【総務省データ】ノーコードとは|ローコードとの違い、人材不足を挙げる企業は4割台(2024年)

現場の部門から「ノーコードツールで、自分たちのアプリを作りたい」と相談されることが増えていませんか。情シス担当者として、次のような悩みを抱えている方も多いはずです。

  • 現場からノーコードツールを使いたいと言われたが、判断の材料がない
  • ノーコードとローコードの違いを、うまく説明できない
  • 現場が作ったアプリを、誰がどう管理するのか不安がある

結論から言うと、ノーコードはプログラムを書かずに、画面上の操作で業務アプリを作る開発手法です。導入しても情シスの仕事はなくならず、役割が「作る」から「選ぶ・教える・管理する」へ移ります。

この記事では、ノーコードの仕組みとローコードとの違い、メリットと注意点を解説します。あわせて、総務省・IPA・中小企業庁の公的データから、ノーコードが求められる背景を整理します。最後に、情シスが決めておくべき管理ルールも紹介します。

この記事のポイント

  • ノーコードはプログラムを書かずに画面操作で業務アプリを作る開発手法で、ローコードとはコードで機能を補えるかどうかが違う
  • 常用雇用者100人以上の企業でクラウドを利用する割合は、2025年に83.5%まで増えた。一方、同じ規模でデータ活用のシステムを導入していない企業のうち、「使いこなす人材がいない」を理由に挙げた割合は2022年43.9%、2024年43.7%と4割台のまま(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」)
  • 現場が作ったアプリの数や管理者を測った公的統計は見当たらず、情シスは自社での棚卸しと管理ルールづくりを担う
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目次

ノーコードはプログラムを書かずに、画面上の操作で業務アプリを作る開発手法

ノーコードとは、プログラムのコードを書かずに、画面上の操作だけでアプリやシステムを作る開発手法です。専門のエンジニアでなくても、業務を知る担当者が自分で業務アプリを作れる点が特徴です。

ノーコードの要点

  • コードを書かず、画面上の操作でアプリを作る
  • 用意された部品を組み合わせて作るため、作れるものはツールの機能の範囲に限られる
  • 多くはブラウザから使うクラウド型のサービスとして提供される

ノーコードツールは、あらかじめ用意された部品を組み合わせてアプリを作る

ノーコードツールには、アプリの部品が最初から用意されています。利用者は部品を画面に並べて設定するだけで、アプリを組み立てられます。

部品の例は、入力フォーム、一覧表、承認ボタンなどです。これらをマウス操作で画面に配置し、データの保存先や処理の流れを設定します。たとえば「申請を入力すると上司に通知が届き、承認後に一覧表へ記録される」アプリも、コードなしで作れます。

多くのノーコードツールは、ブラウザから使うクラウド型(SaaS)で提供されています。自社でサーバーを用意する必要がないため、試しに使い始めやすい点も特徴です。部品を組み合わせて作る仕組みなので、プログラミングの知識がなくても扱えます。

IPAのデジタルスキル標準は、ローコード/ノーコードをシステム連携の手段の一つに挙げている

ノーコードは、公的な人材育成の枠組みでも、業務をつなぐ手段の一つとして扱われています。特別な技術ではなく、ほかの手段と使い分ける前提の道具だということです。

IPA(情報処理推進機構)は、DXを進める人材に求めるスキルを「デジタルスキル標準」として整理しています。その中の「サービス活用」は、社内のシステムや外部サービスとデータをつなぐためのスキルです。

この項目の学習例には、API管理やiPaaS、RPA、AIエージェントなどが並んでいます。ローコード/ノーコードも、その中の一つとして挙げられています。

つまり、ノーコードは単独で何でも解決する道具ではありません。RPAやAPI連携と並ぶ選択肢の一つとして、業務に合わせて使い分けることが前提になります。

出典: IPA「デジタルスキル標準 ver.2.0」

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ノーコード・ローコード・従来の開発は、コードを書く量と自由度の大きさで分かれる

ノーコード、ローコード、従来の開発(スクラッチ開発)の違いは、コードを書く量と、作れるものの自由度です。コードを書く量が増えるほど自由度は上がりますが、そのぶん専門の知識が必要になります。3つの違いを表にまとめました。

