【総務省データ】クラウドソリューションの全体像|利用率83.5%(2025年)で見る種類・用途・選定基準

「クラウドソリューション」という言葉、指している範囲が広くて説明しづらいですよね。ベンダーの資料を並べても、粒度がばらばらで比べにくいところがあります。次のような疑問が残る方も多いはずです。

  • クラウドソリューションとは、結局どこまでを指す言葉なのか
  • 種類が多すぎて、自社がどこから手をつけるべきか分からない
  • 他社はどの業務をクラウドに寄せているのか、数字で知りたい

総務省とIPAの公的データで、順に答えていきます。

この記事のポイント

  • クラウドサービスを利用している企業は2025年調査時点で83.5%で、論点は「導入するか」から「どう選び、どう管理するか」に移っている(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)」)
  • 2025年調査で用途はファイル保管・データ共有が73.3%で最多、利用企業1社あたり平均5.5用途を並行して使っている計算になる
  • 2025年調査で認証システムのクラウド利用は16.0%にとどまり、増えたアカウントを束ねる動きが追いついていない
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目次

クラウドソリューションは提供形態と利用形態の2軸で整理できる

クラウドの基本を整理

クラウドソリューションとは、インターネット経由で業務システムやITリソースを利用する仕組みの総称です。特定の製品ではなく、幅広いサービス群をまとめて呼ぶときに使われます。

整理するときは、提供形態と利用形態の2軸で見ると迷いにくくなります。提供形態はSaaS・PaaS・IaaSの3つで、事業者と利用者のどちらがどこまで管理するかが違います。

利用形態は、他社と共通の基盤を使うパブリック、自社専用に構成するプライベート、両者やオンプレミスを組み合わせるハイブリッドに分かれます。なお国際的に参照される定義であるNIST SP 800-145は、この3つに複数組織で共用するコミュニティクラウドを加えた4つを実装モデルとして挙げています。

個々のクラウドサービスの分類と代表例は、別の記事で整理しています。

なお総務省の統計上の正式名称は「クラウドコンピューティングサービス」です。一部の部門だけで使う企業も利用企業に含まれ、2025年調査時点の利用率83.5%はこの基準による数値です。

提供形態 利用者が使うもの 利用者が管理する範囲 例として想定される用途
SaaS 完成したアプリケーション データと利用者アカウントの設定 電子メール、会計、ファイル共有
PaaS アプリの実行環境 自社で載せるアプリケーションとデータ 自社開発アプリの稼働基盤
IaaS サーバーやストレージなどの基盤 OSより上のすべて 既存システムの移設、検証環境

提供形態の区分と管理範囲の考え方は、情報処理推進機構「NISTによるクラウドコンピューティングの定義」(NIST SP 800-145 日本語訳)にもとづきます。用途の例は本記事による整理です

提供形態はSaaS・PaaS・IaaSに分かれ、上位の用途ほど出来合いのアプリに寄っている

国内企業のクラウド利用は、出来合いのアプリケーションで完結する領域に寄っています。用途別の選択率を見ると、その偏りがはっきり出ています。

2025年調査で選択率が高いのは4つです。ファイル保管・データ共有73.3%、社内情報共有・ポータル61.4%、電子メール57.4%、給与・財務会計・人事56.3%が並びます。いずれも利用企業全体を分母として集計されています。

この4つは、いずれも買ってすぐ使えるアプリケーションで足りる領域です。ここから読み取れるのは、国内企業のクラウド利用がSaaS型の使い方から広がってきたという傾向です。

基盤を自前で組み立てる用途は2割に届かず、提供形態別の公的統計も存在しない

一方で、基盤を借りて自分たちで組み立てる性質の強い用途は、まだ2割に届きません。2025年調査でシステム開発・Webサイト構築は17.6%、認証システムは16.0%です。

ここで先に断っておきます。現行の通信利用動向調査には、SaaS・PaaS・IaaSという提供形態別の利用率を尋ねる設問がありません。総務省の情報通信白書がこの領域に触れる場合も、数値はIDCやMM総研といった民間調査からの引用です。そのためこの記事では、提供形態を数値で語らず、用途別の内訳で実態を代替します。

用途区分と提供形態は一対一で対応しないため、上の読み方はあくまで代理指標にもとづく傾向です。IaaS上に自社構築した会計システムも「給与、財務会計、人事」に計上されます。

