【総務省データ】クラウドサービスとは|仕組み・種類と2025年時点の導入率83.5%を解説

「クラウド」という言葉は毎日のように聞きますよね。それでも、いざ社内で説明を求められると詰まってしまう方は多いはずです。
- クラウドサービスって、結局のところ何を指しているの?
- SaaS・PaaS・IaaSの違いを、自分の言葉で説明できる自信がない
- 他社はどこまで使っているのか、比べられる数値がほしい
先に結論をお伝えします。クラウドサービスとは、自社で設備を持たずにインターネット経由でITの機能を使う仕組みのことです。そして日本ではすでに、2025年時点で常用雇用者100人以上の企業の8割以上が利用しています。
この記事では、定義と仕組み、種類、メリットと注意点を整理します。そのうえで、総務省の通信利用動向調査の数値をもとに、国内企業の実態まで踏み込みます。
この記事のポイント
- 常用雇用者100人以上の企業を対象とした2025年調査で、クラウドサービスを利用している企業は83.5%です(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(ポイント)」)
- ただし全社的に使っている企業は60.0%にとどまり、残りは一部の部門だけでの利用です(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(調査結果の概要)」)
- クラウドを利用している企業のうち、その理由に「コストが安いから」を挙げたのは19.4%で、8項目中の最下位でした(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(調査結果の概要)」)
クラウドサービスとは、自社で設備を持たずインターネット経由でITの機能を利用する仕組み

クラウドサービスとは、事業者が用意したサーバーやソフトウェアを、インターネット経由で必要な分だけ借りて使う形態のことです。 自社でハードウェアを購入する必要も、その保守を自社で抱える必要もありません。
たとえばメールやファイル共有、会計システムを、自社のサーバー室ではなく事業者のデータセンター側に置く形になります。利用者はブラウザやアプリからアクセスするだけで済みます。
この形はすでに例外的な選択肢ではありません。常用雇用者100人以上の企業を対象とした2025年の総務省調査では、83.5%の企業がクラウドサービスを利用しています。
以下では、仕組みの本質、オンプレミスとの違い、実際の用途の順に見ていきます。
クラウドサービスはIT資産を「所有する」から「使う」へ変える
クラウドサービスの本質は、IT資産を所有する形から、必要なときに使う形へ変える点にあります。 サーバーの調達も、故障に備えた冗長化も、事業者側の仕事になるからです。
この見方は、利用企業自身の回答とも一致します。2025年の総務省調査(クラウドサービス利用企業が対象、複数回答)を見てみましょう。クラウドを利用する理由として「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」を42.8%の企業が挙げました。
同じ調査で「安定運用、可用性が高くなるから」を挙げた企業も45.1%あります。機器の更改計画や夜間の障害対応から解放されることが、実務上の価値として認識されているわけです。
つまりクラウド化とは、単なる置き場所の変更ではありません。情シスが持つ役割そのものを、設備の管理から利用の設計へ移す変化だと考えてください。
オンプレミスとの違いは、設備の持ち主と初期投資の大きさにある
クラウドとオンプレミスの最大の違いは、設備を誰が持つかという点です。 オンプレミスは自社でサーバーを購入して設置する方式で、機器も運用責任も自社側にあります。
この違いは初期投資の大きさに直結します。オンプレミスでは導入時にまとまった費用が必要ですが、クラウドは利用量に応じた月額課金が基本です。
一方で、クラウドが常に安く済むとは限りません。2025年の総務省調査では、クラウドを利用している企業のうち、その理由に「既存システムよりもコストが安いから」を挙げたのは19.4%にとどまっています。この点は後の章で詳しく扱います。
| 比較軸 | クラウド | オンプレミス |
|---|---|---|
| 設備の所有者 | サービス事業者 | 自社 |
| 初期費用 | 小さい(月額課金が中心) | 大きい(機器購入が必要) |
| 拡張のしやすさ | 契約変更で増減しやすい | 機器の追加調達が必要 |
| 運用の担い手 | 事業者(基盤部分) | 自社の情シス |
| カスタマイズ | サービスの範囲内 | 自由度が高い |
出典(本文中の数値): 総務省「令和7年通信利用動向調査(調査結果の概要)」
違いは費用の形だけではありません。運用を誰が担うかという点も選び方を左右します。先に触れた2025年の同じ調査でも、可用性の高さを理由に挙げた企業は45.1%、社内に資産と保守体制を持たずに済む点を挙げた企業は42.8%でした。いずれも費用の安さより高い比率です。
実際の使われ方はファイル保管・データ共有が73.3%で最も多い
定義だけでは実感が湧きにくいので、具体的な用途を見てみましょう。2025年の総務省調査(クラウドサービス利用企業が対象、複数回答)の結果です。用途として最も多かったのは「ファイル保管・データ共有」で、73.3%の企業が挙げました。
「データバックアップ」も46.4%の企業が挙げており、いずれもファイルサーバーやバックアップ装置の置き換えにあたる用途です。
ただし、これは同じ年の断面を捉えた数値です。企業がどの用途から順にクラウド化していったかを示すものではありません。この調査の選択肢には、基幹業務にあたる用途も含まれています。
用途の全体像を示す数値はここでは扱っていないため、ここで挙げた2項目だけで「用途の主流はストレージだ」と言い切ることはできない点にもご注意ください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(調査結果の概要)」/総務省「令和7年通信利用動向調査(ポイント)」
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クラウドサービスの種類は提供範囲と設置形態の2軸で整理できる

