【IPA・2025年調査】IT投資の費用対効果を計算する方法|投資対効果を実感する企業は14.6%

「IT投資の費用対効果を出してほしいと言われたが、計算式がわからない」。そんな悩みを抱えていませんか。ひとり情シスや若手の担当者からは、こんな声もよく聞きます。
- 効果額をどう金額に換算すればいいのか判断できない
- 投資額として何を含めればいいのか整理できない
- 他社がどう説明しているのか、相場感がつかめない
先に結論です。費用対効果はROI(投資利益率)の基本式で計算でき、効果額は金額換算しやすい指標から積み上げていくのが現実的な進め方です。
この記事のポイント
- ROIは「(効果額-投資額)÷投資額×100」で計算します(出典: IPA「DX動向2026」ほか公的調査)
- DX投資の投資対効果を実感している企業は2025年時点で14.6%にとどまります
- DX投資額は売上高の1〜2%が目安ですが、企業規模によって負担割合が変わります
IT投資の費用対効果を計算する目的は稟議・経営報告での説明責任を果たすことにある
IT投資の費用対効果を計算する一番の目的は、投資判断の根拠を数字で説明できるようにすることです。感覚的な「効果があった」という説明では、稟議も経営報告も通りにくくなります。
実際、DXの成果指標をまだ設定していない企業に理由を聞くと「評価指標の設定方法がわからない」との回答が最多です。この割合は2024年度の28.7%から2025年度は36.0%へと上昇しています。効果を測る方法自体が定着していない企業が、むしろ増えているわけです。
この2つの数値から読み取れるのは、効果測定の手法を身につけること自体が、いま多くの情シス担当者にとっての課題になっているという点です。計算式を知っておくことは、遠回りのようで実は近道になります。
出典: IPA「DX動向2026」
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IT投資の費用対効果はROIの基本式で計算する
費用対効果は、投資額に対してどれだけの効果額が得られたかを示す指標で、一般にROI(Return on Investment)と呼ばれます。計算式はシンプルで、「(効果額-投資額)÷投資額×100」で求められます。
たとえば投資額が100万円、1年間で得られた効果額が130万円なら、ROIは30%です。効果額が投資額を上回るほど、数値はプラスに大きくなります。
ここでの効果額とは、投資によって新しく生まれた利益や、削減できたコストの合計を指します。次の見出しでは、効果額として何を積み上げればよいかを具体的に見ていきましょう。
投資対効果を実感している企業はまだ少数派である
効果額の計算に入る前に、現状を確認しておきます。IPAの調査によると、2025年時点でDX投資について「投資・費用を大幅に上回る投資対効果が出ている」「投資・費用を上回る投資対効果が出ている」と回答した企業の合計は14.6%にとどまっています。
投資対効果を実感できている企業は、全体の1〜2割程度ということです。多くの企業は投資をしたものの、効果を十分に説明できていない状況にあります。
だからこそ、計算の手順を押さえておく意味があります。まず取り組みやすいのは、成果として最も多く挙げられている項目から効果額を積み上げる方法です。

出典: IPA「DX動向2026」
DXの成果はコスト削減が中心で売上高増加は限定的である
DXで成果が出ている企業に成果の内容を尋ねると、「コスト(人件費・材料費等)削減」が70.9%と最も高くなっています。一方「売上高増加」は17.9%にとどまります。
この差から読み取れるのは、効果額として最初に計算しやすいのはコスト削減額だという点です。売上増加は市場環境など投資以外の要因も絡むため、効果額として切り出しにくい面があります。
情シス部門が主導するIT投資であれば、まずは工数削減・人件費削減の効果額から計算を始めるのが現実的でしょう。

出典: IPA「DX動向2026」
効果額はまず金額換算しやすい指標から積み上げる
効果額の代表例が、業務時間の削減です。削減できた作業時間に担当者の人件費単価をかけると、金額換算した効果額になります。
ただし、この人件費単価は自社の実際の給与・稼働データを使う必要があります。公的統計には情シス業務に特化した人件費単価の数値がなく、外部の平均値をそのまま当てはめると実態とずれてしまうためです。
効果額を積み上げる際は、まず自社で金額換算できる項目を洗い出すところから始めてみてください。
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IT投資額は売上高の1〜2%程度が目安になる
効果額の次は、投資額の目安を確認します。DXに取り組んでいる企業を対象にしたIPAの調査で、売上高に占めるDX投資額・費用の割合を見ると、「1%未満」が27.8%、「1%以上2%未満」が31.0%と、2%未満の企業が過半数を占めています。一方「5%以上」も21.1%存在しており、企業による差は大きいといえます。
投資額の増減については、前年度から「増加している」と回答した企業が合計51.7%、「ほぼ横ばい」が38.2%でした。IT投資額は全体として増加傾向にあります。
社内で稟議を通す際は、自社の投資額がこの分布のどのあたりに位置するかを示すと、説得力が増すはずです。予算の立て方自体を見直したい場合は、IT予算の作り方もあわせて確認してみてください。

