【2025年 総務省調査】クラウドストレージはクラウド利用企業の73.3%が活用|推移・業種差・選び方

クラウドストレージの導入や乗り換えを任されたとき、最初に気になるのは他社の状況ではないでしょうか。社内を説得する材料も、比較する基準もないまま検討が始まることは珍しくありません。
- 他社はクラウドストレージをどこまで使っているのか分からない
- 自社の業種や規模だと、どのくらいが標準なのか比べられない
- 「クラウドに置いてあるからバックアップは大丈夫」と言い切れない
結論から言うと、ファイル保管・データ共有の用途は、すでにクラウドを使う企業の多数派です。総務省の通信利用動向調査によると、2025年調査時点でクラウドサービスを利用している企業のうち73.3%がこの用途を挙げました(総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-3 ※2)。
この記事では、公表されている一次データだけを使って、利用実態・業種差・用途の偏り・選定時の確認項目を整理します。製品ごとの料金比較は扱いませんが、社内資料にそのまま貼れる数値と出典を用意しました。
この記事のポイント
- 2025年調査時点で、クラウド利用企業の73.3%がファイル保管・データ共有に利用しています(※2)
- クラウド利用率の業種差は23.4ポイントあります(2024年調査。8つの産業分類の中で最も高い情報通信業96.0%と、最も低い運輸業・郵便業72.6%の差、本記事による計算値。※3)
- ファイル共有用途とデータバックアップ用途の差は、2025年調査でも約27ポイントで4年間ほぼ変わっていません(73.3%と46.4%の差、本記事による計算値。※2)
クラウドストレージはクラウド利用企業の73.3%が使う最多の用途(2025年調査)

まず押さえたいのは、ファイル保管・データ共有がクラウドの用途の中で最も多いという点です。2025年調査では、クラウドサービスを利用している企業の73.3%がこの用途を挙げています(※2)。
前提として、公的統計には「クラウドストレージ」という独立した指標がありません。総務省の通信利用動向調査にある「利用しているクラウドサービスの内容」のうち、「ファイル保管・データ共有」がこれに対応する項目です。
この記事でも、クラウドストレージの利用実態はこの項目の数値で見ていきます。なお用途の割合は、クラウドサービスを利用している企業を分母とした値です(図表4-3には「クラウドサービス利用企業からの回答」と明記されています。※2)。
すでに大半の企業がクラウドを使い、その中の多数派がファイル保管に使っている状態です。 検討すべきなのは導入の是非ではなく、すでに入っているものをどう管理するかだと考えられます。
クラウドサービス全体の利用率は2025年調査時点で83.5%
クラウドサービスの利用は、企業にとって標準的な状態になりました。2025年調査で利用している企業の割合は83.5%です(※2)。
この伸びは直近数年に限った動きではありません。2010年調査の13.7%(※11)から2018年調査の58.7%(※10)まで上がり、その後も毎年上昇が続いています。

