【総務省・IPAデータ】社内FAQの作り方5ステップ|DXに取組む企業の85.5%が人材不足の今、情シスが最初に載せる質問(IPA 2025年度)

情シスとして働いていて、こんな状態になっていませんか。
- 同じ質問に何度も答えていて、自分の作業がいつまでも進まない
- 社内FAQを作りたいが、何から手をつければいいか分からない
- 作ったところで、どうせ使われないのではと不安がある
結論から書きます。社内FAQは、過去の問い合わせ履歴から質問を集めるところから始めるのが確実です。 想像で質問を並べたFAQは、実際に来る質問とずれるため使われません。
この記事では、総務省・経済産業省・IPAの公的調査を根拠に、社内FAQの作り方を5つのステップに分けて説明します。ツールの比較や製品の紹介はしません。
この記事のポイント
- 社内FAQの作り方は5ステップ。「集める → 絞る → 書く → 置く → 更新する」の順に進めます
- 最初に載せる質問は想像で作らず、直近3か月の問い合わせ履歴から選びます
- 人を増やして対応する前提は成り立ちにくくなっています(DXに取組んでいると回答した企業のうち、人材の「量」が不足していると答えた企業は2025年度時点で85.5%。出典: IPA「DX動向2026」)
この記事を読み終えると、明日どの履歴を開き、どの質問から書き始めればよいかが決まります。
社内FAQは、情シスへの問い合わせを従業員が自分で解決できる形に置き換える仕組み

社内FAQとは、社内から寄せられる質問と、その回答を1問1答でまとめたものです。マニュアルとの違いは、質問する側の言葉から引ける点にあります。
マニュアルは業務の流れに沿って書かれるため、「パスワードを忘れた」という状態からは探しにくいですよね。社内FAQは質問文がそのまま見出しになるので、困っている本人が自分で答えにたどり着けます。
つまり社内FAQは、問い合わせ対応を担うヘルプデスクの仕事のうち、繰り返し発生する部分を先回りして文書にしたものです。
まずは、その社内FAQを置く土台がどれだけ広がっているかを、公的な調査で確認します。
クラウド利用企業のうち社内情報共有・ポータル用途は2018年40.5%から2025年61.4%に伸びている
社内FAQを始めるにあたって、置き場所を新しく調達する必要がある企業は多くありません。FAQを載せられる基盤は、すでに広く普及しているからです。
総務省「令和7年通信利用動向調査」は、常用雇用者100人以上の企業を対象としています。この調査では、クラウドサービスを利用している企業が2025年時点で83.5%でした。
そのクラウド利用企業のうち、用途として「社内情報共有・ポータル」を挙げた企業は61.4%にのぼります。
同じ指標は、2018年時点では40.5%でした。社内向けの情報共有をクラウドで行う企業が、この数年で大きく増えたことが分かります。
すでに社内ポータルがあるなら、FAQはその中に1ページ増やすところから始められます。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」(いずれもクラウドサービス利用企業が母数。各年の公表資料に基づくため、無回答の扱いなど集計基準の違いにより資料間で0.1ポイント程度の差が生じます)
テレワーク導入50.1%とクラウド利用83.5%により「隣の席で聞く」が成立しない前提が定着した(2025年調査)
先に事実を確認します。総務省の2025年調査によると、常用雇用者100人以上の企業でテレワークを導入しているのは50.1%でした。クラウドサービスを利用している企業は83.5%にのぼります。そのうち社内情報共有・ポータル用途は61.4%です。働く場所の分散と情報のクラウド化が同時に進む、という状態が生まれています。
この3つの数値から読み取れるのは、質問の発生する形が口頭から非同期のテキストへ移っている点です。隣の席で聞けない相手からの質問は、チャットやメールで届きます。 人が都度答えを返す運用より、検索して自己解決できる形に置き換えるほうが、いまの環境には合っているでしょう。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙1」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」
注意
テレワーク導入率・クラウド利用率・社内情報共有用途の3つは、同じ調査の別々の設問です。同一の企業で3つの条件が重なっているかまでは、公表データからは確認できません。またテレワーク導入率は制度の有無を尋ねたもので、実際の利用頻度は示されていません。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙1」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」
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情シスが社内FAQを必要とする背景には、2018年から続く構造的な人材不足がある

