【総務省データ】ナレッジベースの作り方を4ステップで解説|社内情報共有のクラウド利用は2025年時点で61.4%

  • 「マニュアルは作ったのに、結局あの人に聞きに行っている」
  • 「共有フォルダのどこかにあるはずなのに、誰も見つけられない」
  • 「そもそも何から手をつければナレッジベースになるのか分からない」

社内の情報共有を任された情シス担当者なら、どれかに心当たりがあるのではないでしょうか。

先に結論をお伝えします。ナレッジベースづくりでつまずくのは、保管先の選定ではありません。置いた情報を探し当てられる形に整える工程と、それを更新し続ける工程です。

この記事では、総務省や経済産業省の公的統計をもとに、ナレッジベースの作り方を4つのステップに整理して解説します。他社がどこまで進んでいるのかも数値で示すので、社内で予算や工数を通すときの材料としても使えます。

この記事のポイント

  • 社内情報共有・ポータル用途でクラウドを使う企業は、2025年調査時点で61.4%です(出典: 総務省「令和7年 通信利用動向調査」)。ただし分母はクラウドサービス利用企業です。
  • 同じ2025年調査で、ファイル保管・データ共有用途は73.3%。置き場所の普及に対して、整理して共有する場の普及が追いついていません。
  • 手順を文書にする工程で止まりがちです(ウイルス対策の対応マニュアル策定は2025年調査時点で19.7%。分母はインターネット利用企業で、セキュリティ分野に限った項目です)。作り方は「範囲 → 置き場所 → 型 → 更新」の4ステップで固めます。
\ 情シス専門オンラインスクール /
情シスカレッジ バナー
🎁 今だけ特典!
【期間限定】
トライアル申込者全員に
「IT管理に使える4大テンプレート」
無料プレゼント!
  • 💻 IT資産管理台帳
  • 🧾 PC利用規定テンプレート
  • 🔐 パスワードポリシーサンプル
  • 🌐 IPアドレス管理表
\ 無料で全部もらう /
👉 トライアルに申し込む
目次

ナレッジベースは社内の知識を検索して再利用できる形にまとめた仕組み

ナレッジベースは社内の知識を検索して再利用できる形にまとめた仕組み

ナレッジベースとは、社内に散らばっている知識を、必要な人が検索して再利用できる形にまとめた仕組みです。単に情報を保管する場所ではありません。

ここは分けて考えると整理しやすくなります。「保管すること」と「必要な人が探し当てて使えること」は、別々の仕事だからです。

共有フォルダに資料が入っている状態は、保管までは終わっています。そこから先の、探し当てて再利用できる状態まで持っていくのがナレッジベースの役割です。この記事でも、その「先の工程」に重心を置いて手順を説明していきます。

社内Wiki・社内FAQ・ファイルサーバーとの違いは再利用のしやすさにある

よく似た言葉が並びますが、違いは情報の再利用のしやすさにあります。どれも社内の情報を扱う仕組みですが、想定している使われ方が異なります。

ファイルサーバーは置き場所を提供し、社内Wikiは書き手が自由に書き足し、社内FAQは問いと答えの形に情報を揃えます。ナレッジベースはこれらを含む上位の概念で、どの形をとるかは載せたい情報の性質で決まります。

総務省の通信利用動向調査によると、クラウドサービス利用企業のうち、ファイル保管・データ共有に使っている企業は2025年調査時点で73.3%でした。社内情報共有・ポータルに使っている企業は61.4%です。

多くの企業が、置き場所と共有の場を並行して持っていることが分かります。

種類 主な役割 向いている情報
ファイルサーバー・クラウドストレージ 文書の置き場所を提供する 完成した資料、原本として残す文書
社内Wiki 書き手が自由に書き足して育てる 作業手順、設定の背景、運用ルール
社内FAQ 問いと答えの形に揃える 繰り返し寄せられる質問と回答

表中の数値の出典: 総務省「令和7年 通信利用動向調査」(母集団: クラウドサービス利用企業)