| 調査年 | クラウドサービスを利用している企業の割合 |
|---|---|
| 2021年 | 70.4%(※8) |
| 2022年 | 72.2%(※7) |
| 2023年 | 77.7%(※5) |
| 2024年 | 80.4%(※3) |
| 2025年 | 83.5%(※2) |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」ほか各年調査より作成。2024年は報告書の確定値です。2021〜2023年と2025年は報道発表資料(無回答を除く集計)、2024年は報告書(無回答を含む集計)の値で、集計基準が異なります。詳しくは後述します。2019年・2020年調査分は、令和2年通信利用動向調査報告書(企業編)図表3-1に公表値がありますが、本記事のファクトデータベースに未登録のため本表では扱っていません【要確認・要登録】。
2021年調査の70.4%から2025年調査の83.5%まで、直近4年間で13.1ポイント上がっています(本記事による計算値)。伸びが鈍化する傾向はまだ見えません。 自社が未導入であれば、同規模の企業の中では少数派に入る位置にいます。
ファイル保管・データ共有の利用率は4年で61.0%から73.3%へ上がった
クラウドストレージにあたる用途は、この4年で大きく伸びました。2021年調査の61.0%(※8)から2025年調査の73.3%(※2)へ、12.3ポイントの上昇です(本記事による計算値)。
途中の年も一貫して上向きです。2022年は64.1%(※7)、2023年は68.8%(※5)、2024年は70.8%(※3)と、毎年2〜5ポイントずつ増えています。
補足として、この用途の割合はクラウド利用企業が分母のため、全企業に対する浸透度は「利用率×用途割合」で概算できます。2021年は70.4%×61.0%で約43%、2025年は83.5%×73.3%で約61%という試算になります(本記事による計算値)。
この推移から読み取れるのは、一部の担当者が使う道具から、全社員がクラウド上のファイルを前提に働く状態へ移ったという変化です。だからこそ、社内で議論すべき論点は「入れるかどうか」から「どう運用するか」に移っています。
この83.5%は常用雇用者100人以上の企業を対象にした数値
数値を自社に当てはめる前に、母集団を確認してください。通信利用動向調査の企業編は、公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業が対象です。常用雇用者100人未満の企業は、この83.5%という数値に含まれていません。
2024年調査の有効回答は2,330社でした(※3)。回答企業の規模構成も、日本企業全体の構成と同じではありません。なお本調査は、回収結果と母集団の乖離を補正するために比重調整を行ったうえで集計されています(※3)。
規模による差は、過去のデータで確認できます。2016年時点の利用率は、従業者100〜299人の企業が40.3%(※11)、5,000人以上の企業が89.5%(※11)でした。両者には49.2ポイントの開きがあります(本記事による計算値)。
注意
上記の規模別の数値は2016年時点のもので、現在の差を示すものではありません。2021年以降の従業者規模別の集計は本記事では確認できておらず、100人未満の企業の現在地は公的統計から追えない状態です。ひとり情シスや小規模企業の方は、この記事の数値を「自社より規模の大きい企業の平均」として読んでください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/同 別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/e-Stat 統計表0003165250
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業種によるクラウド利用率の差は23.4ポイントある(2024年調査)

自社の立ち位置を測るときは、全体平均だけでなく業種別の数値も見てください。2024年調査では、最も高い情報通信業が96.0%、8つの産業分類の中で最も低い運輸業・郵便業が72.6%で、その差は23.4ポイントあります(本記事による計算値。※3)。
全産業の平均は80.4%(※3)です。この平均だけを基準にすると、業種ごとの事情を無視した比較になってしまいます。
紙の伝票や現場作業が多い業種と、業務の大半が画面上で完結する業種では、クラウド化の必然性が違います。まずは自社の業種がどのあたりに位置しているかを確認しましょう。
情報通信業96.0%・金融保険業93.1%が上位を占める
上位には情報そのものを扱う業種が並びます。2024年調査では、情報通信業96.0%、金融・保険業93.1%、不動産業92.6%が9割を超えました(※3)。
一方、全産業平均80.4%を下回る業種もあります。サービス業・その他は75.9%、運輸業・郵便業は72.6%です(※3)。

| 産業分類(2024年調査) | クラウドサービスを利用している企業の割合 |
|---|---|
| 情報通信業 | 96.0% |
| 金融・保険業 | 93.1% |
| 不動産業 | 92.6% |
| 全産業平均 | 80.4% |
| サービス業・その他 | 75.9% |
| 運輸業・郵便業 | 72.6% |
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-2より作成(全8産業分類のうち上位3業種・下位2業種と全体を抜粋。抜粋していない建設業・製造業・卸売小売業は、いずれもこの上下の間に収まります)
同じ「8割が使っている」でも、業種によって20ポイント以上の幅があります(本記事による計算値)。 社内説明では全産業平均と自社業種の値を並べると、議論がぶれにくくなります。
運輸業・郵便業の72.6%は全体平均が2022年に通過した水準にあたる
利用率が低い業種は、クラウドを使わない業種ではありません。運輸業・郵便業の2024年調査の72.6%は、全産業平均が2022年調査で記録した72.2%とほぼ同じ水準です(※3・※7)。
ここから読み取れるのは、利用率の低い業種が全体平均より約2年遅れて同じ水準に達している、という位置関係です。自社の遅れを業種平均との差で測るより、全体平均の何年前にいるかで測るほうが、投資判断の説明に使えます。
「当社は全体平均の2年前の位置にいます」という言い方は、稟議書でも伝わりやすい表現です。ただし、今後も同じ経路をたどって追いつく保証まではありません。
注意
業種別の数値は、有効回答2,330社を業種ごとに分けた集計です。業種によって回答企業数が異なるため、回答数の少ない業種では誤差の幅が大きくなります。2024年調査では、金融・保険業が170社、不動産業が154社と、他業種の300社台に比べて少なくなっています。また業種内の企業規模の構成が違う場合、業種の差ではなく規模の差を見ている可能性もあります。なお比較した2つの年(2022年と2024年)は出典資料が異なり、集計基準も揃っていません。
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」
導入理由の1位は「場所や機器を選ばず使える」で50.1%(2024年調査)

