【2025年 総務省調査】文書管理のクラウド化はクラウド利用企業の73.3%|オンプレとの違い・選び方

社内の文書管理を見直そうとして、こんなところで止まっていませんか。
- 部署ごとにファイルサーバーと個人フォルダが散らばっていて、どこに何があるか分からない
- クラウドに移したいが、他社がどこまで進んでいるのか分からない
- 「セキュリティが不安だ」と言われると、そこから先に話が進まない
結論から書きます。文書をクラウドに置くことは、もう例外的な選択ではありません。
総務省の通信利用動向調査によると、2025年調査時点でクラウドを利用している企業の73.3%が「ファイル保管・データ共有」に使っています。出典は総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」です。
この記事では、クラウド型文書管理の仕組み、オンプレミス型との違い、企業の利用実態、導入理由と反対理由、選定時の確認項目を、公的統計をもとに順に見ていきます。製品ごとの機能比較や料金相場は、公的な一次データが存在しないため扱いません。そのかわり、社内で判断するときの軸をはっきりさせます。
この記事のポイント
- 2025年調査時点で、クラウドを利用している企業の73.3%が「ファイル保管・データ共有」に利用しています
- クラウドを全社的に利用する企業は2025年調査で60.0%。前年の53.1%から6.9ポイント増えました
- 導入していない企業の理由の最多は「必要がない」46.5%で、セキュリティへの不安は26.6%です(2022年調査の31.2%より低い一方、2024年調査の24.9%からは上昇しています)
クラウド型文書管理は、文書の保管場所と保守をサービス事業者側に置く仕組み
クラウド型文書管理とは、契約書や社内規程などの文書を、事業者が用意した環境に保管して使う仕組みです。自社のサーバーにファイルを置くかわりに、ブラウザから保管・検索・権限管理・版管理を行います。
社内に機器を置かないため、機器の調達や保守を自社で抱えずに済みます。総務省の調査では、2025年調査時点で何らかのクラウドサービスを利用している企業は83.5%です。そのうち73.3%がファイル保管・データ共有に使っています。
この記事は、製品を並べて比較する記事ではありません。公的統計で確認できる実態だけを土台にして、判断材料を整理していきます。
クラウドサービスを利用する企業は83.5%、全社的に利用する企業は60.0%(2025年調査)
まず押さえたいのは、「クラウドの利用率」には2つの数値があることです。総務省の通信利用動向調査は、一部でも利用している企業と、全社的に利用している企業を分けて集計しています。
2025年調査の値は次のとおりです。
- 一部でも利用している企業: 83.5%
- 全社的に利用している企業: 60.0%

一部でも利用している企業の割合は、2021年調査の70.4%から13.1ポイント上がっています。 全社的に利用している企業も、2024年調査の53.1%から60.0%へ増えました。
この2つの数値から読み取れるのは、論点が「クラウドを入れるかどうか」から「全社に広げるかどうか」へ移ってきたことです。文書管理でも、一部の部署だけがクラウドを使っている状態は、そろそろ見直しの対象になります。
公的統計に「文書管理システム」の設問はなく、3つの用途が代理指標になる
正直にお伝えすると、文書管理システムの導入率を公的統計から特定することはできません。総務省の通信利用動向調査には、文書管理システムを直接問う設問がないためです。
文書管理に関わる用途は、次の3つの選択肢に分かれて現れます(いずれも2025年調査、クラウド利用企業が母集団)。
- ファイル保管・データ共有: 73.3%
- 社内情報共有・ポータル: 61.4%
- データバックアップ: 46.4%
この記事では、これら3つを文書管理のクラウド化を示す代理指標として扱います。 数値を盛らずに、分かる範囲と分からない範囲を分けて書いていきます。
注意
「文書管理システムの導入率は◯%」という数値は、公的統計からは算出できません。市場規模も同様です。この記事で扱う数値は、クラウドサービスの用途としての「ファイル保管・データ共有」などです。文書管理システムそのものの導入率ではない点にご注意ください。
また、通信利用動向調査の企業調査は、公務を除く産業に属する常用雇用者100人以上の企業が対象です(令和7年調査は6,040企業を抽出)。従業員100人未満の企業は調査対象に含まれないため、本記事の企業割合はすべて「常用雇用者100人以上の企業のうち」の数値としてお読みください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙1」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」