社内FAQが必要なのは、単に「いまが忙しいから」ではありません。情シスの人手不足は、テレワークやDXが広がる前から始まっていた構造的な問題です。
総務省の2018年調査では、情報通信ネットワークを利用する企業の44.4%が「運用・管理の人材が不足」を問題点に挙げていました。コロナ禍より前の数値です。
ここでは、その不足が「いつから」「どんな形で」続いているのかを3つの調査から確認します。上司にFAQ整備の必要性を説明するときの材料にもなります。
ネットワークの運用・管理の人材不足は2018年時点で44.4%、1年で7.1ポイント上昇していた
情シスの負荷は、最近の環境変化だけで生まれたものではありません。悪化局面に入ったのは、少なくとも2018年の時点です。
総務省「平成30年通信利用動向調査」では、ネットワーク利用上の問題点を複数回答で尋ねています。「運用・管理の人材が不足」を選んだ企業は44.4%で、前年から7.1ポイント上昇しました。
この数値から読み取れるのは、問い合わせ対応の属人化が一時的な繁忙ではないという点です。テレワークの普及やDXの号令より前から、人員制約は積み上がっていました。
なお、この設問は最新の令和7年通信利用動向調査の報告書(企業編)には見当たらず、2019年以降を同じ系列で追うことはできません。上昇がその後も続いたかどうかは、このデータからは断定できません。
出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」(情報通信ネットワーク利用企業、複数回答)
DX人材は2025年度時点で量85.5%・質88.8%が不足し、質の不足感は前年から上昇している
近年の調査では、不足の中身が「頭数」から「求める水準に届くかどうか」へ移っています。そして質の不足感のほうが、量より高い水準にあります。
IPA「DX動向2026」の数値は次のとおりです。いずれも、DXに取組んでいると回答した企業が母数です。
| 不足している対象 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|
| 人材の「質」 | 86.1% | 88.8% |
| 人材の「量」 | — | 85.5% |
出典: IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)。「量」の2024年度は本記事では扱いません。
質の不足感は2024年度の86.1%から2025年度の88.8%へ上がり、量の85.5%を上回りました。
ただしIPAは、「大幅に不足している」と回答した企業の割合は「量」「質」とも前年から減少しており、不足感はやや解消傾向にあると総括しています。9割近くが不足を感じる状況そのものは変わっていない、という位置づけです。
この推移から読み取れるのは、採用で埋まる部分と埋まらない部分が分かれてきた点です。だとすれば必要なのは、人数を足すことより、いま持っている知識を再利用できる形にすることでしょう。社内FAQは、その最も手軽な形にあたります。

出典: IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)
注意
この調査の母数は「DXに取組んでいると回答した企業」で、日本の企業全体を対象にした割合ではありません。経年も2024年度と2025年度の2時点しかなく、この間の上昇が年次の変動を超えているとまでは言えない点に留意してください。
出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」/IPA「DX動向2026」
ひとり情シス・少人数情シスほど、増員より知識の仕組み化が現実的な打ち手になる

ここまでの数値は、企業規模によって読み方が変わります。小さい組織では、不足の中身が大企業とは違うからです。
IPA「DX動向2026」の2025年度調査を見てみます。従業員100人以下の企業でも、DX推進人材の「量」が不足していると回答した割合は6割超でした。母数はDXに取組んでいると回答した企業です。
少人数だから不足を感じていない、ということはありません。
このセクションでは、規模別の差と、IT人材の将来推計の2つから、増員以外の打ち手を検討する理由を整理します。
従業員100人以下では量の不足6割超に対し質の不足7割超と、大企業とは課題の中身が違う(2025年)
小規模な組織では、人数の話より「一人が対応できる範囲」の話が重くなります。量より質の不足感が上回るのは、100人以下の企業だけに見られる特徴です。
IPA「DX動向2026」の2025年度調査で、DXに取組んでいると回答した企業を従業員規模で分けると、次のようになります。
| 従業員規模 | 「量」が不足 | 「質」が不足 |
|---|---|---|
| 301人以上 | 9割超 | 9割超 |
| 100人以下 | 6割超 | 7割超 |
出典: IPA「DX動向2026」(2025年度調査、DXに取組んでいると回答した企業が対象)
301人以上では量・質とも9割超で差が見えませんが、100人以下では質の7割超が量の6割超を上回ります。
この差から読み取れるのは、規模が小さいほど課題の重心が「人数を増やす」から「一人が扱える範囲を広げる」へ移るという点です。ひとり情シスなら、増員を前提にした運用設計より、問い合わせ対応の効率化を仕組みで進めるほうが現実的でしょう。