クラウドサービスの分類はいくつもあり、混乱しやすいところです。ただし整理の軸は2つしかありません。
1つ目は、事業者がどこまで用意してくれるかという軸です。 SaaS・PaaS・IaaSがこれにあたります。2つ目は、設備をどこに置くかという軸で、パブリック・プライベート・ハイブリッドがこれにあたります。
ポイント
- 提供範囲による分類が SaaS / PaaS / IaaS
- 設置形態による分類が パブリック / プライベート / ハイブリッド(NISTの定義ではコミュニティクラウドを加えた4区分)
- 2つは別の軸なので、「パブリッククラウドのSaaS」のように組み合わせて考えます
SaaS・PaaS・IaaSは、事業者が用意する範囲の広さで分かれる
SaaS・PaaS・IaaSの違いは、事業者が用意する範囲がどこまで広いかという一点に尽きます。 SaaSは完成したソフトウェアをそのまま使う形、PaaSは開発と実行の環境を借りる形、IaaSはサーバーやストレージという素材を借りる形です。
範囲が広いほど自社の運用負担は軽くなり、代わりに設定の自由度は下がります。逆にIaaSはOSやミドルウェアを自社で面倒を見るぶん、既存システムを持ち込みやすくなります。
| 分類 | 事業者が用意する範囲 | 利用者が管理する範囲 | 代表的な用途 | 情シスの主な仕事 |
|---|---|---|---|---|
| SaaS | アプリケーションまで一式 | 利用者アカウントと設定 | メール、グループウェア、ファイル共有、会計 | 権限設計、アカウント管理、教育 |
| PaaS | OSとミドルウェアまで | アプリケーションとデータ | 自社アプリの開発・実行基盤 | アプリ設計、データ管理 |
| IaaS | サーバー、ストレージ、ネットワーク | OS、ミドルウェア、アプリ | 既存システムの移行、検証環境 | OS更新、ミドルウェア管理、監視 |
多くの企業が最初に触れるのはSaaSです。2025年の総務省調査(クラウドサービス利用企業が対象、複数回答)でも、用途の首位は「ファイル保管・データ共有」の73.3%でした。「データバックアップ」を挙げた企業も46.4%います。どちらの用途も、多くの場合SaaSとして提供されます(バックアップはIaaSやオブジェクトストレージの形で提供されることもあります)。
なお、この記事が典拠とした総務省の通信利用動向調査には、SaaS・PaaS・IaaSの別による集計がありません。ここでは分類の考え方だけを押さえてください。
パブリック・プライベート・ハイブリッドは設置形態による分類にあたる
もう1つの軸は、その環境を他社と共用するのか、自社専用にするのかという設置形態の違いです。 求められるセキュリティ要件やコストによって選び方が変わります。
- パブリッククラウド: 事業者の基盤を不特定多数の利用者で共用する形です。初期費用が小さく、必要な分だけ契約できます
- プライベートクラウド: 自社専用の環境として使う形です。自社設備で構築する場合も、事業者の設備を自社専用に借りる場合も含まれます。共用を避けたい要件がある場合に選ばれ、そのぶん費用と構築の手間はかかります
- ハイブリッドクラウド: 両者を組み合わせる形です。情報系はパブリック、基幹系は自社側に残すといった使い分けをします
- コミュニティクラウド: 同じ業界や同じ規制のもとにある複数の組織で共用する形です。実務で語られる機会は多くありませんが、米国NISTの定義(SP 800-145)では上の3つと並ぶ区分として挙げられています
実務では、いきなり全社の業務をパブリッククラウドに寄せる例ばかりではありません。次の章で見るように、一部の事業所や部門から使い始めている企業も相当数あります。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(調査結果の概要)」/NIST「SP 800-145 The NIST Definition of Cloud Computing」
日本企業のクラウド導入率は2025年時点で83.5%に達している