社内を説得するときは、他社がどんな理由で導入しているかが材料になります。2024年調査で最も多かった理由は「場所、機器を選ばずに利用できるから」で、50.1%でした(※3)。
2番目は「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」で42.5%です。続いて「安定運用、可用性が高くなるから」が40.3%、「災害時のバックアップとして利用できるから」が40.1%と並びます(※3)。
【要確認】2025年調査(令和7年)では、2番目が「安定運用、可用性が高くなるから」に入れ替わっています(総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1 ※1)。該当する数値がファクトデータベースに未登録のため、本記事では2024年調査の値で解説しています。

上位に来ているのは、働く場所の自由と社内設備の削減です。 多くの企業は機能の多さではなく、運用の負荷が下がる点を理由に選んでいます。
上位の導入理由は4年間ほぼ同じ構成で推移している
導入理由の顔ぶれは、この4年でほとんど変わっていません。利用率は2021年調査の70.4%から2024年調査の80.4%へ10ポイント伸びました(本記事による計算値)。その間も、上位2項目はおおむね2ポイントの範囲で動いただけです。
| 調査年 | 場所、機器を選ばずに利用できるから | 資産、保守体制を社内に持つ必要がないから |
|---|---|---|
| 2021年 | 50.2%(※8) | 41.7%(※8) |
| 2022年 | 51.1%(※7) | 42.5%(※7) |
| 2023年 | 49.5%(※5) | 43.9%(※5) |
| 2024年 | 50.1%(※3) | 42.5%(※3) |
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-4ほか各年調査より作成(クラウドサービス利用企業に占める割合、複数回答)。2021〜2023年は報道発表資料(無回答を除く集計)、2024年は報告書(無回答を含む集計)の値で、集計基準が異なります。基準を揃えると年ごとの値は0.1〜1.0ポイント動きますが、上位2項目の順位と変動幅の小ささは変わりません。
この推移から読み取れるのは、新しい動機が普及を押し上げたのではなく、同じ動機を持つ企業が順番に導入してきたという構図です。いま検討している企業も、先行企業と同じ理由で導入を説明して差し支えありません。
効果があったと答えた企業は87.3%で高止まりしている
導入後の手応えも安定しています。2024年調査で「非常に効果があった」「ある程度効果があった」と回答した企業の合計は、87.3%でした(※3)。
過去の年も同じ水準です。2021年88.2%(※8)、2022年89.0%(※7)、2023年88.4%(※5)と、4年間の振れ幅は2ポイント未満に収まっています(本記事による計算値。ただし年によって出典資料が異なり、集計基準は揃っていません)。
後から導入した企業が増えても効果実感が下がっていない点は、遅れて始めても得られるものが大きくは変わらないことを示しています。 導入が遅れていることを理由に見送るより、いま着手した場合の効果を前提に検討するほうが実態に合います。
注意
効果を尋ねるこの設問には、導入を決めた側が回答するという構造的な偏りがあります。効果が出ずに解約した企業は翌年の集計から外れる可能性もあります。また、上の表の2021〜2023年は報道発表資料、2024年は報告書から取った値で、集計基準が揃っていません。2024年だけがわずかに低く見えるのは基準の差による部分が大きく、効果実感の低下とは読めません。同じ報道発表ベースでは、2024年も前年と同水準の値が公表されています(総務省「令和6年通信利用動向調査の結果」※4。該当値はファクトデータベースに未登録のため本文では扱いません)【要確認・要登録】。
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査の結果」/総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」ほか各年調査
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クラウドストレージへの保存とバックアップは別物で、利用率に27ポイントの差がある