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クラウド型とオンプレミス型の違いは、資産と保守を社内に持つかどうかに集約される
両者の違いは、文書を置く機器と、その面倒を見る役割を社内に持つかどうかに集約されます。オンプレミス型は自社のサーバーに文書を置き、更新や障害対応も自社で行います。クラウド型はその部分を事業者側に預けます。
機能の呼び名は似ていても、担当者の仕事の中身は変わります。次の表で、6つの観点から整理しました。文書管理に限らずオンプレミスとクラウドの違いを確認したい方は、そちらの記事もあわせてどうぞ。
表1: クラウド型とオンプレミス型の比較
| 観点 | クラウド型 | オンプレミス型 |
|---|---|---|
| 導入形態 | 事業者の環境を契約して使う | 自社で機器を調達して構築する |
| 資産と保守 | 社内に持たない。2025年調査でクラウド利用企業の42.8%が理由に挙げた | 機器もライセンスも社内資産として保有する |
| 稼働の維持 | 事業者側が担う。2025年調査で45.1%が「安定運用、可用性が高くなる」を理由に挙げた | 冗長化や監視を自社で設計する |
| アクセス範囲 | 場所や機器を選ばない。2025年調査で50.7%が理由に挙げた | 社内ネットワークやVPN経由が基本 |
| 停止時の対応 | 事業者の復旧を待つ。2025年調査でクラウド非利用企業の13.1%が回線の安定性を不安に挙げた | 自社で切り分けと復旧を行う |
| カスタマイズ | 提供された機能の範囲で設定する | 要件に合わせて作り込める |
表の数値の出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」
「資産、保守体制を社内に持つ必要がない」を挙げた企業は42.8%(2025年調査)
クラウドを選ぶ理由として、企業が実際に挙げているのが保守負担の外部化です。総務省の調査では、2025年調査時点でクラウド利用企業の42.8%が「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」を理由に選んでいます。
この項目は5年間ほぼ動いていません。
- 2021年調査: 41.7%
- 2022年調査: 42.5%
- 2023年調査: 43.9%
- 2024年調査: 42.5%
- 2025年調査: 42.8%
2024年の値は報告書(企業編)ベースで、2025年の資料に前年値として再掲された集計では42.6%です。どちらの基準でも5年間の変動幅は2ポイント台に収まります。
一時的な流行ではなく、5年にわたって上位に居続けている理由だという点が重要です。 ファイルサーバーの更新時期やOSのサポート終了に毎回追われている担当者にとっては、実感しやすい理由ではないでしょうか。
「コストが安いから」は19.4%にとどまり、費用よりも運用負担が動機になっている
クラウド化の説明でよく使われる「安くなる」は、統計上は主要な理由になっていません。「既存システムよりもコストが安いから」を挙げた企業は、2025年調査で19.4%、2024年調査で19.1%と、2割に届いていません。
上位を占めるのは別の理由です。2025年調査では、場所や機器を選ばずに使えることが50.7%、資産や保守体制を社内に持たずに済むことが42.8%でした。
つまり、選ばれている理由は安さではなく、働き方への適合と運用負担の軽さです。 稟議でコスト削減を前面に出すと、導入後の実績値で説明が苦しくなります。削減額ではなく、担当者が手放せる作業と止まりにくさで組み立てるほうが、企業の実態に合っています。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」/総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」/総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」
文書管理のクラウド化は4年で61.0%から73.3%へ進んだ
文書をクラウドに置く動きは、この4年で着実に広がりました。「ファイル保管・データ共有」を選んだ企業の割合は、2021年調査の61.0%から2025年調査の73.3%へ上がっています。
この数値は「利用しているクラウドサービスの内容」の選択率であり、文書管理システムの導入率ではありません。