公的統計にはナレッジベースを直接測った項目が存在しない

最初にお断りしておきます。今回参照した公的統計には、ナレッジベースの導入率そのものを測った項目がありません。

総務省の通信利用動向調査でクラウドの用途を尋ねる設問は、「ファイル保管・データ共有」「社内情報共有・ポータル」など、置き場所と配信形式で選択肢が組まれています。

蓄積した知識を検索して再利用する用途を切り出した項目は見当たりません。

そこでこの記事では、最も近い代替指標として社内情報共有・ポータルの61.4%(2025年調査)を使います。ファイル保管・データ共有の73.3%(2025年調査)とeラーニングの25.3%(2025年調査)も参照します。

注意

この記事に出てくる割合は、いずれもナレッジベースの導入率ではありません。クラウドサービスの用途やセキュリティ対策の実施状況を測った数値を、代替指標として使っています。数値の限界は後半で整理します。

出典: 総務省「令和7年 通信利用動向調査」

\ 情シス専門オンラインスクール /
情シスカレッジ バナー
🎁 今だけ特典!
【期間限定】
トライアル申込者全員に
「IT管理に使える4大テンプレート」
無料プレゼント!
  • 💻 IT資産管理台帳
  • 🧾 PC利用規定テンプレート
  • 🔐 パスワードポリシーサンプル
  • 🌐 IPアドレス管理表
\ 無料で全部もらう /
👉 トライアルに申し込む

社内情報共有にクラウドを使う企業は2025年時点で61.4%まで増えている

社内情報共有にクラウドを使う企業は2025年時点で61.4%まで増えている

「他社はどこまでやっているのか」を先に押さえておきましょう。社内説明でいちばん聞かれるところだからです。

結論から言うと、クラウドサービスを利用する企業は2025年調査時点で83.5%まで増えています。そのうち社内情報共有・ポータル用途で使っている企業は61.4%で、前年の2024年調査では57.6%でした。

ただし、この2つの割合は分母が違います。まず全体の利用率を見て、そのあとで用途別の内訳を見る、という順番で整理していきます。

クラウド利用率は2021年の70.4%から2025年の83.5%へ伸びている

情報共有の土台となるクラウドは、すでに定着した段階に入っています。総務省の通信利用動向調査によると、クラウド利用企業の割合は2021年調査の70.4%から2025年調査の83.5%へ伸びました。

この調査の対象は、常用雇用者100人以上の企業です。つまり「一定規模の企業では、クラウドを使っていない方が少数派になった」と読むのが正確です。

クラウドの導入率がここまで上がったということは、ナレッジベースを置く器はすでに社内にある企業が多い、ということでもあります。新しい仕組みをゼロから調達する話ではなく、今ある環境の使い方を決める話として考えてみてください。

クラウドサービスを利用している企業の割合の推移

61.4%の分母はクラウド利用企業であり、全企業に対する割合ではない

ここは読み違えが起きやすい部分です。用途別の61.4%は、クラウド利用企業だけを分母にした割合です。

同じ2025年調査でも、クラウド利用率83.5%の分母は回答企業全体です。一方、社内情報共有・ポータルの61.4%やファイル保管・データ共有の73.3%、2024年調査の57.6%は、クラウド利用企業が分母です。

ここから読み取れるのは、クラウドを導入した企業の中でさえ、約4割は社内情報共有・ポータル用途では使っていないという事実です。ツールの契約と、情報共有基盤として機能させることは別の工程です。

なお、この設問はクラウドの用途を尋ねたものです。オンプレミスのグループウェアで情報共有している企業は、この数値には現れません。

注意

同じ調査でも分母が異なります。クラウド利用率83.5%の分母は常用雇用者100人以上の回答企業全体、用途別の61.4%・73.3%の分母はクラウドサービス利用企業です。「6割の企業が社内ポータルを持っている」という言い換えは、母集団の取り違えになります。

出典: 総務省「令和7年 通信利用動向調査(報道発表資料)」/総務省「令和7年 通信利用動向調査」/総務省「令和3年 通信利用動向調査」

ファイルの置き場所は増えたが、整理して共有する場の普及は追いついていない

ファイルの置き場所は増えたが、整理して共有する場の普及は追いついていない

「共有フォルダにはあるのに、誰も見つけられない」という状態は、実は数値にも表れています。

総務省の通信利用動向調査では、クラウドの用途として「ファイル保管・データ共有」と「社内情報共有・ポータル」の両方を選べます。この2つは同じ設問の選択肢なので、母集団をそろえたまま伸び方を比べられます。