出典: IPA「DX動向2026」
企業規模によって投資負担の割合は変わる
投資額の割合は企業規模によっても差があります。従業員100人以下の企業では「5%以上」が最多で39.0%、従業員301〜1,000人の企業では「1%未満」が最多で39.3%でした。
小規模な企業ほど、売上高に対する投資負担の割合が大きくなる傾向がうかがえます。自社の規模が小さいのに投資額の割合だけを他社と比較して「多すぎる」と判断するのは早計かもしれません。
自社の投資規模を確認する際は、同程度の従業員規模の分布と照らし合わせるとよいでしょう。
出典: IPA「DX動向2026」
投資額には初期費用だけでなく運用費も含めて計算する
費用対効果を計算するときの投資額は、導入時のライセンス費用や初期構築費用だけでは不十分です。既存のライセンス管理にかかる保守費用や運用にあたる人件費も、投資額に含めて計算します。
初期費用だけで計算すると効果額が過大に見えてしまい、翌年度以降の実態と数値がずれてしまいます。複数年にわたるシステムであれば、年間の運用費を投資額に加えたうえで、年単位のROIを算出するのが現実的です。
情シス業務の効率化を目的にした投資であれば、運用費の削減効果もあわせて確認しておきましょう。
リスク対策投資は被害発生時のコストと比較して判断する
セキュリティ対策のような「守りの投資」は、効果額を売上やコスト削減では説明しにくいものです。中小企業等を対象にした調査では、情報セキュリティ対策への投資額について「投資していない」または「わからない」と回答した割合が約7割にのぼります。
投資額そのものを把握できていない企業が多いのが実情です。守りの投資の効果額は、被害が発生した場合に想定される損失額との比較で考えます。たとえばランサムウェアに感染した組織の事故対応には、2017年から2022年にかけて公表・報道された被害を対象にした集計で、平均27.7人月の内部工数がかかったという調査結果があります。
この工数を人件費に換算すると、被害発生時のコストの目安になります。守りの投資は、このコストを回避できる金額として効果額を計算してください。
注意
情報セキュリティ対策への投資額を「投資していない」または「わからない」と回答した割合は、中小企業等(有効回答4,191件)を対象にした調査の数値です。ランサムウェアの内部工数27.7人月は、感染被害を受けた組織を対象にした平均値であり、すべての企業に当てはまる数値ではありません。
出典: IPA「中小企業情報セキュリティ実態調査2024」/IPA報告書(JNSA調査引用)
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費用対効果の計算結果を稟議・経営報告に使う際の注意点
計算したROIは、単年度の数値だけで判断せず、中長期の環境変化もあわせて説明すると説得力が増します。経済産業省の推計では、2030年時点のIT人材需給ギャップは16.4万人から78.7万人になると見込まれています(2019年時点の推計)。
この推計は2019年時点のものであり最新の状況を示すものではありませんが、IT人材の採用・確保にかかる費用が今後上昇していく可能性を示す材料として使えます。効果額を計算する際の人件費単価も、将来的に見直しが必要になるかもしれません。
投資の効果額は一度計算して終わりにせず、定期的に見直す前提で稟議に組み込んでおくと安心です。
出典: 経済産業省・みずほ情報総研「IT人材需給に関する調査」
まとめ
IT投資の費用対効果の計算方法を、一次データに沿って整理してきました。押さえておきたい点は次の3つです。
- ROIは「(効果額-投資額)÷投資額×100」で計算します。効果額は金額換算しやすいコスト削減額から積み上げるのが現実的です
- 投資対効果を実感している企業は2025年時点で14.6%にとどまります。多くの企業がまだ効果を説明しきれていません
- 投資額は売上高の1〜2%が目安ですが、企業規模によって負担割合は変わります
計算式そのものはシンプルですが、効果額を自社のデータで具体的に積み上げられるかどうかが、稟議を通せるかの分かれ目になります。まずは直近のIT投資について、削減できた工数や運用費の変化から数字を拾ってみてください。
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新人・ひとり情シスの学習は情シスカレッジで
この記事で扱った費用対効果の計算や投資額の考え方は、経理・会計の知識と情シス業務の両方にまたがる領域で、独学だけでは身につけにくいものです。
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※出典