ここで注意したいのは母集団です。この設問はクラウド利用企業に聞いており、その母集団自体が広がっています。2021年調査の70.4%から2025年調査の83.5%へという動きです。
分母が広がったうえで選択率も上がった、という読み方をします。
ポイント
- ファイル保管・データ共有は、クラウドの用途として5年連続で最多です
- 社内情報共有・ポータルは2022年調査で電子メールを追い抜きました
- 全社的にクラウドを使う企業は2025年調査で60.0%に達しています
ファイル保管・データ共有は5年連続で最多の用途になっている
クラウドの用途として最も選ばれているのは、一貫してファイル保管・データ共有です。5年分の推移は次のとおりです。
| 調査年 | ファイル保管・データ共有 |
|---|---|
| 2021年 | 61.0% |
| 2022年 | 64.1% |
| 2023年 | 68.8% |
| 2024年 | 70.8% |
| 2025年 | 73.3% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」ほか通信利用動向調査 各年の結果(母集団はクラウドサービス利用企業)
※2021〜2023年と2025年は各年の「調査の結果(概要)」、2024年のみ「報告書(企業編)」の値です。概要ベースの2024年値は71.0%で、0.2ポイントの差があります。
この推移から読み取れるのは、後からクラウドを使い始めた企業も、最初の用途としてファイルの保管と共有を選んでいるということです。母集団となるクラウド利用企業は2021年調査の70.4%から2025年調査の83.5%へ13.1ポイント広がりました。用途がばらけるなら選択率は薄まるはずですが、実際には12.3ポイント上がっています。
文書のクラウド保管は、先行企業だけの取り組みではなく、導入時の標準的な入り口になっています。
ただしこの選択肢には、無償のオンラインストレージの利用も含まれている可能性があります。ファイルサーバーのクラウド移行を検討している段階の企業も、この数値に含まれると考えてください。
社内情報共有・ポータルは2022年に電子メールを追い抜き61.4%になった
クラウドの用途の中心は、連絡手段から情報の置き場所へ移っています。社内情報共有・ポータルと電子メールの選択率を並べると、順位が入れ替わった時点がはっきり分かります。
| 調査年 | 社内情報共有・ポータル | 電子メール |
|---|---|---|
| 2017年 | 37.7% | 46.3% |
| 2021年 | 52.0% | 52.6% |
| 2022年 | 52.9% | 52.4% |
| 2023年 | 55.8% | 55.1% |
| 2024年 | 57.5% | 56.7% |
| 2025年 | 61.4% | 57.4% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」ほか通信利用動向調査 各年の結果・報告書(2019年・2020年は連続データなし)
※2022〜2024年は報告書(企業編)、それ以外の年は各年の「調査の結果(概要)」の値です。概要ベースの2024年値は社内情報共有・ポータル57.6%、電子メール56.8%で、0.1ポイントの差があります。

2017年調査では電子メールが46.3%、ポータルが37.7%で、電子メールが8.6ポイント上回っていました。2025年調査ではポータルが61.4%、電子メールが57.4%で、順位が逆になっています。
この8年の伸びを見ると、電子メールが11.1ポイント、ポータルが23.7ポイントで倍以上の開きがあります。ここから読み取れるのは、企業がクラウドに求めるものが「連絡手段の外部化」から「情報資産の置き場所の外部化」へ移ったことです。文書管理のクラウド化は、この流れの中心にある用途です。
なお、この設問は複数回答形式です。選択肢の文言が変われば選択率も動くため、2019年・2020年の欠測とあわせて、傾向として読む範囲にとどめてください。0.1ポイント前後の差は、概要と報告書の集計基準の違いでも生じます。
全社利用は前年から6.9ポイント増え、部門ごとの共有手段が集約に向かっている
全社的にクラウドを利用する企業は、直近1年で大きく増えました。推移は次のとおりです。
- 2021年調査: 42.7%
- 2022年調査: 44.9%
- 2023年調査: 50.6%
- 2024年調査: 53.1%
- 2025年調査: 60.0%
2025年調査の伸びは6.9ポイントで、直近5年で最大です。「一部でも利用」83.5%との差も23.5ポイントまで縮みました。 2021年調査では70.4%と42.7%の差が27.7ポイントありましたから、明らかに縮小しています。
