ヘルプデスクの業務効率化完全ガイド|課題の解決策からおすすめツールまで徹底解説

対応件数が多すぎて、いつも人手が足りない
同じような問い合わせばかりで、業務が進まない
ナレッジの管理がバラバラで、対応品質も不安定
こうした悩みを抱えるヘルプデスク担当者は少なくありません。ヘルプデスクは、特定の人に依存したり、スキルの差によって対応の品質に差ができたりと非効率になりやすいのが実情です。
ヘルプデスク業務の非効率を改善するためには、自社の原因を特定し、最適な対策を講じることが重要です。
この記事では、業務を効率化できない原因から解決ステップ、さらに厳選した効率化ツールまで、徹底的にわかりやすく解説します。
ヘルプデスクとは?業務内容と役割を再確認

ヘルプデスクは、ユーザーからの問い合わせやトラブルに対応する部門として、企業の業務を円滑にする重要なポジションです。
ここでは、そもそものヘルプデスクの業務内容と役割について再確認していきます。
社内・社外ヘルプデスクの違いとは
ヘルプデスクは、大きく社内向けと社外向けの2種類に分けられます。
社内ヘルプデスクでは、自社従業員からあったITに関するさまざまな問い合わせ対応をおこないます。情報システム部門へヘルプデスクを設置するケースが多いです。
一方社外ヘルプデスクは、取引先や顧客など社外の人からの問い合わせに対応します。
製品やサービスの利用サポートをおこなううえに、クレーム処理を対応する場面も多く、担当者には大きな負荷がかかるでしょう。
ヘルプデスクの基本業務は「対応・管理・改善」が中心
ヘルプデスクの役割は、単なる問い合わせ対応にとどまりません。ユーザーの問題を迅速に解決し、業務全体を円滑に進めるためには対応・管理・改善の3要素が重要です。
具体的には、以下のような業務を担当します。
- 問い合わせ対応:メール・電話・チャットでのトラブル対応や使い方案内
- チケット管理:問い合わせ内容を記録・分類・進捗管理
- インシデント対応:障害・不具合が発生した際の一次対応と原因特定
- ナレッジ蓄積・共有:過去の事例やFAQを整理し、再利用できるよう整備
- 対応プロセスの改善:対応スピードや満足度の向上を目的とした業務改善
ヘルプデスクのスキルが上がるほど、対応スピードや品質が向上し、顧客・従業員の満足度も上がります。そのため、単なる問い合わせ対応ではなく、戦略的に業務を設計・最適化する必要があるでしょう。
なぜ今「ヘルプデスク効率化」が求められているのか

ここからは、なぜヘルプデスク業務の効率化が求められているのかを解説します。
対応件数の増加と人材不足が深刻化している背景
ヘルプデスクの業務負担が増大している原因は、対応件数の増加と人材不足です。
近年は、AIやクラウドサービスなど新サービスの普及が進み、社内外のITツールが複雑化しているため、ユーザーサポートのニーズも高まっています。
しかし、IT人材不足やスキル不足によって、ユーザーサポート体制が不十分な企業が少なくありません。
- 特定の人に業務が集中する
- 担当者が離職すると対応できる人がいなくなる
- 問い合わせ件数に対して人員が少ない
上記のような状況では、ミスや対応漏れなどが発生しやすくなり、結果としてユーザーの不満やサービス離れにつながります。
そのため、ヘルプデスク業務の仕組み化をおこない、属人化を減らすことが重要です。
満足度低下・ナレッジの属人化・業務の煩雑化
問い合わせ対応の属人化や非効率な運用は、ユーザーと従業員の双方にストレスを与えます。特定の担当者でなければ分からない対応が多くなると、対応スピードは落ち、品質のばらつきも発生するでしょう。
実際に、過去に確認してきたヘルプデスクの現場では以下のような課題があります。
- 回答が人によって違う
- 問い合わせ履歴が残っていない
- ナレッジが整備されていない
このように無駄な時間と労力を生み出す状態を放置していると、ヘルプデスクの生産性はますます悪くなるでしょう。
対応件数が増えるほど対応スピードや品質が原因で、顧客離れを招く可能性があるため、ナレッジ整備や業務の可視化といったヘルプデスクの効率化が求められます。