比較項目 ノーコード ローコード 従来の開発(スクラッチ)
コードの記述 書かない 一部だけ書く すべて書く
主な作り手 業務部門の担当者 情シスや開発経験のある担当者 エンジニア・開発ベンダー
向いている用途 部署内の申請・集計・記録など 既存システムと連携する業務アプリ 基幹システムや大規模なシステム
自由度・拡張性 ツールの機能の範囲内 コードで補える分だけ広い 最も高い

ローコードは足りない機能をコードで補えるため、既存システムとの連携に向いている

ローコードは、ノーコードより複雑な要件に対応できる開発手法です。画面操作で作るのが基本ですが、足りない機能を一部のコードで補えます。

ノーコードは、ツールに用意された機能の範囲でアプリを完結させます。用意されていない処理は、基本的に実現できません。ローコードであれば、独自の計算処理や既存システムとのデータのやり取りを、コードで追加できます。

そのため、まずノーコードで小さく始め、要件が複雑になったらローコードや従来の開発に切り替える考え方が現実的です。作りたいものの複雑さに合わせて、手法を選び分けることが大切です。

従来のスクラッチ開発は自由度が最も高い分、専門の人材と期間を必要とする

従来のスクラッチ開発は、ゼロからコードを書いてシステムを作る方法です。自由度は最も高い一方で、専門のエンジニアと十分な開発期間が必要になります。

基幹システムや大量のデータを処理するシステムは、ノーコードの機能では対応しきれないことが多いです。厳しいセキュリティ要件や細かな権限管理が求められる場合も同じです。こうしたシステムには、引き続き従来の開発やベンダーへの委託が向いています。

「ノーコードがあれば、社内のシステムをすべて置き換えられる」と考えるのは誤解です。ノーコードは従来の開発を置き換えるものではなく、手が届かなかった業務を補うものと考えてください。

RPAは既存の画面操作を自動化し、ノーコードは新しいアプリを作る点が違う

ノーコードとRPAは、どちらも「プログラミングなしで業務を効率化できる」と紹介されるため、混同されがちです。ですが、両者は目的が違います。

RPAは、人がパソコンで行う操作の手順を記録し、ソフトウェアに代わりに実行させる仕組みです。既存のシステムはそのままで、転記や入力といった繰り返し作業を自動化します。一方、ノーコードは、業務で使うアプリそのものを新しく作るための手法です。

整理すると、今ある画面操作を減らしたいならRPA、業務の仕組みを新しく作りたいならノーコードが候補になります。同じ業務でも、どちらの課題なのかを先に見極めると選びやすくなります。

情シスがノーコードに注目すべき理由は、ツールの普及に使いこなす人材が追いついていないこと

注意

ノーコード/ローコードの企業導入率を直接測った公的統計は、本記事で確認した総務省・IPA・中小企業庁の調査には見当たりません。以下で紹介するのは、ノーコードが求められる背景を示す周辺のデータです。クラウドサービスの利用率は、ノーコードツールの利用率ではありません。

情シスがノーコードに注目すべき理由は、ツールは手に入りやすくなったのに、使いこなす人材が足りない状態が続いているためです。総務省の「通信利用動向調査」を年ごとに追うと、この2つの動きが同時に起きていることが分かります。

ここで使う総務省の数値は、いずれも常用雇用者100人以上の企業を対象にした調査のものです。

クラウドを利用する企業は2021年の70.4%から2025年には83.5%まで増え、ツールは手に入りやすくなった

総務省の調査では、クラウドサービスを利用する企業の割合が年々伸びています。ノーコードツールの多くはクラウド型のため、ツールを手に入れやすい環境が整ってきています。

クラウドを利用する企業は、2021年に70.4%、2022年に72.2%、2023年に77.7%でした。2024年は80.6%、2025年は83.5%です。2024年以降は無回答を除いた集計のため、増加の傾向として見てください。

図1 クラウドサービスを利用する企業の割合の推移(2021〜2025年)

図の出典: 総務省「令和3年通信利用動向調査の結果(概要)」/同「令和4年」/同「令和5年」/同「令和7年」(常用雇用者100人以上の企業。2024・2025年は無回答を除く集計。ノーコードツールの利用率ではありません)