結論を先に言うと、伸びているのは置き場所のほうで、整理して共有する場の普及は追いついていません。次の項で、4年間の伸び幅を具体的に見ていきます。

4年間の伸びはファイル保管12.3ポイント、社内ポータル9.4ポイントで差が開いた

2021年から2025年の4年間で、2つの用途の差はむしろ広がりました。ファイル保管・データ共有は61.0%から73.3%へ12.3ポイント伸びています。一方、社内情報共有・ポータルは52.0%から61.4%へ9.4ポイントの伸びにとどまりました。

その結果、両者の差は2021年調査の9.0ポイントから、2025年調査の11.9ポイントへ広がっています。いずれもクラウドサービス利用企業という同じ母集団で、同じ設問の選択肢です。

つまり、ファイルを置く場所を用意する企業は順調に増えています。それに対して、情報をまとめて共有する場を用意する企業の増え方は緩やかです。

社内情報共有・ポータルとファイル保管・データ共有の利用率推移

つまずくのは保管先の選定ではなく、その次の構造化にある

ここから読み取れるのは、多くの企業は置き場所を用意する段階をすでに越えていて、止まるのはその次の工程だという点です。置いたものを探し当てられる形に整える工程が、相対的に遅れています。

社内情報共有・ポータルの利用も、2017年調査の37.7%から2021年調査の52.0%、2025年調査の61.4%へと着実に伸びています。それでも、ファイル保管・データ共有が2022年調査の時点で到達していた64.1%には、2025年調査でもまだ届いていません。

だからこそ、ナレッジベースづくりの重心は保管先の選定ではなく、構造化と運用にあります。この記事の4ステップも、その順番で組み立てています。

ただし反証もあります。近年はストレージサービス自体が文書の作成や共有の機能を持っています。

実質的に社内ポータルとして使いながら、「ファイル保管・データ共有」だけを選ぶ回答が増えた可能性もあります。その場合、差の拡大はサービス形態の変化を映したものとも読めます。

出典: 総務省「令和7年 通信利用動向調査」/総務省「令和3年 通信利用動向調査」/総務省「令和4年 通信利用動向調査」/総務省「平成30年 通信利用動向調査」

\ 情シス専門オンラインスクール /
情シスカレッジ バナー
🎁 今だけ特典!
【期間限定】
トライアル申込者全員に
「IT管理に使える4大テンプレート」
無料プレゼント!
  • 💻 IT資産管理台帳
  • 🧾 PC利用規定テンプレート
  • 🔐 パスワードポリシーサンプル
  • 🌐 IPアドレス管理表
\ 無料で全部もらう /
👉 トライアルに申し込む

ナレッジベースの作り方は4つのステップで進める

ナレッジベースの作り方は4つのステップで進める

ここからが本題です。ナレッジベースの作り方は、範囲 → 置き場所 → 型 → 更新の4ステップで固めます。

工程を細かく分けた手順もありますが、この記事では公的統計で裏づけられる4つに絞りました。2025年調査では、ファイル保管・データ共有が73.3%、社内情報共有・ポータルが61.4%です(母集団はクラウドサービス利用企業)。

この現状を踏まえれば、力を入れるべき工程は絞り込めます。

ウイルス対策の対応マニュアル策定が2025年調査時点で19.7%にとどまる点も、あとで見る通り重要な手がかりになります。

ポイント

  • ステップ1 載せる範囲を決める(社内向けから先に固める)
  • ステップ2 置き場所を決める(すでに使っているクラウドを起点にする)
  • ステップ3 書き方の型を決める(白紙から書かせない)
  • ステップ4 更新の回し方を決める(担当・頻度・棚卸しを先に決める)

ステップ1では社内で参照される範囲から先に決める

最初に決めるのは「どこまでを載せるか」です。結論としては、社外向けのFAQや研修教材まで広げず、社内で参照される導線を先に固めることをおすすめします。

根拠は用途の分布にあります。2025年調査では、社内情報共有・ポータルが61.4%なのに対し、取引先との情報共有は26.8%で、34.6ポイントの差があります。

取引先との情報共有は2024年調査では24.5%で、1年で2.3ポイントしか動いていません。同じ2025年調査では、eラーニングも25.3%と2割台です。

この分布から読めるのは、クラウド上の情報共有が社内の参照用途に集中している、という傾向です。因果関係ではなく、あくまで用途の分布から見える傾向として受け取ってください。

