ログ管理とは?目的・重要性や種類、ログ管理ツールまで徹底解説

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ログ管理って具体的にどのような仕組みなの

社内監査や法令遵守でヒヤリとした経験がある

ログ管理のメリット・デメリットが知りたい

企業のIT担当者や情シスにとって、ログ管理はセキュリティ事故を防止するために必要な取り組みです。ログ管理が不十分なままだと、セキュリティ事故や監査不備で重大な損失を招くリスクがあります。

また、ログ管理を効率よくおこなうためには、ログ管理システムの導入も検討すると良いでしょう。

この記事では、ログ管理の目的・重要性・具体的な種類から、導入メリット、システム活用まで解説します。

記事を読めば、ログ管理の仕組みや重要性、ログ管理システムについて理解することが可能です。

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目次

ログ管理とはシステム運用やセキュリティを支える仕組み

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ログ管理とは、サーバーやネットワーク機器、クラウドサービス、アプリケーションなどが出力する動作記録(ログ)を体系的に収集・保存・分析する仕組みのことです。

ログには「誰が・いつ・どこで・何をしたか」といった証拠が残るため、障害発生時の原因特定やセキュリティインシデントの追跡、業務改善のデータとして活用できます。

企業におけるIT運用の基盤を支えると同時に、内部統制や法令遵守を達成するためにも不可欠なプロセスです。

ログ管理の目的

ログ管理をおこなう目的は、システムの安定稼働とセキュリティリスクの低減です。

ログ管理の目的
  • 障害発生時の原因追跡と迅速復旧
  • 不正アクセスや内部不正の早期検知
  • 監査対応やコンプライアンス遵守の証跡確保

まず障害発生時には、ログを確認することで原因を特定し、復旧時間を短縮できます。また、不正アクセスや内部不正が起きた際には、証跡を追跡することで再発防止策の策定につながります。

さらに、監査対応やコンプライアンス遵守のためにはログの保存が求められる場合が多いため、ログ管理は重要な取り組みといえるでしょう。

ログの種類

ログは用途によって複数の種類に分類され、適切に管理することでシステム運用やセキュリティ強化に役立ちます。特に以下の5種類は、企業のIT環境において重要度が高く、優先的に収集・保存すべき項目です。

ログの種類
  • 操作ログ:ユーザーや管理者が実行した操作を記録。設定変更やデータ削除の証跡を残し、内部不正対策や監査時の説明責任を果たす。
  • アクセスログ:Webサイトやシステムへのログイン・ログアウト履歴、利用者のIPアドレスを記録。不審なログイン試行や不正アクセスの検知に有効。
  • 通信ログ:ネットワーク機器が送受信した通信情報を記録。外部との通信量や接続先を把握し、マルウェア感染や情報漏えい経路の特定に活用。
  • システムログ:OSやミドルウェアの動作状況を記録。サービス停止やリソース不足などの障害を早期に検知でき、安定稼働に寄与する。
  • エラーログ:アプリケーションやシステムで発生したエラー情報を記録。開発部門や運用担当者が原因を特定し、迅速な修正や再発防止策に活用。