注意

「国内企業の◯%がSaaSを利用」といった数値を見かけたら、出典が公的統計かどうかを確かめてください。現行の通信利用動向調査に提供形態別の設問はなく、公表されている提供形態別の数値の多くは民間調査によるものです。なお同調査には過去に「ASP・SaaSの利用状況」を尋ねる設問があり、e-Statに統計表が残っていますが、現行調査には設けられていません。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)」/総務省「同 別紙2」/総務省「令和5年版 情報通信白書」クラウドサービス/総務省「通信利用動向調査 企業編 ASP・SaaSの利用状況」(e-Stat)/情報処理推進機構「NISTによるクラウドコンピューティングの定義」

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クラウドサービスを利用する企業は2025年調査時点で83.5%に達している

導入はすでに標準に

企業のクラウド利用は、すでに例外ではなく標準です。総務省の通信利用動向調査によると、2025年調査時点でクラウドサービスを一部でも利用している企業は83.5%でした。

同じ2025年調査で83.4%という値も公表されています。これは無回答を含めて集計したもので、83.5%は無回答を除いた集計です。集計基準が違うだけで、どちらも同じ調査の数値です。

前年は80.6%でしたので、1年で2.9ポイント伸びた計算になります。8割を超えた段階では、伸びしろ自体が小さくなっている点も押さえておきたいところです。

ひとつ留保があります。この調査の対象は公務を除く常用雇用者100人以上の企業で、それより小さい企業は含まれていません。中小企業を含めた実態は、公的統計では空白のままです。

利用率は2010年の13.7%から15年で6倍近くに伸びた

長期で見ると、企業のクラウド利用は一本調子ではなく段階的に広がってきました。同じ通信利用動向調査の系列を節目の年で並べると、動きが分かりやすくなります。

調査年 利用している企業の割合
2010年 13.7%
2015年 44.0%
2016年 46.6%
2017年 56.9%
2021年 70.4%
2023年 77.7%
2025年 83.5%

出典: 総務省「通信利用動向調査」(e-Stat)/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)」。2019年・2020年は当社のデータベースに未収録のため掲載していません。2010〜2016年はe-Statの原統計表、2017年以降は総務省の公表資料から取っており、同一年でも集計の基準差で0.3〜0.6ポイントの開きが出ます

2010年の13.7%と2025年の83.5%を比べると、15年でおよそ6倍になった計算です(倍率は当社の計算値)。ただし2010年は総務省の公表資料では14.1%とされており、こちらを起点にすると5.9倍です。長期の推移は水準の目安として読んでください。

伸び方が一定でない点も見ておきましょう。2016年の46.6%から2017年の56.9%までは10ポイント以上動いています。2021年の70.4%以降は、年3ポイント前後で積み上がる形です。

ここから読み取れるのは、普及が一気にではなく段階的に進んできたという流れです。

企業のクラウドサービス利用率の推移(2010〜2025年)

効果を実感した企業は89.4%だが、その水準は数年ほぼ動いていない

利用企業の評価は高い水準で安定しています。2025年調査で「非常に効果があった」と答えた企業が36.0%、「ある程度効果があった」が53.5%で、合わせて89.4%でした。いずれも無回答を除く集計です。単純に足すと89.5%になりますが、資料側の端数処理により公表値は89.4%です。

前年の2024年調査でも、同じ2区分の合計は87.3%です。ただしこの87.3%は総務省の報告書に載る無回答を含む集計で、89.4%とは基準がそろっていません。同じ報告書の系列で並べると2023年87.9%、2024年87.3%、2025年88.8%となり、3年間ほぼ横ばいです。

この2つを並べて読み取れるのは、「効果があるかどうか」がもう導入判断の分かれ目になっていないということです。判断すべきなのは、どの業務に使い、誰が運用するかという中身のほうです。

クラウドサービスの利用効果(2025年)

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)」/総務省「同 別紙2」/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「平成23年通信利用動向調査の結果(概要)」/総務省「通信利用動向調査」(e-Stat)

