情シスのコストはなぜ高くなる?原因から削減方法・注意点まで徹底解説

情シスのコストが年々増加している
経営層からコスト削減の指示があるが、どこから手をつければいいかわからない
業務が多忙で、改善策を考える時間がない
デジタル化の進む現代では、情報システム部門(情シス)のコスト増加は、多くの企業で共通の課題となっています。
セキュリティ対策の強化、システムの老朽化、外部リソースへの依存などが主な要因です。しかし、適切な対策を講じることで、コストを削減し、業務効率を向上させることが可能です。
本記事では、情シスのコスト構造を明らかにし、増加の原因とその対策、実施時の注意点について詳しく解説します。
情シスで発生するコストとは?

情シスが担う業務は幅広く、発生するコストも多岐にわたります。特に中小企業では、IT環境の整備にかけられる予算が限られているため、無駄なコストの見直しが重要です。
まずは、情シスのコスト構造について確認しましょう。
情シスコストの内訳
情シスにかかるコストは、以下のとおりです。
コスト項目 | 内容 |
---|---|
ハードウェア費 | PC、サーバー、ルーターなどの機器購入・交換費用 |
ソフトウェア費 | OS、業務ソフト、セキュリティソフト、SaaSの利用料 |
人件費 | 情シス社員の給与、社内研修・育成コスト |
外注委託費 | システム保守、開発、サポートの外部委託料 |
インフラ運用費 | データセンター利用料、ネットワーク通信費、電力消費に伴う運用コスト |
PCやサーバーなどのハードウェア費や情シスへの人件費、一部作業の外注費などさまざまなコストが発生することがわかるでしょう。
まずはこうした内訳を明確にすることで、どの項目に過剰な支出があるのかを可視化できます。
コストが発生する情シス業務
情シスは、社内のIT全般に関する業務を担当するため、業務範囲が広く、次のようにあらゆる業務がコストに直結します。
- 社内インフラの設計・構築・保守
- PCやアカウントの初期設定・管理
- トラブル対応(ヘルプデスク)
- 社内セキュリティの維持管理
- サーバー・クラウド管理
- 新規システムの導入・検証
企業によって発生する業務に違いはありますが、いずれも営業部門や開発部門のように売上に直結するわけではありません。
しかし、売上を上げる部門や他部門が円滑に業務をおこなうために重要な業務ばかりであるため、コストの削減は慎重に考える必要があるでしょう。
情シスのコストが増大する原因

情シスのコストが増大する原因は、以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
セキュリティ対策への投資
サイバー攻撃や情報漏洩のリスクが年々高まる中で、セキュリティ対策にかかるコストは避けられないものとなっています。
セキュリティ対策を万全に保護するために、システムの導入や投資をおこなうため、コストは莫大になりがちです。
対策項目 | 内容とコスト要因 |
---|---|
ツール導入費用 | ファイアウォール、EDR、クラウドセキュリティなど |
運用・維持管理費用 | アップデート、監視、脆弱性対応、ライセンスの更新 |
教育・訓練費用 | 社員研修、セキュリティ訓練、ポリシー策定・啓発資料の作成等 |
外部委託費 | SOC運用代行、外部診断(ペネトレーションテストなど) |
近年はサイバー攻撃が巧妙化しており、情報セキュリティの専門知識を有した人材の確保・教育や、最新のセキュリティソリューションの導入が必要です。
そのため、情シスのコストは増大していると考えられるでしょう。
古いシステムを使用している
レガシーシステムの継続利用は、コスト増大の根本的な要因の1つです。初期導入費用は既に回収済みであるにもかかわらず、保守や改修にかかるコストは年々増えていきます。
また、かなりの時間が経過したシステムの場合、開発ベンダーが撤退しているケースもあり、セキュリティやサポートの問題があります。
- 保守契約費の高騰(特別対応料金の発生)
- OSやソフトウェアのサポート終了に伴うセキュリティ対策の追加
- UI/UXが古く、業務効率が悪化(属人化リスクも増加)
- 新システムとの連携困難による開発コストの増加
結果として問い合わせや不具合対応によるコスト増や、業務全体の非効率化につながり、情シス全体のコストを上げているといえるでしょう。
外部リソースに依存している
情シス業務を自社ですべて賄うことが難しい場合、外部ベンダーや派遣スタッフなどを利用する場合もあるでしょう。
しかし、依存度が高くなりすぎると、結果的に外部リソースのコストが高くついたり、外部へデータを送信するためのセキュリティ対策にコストがかかったりします。
外部リソースはあくまでノンコア業務を切り離す程度にとどめ、重要業務は社内で把握・管理する仕組みを整えることで、持続可能な体制に近づきます。
システムの複雑化で運用負荷とコストが増大
近年は業務効率化や生産性向上のために、さまざまなITシステムを導入する企業が増加しています。
しかし、ITシステムは年々複雑化しており、導入や管理、運用に情シスの負担は増加しているといえるでしょう。
- 同一機能を持つツールが複数存在(例:グループウェアやストレージ)
- 各部署がバラバラに導入したSaaSが連携していない
- ID・パスワード管理が属人化し、セキュリティリスクと保守工数が増加
情シスが対応する業務が増えると人的コストが増加するため、情シスのコストが肥大化する原因になります。
特に運用負荷が高まると、日々の保守に追われて本来注力すべき改善業務が後回しになり、戦略的なIT投資の機会も失われてしまうでしょう。
情シスがコストを削減する方法