ヘルプデスク業務を効率化できない5つの原因

ヘルプデスク業務の効率化をしたくてもできない原因は、以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。現状、自社も同じような状況に当てはまっていないか確認してみてください。
顧客が自己解決できる仕組みがない
問い合わせの多くはよくある質問や手順ミスに関する内容です。ユーザー自身でも解決できる内容が多く、本来であればヘルプデスクがそれほど労力を割く必要はありません。
しかし、FAQやマニュアルが整備されていない企業では、簡単な問い合わせに対しても毎回個別対応する必要があり、工数がかかります。
- プリンター・ネットワークが繋がらない
- メール設定して欲しい
- 各種製品・サービスの利用方法
ヘルプデスクの負担を少しでも減らすためには、ユーザーが自力で問題を解決できる環境づくりが重要です。
問い合わせの属人化と対応品質のバラつき
ヘルプデスク業務が効率化できないとして、問い合わせの属人化や対応品質のバラつきが挙げられます。
特定の担当者に知識やノウハウが偏っている状態では、他の人が同じ対応をすることができず、業務が属人化します。
また、対応内容を文書化したマニュアルやナレッジが存在しない場合、 知識・ノウハウの偏りから担当者によって対応品質が安定しなくなるでしょう。
属人化は担当者の離職リスクが大きいため、他のメンバーが同一品質で対応できるよう、FAQやナレッジ共有の仕組みを整備し、スキルの標準化をおこなうのが重要です。
チャネルが分散し、一元管理できていない
問い合わせ対応のチャネルが電話やチャット、メールなどと複数存在している場合は、問い合わせ内容の把握や対応状況の把握が困難です。
結果としてミスや重複対応、対応レスポンスの低下などさまざまなトラブルにつながります。
- どの担当者が、どの問い合わせに対応したか分からない
- 同じ問い合わせに複数人が対応してしまう
- 顧客や社員が「どこに連絡すればいいか分からない」と感じる
このような課題を解決するためには、問い合わせ先を統一する、問い合わせ内容を管理できる仕組みづくりが重要です。
すべての問い合わせを一元的に集約し、ステータス・対応者・対応履歴を可視化することで、対応の効率と品質を同時に向上させることが可能です。
業務時間外の対応が発生している
本来、ヘルプデスク業務は業務時間内に完結するべきものです。しかし、問い合わせ件数の増加や突発的な対応が重なると、担当者が業務時間外まで対応を余儀なくされるケースが少なくありません。
業務時間外の対応が多いと担当者の不満が蓄積され、モチベーションの低下や離職リスクへと発展します。
- 対応者のワークライフバランスが崩れ、パフォーマンスが低下
- チーム全体の士気が下がり、業務へのモチベーションが落ちる
- 人的リソースに依存しすぎた非効率な運用が続いてしまう
業務時間外の対応を減らすためにも、チャットボットやFAQのようなユーザーが自力で解決できる仕組みを整え、担当者の負担を減らすことが重要です。
対応件数の分析や改善が行われていない
多くの企業では、日常的な問い合わせ対応に追われ、問い合わせ内容に対しての分析・改善がおこなわれていません。
しかし、対応履歴を分析しないままでは、同じ問い合わせに何度も対応したり、特定の担当者に問い合わせが集中したりと、業務が非効率的になります。
- 問い合わせ傾向や頻度が把握できない
- よくある質問に対応する機会が多い
- 特定の担当者に問い合わせが集中し、属人化につながる
ヘルプデスク業務の効率化を図るためには、問い合わせ内容や発生回数、対応時間などのデータを定期的に収集・可視化することが重要です。
分析結果をもとに、マニュアルやFAQの強化、業務プロセスの改善などの対策を講じることで、業務全体を継続的に改善できます。
ヘルプデスク効率化のための4ステップ

現状を可視化し、課題を分析する