利用率の差は業種よりも企業規模で大きく開いている

規模で開く利用の差

全体83.5%という平均値の内側には、まだ大きなばらつきがあります。結論から書くと、残っている差は業種よりも企業規模のほうが大きいです。

2025年調査(無回答を除く)で見ると、資本金50億円以上の企業は99.8%、資本金1000万円未満の企業は75.4%でした。同じ年の業種間の開きより、規模間の開きのほうが広くなっています。

自社の水準を測るときは、全体平均ではなく自社と同じ資本金規模の値と比べてください。以下の2つの見出しで、規模別と業種別の内訳を順に見ていきます。

資本金50億円以上は99.8%、1000万円未満は75.4%で24.4ポイントの差がある

規模による差は大きいものの、縮む方向に動いています。2025年調査(無回答を除く)の資本金規模別を、同じ資料に載っている前年の再集計値と並べます。

資本金規模 2024年 2025年
50億円以上 99.8% 99.8%
1000万円未満 61.5% 75.4%

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」(いずれも無回答を除く集計。2024年値は同資料内の再集計値)

2025年の両者の差は24.4ポイントです。一方で資本金1000万円未満の企業は1年で13.9ポイント伸びており、差は前年より縮んでいます。どちらの差分も当社の計算値です。

なお2025年に最も低いのは資本金1000万円未満ではなく、1000万円〜3000万円未満の74.8%です。規模別の最大差は50億円以上との25.0ポイントになります。

ここから読み取れるのは、大きい企業から順に飽和し、いま伸びているのは規模の小さい企業側だという流れです。ただし調査対象は常用雇用者100人以上の企業であり、資本金が小さくても従業員数はある程度の規模がある点には注意してください。

資本金規模別の利用率(2024年・2025年)

業種別は2025年単年で見ると最上位と最下位に17.9ポイントの差がある

業種別も差はありますが、規模別ほどではありません。2025年調査(無回答を除く)の主な業種を並べます。

産業分類 2025年の利用率
金融・保険業 96.2%
情報通信業 94.8%
運輸業・郵便業 78.3%

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」(無回答を除く集計)

最上位の金融・保険業96.2%と最下位の運輸業・郵便業78.3%の差は17.9ポイントで、これは当社の計算値です。規模別の24.4ポイントと比べると、業種による開きのほうが小さいことが分かります。

この表を2025年の単年でそろえたのには理由があります。2024年の業種別は集計基準の違う資料から取っているため、前年比較として並べられないからです。

注意

2024年調査の業種別は、情報通信業96.0%、金融・保険業93.1%、運輸業・郵便業72.6%です。ただし無回答の扱いが2025年の値と異なるため、そのまま並べると情報通信業だけ低下して見えます。これを実態の後退として読むことはできません。

産業分類別の利用率(2025年単年)

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」

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利用用途はファイル保管が73.3%で最多、1社が平均5.5用途を並行して使っている

広がる用途と使い道

ここからは、実際にどの業務がクラウドに載っているのかを見ていきます。ベンダー記事では業務領域の例が並びますが、選択率で見ると使われ方の濃淡がはっきりします。

2025年調査で選択率が高いのは6つです。ファイル保管・データ共有73.3%、社内情報共有・ポータル61.4%、電子メール57.4%が上位に並びます。

続くのは給与・財務会計・人事56.3%、スケジュール共有53.6%、データバックアップ46.4%です。分母はクラウドサービスを利用している企業です。

18区分すべての選択率を合計すると552.5%になり、利用企業1社あたり平均5.5用途を並行して使っている計算になります。この平均値は公表値ではなく、当社が選択率を合計して算出したものです。

上位6用途は5割前後に集中し、7位以下との間に段差がある

用途は上位群と下位群にきれいに分かれます。2025年調査の18区分を選択率の高い順に並べます。

利用しているクラウドサービスの内容 選択率(2025年調査)
ファイル保管・データ共有 73.3%
社内情報共有・ポータル 61.4%
電子メール 57.4%
給与、財務会計、人事 56.3%
スケジュール共有 53.6%
データバックアップ 46.4%
取引先との情報共有 26.8%
eラーニング 25.3%
営業支援 22.9%
プロジェクト管理 21.3%
システム開発、Webサイト構築 17.6%
受注販売 16.8%
購買 16.7%
生産管理、物流管理、店舗管理 16.4%
認証システム 16.0%
課金・決済システム 13.2%
その他 6.5%
研究・開発関係 4.6%