ただし、この数値はクラウドサービス全般の利用率で、ノーコードツールの利用率ではありません。ツールを手に入れやすい環境が広がったことを示す目安として扱います。

データ活用のシステムを導入していない企業のうち「使いこなす人材がいない」を挙げた割合は、2022〜2024年に4割台で推移している

クラウドが広がった一方で、システムを使いこなす人材の不足が解消したとは言えません。同じ総務省の調査で、その割合はほぼ横ばいです。

この調査は、データの収集・解析のためのシステムを導入していない企業に理由を尋ねています。「使いこなす人材がいないから」は、2022年に43.9%、2023年に42.1%、2024年に43.7%でした。2024年の建設業では53.2%と半数を超えています。

図2 「使いこなす人材がいないから」をシステム非導入の理由に挙げた企業の割合(2022〜2024年)と建設業(2024年)

図の出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」(デジタルデータの収集・解析のためのシステムやサービスを導入していない企業が回答)

この2つのデータから読み取れるのは、道具は手に入りやすくなったものの、使いこなしの課題は残ったままという点です。専門知識がなくても使えるノーコードは、この課題に向けた道具と位置づけられます。

ただし、設問はデータ活用のシステムについてのもので、ノーコードを尋ねたものではありません。また、この割合はシステムを導入していない企業だけを分母にしています。導入する企業が増えると、人材の乏しい企業が分母に残りやすくなるため、実態が改善していても横ばいに見えることがあります。ノーコードを入れればこの割合が下がるかどうかは、データからは分かりません。

情シス側でも、運用・管理の人材不足を挙げる企業が2018年時点で44.4%に達していた

人材が足りないのは、ツールを使う現場だけではありません。情シス側でも、システムを運用・管理する人材の不足が以前から課題になっています。

総務省の2018年の調査では、情報通信ネットワークを利用する企業のうち、利用上の問題点に「運用・管理の人材が不足」を挙げた企業が44.4%でした。前年から7.1ポイント上がっています。2019年以降の同じ設問の値は、本記事で確認したデータには含まれていません。

この結果から、情シスの手が回らない状態は最近始まった話ではないと読み取れます。ノーコードが注目される背景には、こうした情シス側の事情もあります。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和5年通信利用動向調査の結果の概要」/総務省「令和4年通信利用動向調査の結果(概要)」/総務省「令和3年通信利用動向調査の結果(概要)」/総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」

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2025年の調査で中小企業の57.3%はデジタルツールへの移行段階にあり、ノーコードが役立ちやすいのはその次の段階への移行局面

中小企業では、デジタル化が「ツールを入れた段階」で止まっている企業が多数を占めます。中小企業庁の「2026年版中小企業白書」は、帝国データバンクが2025年に中小企業へ行った調査をもとに、デジタル化の進み具合を4つの段階に分けています。

2025年の調査で段階3以上に進んだ中小企業は27.3%で、段階2の半分に満たない

2025年の調査では、段階3以上に進んだ中小企業は少数派です。最も多いのは、デジタルツールへの移行途中にある段階2です。各段階の割合は次のとおりです。

  • 段階1(デジタル化が図られていない): 15.4%
  • 段階2(アナログからデジタルツールを使う環境へ移っている): 57.3%
  • 段階3(デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる): 24.5%
  • 段階4(最も進んだ段階): 2.8%

図3 中小企業のデジタル化の取組段階(2025年)

図の出典: 中小企業庁「2026年版中小企業白書」(帝国データバンクによる中小企業へのWebアンケート調査)

段階3と段階4を合わせると、24.5%+2.8%で段階3以上は27.3%です。段階2の57.3%の半分にも届きません。なお、段階は回答企業の自己評価にもとづきます。

段階2から先に進むには、導入したツールを自社の業務に合わせて使いこなす力が必要になる

段階2から段階3へ進むには、ツールを入れるだけでなく、業務に合わせて使いこなす力が求められます。別の公的調査でも、使いこなしの課題が大きいことが示されています。

総務省の2024年の調査では、データ活用のシステムを入れない企業の43.7%が「使いこなす人材がいない」を理由に挙げました。ただし、この調査は常用雇用者100人以上の企業が対象で、中小企業白書とは母集団が違います。

2つの調査から読み取れるのは、多くの中小企業が「入れたツールを使いこなす段階」で止まっている可能性です。段階3に進めない理由を直接尋ねた設問は無いものの、現場が業務に合わせてアプリを作り変えられるノーコードは、この局面の選択肢になりえます。