出典: IPA「DX動向2026」(2025年度調査、DXに取組んでいると回答した企業が対象)
注意
「9割超」「6割超」「7割超」はいずれも報告書の丸めた表現で、実数値は公開されていません。そのため差の大きさを正確に比較することはできません。
2030年に従来型IT人材は9.7万人の供給過多と試算される一方、企業の人材不足感は85.5%に達している
採用で解決しようとする発想は、市場全体の見通しと噛み合いません。人が余ると試算される区分でも、個々の企業が採用できるとは限らないからです。
経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)の標準シナリオでは、IT人材の需給を次のように試算しています。
- 需給ギャップは対象年2018で22万人
- 対象年2030では44.9万人へ拡大
- うち先端IT人材は54.5万人の不足
- 一方で従来型IT人材は9.7万人の供給過多
出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書(2019年公表・将来推計)
いずれも将来推計で、確定値ではありません。先端IT人材と従来型IT人材の内訳は、IT需要の伸びを「中位」と置いた前提での試算です。一方、IPAの2025年度調査では、DXに取組んでいると回答した企業の85.5%が人材の「量」の不足を挙げています。調査主体も指標の性質も異なるため、直接比較はできません。
それでも2つを並べて読み取れるのは、市場全体の余剰が個社の採用のしやすさを意味しないという点です。定型的な問い合わせ対応を採用で解こうとする発想は、機能しにくいと考えられます。

出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書(2019年公表・将来推計)
出典: IPA「DX動向2026」/経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書
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社内FAQの作り方は5つのステップで進める

ここからが本題です。社内FAQは、質問を集めるところから始めて、更新ルールを決めるところで完成します。
先にツールを選ぼうとすると、載せる中身が決まらないまま導入だけが終わってしまいます。2018年時点で44.4%の企業が運用・管理の人材不足を挙げていたように、手をかけ続ける余力は多くありません。だからこそ、少ない工数で回る順序で進めます。
社内FAQの作り方 5ステップ
- ステップ1: 集める — 過去の問い合わせ履歴から、実際に来た質問を書き出す
- ステップ2: 絞る — 頻度と自己解決できるかの2軸で、最初に載せる質問を決める
- ステップ3: 書く — 1問1答の形式で回答を書く。下書きには生成AIを使ってよい
- ステップ4: 置く — 検索できる1か所にまとめて公開する
- ステップ5: 更新する — 問い合わせが来るたびに追記するルールと担当者を決める