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」図表4-3(複数回答。分母はクラウドサービスを利用している企業)

6位のデータバックアップ46.4%と7位の取引先との情報共有26.8%の間に、約20ポイントの空白があります。上位6区分は業務の基本となる領域で、7位以下は業務の性質によって要否が分かれる領域です。

この段差から読み取れるのは、多くの企業がまず共通基盤を載せ替え、その先は自社の業務に応じて選んでいるという順序です。

利用しているクラウドサービスの内容 18区分(2025年)

1年で6用途の選択率合計が16.1ポイント増え、用途の広がりが進んでいる

用途は着実に増えています。前年と同一基準で比較できる6用途を並べます。

用途 2024年 2025年
ファイル保管・データ共有 71.0% 73.3%
社内情報共有・ポータル 57.6% 61.4%
電子メール 56.8% 57.4%
給与、財務会計、人事 52.1% 56.3%
スケジュール共有 51.1% 53.6%
データバックアップ 43.7% 46.4%

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」図表4-3(2024年値は同資料に併記された速報改定値)

6用途の選択率を合計すると、2024年332.3%から2025年348.4%へ16.1ポイント増えました(合計と差分は当社の計算値)。同じ期間の全体利用率の伸びは80.6%から83.5%の2.9ポイントです。

この差から読み取れるのは、増加が新規導入企業だけでは説明できないということです。すでに使っている企業が用途を広げた動きも重なっていると考えられます。

ただし用途別の分母である利用企業自体が1年で増えているため、既存企業の拡大分だけを切り分けることはできません。平均5.5用途もサービス本数の下限の目安であり、1本のサービスが複数区分にまたがっている可能性があります。

主要6用途の選択率 2024年対2025年

認証システムのクラウド利用は16.0%にとどまり、ID管理がサービスごとに分散している

ここがこの記事でいちばんお伝えしたい点です。用途が広がる一方で、その入口を束ねる仕組みは追いついていません。

2025年調査の上位4用途は、いずれも5割を超えています。ファイル保管・データ共有73.3%、社内情報共有・ポータル61.4%、電子メール57.4%、給与・財務会計・人事56.3%です。

つまり、系統の違うサービスを同時に使っている企業が多数派だということです。

一方で認証システムをクラウドで使っている企業は16.0%、およそ6社に1社にとどまります。サービスを1本増やすたびに、IDの発行と権限設定、退職時の削除が個別に発生する状態が標準になっています。

選定でサービス単体の機能比較に集中すると、増えたアカウントを誰がどう棚卸しするかという問題が後から残ります。なお認証システムのクラウド利用が16.0%であることは、ID管理をしていないことを意味しません。オンプレミスのディレクトリサービスで統合している企業は、この設問には計上されないからです。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)」

導入の動機は「場所を選ばない」が50.7%で、コスト削減は19.4%にとどまる

導入の決め手を知る

クラウドのメリットというと、コスト削減が最初に挙がりがちですよね。ところが利用企業に理由を聞いた結果は、その並びと食い違います。

2025年調査で最も多かった理由は「場所、機器を選ばずに利用できるから」で50.7%でした。一方「既存システムよりもコストが安いから」は19.4%で、下位にとどまっています。

オンプレミスとの比較でも、判断軸になっているのは費用そのものより働き方と運用体制です。両者の違いを整理したい方は、オンプレミスとクラウドの違いを扱った記事もあわせて読んでみてください。

上位理由は働く場所の自由度と保守体制の外出しで、拡張性の項目が6.8ポイント伸びた

利用理由の上位は、場所の自由度と社内で持たない選択に集まっています。2025年調査の理由を、同じ資料の前年値と並べます。

クラウドサービスを利用する理由 2024年 2025年
場所、機器を選ばずに利用できるから 50.2% 50.7%
安定運用、可用性が高くなるから 40.4% 45.1%
資産、保守体制を社内に持つ必要がないから 42.6% 42.8%
災害時のバックアップとして利用できるから 40.2% 38.7%
サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策) 32.3% 35.0%
システムの容量の変更などに迅速に対応できるから 30.9% 32.6%
システムの拡張性が高いから(スケーラビリティ) 22.1% 28.9%
既存システムよりもコストが安いから 19.1% 19.4%