出典: 中小企業庁「2026年版中小企業白書」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」

企業規模によってノーコードで解決したい課題は異なり、大企業は既存システムの周辺業務、小規模企業は最初のデジタル化が中心になる

ノーコードで解決したい課題は、企業の規模によって変わります。公的データを規模別に見ると、大企業と小規模企業では置かれている状況が大きく違うためです。

比較項目 大企業 小規模企業
示されているデータ レガシーシステムの保有率74%(全体は61%、経済産業省、2024年度)/DXに取り組む企業98.7%(従業員1,001人以上、IPA、2025年度) DXに取り組む企業41.6%(従業員100人以下、IPA、2025年度)/中小企業の段階2が57.3%、段階1が15.4%(中小企業庁、2025年)
ノーコードで論点になりやすいこと 既存システムでは手が届かない周辺業務をどう扱うか 紙やExcelの業務を最初にどうデジタル化するか

表の出典: 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」/IPA「DX動向2026」/中小企業庁「2026年版中小企業白書」(調査主体・母集団・規模の区分がそろっておらず、同じ条件での比較ではありません)

表の数値は、調査主体も母集団も違います。規模の区分も「大企業」「1,001人以上」「100人以下」「中小企業」とそろっていません。

表の下段は、これらのデータから読み取った見解です。ノーコードの規模別の利用データは無いため、仮説として読んでください。

2024年度の調査で大企業のレガシーシステム保有率は74%で、全体の61%を13ポイント上回る

大企業では、古い既存システムを抱えている企業が特に多くなっています。ノーコードを検討するときも、既存システムとの関係が前提になります。

経済産業省のレガシーシステムモダン化委員会の総括レポートによると、2024年度の調査でレガシーシステムを保有するユーザー企業は61%でした。大企業に限ると74%で、全体を13ポイント上回ります。

この数値から、大企業の情シスにとってノーコードは基幹システムを置き換える手段ではないと読み取れます。既存システムでは手が届かない申請・集計・現場の記録といった周辺業務を扱う手段として、検討されやすいと考えられます。

なお、中小企業の保有率の値は今回確認したデータには無いものの、同じレポートは「中小企業よりも大企業のほうがレガシーシステムの保有率が高い」としています。

2025年度の調査で従業員100人以下の企業がDXに取り組む割合は41.6%で、1,001人以上の98.7%とは57.1ポイントの差がある

小規模な企業では、DXに取り組むかどうかの手前に課題があります。大企業とは、ノーコードを検討する出発点が違います。

IPAの「DX動向2026」によると、2025年度の調査でDXに取り組む企業は、従業員1,001人以上で98.7%、100人以下で41.6%でした。差は57.1ポイントです。別の調査の中小企業白書でも、2025年は段階1と段階2で72.7%(15.4%+57.3%)を占めます。

この2つのデータから、小規模企業ではノーコードが「最初のデジタル化」の入口になりやすいと読み取れます。紙やExcelで回している業務を、最初にアプリへ置き換える場面で検討してみてください。

出典: 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」/IPA「DX動向2026」/中小企業庁「2026年版中小企業白書」

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ノーコードのメリットは作る速さと現場での直しやすさ、デメリットは機能の上限と作ったアプリの管理の難しさ

ノーコードの最大のメリットは、業務を知る担当者が自分ですばやくアプリを作り、直せることです。一方で、作れるものはツールの機能に限られ、作ったアプリが増えるほど管理が難しくなります。メリットとデメリットを順に見ていきましょう。

メリットは、開発期間の短さと、業務を知る担当者が自分で作り直せること

ノーコードのメリットは、アプリを短い期間で作れて、業務の変化にもすぐ合わせられることです。業務を一番よく知る担当者が、自分の手で作って直せるためです。

具体的には、次のような効果が期待できます。

  • 外部の開発会社や情シスへの依頼を待たずに、必要なアプリを作れる
  • 業務の手順が変わったときに、担当者がその場で画面や項目を直せる
  • 試作品を作って使い勝手を確かめながら、小さく始められる