ここからは一次データを見ていきます。総務省の通信利用動向調査は、常用雇用者100人以上の企業を対象にした調査です。この調査で、2025年時点でクラウドサービスを利用している企業は83.5%でした。
前年にあたる2024年調査では80.6%です。1年前と比べても、利用する企業は増え続けています。
先に重要な前提をお伝えします。この調査の対象は常用雇用者100人以上の企業です。中小企業を含む日本のすべての企業を対象にした数値ではないため、自社と比べるときは母集団の条件を意識してください。
以降の数値も、断りがない限りすべて同じ条件のもとでの値です。
導入率は2010年の13.7%から15年でおよそ6倍に伸びた
まず推移を事実として押さえます。同じ総務省の通信利用動向調査で、クラウドサービスを利用している企業の割合は次のように動いてきました。
| 調査年 | 利用企業の割合 |
|---|---|
| 2010年 | 13.7% |
| 2012年 | 28.0% |
| 2016年 | 46.6% |
| 2018年 | 58.7% |
| 2021年 | 70.4% |
| 2022年 | 72.2% |
| 2023年 | 77.7% |
| 2024年 | 80.6% |
| 2025年 | 83.5% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(ポイント)」(2025年)/総務省「令和7年版情報通信白書」(2024年)/政府統計の総合窓口(e-Stat)「通信利用動向調査」ほか各年の通信利用動向調査(対象は常用雇用者100人以上の企業)

15年間で13.7%から83.5%へ、およそ6倍に増えた計算です。 オフィスのITは、この期間に大きく形を変えたことになります。
この推移から読み取れるのは、伸びのペースがすでに落ちているという点です。年あたりの上昇幅を計算すると、2016年から2018年は約6.1ポイント、直近の2021年から2025年は約3.3ポイントでした。
つまりクラウドは「これから広がる技術」ではありません。導入していないこと自体を社内外に説明する必要がある技術へ、位置づけが変わったと考えられます。
注意
2019年と2020年の値は今回の集計に含めていないため、期間の区切り方によって「年あたりの上昇幅」は変わります。また、上限が100%の指標は水準が高くなるほど機械的に伸びが鈍ります。鈍化を需要の一巡と結論づけるのは、あくまで一つの読み方です。
資本金規模別の導入率には3000万円と1億円の2か所に段差がある
次に企業規模による差を見ます。2025年調査(常用雇用者100人以上の企業が対象、無回答を除く)の資本金規模別の導入率は以下のとおりです。
| 資本金規模 | 利用企業の割合 |
|---|---|
| 1000万円未満 | 75.4% |
| 1000万円〜3000万円未満 | 74.8% |
| 3000万円〜5000万円未満 | 84.1% |
| 5000万円〜1億円未満 | 83.1% |
| 1億円〜5億円未満 | 92.3% |
| 5億円〜10億円未満 | 92.5% |
| 10億円〜50億円未満 | 97.5% |
| 50億円以上 | 99.8% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(調査結果の概要)」