ヘルプデスクを効率化するためには、現状の把握が重要です。業務のどこに無駄があるのか、何が属人化しているのかを可視化しなければ、適切な改善策は打てません。
現場で特に重要なのは、以下のような項目の数値化・整理です。
- 1日あたりの問い合わせ件数
- 問い合わせの内容別分類(例:ログイン、設定、トラブル)
- 対応にかかる平均時間
- 対応者ごとの処理件数
こうしたデータを元に「よくある質問は何か」「属人化している業務はどこか」「時間を浪費している対応は何か」などを分析することが重要です。
テンプレート・マニュアルで対応を標準化する
対応内容にばらつきがあると、顧客や従業員の不満につながり、最悪の場合は顧客離れも発生します。
そこで重要なのが「誰が対応しても同じ品質を保てる」ようにするための標準化です。
- テンプレート:メール返信、チャット対応、電話トークスクリプト
- マニュアル:初期設定、トラブル対応、パスワード再発行などの手順
- ルール:優先度や対応フローの判断基準(SLA)
テンプレートやマニュアルを作成しておくと、一定の対応品質を保てるほか、教育の手間も軽減できます。
FAQやチャットボットで自己解決を促す
問い合わせ内容の多くは同じようなものが多いため、FAQやチャットボットの整備をおこないましょう。
FAQやチャットボットを整備しておくと、問い合わせ件数そのものを削減でき、ヘルプデスク全体の負担を大幅に軽減できます。
特に「パスワード忘れ」や「ログインエラー」など、繰り返し発生する簡易な問い合わせは、ユーザーが自己解決できる仕組みを整えておくと、自己解決が可能です。
問い合わせ対応を一元管理・自動化する
電話やメール、チャットなど問い合わせ窓口が複数ある場合、ユーザーがどこに問い合わせれば良いのかわからず混乱につながります。
また、問い合わせ対応を管理できておらず、重複対応や対応レスポンスの低下といった問題点もあります。
そのため、問い合わせ対応の一元管理や自動化ツールの活用が重要です。
すべての問い合わせを1つのシステムで管理し、対応状況を可視化することで、作業の抜け漏れや無駄を防止できます。
ヘルプデスクを効率化するメリット

ヘルプデスクを効率化するメリットは、以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
顧客満足度・従業員満足度が向上する
ヘルプデスクの効率化により、対応スピードや品質が向上するとユーザーや取引先から信用してもらえるようになります。
一方、従業員側にとっても、無駄な問い合わせが減り、対応が仕組み化されることで、ストレスなく業務に集中できるようになるでしょう。
また、ユーザーからの評価は企業イメージに直結します。サポート対応が丁寧かつスピーディであれば、ビジネスの発展にも良い影響を与えるでしょう。
コスト削減と対応品質の標準化が実現できる
コスト削減と対応品質の標準化を実現できる点も、ヘルプデスク効率化のメリットです。
これまで担当者が対応していた業務をテンプレートやツールで代替することにより、人的リソースの最適化が可能になります。コスト削減と対応品質の標準化による具体的なメリットは、以下のとおりです。
- 対応時間を短縮できる
- 人件費の削減につながる
- 誰でも同じ品質でユーザー対応できる
ヘルプデスクによる人件費の削減ができれば、問い合わせ対応以外の業務にもリソースを割くことができるため「サポート部門」から「価値を生む部門」へと変わることができます。
業務負担が軽減され、属人化から脱却できる
業務の属人化は、組織としては大きなリスクを抱えることになるため注意が必要です。休職・退職・異動のたびに業務が滞るようでは、安定した運用は望めません。
ヘルプデスクの効率化によって属人化を解消すれば、次のような効果に期待できます。
- 業務が標準化され、誰でも同じ対応が可能になる
- 引き継ぎや教育がスムーズになる
- 対応スピードが向上する
特定の担当者にスキルが偏っている場合は、FAQやマニュアルの整備をおこない、スキルの標準化を目指しましょう。
ヘルプデスクの効率化に役立つおすすめツール比較