まずは社内から始めて、問い合わせ対応の負担を減らすところに効果を集中させるほうが、実態に沿った進め方になります。

クラウドサービスの用途別利用率

ステップ2ではすでに使っているクラウドを起点に置き場所を選ぶ

次は置き場所です。新しいツールを増やす前に、今あるクラウドに構造を与えられないかを先に検討してください。

2025年調査では、クラウドサービス利用企業の73.3%がすでにファイル保管・データ共有でクラウドを使っています。社内情報共有・ポータル用途も61.4%です。つまり、置き場所そのものは持っている企業が多数派です。

選択肢はタイプで考えると整理しやすくなります。製品名から入ると比較に時間がかかるので、まず型を決めてから候補を絞りましょう。

  • 社内Wiki型: 手順や運用ルールを書き足しながら育てたい場合に向きます
  • グループウェア型: すでに全社員がログインする環境があり、導線を増やしたくない場合に向きます
  • FAQ・ヘルプデスク型: 同じ質問が繰り返し寄せられ、問いと答えで整理したい場合に向きます
  • ファイル共有型: 原本の保管が主目的で、検索は補助的でよい場合に向きます

ステップ3では書き手の負担を下げる型をあらかじめ決める

3つ目は書き方の型です。手順を文書に落とす工程は、そもそも多くの企業で進んでいません。

総務省の調査によると、ウイルス対策の対応マニュアルを策定している企業は2025年調査時点で19.7%、前年の2024年調査では18.3%でした。1年で1.4ポイントしか動いていません。

この数値はインターネット利用企業を母集団とし、セキュリティ分野に限定した項目です。業務全般の文書化率ではない点は、必ず押さえておいてください。

それでも、方針より手順のほうが文書になりにくいという傾向は読み取れます。だからこそ、書き手に白紙を渡さない工夫が要ります。

目的・前提・手順・例外・更新日をあらかじめ並べたテンプレートを用意し、埋めるだけで運用手順書として成立する状態にしておきましょう。

ステップ4では更新と棚卸しを運用ルールに組み込む

最後は更新の回し方です。更新担当・更新頻度・棚卸しのタイミングは、公開前のルールに含めてしまうのが確実です。

2025年調査では、セキュリティ対策として社員教育を実施している企業が54.7%あります。一方、対応マニュアルを策定している企業は19.7%にとどまります。

どちらもインターネット利用企業を母集団とし、セキュリティ分野に限った複数回答の項目です。同じ企業の中で教育と文書化がどう対応しているかは公表されていないため、2つの実施率の水準差として受け取ってください。

文書が古いまま残ると、読んだ人が結局は担当者に聞き直すことになります。更新されない前提で作ると、最初の1年で使われなくなります。

成果の見方も決めておきましょう。閲覧数ではなく、同じ問い合わせが減ったかどうかを指標にすると、運用の判断がぶれにくくなります。

ポイント

  • ページごとに更新担当者を1人決める
  • 更新頻度と棚卸しの月をあらかじめカレンダーに入れる
  • 公開前に「誰がいつ見直すか」を書いた欄をテンプレートに入れておく
  • 成果は閲覧数ではなく同じ問い合わせが減ったかで見る

出典: 総務省「令和7年 通信利用動向調査」

作ったナレッジベースが使われなくなる原因は、書く工程と更新の工程にある

作ったナレッジベースが使われなくなる原因は、書く工程と更新の工程にある

「作ったのに使われない」という相談は本当によく聞きます。原因を、感覚ではなく数値から考えてみましょう。

総務省の調査では、セキュリティポリシーを策定している企業は2025年調査時点で48.2%、前年の2024年調査では44.2%でした。一方、ウイルス対策の対応マニュアルを策定している企業は2025年調査で19.7%、2024年調査で18.3%です。

方針を決める工程は動くのに、手順に落とす工程は動きにくい。この差が、ナレッジベースが定着しない構造とよく似ています。

方針の文書化は48.2%まで進む一方、手順の文書化は19.7%にとどまる

同じ調査の同じ設問群で比べると、伸び方の差がはっきり出ます。セキュリティポリシーの策定は、2024年調査の44.2%から2025年調査の48.2%へ4.0ポイント伸びました。対応マニュアルの策定は18.3%から19.7%へ、1.4ポイントの伸びにとどまります。