資本金が最も小さい階級(1000万円未満)と最も大きい階級(50億円以上)では、24.4ポイントの差があります。規模が大きいほど導入率が高いという傾向は、たしかに出ています。
ただし、この数値から読み取れるのは、資本金が大きくなるほど一定の割合で高くなるわけではないという点です。導入率は74〜75%台、83〜84%台、92%台、97%以上という4つの層に分かれています。
段差ができているのは資本金3000万円と1億円の2か所で、いずれもおよそ9ポイント跳ね上がります。自社の位置を確認するときは、平均値ではなく、この段差のどちら側にいるかを見るほうが実感に近いはずです。
なお、資本金1000万円未満(回答企業100社)や5億円〜10億円未満(同65社)のように、階級によっては回答企業数が少ないものもあります。小さい階級の値は、大きい階級の値ほど精度が高くない点にご留意ください。
業種別では金融・保険業96.2%と運輸業・郵便業78.3%で約18ポイントの差がある
業種によっても導入率は変わります。2025年調査(常用雇用者100人以上の企業が対象、無回答を除く)の業種別の値は次のとおりです。
| 業種 | 利用企業の割合 |
|---|---|
| 金融・保険業 | 96.2% |
| 情報通信業 | 94.8% |
| 不動産業 | 90.9% |
| 建設業 | 89.2% |
| 製造業 | 85.6% |
| 卸売・小売業 | 83.6% |
| サービス業、その他 | 79.3% |
| 運輸業・郵便業 | 78.3% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(調査結果の概要)」

最上位の金融・保険業と最下位の運輸業・郵便業では、17.9ポイントの差があります。 資本金規模による差ほどではありませんが、無視できる幅ではありません。
この並びから読み取れるのは、書類やデータのやり取りが業務の中心にある業種ほど導入率が高い、という傾向です。用途の首位が「ファイル保管・データ共有」だったこととも方向が一致します。
ただし、これは仮説にとどめてください。業種ごとの利用目的の内訳は公表されておらず、業種による差は各業種の企業規模の構成でも説明できるためです。なお「サービス業、その他」は性格の異なる業種をまとめた区分なので、この値だけで業種の特性を語ることはできません。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(ポイント)」/総務省「令和7年通信利用動向調査(調査結果の概要)」/総務省「令和7年版情報通信白書」/政府統計の総合窓口(e-Stat)「通信利用動向調査」
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導入企業がクラウドを選ぶ理由の上位は、コストではなく場所を選ばない利便性

クラウドのメリットは一般論として語られがちです。ここでは、実際に導入した企業が挙げた理由の比率から見ていきましょう。
2025年調査(クラウドサービス利用企業が対象、複数回答、無回答を除く)でクラウドを利用する理由は次の順でした。
| 利用する理由 | 回答した企業の割合 |
|---|---|
| 場所、機器を選ばずに利用できるから | 50.7% |
| 安定運用、可用性が高くなるから | 45.1% |
| 資産、保守体制を社内に持つ必要がないから | 42.8% |
| 災害時のバックアップとして利用できるから | 38.7% |
| サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策) | 35.0% |
| システムの容量の変更などに迅速に対応できるから | 32.6% |
| システムの拡張性が高いから(スケーラビリティ) | 28.9% |
| 既存システムよりもコストが安いから | 19.4% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(調査結果の概要)」