ステップ1では、過去の問い合わせ履歴から実際に来た質問を集める
最初の作業は、質問を考えることではありません。すでに来た質問を、履歴から拾い出すことです。
理由はシンプルで、問い合わせの実態を示す公的なデータが存在しません。総務省の調査から分かるのは、2018年時点で44.4%の企業が運用・管理の人材不足を問題点に選んだ、という事実までです。
IPAの2016年調査では、セキュリティ要員が不足していると答えた担当者が54.9%いました(従業員300人以上の企業が対象)。どちらも主観を尋ねた指標にとどまります。
この点から言えるのは、あなたの会社に何がどれだけ来ているかを示す一次データは、自社の履歴しかないということです。集める対象は次の3つで十分です。
- 情シス宛のメールの受信箱(直近3か月分)
- チャットツールの情シス向けチャンネルやダイレクトメッセージ
- 問い合わせフォームやチケット管理ツールの記録
期間は直近3か月を目安にしてください。それより古い質問は、環境が変わって前提が合わなくなっていることがあります。
ステップ2では、頻度と自己解決できるかの2軸で載せる質問を絞り込む
集めた質問をすべて書く必要はありません。最初に載せるのは、何度も来ていて、かつ手順を読めば本人が実行できる質問です。
ここで参考になるのが、人数の不足と体感の不足のずれです。IPAは2011年に全国推計を行っています(従業員100人以上の企業が対象)。社内向け情報セキュリティの専任人材は約23万人で、その不足数は約2.2万人とされていました。
一方、2016年調査では54.9%の担当者が、要員は不足していると回答しています。
この食い違いから読み取れるのは、情シスの負荷が頭数だけでは説明できないという点です。不足している人数は現有人員の1割前後にとどまるのに、現場の半数以上が足りないと感じているからです。
突発的に入る質問は、対応時間そのものより作業の中断を生みます。なお両者は年次も母集団も異なるため、因果ではなく解釈として受け取ってください。
つまりFAQで減らせるのは総工数よりも中断の回数です。だから絞り込みは次の順で行います。
- 同じ内容が3回以上来ている質問を先に選ぶ
- そのうち、手順を読めば依頼者本人が実行できるものを残す
- 個別判断や承認が必要なものは、申請先の案内だけを載せる
ステップ3では、1問1答の形式で回答を書き、生成AIを下書きに使う
回答を書く作業に、新しいツールの調達は必要ありません。多くの企業は、文章を作る道具をすでに持っています。
総務省「令和7年版情報通信白書」によると、2024年時点で何らかの業務に生成AIを利用している日本企業は55.2%にのぼります。白書が挙げる業務区分のうち最も割合が高いのは「メールや議事録、資料作成等の補助」で47.3%でした。
ここから読み取れるのは、FAQ整備の障壁がツールの調達ではなく「どの質問を載せるか」という設計側にあるという点です。ステップ2で質問が決まっていれば、手順を文書に落とす作業は下書きから始められます。
回答は次の型で統一すると、書く側も読む側も迷いません。
- 1行目に結論(できる/できない、どこで手続きするか)
- 次に手順を番号付きで3〜5行
- 最後に「解決しない場合の連絡先」と、その際に伝えてほしい情報
生成AIに下書きさせた文章は、必ず自分で事実確認してから公開してください。社内の設定値や申請先は、AIが正しく知らない情報です。
ステップ4では、クラウドの社内ポータルなど検索できる1か所に置く
置き場所は、凝った仕組みより「1か所であること」が優先です。分散した時点で、検索されなくなります。
総務省の2025年調査では、クラウドサービスを利用する企業が83.5%でした。そのうち社内情報共有・ポータル用途で使っている企業は61.4%です。
2018年時点の40.5%から大きく伸びました。新しい調達をしなくても置き場所がある企業のほうが多いといえます。
ここでも効いてくるのが、質問が非同期のテキストで届くという前提です。その場で聞けない相手が自分で探せるよう、置き場所は次の3条件を満たすところにします。
- 全文検索ができること(ファイル名だけでなく本文が引っかかる)
- 全従業員がアクセスできること(申請なしで閲覧できる)
- 更新の権限と担当が明確なこと(誰でも書き換えられる状態にしない)
特定の製品を選ぶ必要はありません。いま使っているポータルやドキュメント共有の仕組みが3条件を満たすなら、それで始めてください。
ステップ5では、問い合わせが来るたびに追記する更新ルールを決める
社内FAQは、公開した時点が完成ではありません。更新の手順を決めていないFAQは、数か月で実態と合わなくなります。
根拠になるのは、求められる知識の水準が動き続けているという事実です。IPA「DX動向2026」で、人材の「質」が不足していると答えた企業の割合を見てみます。2024年度の86.1%に対し、2025年度は88.8%でした(DXに取組んでいると回答した企業が対象)。
ここから読み取れるのは、必要な知識の中身が入れ替わり続けているという点です。扱う仕組みが変われば、FAQに書いた手順も同じ速さで古くなります。
運用ルールは、次の3つだけ決めておけば十分です。
- FAQに載っていない質問に答えたら、その日のうちに追記する
- 月に1回、掲載済みの手順が実態と合っているか棚卸しする
- 更新の担当者を1名決め、FAQの冒頭に名前を書いておく
担当者を明記するのは、読む側が「この情報はいつの誰のものか」を判断できるようにするためでもあります。
出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙1」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和7年版情報通信白書」/IPA「DX動向2026」/IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」別紙/IPA「情報セキュリティ人材の育成に関する基礎調査」報告書
最初に載せる質問は、クラウド・テレワーク・生成AIの3領域から選ぶと当たりやすい