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」図表4-4(複数回答、無回答を除く集計)

最も伸びたのは「システムの拡張性が高いから(スケーラビリティ)」で、22.1%から28.9%へ6.8ポイント増えました。次いで「安定運用、可用性が高くなるから」が40.4%から45.1%へ4.7ポイント増えています(差分は当社の計算値)。逆に「災害時のバックアップとして利用できるから」は40.2%から38.7%へ下がっています。

読み取れるのは、非常時の備えという位置づけから、平常時の可用性と拡張性を支える基盤という位置づけへ、評価の重心が動いていることです。

クラウドサービスを利用する理由 2024年対2025年

コストは導入の動機ではなく、未導入企業側の障壁として現れる

コストは、導入後に評価される便益ではなく導入前の壁として出てきます。数字の位置が、利用企業と未利用企業で逆になっています。

利用企業で「既存システムよりもコストが安いから」を挙げたのは、2025年調査で19.4%、2024年調査で19.1%です。2年続けて理由の最下位にとどまっています。

一方、2025年調査で未利用企業が挙げた理由は様子が違います。「クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい」が28.7%で2番目に多いのです。

つまりコストは、移行時に一度だけ立ちはだかる費用として意識されているわけです。稟議でコスト削減を前面に出すと、実際に使い始めた企業の評価とずれた説明になります。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」

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未導入企業に残る壁は技術的な不安ではなく必要性の認識である

導入しない理由とは

クラウドのデメリットとして、セキュリティ不安を挙げる解説は多いです。実データで見ると、その位置づけは思ったほど高くありません。

2025年調査で未利用企業が挙げた理由の最多は「必要がない」で46.5%でした。「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」は26.6%です。

壁は技術ではなく、必要性の判断のほうにあります。

未利用の理由は「必要がない」が46.5%で最多、セキュリティ不安は26.6%

未利用企業の回答は、必要性とコストに寄っています。2025年調査の非利用理由を多い順に並べます。

クラウドサービスを利用しない理由 選択率(2025年調査)
必要がない 46.5%
クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい 28.7%
情報漏えいなどセキュリティに不安がある 26.6%
ネットワークの安定性に対する不安がある 13.1%
ニーズに応じたアプリケーションのカスタマイズができない 6.6%

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6(複数回答。分母はクラウドサービスを利用していない企業)

技術面の不安は下位です。ネットワークの安定性は13.1%、カスタマイズができない点は6.6%にとどまります。

ここから読み取れるのは、社内でクラウド化を提案するときに崩すべき論点が、技術的な安全性の説明ではないということです。必要性の説明と、移行費用の見積もりのほうが効きます。

ただしこれは、導入後のセキュリティ対策が不要という意味ではありません。IPAは「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」を公開しており、設定内容や責任範囲の確認は導入後も必要です。

クラウドサービスを利用しない理由(2025年・未利用企業n=150)

未利用企業の回答は150社分で、順位を細かく読み込むことはできない

この表の読み方には注意が必要です。利用率が83.5%まで上がった結果、非利用理由に答えた企業は150社まで減っています。

150社が母数なら、46.5%と28.7%の差はおよそ27社分です(社数は当社の計算値)。2位の28.7%と3位の26.6%の差は数社の回答で入れ替わる規模で、順位に意味を持たせることはできません。

編集上の判断としてお伝えすると、未導入企業の実像を公的統計で精緻に語れる段階はすでに過ぎています。上位2つと最下位の開きは方向として読めますが、細かい順位は目安として扱ってください。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/情報処理推進機構「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」

選定では機能比較より先に、増えるアカウントと止まったときの運用を決める

選定と運用のコツ

ここまでのデータを、選定の判断材料に落とし込みます。押さえたいのは、アカウント管理、停止時の運用、担当者の3点です。

移行の手順そのものは、現状の棚卸し、対象業務の切り出し、移行方式の選定、テスト、切り替えという流れが一般的です。ただ、この手順を回す前に決めておかないと後戻りする論点があります。それが上の3点です。

認証システムのクラウド利用が16.0%という現状は、多くの企業でアカウントの統合が後回しになっていることを示します。人材面では、IPAの2025年調査でDXに取り組む企業の52.8%が必要なスキルを把握できていないと答えています。