この並びは、一般的なメリット紹介の順番とはかなり違います。以下の見出しで、上位と最下位のそれぞれを読み解いていきます。
場所や機器を選ばずに使える点が50.7%で最も多く挙げられている
利用理由の首位は「場所、機器を選ばずに利用できるから」で、2025年調査では50.7%の企業が挙げました。 テレワークや外出先での業務が定着したことを考えると、納得しやすい結果です。
続くのが「安定運用、可用性が高くなるから」の45.1%、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」の42.8%です。いずれも情シスの日常業務に直結します。
自社サーバーであれば、機器の更改計画も、UPSの交換も、障害時の一次対応も自社で抱えることになります。その負担を事業者側に移せる点が評価されているわけです。
一方、「システムの容量の変更などに迅速に対応できるから」は32.6%、「システムの拡張性が高いから」は28.9%と、相対的に低めでした。拡張性はクラウドの代名詞のように語られますが、選定理由としての比重はそれほど大きくないようです。
コストの安さを理由に挙げた企業は19.4%で、8項目中最下位だった
ここが本記事で最もお伝えしたい部分です。2025年調査で「既存システムよりもコストが安いから」を利用理由に挙げた企業は19.4%にとどまり、8項目中の最下位でした。 首位の「場所、機器を選ばずに利用できるから」50.7%とは31.3ポイントの開きがあります。
一方で、未導入企業の側を見ると結果は異なります。2024年調査の対象は、常用雇用者100人以上でクラウドを導入していない企業171社です。この調査では「クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい」が29.6%で、理由の2番目に入っています。
この2つを並べて読み取れるのは、コストが導入後の便益としてはあまり機能していない一方で、導入前の障壁としては強く意識されている、という構図です。
実務上の含意は明確だと考えます。稟議をコスト削減だけで通そうとすると、導入企業の実感とはずれた説明になりかねません。働く場所の自由度や運用負担の軽減を軸に据えるほうが、実態に沿った提案になります。
注意
この比較には3つの留保があります。第一に、利用理由は2025年、未導入理由は2024年と調査年が異なります。第二に、回答した企業の母集団が「利用企業」と「未導入企業」で別です。第三に、前者は毎月かかる利用料、後者は移行時の改修費用を指しており、同じ「コスト」を比べているわけではありません。
利用企業の89.4%が導入効果を実感している
導入後の評価も見ておきましょう。対象は2025年調査に回答した常用雇用者100人以上の利用企業で、無回答を除いた集計です。クラウドの効果を「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と答えた企業は89.4%でした。
内訳は「非常に効果があった」が36.0%、「ある程度効果があった」が53.5%です。なお公表資料の数値は表章単位未満を四捨五入しているため、内訳の合計と合計値は一致しない場合があります。
つまり、導入した企業のおよそ9割は肯定的に評価しています。効果の実感が広く共有されている点は、社内で導入を提案するときの後押しになるはずです。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(調査結果の概要)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
未導入企業が挙げる最大の理由は「必要がない」の46.0%で、セキュリティ不安は3番目

デメリットも、一般論の「5選」ではなく実際の回答から見ていきましょう。ここで使うのは、クラウドを導入していない企業がその理由を答えたデータです。
2024年調査(常用雇用者100人以上の未導入企業、複数回答、n=171)で回答が多かった上位4項目は次のとおりでした(選択肢は全10項目あり、ここでは上位のみを扱います)。
| 利用しない理由 | 回答した企業の割合 |
|---|---|
| 必要がない | 46.0% |
| クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい | 29.6% |
| 情報漏えいなどセキュリティに不安がある | 24.9% |
| ネットワークの安定性に対する不安がある | 14.7% |
最も多かったのは「必要がない」で46.0%でした。なお回答した企業は171社と少ないため、項目間のわずかな差は誤差で入れ替わりうる点に留意してください。
セキュリティ不安は24.9%にとどまり、導入企業ではむしろ選ぶ理由になっている
クラウドの話題では、セキュリティ不安が最大の障壁として語られることがよくあります。しかし2024年調査で「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」を挙げた未導入企業は24.9%で、首位ではありませんでした。
一方、すでに導入している企業の側の回答も見てみましょう。2025年調査では、クラウドを利用している企業のうち35.0%が「サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策)」を利用理由に挙げています。「災害時のバックアップとして利用できるから」は38.7%でした。
この2つの数値から読み取れるのは、セキュリティや事業継続がクラウドを避ける理由ではなく、選ぶ理由の側にも回っているという点です。自社で機器と対策を抱えるより、事業者の運用に任せるほうが安全だと判断する企業が一定数いるわけです。
もちろん、クラウドなら安全という話ではありません。設定ミスや権限管理の不備は利用者側の責任範囲であり、対策は必要です。またこれは断面調査であり、同じ企業の意識が導入前後で変わったことを示すデータではありません。
移行時の改修コストと通信環境への依存が実務上の注意点になる
では、情シスとして現実に備えるべき点はどこでしょうか。データが示しているのは2つです。
1つ目は移行費用です。2024年調査では「既存システムの改修コストが大きい」を29.6%の未導入企業が挙げています。2025年調査では、クラウドを利用している企業のうちコストの安さを利用理由に挙げたのは19.4%でした。この2つを合わせると、費用は導入前に見積もるべき論点だと分かります。
2つ目は通信環境です。同じ2024年調査では「ネットワークの安定性に対する不安がある」が14.7%でした。回線と認証は、止まると業務全体が止まる箇所になりやすいところです。
このほか、サービスの仕様に合わせて業務を寄せる必要が出る点や、提供終了時の移行先を考えておく必要がある点も、検討の段階で押さえておいてください。
導入前に確認したいこと
- 既存システムの改修費用を、初期の検討段階で見積もる
- 回線と認証基盤が単一障害点にならないよう、冗長化と代替手段を決めておく
- カスタマイズの前提を減らし、サービスの標準機能に業務を合わせられるか確認する
- サービス終了や乗り換えに備え、データの取り出し方法を契約時に確認する
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和7年通信利用動向調査(調査結果の概要)」
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導入率83.5%のうち全社利用は60.0%にとどまり、数値だけでは実態は分からない