ログ管理の重要性

ログ管理の重要性の画像

ログ管理は、以下のような理由から重要度が高いといえます。

それぞれ詳しく解説します。

サイバー攻撃の巧妙化に対応するためにログ管理が必要

近年のサイバー攻撃は巧妙化しており、IPAが発表する「情報セキュリティ10大脅威 2025年」にも、標的型攻撃や内部不正がランクインしています。

情報セキュリティ10大脅威の組織編
出典元:独立行政法人情報処理推進機構

内部不正はログを取得していなければ、完全に防ぐことは難しくなります。そのため、侵入を前提にログを取得しておくことが重要です。

ログを分析すれば、不審なログインや深夜の権限変更、大量データ転送など、普段とは違う動きを早期に見つけることができます。

IT資産の監査や法令遵守にはログ管理が欠かせない

企業では、情報セキュリティや個人情報保護の観点から、いつ誰がシステムを使ったのか、どんな操作をしたのかを証明できる仕組みが求められています。

たとえば、個人情報保護法や金融機関向けのFISC安全対策基準、ISMS(ISO/IEC 27001)の審査では、ログの取得と一定期間の保存が推奨されています。

ログがきちんと管理されていれば、監査の際に必要な証拠をすぐに提示でき、指摘や不備を防ぐことが可能です。

また、内部統制の観点でも、社員の操作履歴を残しておくことで不正の抑止効果が高まり、組織全体の信頼性を向上させられます。

ログ管理を怠るとセキュリティ事故や監査不備のリスクが高まる

ログ管理が不十分だと、障害やセキュリティインシデントが発生したときに原因がわからず、復旧までに時間がかかる可能性があります

ログ管理を怠ると発生するリスク
  • セキュリティ事故の拡大
  • 監査での指摘
  • 顧客や取引先からの信頼失墜

たとえば、社内サーバーから大量のデータが外部に送信されていても、ログが残っていなければ誰が送ったのか特定できません。

結果として、被害の全容がつかめず顧客への説明も遅れ、信頼を失う恐れがあります。また、監査時に必要なログがないと内部統制が不十分と指摘されるケースもあります。

ログ管理を適切に行うメリット

ログ管理のメリット

ログ管理を適切におこなえば、以下のようなメリットが得られます。

それぞれ詳しく解説します。

情報漏えいの防止策になる

ログ管理をおこなえば、不審なアクセスや通常と異なる操作を早期に検知でき、情報漏えいのリスクを大幅に減らせます

たとえば、短時間に大量のファイルがダウンロードされている、深夜帯に管理者権限で操作されているといった異常は、ログを分析することで発見可能です。

早めに気づけば、アカウント停止やネットワーク遮断などの対策をすぐに実行でき、被害を最小限に抑えられます。

アクセス解析によりマーケティング活動へ活用できる

ログはセキュリティ対策だけではなく、ビジネスの発展にも役立ちます。Webアクセスログを分析すると、どのページがよく閲覧されているか、どのルートから訪問者が流入しているかがわかります

たとえば、特定ページの離脱率が高ければコンテンツ改善につなげられますし、よく読まれているページを広告出稿の着地点にすることでコンバージョン率を上げることが可能です。

さらに、業務システムの操作ログを分析すれば、社員がどの機能をよく使っているかを把握でき、UI改善や業務効率化にも活かせます。

法律対応やガバナンス強化を実現できる

ログを適切に管理しておくことで、法令遵守や内部統制を強化することが可能です。たとえば、個人情報保護法ではアクセス履歴や利用状況を一定期間保存しておくことが推奨されています。

ISMSやSOC2などの認証取得では、ログの収集・保管・レビュー体制が整っているかが審査されます。

ログがきちんとそろっていれば、監査人から証跡提出を求められても迅速に対応でき、指摘や改善勧告を防げます。

また、役員や監査部門が定期的にログをチェックする仕組みをつくると、不正やコンプライアンス違反を早期に発見でき、企業全体のガバナンスを高めることが可能です。

ログ管理のデメリット

ログ管理のデメリット

ログ管理には、以下のようなデメリット・注意点も存在します。

それぞれ詳しく解説します。

ログ管理だけではセキュリティ対策が不十分

ログ管理は重要な施策ですが、完全にシステムを守れるわけではない点に注意が必要です。ログはあくまで「記録」であり、攻撃を防ぐのではなく、あとから原因を追跡するための材料です。

たとえば、外部からの不正アクセスを防ぐにはファイアウォールやWAF、端末のマルウェア対策にはEDRなど、リアルタイムで攻撃を遮断する仕組みが必要になります。

ログは複数の対策と組み合わせることで効果を発揮します。多層防御の一部としてログを活用することで、攻撃を未然に防ぎ、発生しても被害を最小化する体制を整えることが可能です。

