見ることもできます。

サービスの信頼性(情報漏えいなど対策)は32.3%から35.0%へ上がった

セキュリティは、クラウドの不安要素として語られがちです。しかし実際に利用している企業の側では、逆に選ぶ理由として増えています。

「サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策)」を挙げた企業は、2024年の32.3%から2025年の35.0%へ増えました。一方、クラウドを利用していない企業では、2025年調査で26.6%が情報漏えいなどセキュリティへの不安を理由に挙げています。

この対比から読み取れるのは、自社で管理するより事業者に任せた方が安全だと判断する企業が、増えているという点です。

ただし、クラウドへ移せばインシデントが減ることを示す一次データはありません。この数値が示しているのは実際の安全性ではなく、利用企業による評価です。 責任の分界点や事業者の運営基準は、契約前に自分で確認しておく必要があります。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」


まとめ

クラウドのメリットを社内で説明するときに使える結論を、4点に絞って整理します。

  • 2025年調査時点で、クラウドサービスを利用している企業の89.4%が効果があったと回答しています
  • 最も多く挙がる理由は「場所、機器を選ばずに利用できるから」で50.7%。この項目は5年間ほとんど動いていません
  • 直近1年で最も伸びたのは「システムの拡張性が高いから」で28.9%。評価軸が「使えるか」から「増やせるか」へ移りつつあります
  • 「既存システムよりもコストが安いから」は19.4%で、公表されている主要8項目のうち最も低い値です。金額の根拠は公的統計からは出せません

社内資料には、この4点に加えて調査年・分母(クラウド利用企業)・集計基準をそろえて書いてください。コスト削減額を求められた場合は、統計ではなく自社の現行費用の棚卸しから始めましょう。


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新人・ひとり情シスの学習環境をつくるなら「情シスカレッジ」

情シスカレッジ|新人・ひとり情シスのためのマイクロラーニングLMS

この記事で扱ったような「分母は何か」「集計基準はそろっているか」という読み方は、独学では身につけにくい領域です。近くに相談できる先輩がいない環境だと、資料を作るたびに手が止まってしまいます。

情シスカレッジは、新人・ひとり情シスのためのマイクロラーニングLMSです。数分の動画と小テストで、日々の業務の合間に必要な知識を少しずつ積み上げられます。

情シスカレッジの特徴

  • 数分の動画+小テストで、まとまった学習時間を取らずに進められます
  • 必修の割り当て・期限設定・進捗ダッシュボードで、受講状況をまとめて管理できます
  • 自社カリキュラムの編成とCSVでの教育記録に対応し、社内の教育履歴として残せます

5名から利用でき、請求書払いにも対応しています。初期設定はおよそ10分で、担当者が1人でも始められます。

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※出典

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