最後に、導入率という指標そのものの読み方を扱います。2025年調査(常用雇用者100人以上の企業が対象)の83.5%という値は、利用の深さまでは教えてくれません。
同じ調査は、利用の範囲を2つに分けて集計しています。全社的に利用している企業は60.0%、一部の事業所または部門で利用している企業は23.5%です。
この2つを足すと83.5%になり、冒頭の導入率と一致します(60.0%・23.5%は無回答を除いた集計基準です)。つまり導入率の中には、まだ全社に広がっていない企業が相当数含まれているわけです。

導入済み企業のおよそ3割は全社展開に至っていない
数字を割り戻してみましょう。一部利用の23.5%を導入率83.5%で割ると、導入済み企業のうちおよそ28%は全社展開に至っていない計算になります。
ここから読み取れるのは、実務上の関心がすでに移っているということです。「導入したかどうか」ではなく、「どの業務をどこまでクラウドに載せたか」が論点になっています。
ただし、この28%を遅れていると評価するのは適切ではありません。一部利用には、段階的な移行の途中にある企業と、意図的に基幹系を自社に残している企業の両方が含まれるためです。
そして総務省の通信利用動向調査は、利用の範囲については全社利用と一部利用という2区分までしか捉えていません。SaaS・PaaS・IaaSごとの国内利用比率も、この調査には含まれていないのです。
先ほど種類の章で分類ごとの数値を出さなかったのは、この理由によります。
公表値は常用雇用者100人以上の企業を対象にした数字である
もう1つ、数値の読み方で大事な点があります。通信利用動向調査の企業編が対象としているのは、常用雇用者100人以上の企業です。 2025年の83.5%も、2024年の80.6%も、この条件のもとでの値になります。
規模別の値も同じです。資本金1000万円未満の75.4%や、1000万円〜3000万円未満の74.8%は、資本金は小さいけれど従業員が100人以上いる企業の数値です。
したがって「中小企業でも4社に3社が導入している」と読むと、母集団を取り違えることになります。世の中の小規模事業者全般に当てはめられる数値ではありません。
自社と比べるときは、全体の平均値ではなく、規模と業種が近い階級の値を見てください。数値そのものより、数値に付いている条件のほうが判断を左右します。
注意
この記事で引用した導入率は、いずれも総務省の通信利用動向調査(企業編)によるもので、対象は常用雇用者100人以上の企業です。社内資料に引用するときは、数値と一緒に調査年と母集団の条件も必ず記載してください。条件を落とすと、実態より高い導入率を前提にした議論になってしまいます。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(ポイント)」/総務省「令和7年通信利用動向調査(調査結果の概要)」/総務省「令和7年版情報通信白書」
まとめ
クラウドサービスとは何かを、定義から国内の実態まで見てきました。要点を整理します。
- クラウドサービスとは、自社で設備を持たずインターネット経由でITの機能を使う仕組みです。IT資産を所有する形から使う形へ変えるものだと考えてください
- 分類は2軸あります。提供範囲によるSaaS・PaaS・IaaSと、設置形態によるパブリック・プライベート・ハイブリッド(NISTの定義ではコミュニティクラウドを加えた4区分)です
- 常用雇用者100人以上の企業を対象とした2025年調査で、クラウドを利用している企業は83.5%です。増加ペースはピーク時より鈍っており、普及の段階は一巡しつつあります
- 利用企業が挙げる理由の最下位は「コストが安いから」の19.4%でした。コスト削減だけを軸にした説明は、実態と噛み合いにくいと考えられます
- 導入率83.5%のうち全社利用は60.0%です。数値を引用するときは、調査年と母集団の条件をあわせて示してください
なお資本金1000万円未満の階級でも導入率は75.4%ですが、これも常用雇用者100人以上という条件のもとでの値です。自社と比べるときは、規模と業種が近い階級を見るようにしてください。
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