要件を文書にまとめて開発を依頼する手間が減る分、現場の改善が速く回るようになるのがノーコードの強みです。

デメリットは、できることがツールの機能に限られ、提供元のサービス内容に左右されること

ノーコードのデメリットは、作れるものがツールの機能の範囲に限られ、提供元の都合の影響も受けることです。導入前に、次の点を確認しておくと安心です。

  • 複雑な処理や大量のデータ、細かな権限設定には対応しきれない場合がある
  • 料金の改定やサービスの終了があると、アプリの運用に影響が出る
  • 作ったアプリやデータを、ほかのツールへ移すのが難しい場合がある
  • 海外製のツールでは、日本語の画面やサポートが限られる場合がある

どれも、事前に確認しておけば対策を取れる内容です。長く使うアプリほど、データを取り出せるかと提供元の継続性を確認しておきましょう。

作ったアプリが増えると、誰が何を管理しているのか把握しにくくなる

ノーコードで特に注意したいのは、現場で作るアプリが増えるほど、全体像を把握しにくくなることです。実は、既存のシステムでさえ全体像をつかめていない企業が一定数あります。

IPAの2024年度の調査では、自社にレガシーシステムがどれだけ残っているかを「わからない」と答えた企業が16.8%ありました。「既にレガシーシステムはない」と答えた20.0%に近い割合です。ただし「わからない」には、レガシーの定義が伝わっていないための回答も含まれうるため、管理不足をそのまま示すものではありません。

この数値から読み取れるのは、情シスが把握しているはずの既存システムでも、全体像を見失うことがあるという点です。現場が自由に作るアプリは、同じように把握しにくくなるおそれがあります。

誰も管理していない「野良アプリ」が残ったり、公開範囲の設定を誤って社外から見える状態になったりすると、情報漏えいにつながります。情シスが把握していないIT利用はシャドーITと呼ばれ、ノーコードで作ったアプリもその一つになりえます。作った後の管理まで含めて、導入を考えることが大切です。

出典: IPA「DX動向2025」データ集

ノーコードを広げると、情シスの役割は「作る」から「選ぶ・教える・管理する」へ移る

ノーコードを広げても、情シスの仕事がなくなるわけではありません。情シスが自分でアプリを作る場面が減る代わりに、ツールを選び、作り手を育て、作られたアプリを管理する役割が増えます。人材不足のデータから、その理由を確認します。

人材不足は情シス側だけでなく、ツールを使う現場側でも課題として挙がっている

「情シスの手が足りないから、現場に作ってもらえばよい」とは、単純には言えません。情シス側と現場側のどちらの調査でも、それぞれの設問に答えた企業のうち、人材の不足を挙げる企業が4割台にのぼるためです。

情シス側では、総務省の2018年の調査で、情報通信ネットワークを利用する企業のうち、運用・管理の人材不足を挙げた企業が44.4%でした。現場側では、同じ総務省の2024年の調査で、データ活用のシステムを導入していない企業のうち、43.7%が「使いこなす人材がいない」を理由に挙げています。補足として、IPAの2025年度の調査では、DXに取り組む企業の85.5%が推進人材の量の不足を挙げています。

3つの数値は、設問も調査年も対象もそれぞれ違い、同じ時点の比較ではありません。それでも読み取れるのは、情シス側にも現場側にも人材の不足があるという構図です。現場に任せれば作れるとは限らず、作る人を育てる仕組みが必要です。

必要なスキルを把握できている企業ほど、人材の質の大幅な不足を挙げる割合が低い

ノーコードを広げる前に、情シスは現場の作り手に求めるスキルを決めておくべきです。必要なスキルを把握している企業ほど、人材の質の不足を訴える割合が低いためです。

IPAの「DX動向2026」は、2025年度の調査をスキルの把握状況別に集計しています。対象は、DX推進人材の質が「大幅に不足している」と答えた企業の割合です。DXに取り組む企業のうち、必要なスキルを把握している企業では40.6%、把握していない企業では64.0%でした。

ただし、この差は相関であり、スキルを把握すれば不足が解消するという因果関係までは示していません。

このデータから読み取れるのは、求めるスキルをはっきりさせることが人材育成の出発点になるという点です。ノーコードであれば、データの扱い方や公開設定のルールなど、作り手に教える範囲を情シスが先に決めておくとよいでしょう。

ノーコード導入後の情シスの3つの役割

  • 選ぶ: 現場が使ってよいツールを選び、利用の条件を決める
  • 教える: 作り手に必要なスキルと、社内のルールを教える
  • 管理する: 作られたアプリを台帳で把握し、定期的に棚卸しする

