VPNとは?仕組み・種類・メリットを初心者向けにわかりやすく解説

公共Wi-Fiを使うたびに「これって危ないのかな…」と不安になる
テレワークや海外出張中に、日本国内のサービスにアクセスできず困った経験がある
セキュリティ対策をしたいけれど、難しいことはわからない
このような悩みを抱える人は少なくありません。近年、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクが高まるなか、VPNと呼ばれる言葉を耳にする機会も増えてきました。
結論、VPNを使用すれば、インターネットをより安全かつ自由に利用することが可能です。
この記事では、VPNの仕組みや種類、メリット・デメリット、選び方までを初心者にもわかりやすく解説します。
VPNとは、安全に通信するための仮想専用ネットワークのこと

VPN(Virtual Private Network)は、インターネット上に仮想的な専用回線を構築することで、安全かつプライベートな通信を実現する仕組みです。
- 通信が暗号化されるため、盗聴リスクを回避できる
- 自宅や外出先からでも社内ネットワークに安全にアクセスできる
- 海外から日本のサービスにアクセスする際にも利用可能
- 公衆Wi-Fiのような危険な通信環境でも安全性を確保できる
インターネットとスマホやパソコンの通信間を、仮想専用線でトンネルのように接続することで、悪意のある第三者からの攻撃を防止できます。
もともとは企業が拠点間通信やリモート接続に利用していた仕組みですが、現在では個人でもセキュリティやプライバシー保護のために活用が広がっています。
VPNは4つの技術で安全な通信環境を実現している

VPNの安全性は、通信を見えなくするだけではなく、複数の技術によって成り立っています。
ここからは、VPNを支える代表的な4つの技術「トンネリング」「カプセル化」「認証」「暗号化」について、それぞれの仕組みと役割を解説します。
トンネリング(仮想の専用回線をつくる技術)
トンネリングとは、VPNが「仮想的な専用回線」を構築するために用いる技術です。
具体的には、インターネット上に見えない通路を作成し、データのやりとりを第三者に盗み見られたり、改ざんされたりするリスクを大幅に軽減できます。
- 通信データを保護する仮想の専用回線を構築
- 外部からは通信内容を確認できない
- 公衆Wi-Fiや外出先でも安全な通信が可能
このように、トンネリングはVPNの目に見えない安全回廊としての役割を担い、安全な通信を実現しています。
カプセル化(通信データを保護する方法)
カプセル化とは、VPNで送信される通信データをカプセルの中に包み、通信内容を外部から判別できないようにする技術です。
具体的には、オリジナルのパケットを新しいヘッダーとともに別のパケット内に埋め込むことで、「誰が」「何を」「どこに送っているか」が見えない状態にします。
カプセル化によって、悪意のある第三者が通信パケットを傍受しても、解読したり改ざんしたりすることができません。
認証(アクセス元の正当性を確認)
VPNでは、接続するデバイスやユーザーが信頼できる存在であるか確認する認証機能が必要です。
認証を導入することで、不正アクセスやなりすましのリスクを軽減し、より安全性の高い通信を実現できます。
特に企業のリモートワークや重要度の高いシステムへのアクセス時は、認証機能の有無がセキュリティレベルに直結するでしょう。
暗号化(通信内容を秘匿化)
暗号化とは、通信の内容を第三者に読まれないように解読が難しい言葉に変換する技術のことです。
VPNはセキュリティの高い技術ですが、認証の突破やデータの盗み見など、完全にリスクを排除することができません。
そこで、暗号化を採用しておくことで、万が一認証が突破された際にも悪意のある第三者が解読できないため、情報の漏えいを防止できます。
利用目的に応じて選べる4つのVPNの種類と特徴
VPNは、大きく以下の4つの種類にわけられます。
それぞれ詳しく解説します。VPNの種類を確認し、自社の環境にマッチしているかどうかの判断に役立てましょう。
インターネットVPN

インターネットVPNは、インターネット回線を使用して仮想の専用ネットワークを構築する仕組みです。
- 既存のインターネット回線を利用できるためコストが安価
- 離れた拠点でも情報の共有が可能
- 利用状況によって通信速度と品質に影響がある
既存のインターネット回線をそのまま利用できるため、導入が簡単かつコストも安価です。
東京と大阪のように離れた拠点からでも、同一のサーバーへのアクセスやファイル共有が可能な点も、インターネットVPNの特徴になります。
ただし、利用状況によっては通信の混雑によって、通信速度が落ちるといったデメリットもあります。
IP-VPN