この動きから読み取れるのは、部門単位でクラウドを試していた企業が、全社標準への切り替えに入ったことです。文書管理でいえば、部署ごとに別々のファイル共有手段を使っている状態から、全社共通の保管基盤へ集約していく局面と重なります。
この5年の値はいずれも「無回答を除く」集計で、基準はそろっています(別紙1の留意事項)。 ただし回答企業は毎年入れ替わっており、2024年調査はn=2,323、2025年調査はn=2,486です。単年の変化なので、次回調査で同じ傾きが続くかは確認が必要です。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙1」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」/総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」/総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」/総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」
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自社の位置は資本金規模と業種の2軸で測れる
全体の平均値だけを見ても、自社が遅れているのかどうかは判断できません。総務省の調査は資本金規模別と業種別の内訳を公表しているので、その2軸で自社の位置を確認できます。
たとえば2025年調査では、資本金1000万円未満の企業のクラウド利用率が75.4%、50億円以上では99.8%です。業種別では金融・保険業が96.2%、運輸業・郵便業が78.3%と幅があります。
見るべきは平均との差ではなく、自社がどの帯にいるかです。同じ帯の企業と比べて遅れているなら、社内で説明する材料になります。
資本金1億円未満と1億円以上の間に9.2ポイントの段差がある(2025年調査)
資本金規模別に並べると、なだらかな坂ではなく段差があることが分かります。2025年調査の内訳は次のとおりです。
| 資本金規模 | クラウド利用率 |
|---|---|
| 1000万円未満 | 75.4% |
| 1000万円〜3000万円未満 | 74.8% |
| 3000万円〜5000万円未満 | 84.1% |
| 5000万円〜1億円未満 | 83.1% |
| 1億円〜5億円未満 | 92.3% |
| 5億円〜10億円未満 | 92.5% |
| 10億円〜50億円未満 | 97.5% |
| 50億円以上 | 99.8% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」(無回答を除く集計)

1億円未満の4区分は74.8%から84.1%の帯に収まり、1億円〜5億円未満で92.3%に上がります。5000万円〜1億円未満の83.1%との差は9.2ポイントで、ここに段差があります。
この数値から読み取れるのは、規模の小ささそのものは、もう導入の壁になっていないということです。最小区分と最大区分の差は、2024年調査の38.3ポイント(61.5%と99.8%)から2025年調査の24.4ポイントへ縮みました。大企業側が天井に近いので、縮小分はすべて小規模側の伸びによるものです。
ここで注意したいのは、資本金1000万円未満の区分(n=100)も、常用雇用者100人以上の企業に限られる点です。 資本金が小さくても従業員100人未満の企業は、この調査に含まれません。
また区分ごとの回答企業数は限られており、1ポイント前後の逆転は誤差の範囲です。2024年と2025年で集計基準の表記も異なるため、差の縮小幅そのものは幅を持って見てください。
業種別では金融・保険業96.2%と運輸業・郵便業78.3%に17.9ポイントの差がある
業種別に見ると、上位と下位で17.9ポイントの差があります。2025年調査の値は次のとおりです。
- 金融・保険業: 96.2%
- 情報通信業: 94.8%
- 不動産業: 90.9%
- 建設業: 89.2%
- 製造業: 85.6%
- 卸売・小売業: 83.6%
- サービス業、その他: 79.3%
- 運輸業・郵便業: 78.3%

全体の83.5%を基準にすると、卸売・小売業までが全体と同水準以上で、サービス業と運輸業・郵便業が下回ります。 ただし卸売・小売業83.6%と全体の差は0.1ポイント(n=350)なので、実質的には全体並みと見るのが妥当です。
契約書や申込書など保管義務のある文書を多く扱う金融・保険業と不動産業が上位にある点は、文書管理の文脈でも目を引きます。