情シスの現場でよくある誤解が「クラウドに置いてあるからバックアップは済んでいる」です。公的データを見ると、この2つは別の行動として扱われています。
2025年調査では、ファイル保管・データ共有が73.3%、データバックアップが46.4%でした(※2)。同じ年の同じ調査で、両者には26.9ポイントの開きがあります(本記事による計算値)。
理由は用途の設計が違うことです。共有は日々の業務を回すための仕組み、バックアップは失われたデータを元に戻すための仕組みで、必要な機能も保存先の条件も異なります。
ポイント
- 共有用途と保護用途は別々に設計するものと考える
- 同期は誤削除やファイルの暗号化もそのまま反映される。世代管理と復元手順を確認する
- 「クラウドに置いてある」ことは、そのままバックアップの根拠にはならない
- IPAも、データの暗号化という攻撃の糸口に対する基本対策として「バックアップの取得」を挙げています(※14)
データバックアップ用途は46.4%にとどまる(2025年調査)
保護目的の利用は、共有目的ほど広がっていません。2025年調査でデータバックアップを用途に挙げた企業は46.4%(※2)で、半数を下回ります。
前年も同じ傾向です。2024年調査では、ファイル保管・データ共有の70.8%に対し、データバックアップは43.6%でした(※3)。
用途の順位で見ると、共有目的が先行し、保護目的が後ろに続く構図が続いています。自社が共有用途だけでクラウドストレージを使っているとしても、それは例外ではなく多数派の状態です。 ただし、多数派であることと安全であることは別の話です。
27ポイントの差は4年間ほぼ変わっていない
この差は縮んでいません。2022年から2025年まで、両用途の差は27ポイント前後で動かないままです(本記事による計算値)。

| 調査年 | ファイル保管・データ共有 | データバックアップ | 差 |
|---|---|---|---|
| 2022年 | 64.1%(※7) | 36.9%(※3) | 27.2ポイント |
| 2023年 | 68.8%(※5) | 42.0%(※3) | 26.8ポイント |
| 2024年 | 70.8%(※3) | 43.6%(※3) | 27.2ポイント |
| 2025年 | 73.3%(※2) | 46.4%(※2) | 26.9ポイント |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-3ほか各年調査より作成。「差」の欄は本記事で両者の値から算出したものです。2022年・2023年のファイル保管は各年の報道発表資料、データバックアップは令和6年報告書の時系列から取っており、行の中で集計基準が揃っていません。報告書ベースで揃えると差は2022年27.1ポイント・2023年26.7ポイントとなり、いずれの並べ方でも27ポイント前後という結論は変わりません。
両用途は同じ速度で伸びています。2022年から2025年にかけて、ファイル保管・データ共有は9.2ポイント、データバックアップは9.5ポイント増えました(いずれも本記事による計算値)。
この推移から読み取れるのは、共有目的で導入した企業が後からバックアップ用途へ広げる、という移行が起きていないことです。用途の誤解が正されないまま、普及だけが進んできた状態と整合します。
ただし解釈には幅があります。クラウド型のバックアップ製品を別の選択肢として回答した企業がいれば、実施率は低めに出ます。逆に、ストレージの版管理やごみ箱をバックアップとみなした回答があれば高めに出ます。この点は公表資料からは判別できず、出典によって見解が分かれる部分です。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
選定時はIPAが示すクラウド向けの4点を、基本対策とあわせて確認する