IP-VPNは、インターネットを使わずに、通信会社が提供する「閉じられたネットワーク(閉域網)」を利用するタイプのVPNです。
- インターネットを介さないため安全性が高い
- 通信速度が安定している
- 拠点数の多い中〜大規模企業に適している
通信経路は完全に専用化されており、外部からの攻撃や盗み見のリスクを抑えられる点が大きな特徴です。
また、通信事業者に監視されているため、通信の品質や速度も安定しています。
エントリーVPN

エントリーVPNは、通信事業者が提供するADSLや光ブロードバンド回線による閉域網を使用するタイプのVPNです。
- 通信事業者の閉域網を利用するため安全性が高い
- IP-VPNや広域イーサネットよりコストが安価
- 通信の混雑や遅延による通信速度への影響がある
通信事業者が提供する閉域網を使用することで、インターネットVPNよりも安全に通信できます。
ただし、インターネット回線を介すため、通信の混雑や遅延による通信速度への影響がある点には注意が必要です。
広域イーサネット

広域イーサネットとは、地理的に離れた複数の拠点同士のLAN(ローカルネットワーク)を、まるでひとつのLANのようにつなげるネットワーク技術です。
IP-VPNと同じように閉域網を使って安全に通信できますが、レイヤー3以上のプロトコル制限がなく、柔軟性が高い点がメリットです。
- 異なる拠点間で柔軟性の高い通信が可能
- 導入・設定に専門スキルが求められる
- 拠点数が多いと維持費用が高くなる
ただし、導入や構築には専門的な知識が必要で設定の工数が大きいほか、拠点数が多くなるほど維持費が高くなる点に注意しましょう。
VPNを利用するメリット

VPNを利用するメリットは、以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
第三者に見られず安心して通信できる
インターネットでは、通信内容を途中で誰かに見られてしまう可能性があります。たとえば、個人情報やログイン情報を送るとき、データが途中で盗まれると、大きな被害につながるでしょう。
VPNを使えば、通信が暗号化されるため、第三者に盗み見されることがありません。
盗み見されなければ、情報を改ざんされるリスクや情報漏えいのリスクも減らせるため、安心といえるでしょう。
フリーWi-Fiも安心して支える
カフェ、駅、空港などで使える「フリーWi-Fi」は便利ですが、セキュリティが不十分なものが多く存在します。
そのまま接続して使用すると、同じネットワーク内にいる誰かから通信内容を盗み見される可能性があるため、注意が必要です。
VPNであれば、フリーWi-Fiでも通信が暗号化されるため、安心して使用できるようになります。
普段からカフェや図書館など、公共の場で作業する場面が多い場合は、VPN接続を利用するようにしましょう。
海外から国内サービスへのアクセスが可能
日本国内でしか使えない動画サイトやショッピングサービスは、海外からアクセスするとブロックされることがあります。
VPNを使用すれば日本のサーバーを経由してアクセスできるため、海外にいても日本にいるときと同じようにサービスを利用可能です。
長期出張や留学中でも、日本のインターネット環境を再現できるため、海外出張や旅行の機会が多い人におすすめです。
リモートワークでセキュアな接続を実現できる
自宅や外出先から会社のネットワークにアクセスするリモートワークでは、情報漏えいや不正アクセスのリスクが常にあります。
VPNを使用すれば、社外からでも安全に社内ネットワークへ接続でき、機密情報や業務データを安全にやりとりすることが可能です。
- 自宅から会社のファイルサーバーにアクセスしたいとき
- 社内の業務システムにログインする必要があるとき
- セキュリティが整っていない外出先で作業する場面でも安心
リモートワークの導入を検討している企業は、情報資産を守るためにも、VPN接続を取り入れるようにしましょう。
VPNのデメリットと注意点

