情シスの兼務はリスクが多い!よくある問題と現実的な解決策を解説

情シスを本業としながら、経理や総務まで兼務している
頼られるのは嬉しいけど、毎日何かに追われて心が休まらない
セキュリティやシステム管理の責任が重く、プレッシャーが大きい
中小企業ではありがちな情シスの兼務ですが、リスクが大きいため注意が必要です。実際、情シスが他業務と兼務する体制は、会社にも個人にも大きなリスクをもたらします。
筆者は中小企業の情シスの実態を確認してきましたが、業務効率化やセキュリティ部分での問題は、兼務体制が原因の場合が少なくありません。
この記事では、情シスが兼務に陥る原因、放置による具体的なリスク、そして現実的な解決策まで解説します。
情シスが兼務することになる原因は?

情シスが兼務することになる原因としては、以下のことが挙げられます。
それぞれ詳しく解説します。
情シス人材が不足している
そもそも情シス人材が不足している点が、兼任体制につながっています。
中小企業の多くは、専任のIT担当者を採用できておらず「ITに詳しい人」が情シス業務を兼任しているケースが少なくありません。
専任ではないためスキルアップの機会も少なく、業務の幅ばかり広がるため、個人・組織双方に負荷がかかります。
DX化推進のため
近年、DX推進が叫ばれる中、情シス体制が整っていない企業では、無理にIT改革を進めた結果、既存社員が情シス業務を兼務させられる事例が増えています。
特にSaaSの導入やクラウド移行などの場面では、誰かがやらないとIT化が進まないと感じ、総務や労務といった他の部署が情シス的な役割を引き受けることになりがちです。
経営層が情シスに予算を割かない
経営層がITに対して投資しない点も、情シスの兼任体制が発生する原因のひとつです。
特に情シスは営業職や開発職のように直接売上を上げる部門ではないため、経営層から投資を後回しにされがちです。
ITをコストと捉えるのではなく、組織を拡大するために必要な投資と考えを浸透させない限り、情シス業務は軽視され、兼務体制から抜け出すのは困難といえるでしょう。
情シスの兼務には5つの重大なリスクがある

情シスの兼務を続けていると、以下のようなリスクにつながるため注意が必要です。
それぞれ詳しく解説します。兼務によるリスクを理解し、情シスの兼務体制を改善する方法を考えていきましょう。
兼務では情シス人材が成長しにくい環境になる
IT分野は技術の変化が非常に早く、現場で継続的な学習と実務が欠かせません。しかし兼務体制では、日々の業務に追われ、情報収集やスキルアップの時間を確保することが困難になります。
結果として、AIやクラウドサービスなど最新のサービスやツールの活用法が学べず、企業全体のIT成熟度も低下します。
また、企業によっては問い合わせ対応ばかりになり、情シス人材が本来の業務に集中できず、スキルアップの機会を失われてしまうケースも少なくありません。
社内ヘルプデスクの対応が遅くなる
情シスは、日常的に現場や他部署の人からITに関する問い合わせ対応をおこなう必要があります。
しかし、情シスが他業務を兼任した状態では、業務量が多くなるため、社内ヘルプデスクでのレスポンス力が低下するでしょう。
たとえば、PCが起動しない、ネットワークに不具合があるといった問題が起きた場合、すぐに対応できなければ業務全体の生産性を下がってしまうでしょう。
情シスが兼任の場合は、対応が遅れそうな場合には社内周知を入れたり、問い合わせの優先度を確認したりすることが重要といえるでしょう。
セキュリティ対策が後回しになりリスクが高まる
情シスが兼務状態にあると、セキュリティ対策が後回しになりがちです。
- 情報漏えい
- マルウェア・ウイルスの感染
- 企業の信用失墜
本来は、OSの更新やセキュリティソフトの導入、社内のセキュリティ教育などのセキュリティ対策を情シスは講じる必要があります。
兼任体制が原因でセキュリティ対策を放置していると、脆弱性からサイバー攻撃を受け、情報漏えいやウイルス感染といったセキュリティインシデントにつながる可能性があるでしょう。
属人化が進み、引き継ぎやトラブル対応に支障が出る
情シスを兼務していると、マニュアルの作成やナレッジの整備の時間がなく、業務の属人化につながります。
- 組織の業務効率と品質が低下する
- ナレッジ・ノウハウを蓄積できない
- 担当者の離職時に業務停止の可能性がある
属人化が続く、仮に担当者が病欠したり、離職したりした場合にIT業務を任せられる人がおらず、業務全体が停止するリスクがあります。
事業を進める上で属人化のリスクは非常に高いため、情シスの兼任体制は早めの対策が必要です。
IT戦略が練れず、会社の成長機会を逃してしまう
本来の情シスは、ITトラブル対応や保守だけをおこなうのではなく、企業の成長を支えるIT戦略の中核を担うべき部門です。
しかし、兼任状態が続いていると、日々の雑務に追われるばかりで中長期的な視点を持つことができず、ITを活用した競争力強化や業務改革に取り組む時間を確保できません。
その結果、他社に比べてDXやクラウド活用のスピードが遅れ、会社の成長機会を逃す事態が発生します。
情シスの兼務問題を解消する方法