用途が増える前提でアカウント管理の方針を先に決める

1本目を選ぶときから、5本目以降を想定しておいてください。2025年調査の18区分から計算すると、利用企業は平均5.5用途を並行して使っています。

サービスが増えるたびに、IDの発行、権限の設定、異動時の変更、退職時の削除が積み上がります。ところが認証システムのクラウド利用は16.0%にとどまります。上位4用途のファイル保管73.3%、社内情報共有61.4%、電子メール57.4%、給与・財務会計・人事56.3%とは大きく開いています。

個別サービスの機能比較の前に、既存の認証基盤に載せられるかを確認しましょう。シングルサインオンやアカウントの自動連携に対応しているかどうかは、後から変更しにくい条件です。導入後のクラウドサービスの運用体制まで見据えて決めておくと、棚卸しの負担が軽くなります。

停止時の代替案と責任範囲を契約前に確認する

サービスが止まったときの動き方は、契約前に決めておく論点です。未利用企業はセキュリティ不安26.6%、ネットワークの安定性への不安13.1%を挙げていました。これは、止まったときの決め方が見えないことの裏返しでもあります。

IPAは「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織編解説書で、クラウド利用にあたっての対策を4点挙げています。このうち3点は契約前に確認しておく項目で、残る1点は運用開始後に継続して確認する項目です。

クラウド利用時に確認したい4点(IPAが挙げる対策)

  • 選定前の事前調査を行い、ガイドラインに沿った運営をしている事業者・サービスを選ぶ
  • インシデントが発生したときの責任範囲を明確にしておく
  • クラウドが停止したときの代替案を準備しておく
  • 仕様変更の更新情報を常に確認し、意図せず変更された設定を適切な状態に修正する

参考: 情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編 解説書(表1.3 情報セキュリティ対策の基本+α)

この4点は、提案書の比較表には出てこない項目です。事業者の説明を待つのではなく、こちらから質問して回答を残しておいてください。

運用を誰が引き受けるかを、人材の制約から逆算する

最後は担当者の話です。選定の巧拙よりも、運用を引き受けられる体制があるかどうかで結果が変わります。

IPAの「DX動向2026」に手がかりがあります。2025年調査時点で、DXに取り組む企業の52.8%が「DX推進に必要なスキルを把握できていない」と回答しています。母集団はDXに取り組む企業です。

同じ調査では、スキルを把握できていない企業の64.0%が人材の「質」の大幅な不足を訴えています。把握できている企業の40.6%を大きく上回る水準です。

ここから読み取れるのは、不足感の強さが必要スキルの把握状況と結びついているということです。まず運用に必要なスキルを書き出し、そのうえで自社で持つか外部に委ねるかを決める順序をおすすめします。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/情報処理推進機構「DX動向2026」/情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編 解説書

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まとめ|クラウドソリューションは選定と運用管理をあわせて検討する

次の一歩を考える

この記事で見てきた点を振り返ります。

  • クラウドサービスを利用している企業は2025年調査時点で83.5%で、導入の是非はすでに論点ではない
  • 2025年調査で残っている差は業種より企業規模が大きく、資本金50億円以上は99.8%、1000万円未満は75.4%
  • 2025年調査で用途は広がる一方、認証システムのクラウド利用は16.0%にとどまり、アカウントの統合が追いついていない

まず手をつけるなら、いま社内で使っているクラウドサービスの本数と、それぞれのアカウント数を数えるところからです。用途を1本増やす判断は、その棚卸しのあとでも遅くありません。

クラウドの選定と運用を担う人材育成なら「情シスカレッジ」

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この記事で見てきたとおり、クラウドソリューションの成否は、選定後のアカウント管理や運用体制に左右されます。そしてその運用を回すのは、現場の担当者一人ひとりのスキルです。

「情シスカレッジ」は、新人・ひとり情シスのためのマイクロラーニングLMSです。数分の動画と小テストで、日々の業務の合間に少しずつ学べる形になっています。

情シスカレッジの特徴

  • 数分の動画と小テストで進めるマイクロラーニング形式
  • 必修の割り当て・期限設定・進捗ダッシュボードで受講状況を管理できる
  • 自社カリキュラムの編成と、CSVでの教育記録の出力に対応

導入は5名から可能で、請求書払いにも対応しています。初期設定はおよそ10分で完了します。

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