履歴を開いても質問が多すぎて絞れない、ということもありますよね。そのときは、環境の変化が大きい領域から選ぶと外しにくくなります。
2025年時点で、常用雇用者100人以上の企業のクラウドサービス利用は83.5%、テレワーク導入は50.1%でした。従業員が新しく触れる仕組みが増えれば、そのぶん質問も増えます。
ポイント
- クラウド: 2025年時点の利用企業は83.5%。アカウント発行や権限申請の質問が出ます
- テレワーク: 2025年時点の導入企業は50.1%。社外からの接続に関する質問が出ます
- 生成AI: 2024年時点の業務利用は55.2%。入力してよい情報の範囲を問う質問が出ます
クラウド利用83.5%・テレワーク導入50.1%の環境では、アカウントと接続の質問が中心になる(2025年調査)
まず狙うべきは、アカウントと接続まわりです。この2つは全員が毎日使うため、質問の絶対数が多くなります。
総務省の2025年調査では、クラウドサービスを利用している企業が83.5%、テレワークを導入している企業が50.1%でした。クラウド利用企業のうち、社内情報共有・ポータル用途は61.4%です。
社外から社内の仕組みにつなぐ機会が、それだけ日常的になっています。
質問が非同期のテキストで届く前提に立つと、その場で口頭確認できない内容ほど文書化の価値が高くなります。最初に載せる質問は、たとえば次の4件です。
- パスワードを忘れたときのリセット手順を知りたい
- 社外から社内システムに接続する方法を知りたい
- 共有フォルダの閲覧権限を追加してほしいときの申請先を知りたい
- 業務で使うSaaSのアカウントを新しく発行してほしい
回答は、1件目ならこう書きます。
結論: 自分でリセットできます。手順: ①ログイン画面の「パスワードを忘れた方」を選ぶ ②社用メールアドレスを入力する ③届いたメールのリンクから再設定する。それでも解決しない場合: 情シス宛に、社員番号と表示されたエラー文言を添えて連絡してください。
生成AIを業務で利用する企業が55.2%に達し、利用ルールに関する質問が新しく発生している(2024年調査)
もう1つ押さえたいのが、生成AIの使い方に関する質問です。利用が広がった結果、「使ってよいかどうか」を情シスに確認する問い合わせが増えています。
総務省「令和7年版情報通信白書」によると、2024年時点で何らかの業務に生成AIを利用している日本企業は55.2%でした。白書が挙げる業務区分のうち最も割合が高いのは文書作成の補助で47.3%です。業務で扱う文章をそのまま入力する場面が多い、ということでしょう。
ここから読み取れるのは、質問の中身がツールの操作方法ではなく、入力してよい情報の範囲に向かうという点です。「議事録を生成AIに貼り付けてよいか」といった質問が想定されます。回答は自社の利用ルールを参照する形にとどめ、一般論でよい・悪いを断定しないでください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙1」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「令和7年版情報通信白書」
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社内FAQが使われなくなる主因は、更新の停止と置き場所の分散にある

作ったFAQが使われなくなるのには、はっきりした原因があります。更新が止まることと、置き場所が散らばることの2つです。
裏を返せば、この2つを避けるだけで定着の確率は上がります。総務省の2025年調査では、クラウド利用企業の61.4%が社内情報共有・ポータル用途でクラウドを使っていました。集約先として使える基盤は、すでに広がっているといえるでしょう。
以下、それぞれが何を引き起こすのかを順に見ていきます。
置き場所が分散すると検索されなくなるため、社内情報共有・ポータルに集約する
FAQは、探す場所が2つ以上あった時点で使われなくなります。従業員は探すより情シスに聞くほうが早いと判断するからです。
総務省の調査では、クラウド利用企業のうち社内情報共有・ポータル用途を挙げた企業が増え続けています。2018年の40.5%に対し、2025年は61.4%でした。集約先として使える基盤は、多くの企業ですでに手元にあります。
移行では、ファイルサーバーやチャットに散らばる手順書を一覧にし、ポータル上のFAQへ内容を移し、元の場所にはリンクだけを残してください。
集約が終わったら、ポータルのトップに「情シスへの質問と回答」という導線を置き、入口を1つに固定します。
ポイント
- FAQの入口は1つに絞る。複数あると従業員は探すのをやめます
- 集約先はクラウドの社内ポータルが現実的(2025年時点でクラウド利用企業の61.4%が同用途で利用)
- 元の手順書はすぐ消さず、リンクだけを残してから整理します
更新担当が決まっていないFAQは、知識が動き続けるなかで急速に陳腐化する
もう1つの原因は、更新の担当が決まっていないことです。担当が空席のFAQは、誰も直さないまま古い手順が残り続けます。
IPA「DX動向2026」では、人材の「量」が不足していると答えた企業が2025年度時点で85.5%でした。「質」が不足していると答えた企業は88.8%です(DXに取組んでいると回答した企業が対象)。
質の不足感は、2024年度の86.1%から上がっています。
この構図から読み取れるのは、求められる知識の中身が動き続けているという点です。扱う仕組みが入れ替われば、FAQに書いた画面名も申請先も実態と合わなくなります。
更新担当を決めていない場合に起きることは、だいたい決まっています。古い手順どおりに操作した従業員がエラーに遭い、結局は情シスへ問い合わせが来るのです。そして「FAQは当てにならない」という評価が定着し、次からは誰も見に行きません。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」/総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」/IPA「DX動向2026」
社内FAQの効果は公的統計に指標が存在しないため、自社の問い合わせ件数で測る