情シスがコストを削減する方法は、以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。どのような方法があるか確認し、自社に適したコスト削減の方法を選択しましょう。
クラウドサービスを活用する
オンプレミスからクラウドへの移行は、情シスのコスト削減の際におすすめです。
初期費用を抑えられるだけでなく、柔軟なスケーリングや自動更新機能により、保守・管理の手間も大幅に軽減されます。
項目 | オンプレミス | クラウド |
---|---|---|
初期費用 | サーバー・ネットワーク機器などの購入が必要 | 初期費用がほとんどかからない |
運用・保守 | 社内情シスで対応が必要 | ベンダーが自動でアップデート・障害対応 |
拡張性 | 物理的制限あり、拡張に時間とコストがかかる | 必要なときにすぐスケール可能 |
コストの性質 | 資産計上(固定費) | 月額課金(変動費)、使った分だけ支払う |
特にSaaSの活用は、業務システム導入時の負担を劇的に削減できるため、情シスの人的コストを減らすことにもつながります。
ただし、クラウド移行にはセキュリティや権限設定などの事前設計も重要であるため、導入時は段階的な検証が必要です。

自動化による人的コストの削減
情シスコストを削減するためには、アカウント作成やPCの初期設定といった定型作業を自動化することがおすすめです。
- アカウント発行・停止のワークフロー
- PCのキッティング・ソフトウェアインストール
- 月次のバックアップ・ログ収集
- セキュリティパッチの一斉適用
- 資産棚卸し・利用状況の可視化
RPA(Robotic Process Automation)やPower Automateなどのノーコードツールを導入すれば、非エンジニアでも定型作業を自動化できます。
自動化は工数だけではなく、人的ミスや作業漏れの防止にもつながる点が大きなメリットです。

IT資産を見える化することで不要な支出をカットできる
IT資産の管理が不十分な状態では、不要な機器・ライセンスへの支出が続き、コストが無駄に膨らみます。
PCやソフトウェアの利用実態を「見える化」することで、使われていない資産を明らかにし、コストカットの根拠が得られます。
IT資産を見える化するためには、IT資産管理台帳を作成したり、IT資産管理ツールを活用したりするようにしましょう。
- ハードウェアの台帳管理
- ソフトウェアライセンス管理
- 使用状況のログ取得
- 遠隔操作
- 自社セキュリティポリシーの適用
一度IT資産を洗い出し、数値で見える状態を作るだけでも、改善の余地は多く見つかります。定期的な棚卸しをルーティン化することで、持続的なコスト管理が可能です。

非コア業務は外注し、内部リソースは戦略業務に集中
情シス担当者が不足している場合、すべての業務を内製しようとすると、日常業務に追われ、本来取り組むべき「攻めのIT」に手が回らなくなります。
そこで、ヘルプデスクやキッティングなどの定型・単純業務は外注し、社内メンバーは経営に資するIT企画や改善提案などの戦略的業務に集中すべきです。
- PCキッティング・アカウント設定などのセットアップ作業
- 一次対応のヘルプデスク(マニュアル化された問い合わせ対応)
- 定期的な資産棚卸・ラベル貼付・機器移設
- ユーザー管理・ライセンス更新などの事務的タスク
すべてを自社で抱えるのではなく、得意分野ごとに最適な外部パートナーを活用することが、結果的に情シスのパフォーマンスとコスト効率を大きく向上させます。
ベンダーとの契約を見直す
ベンダーとの契約を定期的に見直すことで、情シスの不要なコストを削減できます。
たとえば、実際に利用しているソフトウェアライセンスよりも契約ライセンス数が多ければ、最適化するとでラインセンス費用を削減できるでしょう。
クラウドサービスのリソースも使用量に対して、オーバースペックのプランを契約していないかなど、ベンダーとの契約を一度見直すようにしてください。
内製化できる人材を育成することで長期的な削減効果が得られる
一時的な外注やツール導入によるコスト削減も有効ですが、情シス人材のスキルアップによって、作業効率を上げることも可能です。
特に日常的なIT運用や業務改善活動は、現場を知る自社メンバーが担ったほうが柔軟かつスピーディに対応できます。
情シス担当者のITスキルがアップすれば、最新技術や自動化をうまく取り入れ、外注のコスト削減なども可能です。
社内研修やOJTの機会を設け、情シス担当者のスキルアップもおこなうようにしましょう。
情シスがコスト削減に取り組む際の注意点