先にお断りしておくと、この記事では製品ごとの比較表を作りません。容量単価や無料プランの上限といった情報は、公的な統計資料から取得できないためです。
代わりに、公的機関が示す判断軸を選定基準として紹介します。IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書(組織編)は、クラウドサービスを利用する場合の対策を4点挙げています。事前調査、責任範囲の明確化、停止時の代替案、仕様変更時の設定見直しの4つです(※14)。
ただしこの4点は、解説書では「情報セキュリティ対策の基本+α」として示されたものです。ソフトウェアの更新、セキュリティソフトの利用、パスワードの管理・認証の強化、設定の見直し、バックアップの取得、脅威と手口を知ることという基本対策があったうえで、クラウド利用時に上乗せする項目という位置づけになります(※14)。4点だけを確認すれば足りるという意味ではありません。
この4点は、どの製品を選んでも確認が必要になる項目です。 製品名で比較を始める前に自社の基準として持っておくと、検討がぶれにくくなります。
セキュリティ被害を受けた企業は45.9%だが、クラウド起因かは切り分けられていない
まず前提を共有します。総務省の調査には、インターネットを利用している企業に対して、過去1年間に発生したセキュリティ被害を尋ねる設問があります。何らかの被害を受けたと回答した企業の割合は、2024年調査で45.9%でした(※3)。
| 調査年 | 何らかのセキュリティ被害を受けた企業の割合 |
|---|---|
| 2018年 | 55.6%(※10) |
| 2021年 | 52.4%(※8) |
| 2022年 | 62.4%(※7) |
| 2024年 | 45.9%(※3) |
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表5-1ほか各年調査より作成。年によって出典資料が異なり、集計基準が揃っていません。2019年・2020年・2023年調査分の公表値も存在しますが、本記事のファクトデータベースに未登録のため本表では扱っていません【要確認・要登録】。
この表は年ごとに出典資料が違うため、上下の動きをそのまま傾向として読むことはできません。同じ令和6年報告書の図表5-1には、基準を揃えた3年分の時系列が掲載されており、そこでは被害を受けた企業の割合は3年続けて低下しています(※3)。 クラウドの利用率は2025年調査の83.5%まで一貫して上がってきましたが、被害率はこれと同じ向きには動いていません。ただしこの指標はインターネット利用時の被害全般が対象で、クラウドが原因かどうかは切り分けられていません。
そのため、公的統計から「クラウドは安全」とも「危険」とも結論づけることはできません。 統計で答えの出ない部分は、次に紹介するIPAの指針で補うのが現実的です。
IPAの10大脅威2026では委託先を狙った攻撃が2位、内部不正が7位
クラウドストレージの運用に関わる脅威は、IPAが選定した10大脅威にも複数入っています。外部の委託先を経由した攻撃や、内部の人によるデータ持ち出しは、共有設定の管理と直結する論点です。
| 順位(2026年・組織編) | 脅威 |
|---|---|
| 1位 | ランサム攻撃による被害 |
| 2位 | サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 |
| 7位 | 内部不正による情報漏えい等 |
| 8位 | リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃 |
出典: IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書(組織編)表1.1より、クラウドストレージの運用に関係する項目を抜粋(全10項目のうち4項目)
なおIPAは同解説書の留意事項で、この順位は対策すべき優先順位ではないと明記しています。順位の高低ではなく、自組織の立場や環境に照らして優先すべき脅威を整理するよう求めています(※14)。上位に入っていることを、そのまま自社の対策順位として使わないでください。
共有リンクの公開範囲、退職者のアカウント、委託先に渡した権限は、この一覧に並ぶ脅威とそのままつながります。 脅威の一覧を眺めるより、自社の共有設定を1つずつ点検するほうが効果があります。
事前調査・責任範囲・停止時の代替案・設定見直しの4点を確認する
IPAの解説書がクラウド利用時の対策として挙げている4点は、そのまま選定時の確認項目として使えます。契約前と運用開始後の両方で確認してください。
選定時に確認する4点(IPA解説書 表1.3「情報セキュリティ対策の基本+α」より)
- 選定前の事前調査: クラウドサービスのガイドラインに沿った運営をしている業者・サービスかを調べたうえで選定する
- 責任範囲の明確化(理解): 契約する際に、インシデント発生時に誰がどこまで対応する責任を負うのかを明確にし、理解しておく
- 代替案の準備: クラウドが停止しても業務が止まらないよう、代替策を準備しておく
- 設定の見直し: 更新情報を常に確認し、仕様変更によって意図せず変わった設定を適切な状態に修正する
IPAは事前調査の参考資料として「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」を挙げています(※15)。契約前の確認項目を具体的に決めたい場合は、こちらもあわせて確認してください。
この4点は、導入理由の裏返しでもあります。場所や機器を選ばず使える50.1%、資産や保守体制を社内に持たなくてよい42.5%という利点を思い出してください(※3)。どちらも、管理の一部を事業者に預けることで成り立っています。
預けた範囲で何かが起きたときにどう動くかを、あらかじめ決めておくのがこの4点の役割です。得たいものと引き換えに発生する確認事項として、選定の初期段階で洗い出しておきましょう。
出典: IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書(組織編)/IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
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国内クラウド市場は2024年に前年比26.1%伸びており、費用は増え続ける前提で見る