ただし、この数値は業種別の文書管理データではありません。文書量とクラウド利用率の関係を示すデータは公表されていないため、傍証として受け取ってください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙1」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」
クラウド化の理由の1位は「場所、機器を選ばずに利用できる」で50.7%(2025年調査)
メリットを一般論で並べるより、企業が実際に選んだ理由を見るほうが確かです。2025年調査で最も多く挙げられた理由は「場所、機器を選ばずに利用できるから」で50.7%でした。
続くのが「安定運用、可用性が高くなるから」45.1%と「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」42.8%です。文書管理に置き換えると、外出先からの文書参照、ファイルサーバーの停止対応、機器更新作業の外部化にあたります。
導入後の手応えも数字に出ています。クラウドの利用効果に「非常に」または「ある程度」効果があったと答えた企業は、2025年調査で89.4%でした。2024年調査でも87.3%で、高い水準が続いています。
上位の理由は場所50.7%・安定運用45.1%・資産保守不要42.8%の3つ
2025年調査で挙げられた理由を、上位から順に並べます。
| クラウドを利用する理由 | 選択した企業の割合 |
|---|---|
| 場所、機器を選ばずに利用できるから | 50.7% |
| 安定運用、可用性が高くなるから | 45.1% |
| 資産、保守体制を社内に持つ必要がないから | 42.8% |
| 災害時のバックアップとして利用できるから | 38.7% |
| サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策) | 35.0% |
| 既存システムよりもコストが安いから | 19.4% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」(複数回答、母集団はクラウドサービス利用企業)

上位3項目はいずれも、文書管理の日常業務に直結します。 リモートワーク中に契約書を参照する、ファイルサーバーが止まったときの復旧に追われる、サーバーの更新計画を毎年立て直す。こうした作業の置き換えが、企業が挙げている理由の中身です。
伸びているのは「安定運用」と「信頼性」で、災害時バックアップは下がった
理由の順位より、動いている項目を見るほうが役に立ちます。2024年調査から2025年調査にかけての変化は次のとおりです。
- 安定運用、可用性が高くなるから: 40.4%→45.1%(4.7ポイント増)
- サービスの信頼性が高いから: 32.3%→35.0%(2.7ポイント増)
- 災害時のバックアップとして利用できるから: 40.2%→38.7%(1.5ポイント減)
1位の「場所、機器を選ばずに利用できるから」は、2021年調査の50.2%から2025年調査の50.7%とほぼ動いていません。テレワークを背景にした動機は、すでに定着したと見てよさそうです。
この変化から読み取れるのは、非常時の備えではなく、平常時の運用品質と保守負担の外部化が新しい動機になっているということです。文書管理を移す提案でも、「災害に備えて」より「止まりにくく、担当者が抱えなくて済む」のほうが実態に近い訴求になります。
この3項目の2024年の値は、2025年の資料(別紙2)に前年値として再掲された「無回答を除く」集計にそろえています。報告書(企業編)ベースでは安定運用40.3%、災害時のバックアップ40.1%で、0.1ポイント前後ずれます。 ただし安定運用の項目は2時点しか比較できません。1年の動きなので、趨勢と決めつけずに次回調査で確かめてください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」
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導入をためらう理由の最多は「必要がない」で46.5%(2025年調査)
反対意見に答えるときも、一般論より実際の回答を見るほうが早いです。クラウドを利用していない企業に理由を聞いた設問では、2025年調査で「必要がない」が46.5%と最も多くなっています。
次いで「既存システムの改修コストが大きい」28.7%、「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」26.6%と続きます。「ネットワークの安定性に対する不安がある」は13.1%でした。