情シスの兼務問題を解消するためには、以下の方法を実践してみてください。
それぞれ詳しく解説します。
専任人材を採用し、情シスの基盤を整備する
兼任問題を根本的に解消するためには、情シス専任者を新たに採用し、IT業務を明確に分担する体制を築くことが重要です。
専任者がいれば、社内インフラの整備からトラブル対応、IT戦略の立案までを一貫して担うことができ、ITリスクの低減と効率的な運用が可能になります。
また、担当者が増えれば情シスにも余裕が生まれ、マニュアルやナレッジ整備に時間をかけ、属人化の防止にもつながるでしょう。
採用にはコストがかかりますが、長期目線で考え、情シスの専任人材を採用して組織のIT基盤を整備しましょう。
情シス業務の一部をアウトソーシングして負担を軽減
社内に専任者を確保することが難しい場合、外部の専門会社に情シス業務の一部を委託するのもおすすめです。
- ヘルプデスクやインフラ保守など提携業務を切り出せる
- 社内リソースをコア業務に集中できるようになる
- 専門会社の知見を活用し、品質と効率の両立を図れる
特にヘルプデスクやネットワーク保守、PCのキッティング作業などのノンコア業務は、外注化との相性がよく、社内リソースの負担を削減できます。
また、アウトソーシングの活用により、社内リソースをIT戦略などのコア業務に集中できる点も大きなメリットといえるでしょう。
RPAやSaaSなどの自動化ツールで業務効率を上げる
兼任状態による情シスの負担を軽減するためには、業務効率化ツールの導入がおすすめです。
たとえば、定型的なデータ入力や帳票出力などはRPAで自動化できますし、オンプレミス環境で運用しているシステムをSaaSに移行すれば、運用管理の手間も大幅に減らせます。
また、自動化によって作業ミスもや漏れのリスクも防止できるため、自動化ツールの導入はメリットが大きいといえるでしょう。
全社員のITリテラシーを高め、情シスへの依存を軽減
情シスの負担を根本的に軽減するには、全社員のITリテラシー向上が欠かせません。問い合わせの多くは、社員のITに関する知識不足から発生しています。
- 基本的なトラブルは社員自身で解決できるようになる
- セキュリティ意識の向上によって事故の予防が可能になる
- 新しいツール導入時の社内対応スピードが上がる
情シスが対応するまでもない基本的な内容を現場で自己解決できるようになれば、兼務担当者の負担を大きく減らせるでしょう。
さらに、ITに関する理解が深まれば、セキュリティ事故の防止やシステムの適切な運用にもつながります。
長期視点で情シス人材を育成する体制をつくる
専任の情シス人材をすぐに採用できない場合でも、将来を見据えて社内の人材を計画的に育てる仕組みは作れます。
ITスキルの高い若手や中堅社員に段階的に業務を引き継ぎ、研修や実践を通じて成長させることで、時間はかかっても安定した体制の構築が可能です。
重要なのは、短期目線で育成するのではなく、継続的に育成・評価できる仕組みを整備することです。
情シス人材の育成には「情シスカレッジ」がおすすめ

「情シスの専任化は難しいけれど、育成にも時間がかかる・・・」
そんな課題を抱える企業にこそおすすめしたいのが、IT人材育成に特化したオンライン研修サービス「情シスカレッジ」です。
- オンライン動画研修でスキマ時間に学習できる
- 情シスの実務に必要な知識を網羅できる
- 最新技術やトレンドの情報を取り扱っている
情シスカレッジは、社内のITスキルを底上げしたい企業向けに開発された動画型の研修プログラムで、初心者〜中級者まで幅広く対応しています。
動画は1本あたり1〜10分前後と短く、日々の業務の合間でも無理なく受講できます。
また、IT基礎、セキュリティ、クラウド、ネットワークなど、情シス業務に必要なスキルを体系的に習得できるため、属人化していた業務の標準化やナレッジの共有にもつながります。
現在情シスの体制に対して不安を感じている場合は、情シスカレッジを利用して学習可能な仕組みから整備していきましょう。
\ 情シス育成の仕組みを整えよう /
まとめ | 情シスの兼務リスクは早めの対策が重要
情シスが他部門と兼務する体制は、一見すると人件費の削減や業務の効率化に見えるかもしれません。
しかし実際には、ヘルプデスクの対応遅れや属人化、セキュリティ対策不足など、企業全体の成長や安全性を脅かす深刻なリスクが潜んでいます。
企業のトラブルを防止し、安定した事業基盤を築くためにも、以下のような取り組みから無理のない改善をはじめてみてください。
- 情シス業務の洗い出しと負担の見える化
- アウトソーシングやツールの導入による一部業務の自動化
- ITリテラシー研修や社内教育による「情シス育成」の内製化
特に育成面では、情シスカレッジのように動画研修サービスを導入すれば、属人化を防ぎつつスキマ時間でITスキルを向上させられます。