製品ごとの料金表は出せませんが、費用がどちらに動くかは市場データから見当がつきます。2024年の日本のパブリッククラウドサービス市場は、前年比26.1%増でした(※13)。
企業の利用率は2024年調査で80.4%に達しており、伸びしろは以前より小さくなっています。それでも市場はこの水準を大きく上回る速さで拡大しています。
クラウドストレージの費用は、導入時の月額ではなく、増え続ける前提の運用費として見ておくのが安全です。 予算計画では、容量と契約サービス数の増加を最初から織り込んでおきましょう。
国内パブリッククラウド市場規模は2024年に4兆1,423億円
まず規模の感覚を押さえます。令和7年版情報通信白書によると、日本のパブリッククラウドサービス市場の2024年の売上高は4兆1,423億円でした。前年比では26.1%の増加です(※13)。
世界市場はさらに大きく、2024年で7,733億ドルに達すると見込まれています(※13)。
ただし、この市場規模は通信利用動向調査のような統計調査の数値ではありません。白書が民間調査会社の推計を引用したもので(国内はIDC Japan、世界はStatista Market Insightsの推計)、推計の方法によって値が変わります。 利用率と同じ精度の数値としては扱わないでください。
利用企業の伸び約3.5%に対し市場は26.1%拡大している
2つの数値を並べると、差がはっきりします。クラウドを利用している企業の割合は、2023年調査の77.7%から2024年調査の80.4%へ2.7ポイント増えました。相対では約3.5%の増加です(いずれも本記事による計算値。2つの年は出典資料が異なり集計基準が揃っていませんが、基準を揃えても差の大きさはほとんど変わりません)。
一方、同じ2024年の国内市場は26.1%拡大しています(※13)。利用企業数の増加だけでは、この差は説明できません。

ここから読み取れるのは、すでに使っている企業で契約容量やサービス数、単価が増えている可能性です。因果までは特定できませんが、予算計画で「今年と同じ容量で来年も足りる」と置かないほうが安全だと考えられます。
注意
この2つの数値は母集団が一致しません。白書の定義では、この市場規模は「特別の規制や制限を設けずに幅広いユーザーに対して提供されるIT関連機能に特化したクラウドサービス」が対象で、常用雇用者100人以上の企業に限った利用率とは範囲が異なります。また市場規模には為替の影響や、生成AI向けの基盤需要が含まれている可能性があり、ストレージの単価だけを表す数値ではありません。単純な比較ではなく、傾向の違いとして読んでください。
出典: 総務省「令和7年版情報通信白書」データセンター市場及びクラウドサービス市場の動向/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
公的統計の数値は資料名と調査時点をセットで社内に残す