先に断っておくと、この設問の回答企業は2025年調査で150社です。1社の回答が0.7ポイント近くに相当するので、数ポイントの差は幅を持って読んでください。
技術面の懸念は改修コスト28.7%とセキュリティ不安26.6%(2025年調査)
技術面の懸念は、文書管理の実務に置き換えると具体的な作業として現れます。2025年調査の非利用理由を、文書管理の文脈に対応させると次のようになります。
- 既存システムの改修コストが大きい(28.7%): 既存文書とファイルサーバーの移行作業そのもの
- 情報漏えいなどセキュリティに不安がある(26.6%): 契約書や人事文書を社外に預けることへの抵抗
- ネットワークの安定性に対する不安がある(13.1%): 回線障害時に文書を開けなくなる状態
このうち改修コストは、社内で最も反論しにくい項目です。 金額の水準を示す公的データがないため、ベンダーの提示額を自社で検証するしかありません。
注意
移行コストについて公的統計から分かるのは、2025年調査で非利用企業の28.7%が「改修コストが大きい」を理由に挙げたという選択率だけです。移行にいくらかかるか、何か月かかるかを示す一次データはありません。相場を示す情報を見かけたら、その根拠がどこにあるかを確認してください。
4年間で増え続けた非利用理由は「必要がない」だけ
非利用理由を4年分並べると、動きの方向がはっきり分かれます。
| 調査年 | 必要がない | 改修コストが大きい | セキュリティに不安 | ネットワークの安定性に不安 |
|---|---|---|---|---|
| 2022年 | 42.0% | 31.2% | 31.2% | 19.0% |
| 2023年 | 44.7% | 24.2% | 24.2% | 15.2% |
| 2024年 | 46.0% | 29.6% | 24.9% | 14.7% |
| 2025年 | 46.5% | 28.7% | 26.6% | 13.1% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」(母集団はクラウドサービス非利用企業、2025年調査はn=150)

4年間で一貫して増えているのは「必要がない」だけです。2022年調査の42.0%から2025年調査の46.5%へ4.5ポイント上がりました。一方でネットワークの安定性への不安は19.0%から13.1%へ、セキュリティへの不安は31.2%から26.6%へ下がっています。
ここから読み取れるのは、クラウドへの不信は薄れていて、残っている壁は必要性の認識だということです。社内提案では、安全性の説明より先に、いまの紙やファイルサーバーの運用で起きている探索時間や版の重複を見せるほうが効きます。
ただし母集団は150社と小さく、クラウド利用率の上昇で非利用企業の顔ぶれ自体が変わっている可能性もあります。意識が変わったのではなく、残った企業の性質が変わっただけ、という説明も成り立ちます。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
セキュリティは「対策を実施98.3%」ではなく個別項目で確認する
「クラウドは危ないのか」という問いは、そのままでは答えが出ません。確認できる項目に置き換えて、ひとつずつ見ていく必要があります。
総務省の調査では、2025年調査時点で何らかのセキュリティ対策を実施している企業は98.3%です。この割合の母集団は、インターネットを利用している企業です。 ただし個別に見ると、ID・パスワードによるアクセス制御は60.4%、データやネットワークの暗号化は27.4%と差があります。
文書管理をクラウド化すると、機密文書の置き場所が変わります。だからこそ、合計値ではなく個別項目で確認する姿勢が要ります。
「何らかの対策を実施」98.3%は8年間ほぼ動いておらず、備えの深さを表さない
この指標は、環境が変わってもほとんど動いていません。推移は次のとおりです。
- 2017年調査: 99.3%
- 2018年調査: 97.8%
- 2022年調査: 98.4%
- 2024年調査: 97.7%
- 2025年調査: 98.3%
8年間で1.6ポイントの幅に収まっています。同じ期間にクラウドの利用率は2017年調査の56.9%から2025年調査の83.5%へ26.6ポイント動きました。IT環境が大きく変わったのに、この指標だけ反応していないことになります。
ただし2017年・2018年調査の母集団は「情報通信ネットワークを利用している企業」で、2022年以降の「インターネットを利用している企業」とは定義が異なります。厳密に同一の系列として比較できない点にはご注意ください。