出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/IPA「DX動向2026」

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ノーコード導入前に情シスが決めておくべき管理ルールは「作ってよい範囲・作成者と管理者・定期的な棚卸し」の3つ

ノーコードを導入する前に、情シスは管理のルールを決めておく必要があります。最低限決めておきたいのは、作ってよい範囲、作成者と管理者、定期的な棚卸しの3つです。まずは、自社でのルールづくりが欠かせない理由から説明します。

公的統計は現場が作ったアプリの数や管理者を測っておらず、実態は自社の棚卸しでしか分からない

現場が作ったアプリがどれだけあり、誰が管理しているのかは、公的統計からは分かりません。自社の状況は、自社で棚卸しをして確かめるしかありません。

公的統計が測っているのは、レガシーシステムが残っているか、クラウドを使っているか、といった範囲です。たとえば、レガシーシステムを保有する企業は2024年度に61%でした。クラウドを利用する企業は、常用雇用者100人以上の企業で2025年に83.5%です。一方、部門が作った業務アプリの数・作成者・管理者を尋ねた設問は、本記事で確認した資料には見当たりません。

ノーコードの導入率も、本記事で確認した公的統計では確認できませんでした。民間の調査で扱われている可能性はありますが、自社の状況は自社にしか分かりません。

既存システムでさえ、2024年度の調査で残存状況を「わからない」と答えた企業が16.8%あります。ノーコードで作るアプリは、最初から把握する仕組みを用意しておくことが大切です。

個人情報や基幹システムとの連携を扱うアプリは、情シスが関与する範囲として先に線引きする

1つ目のルールは、現場が自由に作ってよい範囲と、情シスが関与する範囲の線引きです。すべてを情シスが確認すると、ノーコードの速さが生かせなくなるためです。

線引きの例は次のとおりです。

  • 現場で自由に作ってよいもの: 部署内の申請、集計、日々の記録など
  • 情シスの確認が必要なもの: 個人情報を扱うもの、社外に公開するもの、基幹システムとデータを連携するもの
  • あわせて決めること: 使ってよいツールの範囲、公開範囲や共有設定の初期値

扱うデータの重要度で線を引くと、現場にも分かりやすいルールになります。ツールの共有設定は初期値のまま使われやすいため、導入時に情シスが確認しておきましょう。

アプリごとに作成者と管理者を台帳に残し、異動・退職時の引き継ぎと年1回の棚卸しを決める

2つ目と3つ目のルールは、アプリごとの台帳づくりと、定期的な棚卸しです。作った人が異動や退職をしても、アプリの管理者が分かる状態を保つためです。

台帳には、次の項目を残しておくと管理しやすくなります。

  • アプリ名と目的
  • 作成者と管理者(作成者とは別に、管理を引き継げる人を決める)
  • 扱うデータと共有範囲
  • 最終更新日

作成者の異動や退職が決まったら、台帳の管理者を更新して引き継ぎます。あわせて年1回は棚卸しを行い、使われなくなったアプリは停止しましょう。台帳と棚卸しをセットで運用することで、野良アプリが生まれにくくなります。

出典: 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」/IPA「DX動向2025」データ集

まとめ:ノーコードは使いこなしの課題に向けた道具で、情シスは作る範囲と管理の仕組みを先に決める

ノーコードは、プログラムを書かずに画面操作で業務アプリを作る開発手法です。ローコードとはコードで機能を補えるかどうかが違い、RPAとは新しいアプリを作る点が違います。

公的データを見ると、総務省の2024年の調査で、データ活用のシステムを導入していない企業(常用雇用者100人以上)のうち、「使いこなす人材がいない」を理由に挙げた割合は43.7%でした。中小企業でも、2025年の調査で最も多いのはデジタルツールへの移行途中の段階2で、57.3%です。ノーコードは、この使いこなしの課題に向けた道具と位置づけられます。

一方で、現場が作ったアプリの数や管理者は、本記事で確認した公的統計では追えません。IPAの2024年度の調査では、既存システムの残存状況さえ「わからない」企業が16.8%ありました。そのため、情シスの役割は「作る」から「選ぶ・教える・管理する」へ移ります。

最初の一歩として、作ってよい範囲、作成者と管理者の台帳、定期的な棚卸しの3つを決めることから始めてみてください。

出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/中小企業庁「2026年版中小企業白書」/IPA「DX動向2025」データ集

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