どちらもインターネット利用企業を母集団とし、セキュリティ対策の実施内容を尋ねた項目です。したがって、この数値をそのまま業務全般の文書化率として扱うことはできません。

そのうえで読み取れるのは、方針を決める工程に比べて、手順を文書に落とす工程は動きが鈍いという傾向です。ナレッジベースでも、方針づくりは進むのに記事が増えないという形で同じ停滞が起きます。

なお、この19.7%はナレッジベースの整備率ではありません。文書化の工程が止まりやすいことを示す傍証として扱ってください。

セキュリティ対策の実施率(2024年→2025年)

探して見つからない状態を防ぐには、分類より入口の数を絞るほうが効く

使われない理由のもう一つは、探しても見つからないことです。対策としては、分類を細かくするより入口を1つに寄せるほうが効きます。

2025年調査では、クラウドサービス利用企業のうちファイル保管・データ共有が73.3%、社内情報共有・ポータルが61.4%でした。多くの企業で、置き場所と共有の場が並行して存在していることになります。

入口が複数あると、利用者は「どちらを見ればいいのか」から考えることになります。次の3点を先に決めておくと、迷いが減ります。

  • 検索を始める入口は1つに決め、他の置き場所へはそこからリンクする
  • 分類は第2階層までにとどめ、それ以上は検索とタグで拾う
  • 同じ内容の文書が複数ある場合は、正とするページを1つ決めて残りは消す

出典: 総務省「令和7年 通信利用動向調査」

\ 情シス専門オンラインスクール /
情シスカレッジ バナー
🎁 今だけ特典!
【期間限定】
トライアル申込者全員に
「IT管理に使える4大テンプレート」
無料プレゼント!
  • 💻 IT資産管理台帳
  • 🧾 PC利用規定テンプレート
  • 🔐 パスワードポリシーサンプル
  • 🌐 IPアドレス管理表
\ 無料で全部もらう /
👉 トライアルに申し込む

着手の順番は企業規模で変わり、クラウド利用率の差は資本金規模で25.0ポイントある

着手の順番は企業規模で変わり、クラウド利用率の差は資本金規模で25.0ポイントある

同じ手順でも、着手の順番は企業の規模によって変わります。使える体制が違うからです。

2025年調査を資本金規模別に見ると、クラウドの利用率は1,000万円〜3,000万円未満の企業で74.8%でした。50億円以上の企業では99.8%、1,000万円未満の区分では75.4%です。

規模による差は25.0ポイントあり、業種による差よりも大きくなっています。自社がどの位置にいるかで、最初に手をつける範囲を変えるのが現実的です。

規模別の差は25.0ポイント、業種別の差は17.9ポイントで、規模の影響が大きい

2025年調査のクラウド利用率を2つの軸で比べると、規模による差のほうが業種による差より大きいことが分かります。

資本金規模別では、最も低い1,000万円〜3,000万円未満が74.8%、最も高い50億円以上が99.8%で、差は25.0ポイントです。一方、業種別では最も低い運輸業・郵便業が78.3%、最も高い金融・保険業が96.2%で、差は17.9ポイントにとどまります。情報通信業も94.8%と高い水準です。

ここから読み取れるのは、扱う情報の性質よりも、情報システムを担当する体制を置けるかどうかのほうが導入を左右している可能性が高い、という点です。ナレッジベースの着手順を考えるときも、まず自社の体制を基準にするほうが無理がありません。

資本金規模別のクラウドサービス利用率

資本金1,000万円未満の区分は一般的な小規模事業者を指していない

規模別の数値には、読み違えやすい点があります。資本金1,000万円未満の75.4%は、一般的な小規模事業者の数値ではありません。

この調査の母集団は常用雇用者100人以上の企業です。したがって資本金1,000万円未満の区分は、従業員は100人以上いるけれど資本金は小さい、という特殊な企業群を指します。

そのため、1,000万円〜3,000万円未満の74.8%と並べて「中小企業はクラウド導入が遅れている」と一般化すると、誤読になります。

また、規模別の並びは単調ではありません。74.8%から84.1%へ跳ね、5,000万円〜1億円未満では83.1%とわずかに下がり、1億円〜5億円未満で92.3%へ再び上がります。区分別の回答企業数(別紙2 図表4-2に記載)は資本金帯によって大きく異なり、回答数が少ない区分では標本誤差の影響を受けやすくなります。1ポイント程度の上下は、その範囲と考えられます。