ログ管理には導入・運用コストが発生する

ログ管理をおこなうためには、サーバーやストレージの確保、ログ管理システムの導入、運用を担う人員の確保が必要になります。

特に大量のログを長期間保存する場合は、ストレージ容量の増加に伴いコストが膨らみやすい点に注意が必要です。

また、ログの収集や分析ルールを整備し、定期的にレビューする運用体制も不可欠で、人件費も発生します。

そのため、ログ管理を導入する際は導入や運用にかかるコストを事前に把握しておくことが重要です。

ログ管理にはログ管理システムの導入がおすすめ

ログ管理システム

手作業でログを収集・分析する方法では、抜け漏れや作業負荷が大きく、迅速な対応が難しくなります。そこで活用したいのがログ管理システムです。

複数のサーバーやクラウドサービス、ネットワーク機器から出力されるログを一元的に収集し、検索や分析を効率化できます。

また、リアルタイムの異常検知やレポート自動作成などの機能も備えているため、セキュリティ強化と運用負荷の軽減を同時に実現できます。

ここからは、ログ管理システムの具体的な特徴について解説します。

ログの一元管理が可能

ログ管理システムを導入すると、複数のサーバーやクラウドサービス、ネットワーク機器から出力されるログを一元的に収集できます。

従来はシステムごとに個別で確認していたログも、統合ビューでまとめて検索・分析が可能です。

たとえば、サーバー障害が発生した際に、OSログとアプリケーションログ、ネットワークログを突き合わせて原因を特定する作業が短時間で済みます。

また、相関分析機能を使用すれば、複数のログにまたがる異常パターンを自動で検知することも可能です。

IT資産管理の効率化につながる

ログ管理システムを使えば、誰がどの端末を使い、どんな操作をしたかを把握できます。たとえば、PCやサーバーの利用状況をログから確認すれば、使われていない機器を特定して適切に回収・再配置できます。

また、ソフトウェアの利用履歴を把握することで、不要なライセンスを削減しコストを抑えることも可能です。

棚卸し作業もログをもとに自動化できるため、担当者の負担を大幅に軽減できます。

監査対応を効率よくおこなえる

監査のたびにログを集めて整理する作業は、多くの企業で大きな負担となっています。ログ管理システムを導入すると、必要な期間や条件で絞り込んだログをすぐに検索でき、レポートを自動で生成することも可能です。

たとえば、特定のユーザーが過去1年間にどんな操作をしたか、どの端末からアクセスしたかを瞬時に一覧化できます。

そのため、監査準備にかかる時間と工数の大幅削減が可能です。

ログ管理システムの主な機能

ログ管理システムの機能

ログ管理システムには、主に以下のような機能が備わっています。

それぞれの機能について詳しく解説します。

ログの取得

ログ管理システムには、基本機能としてログの取得が備わっています。ログの取得は正確におこなわなければ、抜けや漏れが発生して信ぴょう性の低下につながります。

人手によるコピーや抽出では抜け漏れが発生しやすいですが、自動取得ならリアルタイムで記録を集められます。

ただし、ログ管理システムは対応可能なフォーマットが決められており、自社の業務システムに対応しているかよく確認しましょう。

ログの保存

ログ管理システムでは収集したログの保存・管理が可能です。ログは複数のシステムに保存するのではなく、ログ管理システムに集約するのがおすすめです。

業務システムのログはユーザーが削除できる可能性があるため、リアルタイムにログを収集し、別サーバーに保管することで改ざんの防止が可能です。

ログの監視

ログ管理システムには、リアルタイムでログを監視し、異常があればアラートする機能があります

たとえば、通常は1日1回しか発生しない管理者ログインが深夜に複数回行われた場合や、短時間に大量のファイルがダウンロードされた場合にアラートを出すことが可能です。

ログ監視機能によって、システムの不正利用を事前に検知し、安定した業務運用が可能になります。

ログの分析

ログの収集や管理だけではなく、ログ管理システムではログの分析も可能です。異常ログの件数や外部からの攻撃状況を明確にし、適切なセキュリティ対策を講じることもできます。

レポート作成機能を使えば、セキュリティインシデントや監査対応に必要な資料を自動で生成でき、作業負担を大きく減らせます。

まとめ | ログ管理はセキュリティと業務改善を同時に実現する必須施策

ログ管理は、サイバー攻撃の早期発見、監査対応、内部統制の強化といったセキュリティ面だけでなく、業務効率化やコスト削減にもつながる重要な取り組みです。

まだ体制が整っていない場合は、まず重要システムのログ収集と保存から始め、段階的に分析や監視機能を整備すると効果的です。

ログ管理システムを導入すれば、運用負荷を抑えながら、万が一のトラブル時にも迅速に対応できる体制をつくれます。

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