稟議書や社内提案に数値を引用するときは、資料名まで書き残してください。同じ調査でも、公表する資料によって値がわずかに違うことがあるためです。
この記事では、2024年調査の数値として報告書の確定値を採用しています。出所を「総務省調査」とだけ書いてしまうと、後から確認する人が同じ数値にたどり着けません。
数値・調査年・資料名の3点をセットで残すと、翌年以降も使い回せる社内資料になります。
同じ2024年調査でも報告書の80.4%と報道発表の80.6%が併存する
具体例を見てみましょう。2024年調査のクラウド利用率は、令和6年通信利用動向調査報告書では80.4%です(※3)。一方、令和7年版情報通信白書には80.6%と記載されています(※12)。
ファイル保管・データ共有の用途も同じです。報告書の値は70.8%(※3)、翌年に公表された資料の前年欄では71.0%となっています(※2)。
この違いは、遡及的な数値の改定ではなく、集計の基準が異なることによるものです。 報道発表の別紙は「無回答を除く形で集計している」と留意事項に明記しており、報告書は無回答を含めて集計しています(※1・※3・※4)。実際、報告書の80.4%を無回答(0.3%)を除いたベースに換算すると80.6%になり、集計対象数も2,330社から2,323社へ変わります。70.8%と71.0%の関係も同じ計算で説明できます。
差は0.2ポイント(本記事による計算値)で実務判断には影響しませんが、どちらの基準の数値かを書いていないと、他の年の数値と並べたときに存在しない増減を作ってしまいます。
なお、報道発表と報告書のどちらが先に公表されるかは資料によって異なります。2024年調査の場合、80.6%を含む報道発表が2025年5月30日に公表され、報告書の80.4%はその後の公表です。「後から出た資料のほうが新しく正しい」とは限りません。
企業規模別の直近データと製品別シェアは公的統計に存在しない
公的統計で答えが出ない論点を先に知っておくと、調査の時間を節約できます。この記事で参照した資料の範囲では、3つの空白があります。
1つ目は企業規模別の直近データで、2021年以降の従業者規模別の利用率は確認できませんでした。2つ目は個別のクラウドストレージ製品のシェアで、これは公的統計の対象外です。3つ目はクラウドが原因の被害だけを切り分けた指標で、2024年調査の45.9%はインターネット利用時の被害全般を指しています。
注意
公的統計で埋まらない部分は、情報源を分けて補う必要があります。自社規模の実態は同業他社の事例やベンダーの資料で、製品の機能や料金は各サービスの公式情報で、セキュリティの判断軸はIPAなど公的機関の指針で補ってください。社内資料では、統計で言える範囲とそれ以外を分けて書くと説得力が保てます。
この構造から読み取れるのは、読者が最も知りたい「自社と同じ規模ではどうなのか」に、公的統計は答えていないという点です。統計は全体の傾向をつかむために使い、自社の判断は別の材料と組み合わせて行うのが現実的です。
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和7年版情報通信白書」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査の結果」
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まとめ
この記事で確認した内容を、実務で使う順に整理します。
- ファイル保管・データ共有は、2025年調査でクラウド利用企業の73.3%が挙げる定着した用途です(※2)
- データバックアップ用途は46.4%(※2)にとどまるため、共有用途との差は自社で埋める必要があります
- 自社の遅れは業種平均ではなく、全体平均の何年前の位置かで測ります(運輸業・郵便業は2024年調査で72.6%。※3)
- 効果があったと答えた企業は87.3%(※3)ですが、常用雇用者100人以上の企業の回答である点も添えて社内に共有します
- 公的統計の数値を引用するときは、調査年だけでなく、報告書か報道発表かという資料名まで残します
まず着手するなら、いま使っているクラウドストレージの復元手順を一度試してみてください。共有できていることと、消えたデータを戻せることは別だと、実際に手を動かすとよく分かります。
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この記事で扱った「クラウドに置くことと、バックアップを取ることは別」という論点は、独学では気づきにくい領域です。近くに教えてくれる先輩がいない環境だと、事故が起きてから知ることになりがちです。
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出典一覧
本文中の(※n)は、以下の資料に対応します。
- ※1 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1(今回の要点)
- ※2 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2(調査結果の概要)
- ※3 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
- ※4 総務省「令和6年通信利用動向調査の結果」(令和7年5月30日公表)
- ※5 総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」(令和6年6月7日公表)
- ※6 総務省「令和5年通信利用動向調査報告書(企業編)」
- ※7 総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」(令和5年5月29日公表)
- ※8 総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」(令和4年5月27日公表)
- ※9 総務省「令和2年通信利用動向調査報告書(企業編)」
- ※10 総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」(令和元年5月31日公表)
- ※11 総務省統計局 e-Stat 統計表0003165250(通信利用動向調査 企業編)
- ※12 総務省「令和7年版情報通信白書」第Ⅰ部
- ※13 総務省「令和7年版情報通信白書」第Ⅱ部 データセンター市場及びクラウドサービス市場の動向
- ※14 IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書(組織編)
- ※15 IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」