注意

この調査の対象は常用雇用者100人以上の企業です。資本金1,000万円未満の区分も「従業員は100人以上いるが資本金は小さい企業」であり、数人〜数十人規模の事業者の実態を示すものではありません。自社に当てはめるときは、資本金より従業員数と情シスの体制で見るほうが実態に近くなります。

規模が小さい組織ほど、範囲を絞って1つの入口から始める

規模別の数値を、着手順に置き換えてみましょう。体制を厚く置けない組織ほど、範囲を絞って1つの入口から始めるのが確実です。

2025年調査では、資本金1億円〜5億円未満で92.3%、情報通信業で94.8%と、クラウドの利用率が9割を超える区分があります。こうした環境では全社横断の設計から入れますが、74.8%や83.1%の区分では、まず対象を絞るほうが完走しやすくなります。

自社の状況 2025年のクラウド利用率 最初に着手する範囲
資本金1,000万円〜5,000万円未満 74.8%〜84.1% 問い合わせが多い1領域だけを選ぶ
資本金5,000万円〜1億円未満 83.1% 1部門で入口を1つに統一してから広げる
資本金1億円〜5億円未満 92.3% 全社共通の型を決めてから部門展開する

表中の数値の出典: 総務省「令和7年 通信利用動向調査」(母集団: 常用雇用者100人以上の企業)

このセクションの出典: 総務省「令和7年 通信利用動向調査」

属人化の背景には、2030年に44.9万人と推計されるIT人材の不足がある

属人化の背景には、2030年に44.9万人と推計されるIT人材の不足がある

なぜ今ナレッジベースなのか。背景には、IT人材の需給構造があります。

経済産業省が2019年に公表した「IT人材需給に関する調査」では、標準ケースで2030年時点のIT人材の不足が44.9万人と推計されています。これは実績値ではなく、一定の前提を置いた推計値です。

先に断っておくと、ナレッジベースを作れば人材不足が解消する、という話ではありません。担当者個人の中にしか手順が残らない状態が、組織にとってどれだけ危ういかを確認するための材料として見ていきます。

同一推計の中で、不足幅は2018年の22万人から2030年の44.9万人へ倍増する見通し

同じ推計の中で前後を比べると、不足幅は大きく広がります。2018年時点の不足が22万人、2030年時点の不足が44.9万人で、およそ2倍の開きがあります。

いずれも2019年に公表された1本の調査の中で、同じ標準ケースの前提に立った数値です。調査主体の異なる数値を並べた経年比較ではありません。

この推計は、IT企業とユーザー企業の情報システム部門などに属する人材を対象にしています。推計どおりに不足が広がるなら、手順が特定の担当者の中にしか無い状態は、組織にとって埋めにくいリスクになると考えられます。

先端IT人材は54.5万人不足、従来型IT人材は9.7万人の供給超過という非対称な推計になっている

同じ調査の内訳を見ると、方向が逆になっています。2030年時点で、先端IT人材は54.5万人の不足、従来型IT人材は9.7万人の供給超過と推計されています。

つまり国の推計では、運用寄りの人材はむしろ余る想定です。一方、総務省の通信利用動向調査では、情報通信ネットワークを利用する上での問題点として「運用・管理の人材が不足」を挙げた企業が、2018年調査時点で44.4%ありました。

ただし、この2つは調査主体も対象年も母集団も異なります。経年変化として並べることはできません。推計は2019年公表で対象年は2030年、しかも一定のシナリオを置いた値であり、推計上の人材区分と各社の情シスの業務範囲も一致しません。

このずれから読み取れるのは、運用の人手不足が労働市場全体の頭数ではなく、その業務を回せる人が社内の誰かに限られている状態として現れている、という見方です。

推計がどちらに転んでも、手順が担当者個人の中にしか無い状態は組織のリスクとして残ります。だからこそ、頭の中にあるものを文書に出しておく価値があります。

IT人材需給ギャップの推計

出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」/経済産業省「IT人材需給に関する調査(調査報告書 概要版)」/総務省「平成30年 通信利用動向調査」