個別項目を見ると、データやネットワークの暗号化は2024年調査27.8%、2025年調査27.4%と2年連続で27%台です。別の調査になりますが、IPAの2024年度調査も見てみます。中小企業等の約7割が、情報セキュリティに投資していないか投資額を把握していないと回答しています。
ここから読み取れるのは、98.3%という数値を「だから安全だ」とは読めないということです。対策が不十分だと断定するものではありません。なお、総務省とIPAは調査対象も設問も違うため、2つの数値を並べて優劣を比べることはできません。
アクセス制御60.4%・ポリシー策定48.2%・暗号化27.4%と実施率には差がある
個別の対策ごとに、実施している企業の割合は大きく違います。2025年調査の値は次のとおりです。
| セキュリティ対策 | 実施している企業の割合 |
|---|---|
| ID、パスワードによるアクセス制御 | 60.4% |
| 社員教育 | 54.7% |
| セキュリティポリシーの策定 | 48.2% |
| データやネットワークの暗号化 | 27.4% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」(母集団はインターネットを利用している企業)
並んでいる4項目のうち、事業者側の機能だけで完結するものはひとつもありません。権限をどう設計するか、文書の持ち出しをどこまで認めるか、利用者にどう教えるかは、クラウド化しても自社に残る仕事です。 サービスの機能一覧を確認するときは、あわせて自社側の運用ルールも決めておいてください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙1」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」/総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」/総務省「平成29年通信利用動向調査の結果」/IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 調査結果概要」
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選び方は、任せる範囲・移行対象・セキュリティ要件・運用体制の4点で決める
最後に、選定時の判断軸を整理します。製品ごとの機能比較や料金相場は公的資料から取得できないため、この記事では比較表を作りません。そのかわり、ここまで見てきた統計をそのまま判断軸に組み替えます。
軸になるのは4点です。ひとつめは、保守をどこまで任せられるかです。2025年調査でクラウド利用企業の42.8%が理由に挙げた項目にあたります。
ふたつめは、既存文書をどこまで移すかです。非利用企業の28.7%が障壁に挙げた項目です。
3つめはセキュリティ要件の確認で、アクセス制御の実施率は60.4%でした。4つめが社内の運用体制です。
ポイント
- 任せる範囲: バックアップの取得主体、復旧の目標時間、停止時の代替手段を契約前に確認する
- 移行対象: 全件移行を前提にせず、現用文書と保管文書を分けて範囲を絞る
- セキュリティ要件: 事業者側の機能と、自社で決める権限設計・持ち出しルールを分けて整理する
- 運用体制: 設定や権限管理を社内の誰が担うかを決め、難しければ支援体制ごと選ぶ
保守を任せられる範囲と、停止時の対応を契約前に確認する
利用理由の上位項目は、裏返すとそのまま確認事項になります。「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」42.8%と「安定運用、可用性が高くなるから」45.1%は、いずれも2025年調査の値です。任せた先が期待どおりに動くかを、契約前に文書で確かめておきましょう。
確認する項目は次の4つです。
- バックアップの取得主体が事業者か自社か、世代数はいくつか
- 障害発生時の復旧目標時間と、過去の稼働実績の開示範囲
- サービスが止まったときに文書を参照する代替手段
- 契約終了時のデータ返却形式と、返却にかかる期間
特に3つ目は見落とされがちです。 2025年調査では、クラウドを利用していない企業の13.1%が「ネットワークの安定性に対する不安がある」を理由に挙げています。この不安に答えられるかどうかが、社内の合意を左右します。
移行する文書の範囲を先に絞ってから見積もる
移行は「全部移す」と決めた時点で難しくなります。2025年調査では、クラウド非利用企業の28.7%が「既存システムの改修コストが大きい」を挙げました。2024年調査の29.6%から大きくは変わっていません。
現実的な進め方は、日常的に参照する現用文書と、保存義務があるだけの保管文書を分けることです。前者を先にクラウドへ移し、後者は保存期間の満了に合わせて順に整理していくと、初期の作業量を抑えられます。