ヘルプデスクの効率化には、「仕組み化」と「ツール活用」が不可欠です。定型対応の自動化やナレッジの蓄積・共有を実現するツールは、業務負担の軽減と対応の品質向上につながります。
下記のようなカテゴリ別に適したツールを選ぶことで、目的に応じた最適な体制構築が可能です。
ツールカテゴリ | 主な役割 | 導入メリット |
---|---|---|
FAQシステム | よくある質問を整理・公開 | 問い合わせ件数を削減、自己解決を促進 |
チャットボット | 自動応答で24時間サポート | 対応の自動化、業務時間外対応が可能に |
問い合わせ管理 | チケット化・一元管理 | 情報の散在防止、対応漏れ・重複を防止 |
ナレッジ共有ツール | 対応履歴・ノウハウの蓄積 | 属人化の防止、教育・引き継ぎが容易に |
目的に応じて最適なツールを選定・組み合わせることが重要です。ヘルプデスク効率化に役立つツールをそれぞれ確認していきましょう。
FAQシステム
FAQシステムは、よくある問い合わせとその回答をWeb上に公開し、ユーザーが自力で問題を解決できる仕組みを提供するツールです。
対応件数を減らすだけではなく、顧客満足度の向上にもつながります。
- 問い合わせ件数の削減
- ヘルプデスク担当者の負担軽減につながる
- 検索機能やタグ機能で目的の情報にたどり着きやすくなる
代表的なFAQシステムには、「Helpfeel」「Zendesk Guide」などがあります。
各システムの機能や特徴を公式サイトから確認し、自社に最適なFAQシステムを導入しましょう。
チャットボット
チャットボットは、事前に設定したルールやAIに基づいてユーザーの問い合わせに自動で応答する仕組みです。
FAQと組み合わせておくと、よりユーザーの自己解決能力を高め、ヘルプデスクの一次対応を大幅に削減できます。
- 24時間対応が可能になり、ユーザー満足度が向上
- 担当者が本来の業務に集中できる
- 対話履歴が残るため、ナレッジとして再活用できる
- FAQに誘導し、自己解決率を引き上げられる
24時間問い合わせ対応が可能なため、24時間営業の企業にとって魅力的であるほか、問い合わせの削減によって情シス担当者がコア業務に割く時間も捻出できます。
ヘルプデスクの運用負担を軽減するためにも、チャットボットの導入も視野に入れましょう。
問い合わせ管理システム
問い合わせ管理システムは、電話・メール・チャットなど複数のチャネルから届く問い合わせを一元的に管理するためのツールです。
チケット制での運用により、対応状況や履歴が可視化され、対応漏れや重複対応、進捗がわからないといった問題を解消できます。
- 対応状況が一目で分かる
- 対応履歴から同じ問い合わせ内容に迅速に対応できる
- チーム全体で問い合わせを見える化できる
問い合わせの対応状況が一目でわかるため、チーム全体で問い合わせを共有できます。
また対応履歴が残るため、同じ問題が発生した場合にも参照し、迅速な対応が可能です。
ナレッジ共有ツール
ナレッジ共有ツールは、問い合わせ対応で得た知識やトラブル事例、対応手順などを蓄積・共有するためのプラットフォームです。
- 対応履歴やノウハウが蓄積され、過去の対応を再利用できる
- 教育や引き継ぎがスムーズになり、新人でも早期に即戦力化
- 業務の属人化を防止できる
導入することで、対応履歴やノウハウがシステムに蓄積されるため、同じ問い合わせに対しても過去の対応を利用して、迅速な対応が可能です。
また、教育や引き継ぎがスムーズにおこなえるため、新人教育や業務の属人化防止にもつながります。
まとめ|ヘルプデスク効率化は効率化ツールの導入がおすすめ
ヘルプデスク業務の効率化は、従業員や顧客の満足度を高めるうえで非常に重要です。
そのためには、現場の現状を分析し、課題を洗い出したうえで最適な対策を講じる必要があります。
FAQシステム、チャットボット、問い合わせ管理システム、ナレッジ共有ツールなどの効率化ツールなどを活用し、自社に適した方法でヘルプデスクの効率化を実現させましょう。