最後に効果測定です。結論から書くと、社内FAQの効果を公的データで裏づけることは、現時点ではできません。
理由は、公的統計が情シスの負荷を主観でしか測っていないからです。この記事で使った数値も、すべて認識を尋ねたものでした。総務省の2018年調査の44.4%が表すのは、運用・管理の人材が足りないと感じた企業の比率にすぎません。IPAの2016年調査でも、セキュリティ要員が不足していると答えた担当者は54.9%にのぼりました。2025年度に人材の「量」の不足を挙げたDX取組企業は85.5%にのぼります。いずれも認識を集計した数値です。
月に何件の問い合わせが発生し、1件あたり何分かかっているかという実数は、本記事のリサーチでは公的統計に見つけられませんでした。だからこそ、他社の記事にある「◯%削減できます」という表現は使いません。代わりに、自社で測ってください。手順は3つです。
- FAQを公開する前の4週間、問い合わせ件数を数える(メール・チャット・チケットの合計)
- 公開後も同じ基準で4週間数える
- そのうち「FAQに載せた質問が再び来た件数」を分けて数える
3つ目が重要です。全体の件数が減らなくても、掲載済みの質問が減っていればFAQは機能しています。逆に掲載済みの質問が来続けるなら、置き場所が知られていないか、書き方が分かりにくい可能性が高いでしょう。
注意
「公的な指標が存在しない」というのは、本記事のリサーチで確認できなかったという意味です。準公的団体の調査や、公表されていない設問に該当データがある可能性は残ります。自社の計測値も、繁忙期や組織変更の影響を受けるため、単月の増減だけで判断しないでください。
出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」/IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」別紙/IPA「DX動向2026」
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まとめ:社内FAQは問い合わせ履歴から5ステップで作り、更新担当を決めて運用する

社内FAQの作り方を、あらためて整理します。集める → 絞る → 書く → 置く → 更新する、の5ステップです。
出発点は過去の問い合わせ履歴です。直近3か月分から頻度が高く自己解決できる質問を選び、検索できる1か所に集約し、更新の担当者を1名決めておきます。
この記事の要点
- 情シスの人手不足は構造的な問題です。2018年時点で44.4%の企業が「運用・管理の人材が不足」を挙げていました(出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」)
- 不足の中身は量から質へ移っています。DXに取組んでいる企業のうち、2025年度時点で量85.5%・質88.8%が不足と回答しました(出典: IPA「DX動向2026」)
- 小規模な組織ほど、増員より一人が扱える範囲を広げる打ち手が現実的です
- 置き場所は新しく買わなくても足ります。2025年時点のクラウド利用は83.5%(常用雇用者100人以上の企業)、うち社内情報共有・ポータル用途は61.4%でした(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(概要)別紙2」)
- 効果は自社の問い合わせ件数で測ってください。公的統計に削減効果の指標はありません
まず今日は、直近3か月の問い合わせ履歴を開くところから始めてください。 同じ質問が3回以上出てくるものを書き出せば、最初に載せる5件は今日中に決まります。FAQは5件でも公開する価値がありますよ。
情シスカレッジのご紹介
社内FAQを作ると、情シス側の知識をどう揃えるかという課題が次に出てきます。回答を書く人によって説明の粒度が違うと、FAQ自体の信頼性が下がってしまいますよね。
情シスカレッジは、新人・ひとり情シスのためのマイクロラーニングLMSです。短い動画で学び、小テストで理解を確認する形式なので、問い合わせ対応の合間にも進められます。
情シスカレッジの特徴
- 数分の動画+小テスト: すきま時間で学べ、理解度をその場で確認できます
- 必修割り当て・期限・進捗ダッシュボード: 誰がどこまで進んだかを管理者がひと目で把握できます
- 自社カリキュラム編成・CSV教育記録: 自社に必要な講座を組み合わせ、教育記録をCSVで出力できます
導入は5名から可能で、請求書払いに対応しています。初期設定は約10分程度で終わる手軽さも特徴です。
※出典