\ 情シス専門オンラインスクール /
情シスカレッジ バナー
🎁 今だけ特典!
【期間限定】
トライアル申込者全員に
「IT管理に使える4大テンプレート」
無料プレゼント!
  • 💻 IT資産管理台帳
  • 🧾 PC利用規定テンプレート
  • 🔐 パスワードポリシーサンプル
  • 🌐 IPアドレス管理表
\ 無料で全部もらう /
👉 トライアルに申し込む

この記事の数値はナレッジベースの導入率そのものではなく、代替指標である

この記事の数値はナレッジベースの導入率そのものではなく、代替指標である

最後に、この記事で使った数値の限界を整理しておきます。「ナレッジベースの導入率は◯%」という主張は、今回参照した一次統計の範囲では成立しません。

総務省の通信利用動向調査でクラウドの用途を尋ねる設問は、情報の置き場所と配信形式で選択肢が組まれています。蓄積した知識を検索して再利用する用途を切り出した選択肢はなく、ナレッジベースや社内Wikiに相当する項目も見当たりません。

そのためこの記事では、社内情報共有・ポータルの61.4%(2025年調査)を最も近い代替指標として使いました。補助的に、ファイル保管・データ共有の73.3%(2025年調査)と、eラーニングの25.3%(2025年調査)も参照しています。

読み取りの前提は次の3点です。

  • クラウド利用率(全体)の母集団は、常用雇用者100人以上の企業です
  • 用途別の内訳の母集団は、クラウドサービス利用企業です
  • 2024年の取引先との情報共有と社内情報共有・ポータルは、前年比較のために引いた2024年調査の値です

注意

ここで述べているのは、今回参照した総務省・経済産業省の調査では該当する項目が扱われていないということです。統計が存在しないことの証明ではなく、他の調査に該当する設問がある可能性は残ります。数値を社内説明に使うときは、何を分母にした割合なのかを必ず添えてください。

出典: 総務省「令和7年 通信利用動向調査」

まとめ

ナレッジベースの作り方は、範囲・置き場所・型・更新の4ステップで進めます。クラウド利用率は2025年調査時点で83.5%、ファイル保管・データ共有も73.3%です。多くの企業にとって、課題は置き場所の調達ではありません。

止まりやすいのは構造化と文書化の工程です。2025年調査の社内情報共有・ポータル61.4%、ウイルス対策の対応マニュアル策定19.7%が、その傾向を示しています。

資本金1,000万円〜3,000万円未満で74.8%という数値の通り、体制が限られる企業ほど範囲を絞って始めてください。

重心は保管先の選定ではなく、構造化と更新にあります。まずは問い合わせの多い1領域から、入口を1つ決めて作り始めてみましょう。

ポイント

  • ステップ1 載せる範囲を決める
  • ステップ2 置き場所を決める
  • ステップ3 書き方の型を決める
  • ステップ4 更新の回し方を決める

出典: 総務省「令和7年 通信利用動向調査(報道発表資料)」/総務省「令和7年 通信利用動向調査」

\ 情シス専門オンラインスクール /
情シスカレッジ バナー
🎁 今だけ特典!
【期間限定】
トライアル申込者全員に
「IT管理に使える4大テンプレート」
無料プレゼント!
  • 💻 IT資産管理台帳
  • 🧾 PC利用規定テンプレート
  • 🔐 パスワードポリシーサンプル
  • 🌐 IPアドレス管理表
\ 無料で全部もらう /
👉 トライアルに申し込む

新人・ひとり情シスの育成は「情シスカレッジ」で

情シスカレッジ 新人・ひとり情シスのためのマイクロラーニングLMS

ナレッジベースを作っても、読む側の前提知識がそろっていないと定着しません。手順書を整えるのと同じくらい、担当者の基礎固めも効いてきます。

情シスカレッジは、新人・ひとり情シスのためのマイクロラーニングLMSです。数分の動画と小テストで、日々の業務の合間に少しずつ学べます。

情シスカレッジの特徴

  • 数分の動画+小テストで学べるマイクロラーニング
  • 必修の割り当て・期限設定・進捗ダッシュボードで受講状況を管理
  • 自社カリキュラムの編成と、CSVでの教育記録出力に対応

5名から利用でき、請求書払いにも対応しています。初期設定は約10分で完了します。

情シスカレッジの詳細を見る

※出典

目次