VPNは便利で安全な通信を実現するツールですが、いくつかの注意点があります。導入や利用にあたって、あらかじめ知っておくべきデメリットや注意点は、以下のとおりです。
ここでは、VPN利用時における特に重要な2つの注意点を解説します。
VPNの経由により通信が遅くなるケースがある
VPNを使うと、データがVPNサーバーを一度経由してから目的地に向かうため、通常よりも通信に時間がかかることがあります。
- VPNサーバーとの距離が遠い
- 接続先のサーバーが混雑している
- 暗号化処理により処理負荷が増えている
特に通信速度が重要な動画視聴やオンライン会議では、VPNによる遅延がストレスに感じる可能性があります。
また、多くの人がVPNサーバーに接続することで混雑し、通信速度が落ちる場合もあるため注意しましょう。
無料VPNはセキュリティリスクが高い
無料で使用できるVPNは魅力的ですが、以下のようなさまざまなリスクがあります。
- 通信ログ(履歴)を保存されて広告に使われる
- ユーザーの個人情報が外部に販売される可能性がある
通信ログや個人情報が外部に漏れるなど、危険性が伴うため、利用時には注意が必要です。
安全なVPNを選ぶためには、運営元の確認やノーログポリシを明言しているかなどを事前によく確認しておくようにしましょう。
VPNプロトコルの種類
VPNには複数の「プロトコル」と呼ばれる通信ルールがあり、プロトコルによってセキュリティや通信速度、安定性が大きく異なります。
代表的なVPNプロトコル | 特徴 |
---|---|
OpenVPN | オープンソースのVPNで柔軟性が高い |
IKEv2/IPSec | 通信の自動追従が可能で、接続が切れても自動で再接続する |
WireGuard | 最先端の暗号技術を採用したオープンソースVPN |
L2TP/IPSec | L2TPはトンネリングをおこなうプロトコル IPsecとの組み合わせにより暗号化が可能 |
PPTP | 古くて速いが、セキュリティが低くあまり使われていない |
各プロトコルの名称や特徴を確認し、自社で導入するVPNが対応しているかどうか、事前に確認しておくようにしましょう。
VPN選びのポイント

VPNを選ぶ際は、以下のポイントを意識しましょう。
それぞれ詳しく解説します。機能・安全性・使いやすさなど、選ぶ際のポイントは複数あるため、よく確認しましょう。
暗号化方式やログポリシーは必ず確認する
VPNは安全に通信できる魅力的な通信方式ですが、暗号化方式やログの取り扱いが不十分なサービスでは、かえってリスクを高めてしまいます。
VPNを選ぶときには、以下のように安全性の高い接続が実現できそうか確認してみてください。
- 暗号化方式が強力(AES-256など)であるか
- ノーログポリシーが、明記されているか
- 第三者による監査やセキュリティ評価があるか
ログを保存しているVPNでは、万が一サーバーが攻撃された場合、アクセス履歴や通信内容が外部に漏えいするりすくがあります。
そのため「ログを一切残さない」「第三者の監査済み」などの記載があるVPNは信頼度が高くおすすめです。
快適さを求めるなら速度・サーバー数も重視
VPNは一般的な通信よりも、VPNサーバーを介したり、暗号化したりして接続するため、通信速度が落ちる場合が多いです。
そのため、できるだけ通信速度が速く、混雑しにくいVPNを選ぶことが、快適さにつながります。
- 世界中に多くのサーバーがある(100か国以上など)
- 同時接続数が多くても安定している
- サーバーの混雑状況がリアルタイムで見える機能がある
- 「動画視聴に強い」「ゲーム用途向け」といった特化型のプランがある
とくに、YouTubeやNetflixなどの動画配信サービスを快適に利用したい場合は、高速かつ多拠点サーバーに対応したVPNを選ぶと良いでしょう。
通信の安定性が悪いと、映像が止まったりログインがうまくいかなかったりする原因になります。ストレスなく使用したい人は「速度」と「サーバー数」について確認してみてください。
対応デバイスとアプリの使いやすさ
VPNを選ぶ際は、どのような端末で使用できるかや、アプリの使いやすさも確認するようにしてください。
高性能なVPNでも、操作が複雑だったり、使用したいデバイスに対応していなかったりすれば意味がありません。
とくにVPN初心者や日本語に不安がある人は、日本語に対応しているかどうかもあわせて確認すると良いでしょう。
また、自動接続やワンクリック接続など直感的に操作可能な機能があれば、初心者でも安心して使用できます。
価格が適切か確認する
VPNには無料プランから数千円のプレミアムプランまで幅広くありますが、料金だけで判断するのは危険です。
高ければ良いわけではなく、価格と機能、安全性のバランスが取れているかをよく確認する必要があります。
料金だけでVPNを使用すると、通信速度が遅かったり、情報漏えいが起きてしまったりとさまざまなリスクを抱えることになります。
将来的に損をしないためにも、自分の使い方に合っているか、価格に見合う価値があるかを見極めることが重要です。
まとめ|VPNを正しく使って、安全で自由な通信を手に入れよう
VPNは、インターネットを安全に使用するための仕組みです。
暗号化・認証・トンネリングなどの仕組みによって、通信内容を第三者から守りながら、安全性の高いネットワーク構築の実現が可能です。
一方、選び方や使い方を間違えると、通信速度の低下や情報漏えいのリスクが高まるなどの注意点もあります。
VPNは適当に導入するのではなく、自社や自分の目的に合ったものを導入することが重要です。
本記事の内容をもとに、自分に合ったVPNを探してみてください。