見積もりを取る前に対象範囲を決めておくと、ベンダー間の金額を同じ条件で比べられます。 移行費用の相場を示す公的データはないため、条件をそろえた相見積もりが実質的な検証手段になります。
ファイル保管・データ共有は2025年調査で73.3%の企業が使う用途です。一方で非利用企業の最多理由は「必要がない」46.5%でした。まず自社で困っている範囲から始めるほうが、社内も納得しやすいはずです。
ひとり情シスは、社内で要件を判断できる人がいるかを前提に選ぶ
体制が薄い会社ほど、任せられる範囲を広く取る必要があります。IPAの2024年度調査では、「兼務だが、担当者が任命されている」と回答した割合が規模に沿って上がります(専任の専門部署がある企業は、別の区分として集計されています)。
- 小規模企業者: 11.1%
- 中小企業(100名以下): 37.6%
- 中小企業(101名以上): 51.9%
- 中小企業等の全体: 21.0%
一方、総務省の2025年調査では、資本金1000万円未満のクラウド利用率が75.4%です。50億円以上は99.8%で、24.4ポイントの差があります。2つは別々の調査なので数値を並べて比較はできませんが、規模が小さいほど値が下がるという方向は一致しています。
ここから仮説として言えるのは、要件を判断できる人が社内にいるかどうかが、導入の進み方と関係している可能性があるということです。判断できる人がいない前提なら、設定や権限管理を任せられるサービスと支援体制を、選定条件に含めてください。
ただし非利用理由の最多は「必要がない」46.5%で、体制不足だけでは説明しきれません。規模の物差しも調査ごとに違うため、あくまで仮説として扱っています。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」
まとめ
文書管理のクラウド化について、公的統計から言えることを4点に整理します。
第一に、文書をクラウドに置くことは特別な選択ではありません。2025年調査時点で、クラウド利用企業の73.3%がファイル保管・データ共有に使っています。
第二に、論点は導入の可否から全社展開へ移りました。全社的にクラウドを利用する企業は2025年調査で60.0%です。この流れは、部署ごとの共有手段を全社共通の基盤へ集約する動きと重なります。
第三に、社内の反対意見の中心はセキュリティではありません。非利用理由の最多は「必要がない」46.5%で、増え続けているのはこの項目だけです。現状の運用で何が起きているかを見せることが先決です。
第四に、選定はコスト削減で組み立てないことです。コストを理由に挙げた企業は2025年調査で19.4%にとどまります。任せる範囲、移行対象、セキュリティ要件、運用体制の4点で判断してください。
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ここまで見てきたとおり、文書管理をクラウドに移しても、権限設計や持ち出しルール、利用者への教育は自社に残ります。こうした判断は独学で身につけにくく、新任やひとり情シスの方ほど、社内に相談相手がいないまま抱え込みがちです。
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※出典
- 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙1」
- 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」
- 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」
- 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
- 総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」
- 総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」
- 総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」
- 総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」
- 総務省「平成29年通信利用動向調査の結果」
- IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」
- IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 調査結果概要」