情シスがコスト削減に取り組む際の注意点は、以下のとおりです。
コスト削減は情シスにとって重要な課題ですが、ただ支出を減らせば良いというものではありません。必要なコストまで削ると、業務の品質やセキュリティに悪影響が出る可能性があります。
ここでは、情シスがコスト削減に取り組む際の注意点を解説します。
セキュリティレベルを維持する
コスト削減の際に注意するべきは、セキュリティレベルを維持することです。
一度でも重大な情報漏洩やサイバー攻撃が発生すれば、損害賠償・信用失墜・業務停止など、深刻なトラブルに発展する可能性があります。
セキュリティにかかるコストの見直しも重要ですが、現状のセキュリティレベルを落とさないように注意しましょう。
品質を落とさずにコストだけを下げる工夫が必要
コストを削減した結果、業務の品質が下がらないように注意が必要です。社内のIT環境は企業の生産性に直結するため、ユーザーからの信頼を損なわないことが最優先です。
品質を維持しつつ、コスト削減を実現するためには以下のような方法を実践すると良いでしょう。
工夫 | 効果 |
---|---|
オンプレミス→クラウド化 | 保守不要で稼働安定、初期費用不要 |
定型業務の自動化 | 人的ミスの防止、対応スピードの向上、工数削減 |
非コア業務の外注 | 社内の専門人材が戦略業務に集中できる |
ベンダー契約の最適化 | 高すぎる保守費・重複契約の見直しで同品質を低コストで維持可能 |
また、業務効率が落ちると顧客に提供するサービスや品質にも影響が出るため、顧客離れを抑えるためにも重要な取り組みといえるでしょう。
削減前に現状分析とシミュレーションを行う
情シスのコスト削減は、やみくもに始めると逆効果になりかねません。まずは、現状を正しく把握することが重要です。
どの業務にどれだけの費用がかかっていて、どの部分が非効率なのかを数値で可視化することで、削減するべき場所が見えてくるようになります。
- 各システム・サービスにかかる月次/年次コスト
- 社内のIT資産(PC・ライセンス等)の稼働状況
- 外部委託業務の内容と費用対効果
- 人的リソースの配分と業務負荷
上記のようなコストを削減する場合、どのような影響があるのか、削減額に対する必要投資の費用対効果はどうかなどを確認しておくと安心です。
情シスが主体となってコスト削減に取り組む
情シスのコスト削減は、経営層からのトップダウンで指示されることが多いですが、実際の推進役は情シス自身です。現場の状況やツールの実態、運用負荷をもっとも理解しているのが情シスであるためです。
現場を熟知している情シスであれば、現実的な判断のもとに業務の品質やセキュリティレベルを維持しつつ、コスト削減に取り組むことができます。
情シスに不要な作業の棚卸しと削減も同時におこなえるため、情シス自体のコスト削減にもなります。
情シスのコスト効率を最大化するには?

情シスのコスト効率を最大化するためには、以下のことを把握しておきましょう。
それぞれ詳しく解説します。
コスト削減だけでなく「費用対効果」の視点を持つべき
情シスへおこなう投資や業務には、売上アップだけではなく、企業の運営において何が得られたか費用対効果の視点を持つべきです。
そのため、新システムの導入やソフトウェア導入を考えている場合は、導入によってどのような費用対効果が見込めるのかをよく確認する必要があります。
たとえば、業務効率化のためにRPAを導入する場合、月間どのくらいの作業時間を削減できるのかを見積もります。
コスト削減だけではなく、効果に見合った支出かどうかを基準に意思決定することが重要です。
情シス人材のスキルアップが、将来的なコスト抑制につながる
情シスの業務は年々高度化・複雑化しています。現場のスキルを高めることは、外部委託に依存しない自立型の運用体制を築けるため、長期的にコスト削減につながります。
特に自動化やクラウド、セキュリティといった分野では、学んだ分だけ即効性のある成果を出しやすいのが特徴です。
- 外部依存の削減(社内でトラブル対応・導入支援が完結)
- 内製での改善提案や自動化対応が可能になる
- 新しい技術に対する理解が深まり、ベンダー任せにならない
- 属人化リスクの回避と後継者育成につながる
また、情シス担当者以外の部署も対象としたITリテラシー研修を実施することで、システムやITの活用スキルが高まり、業務効率化につながります。
情シス担当者や他部署など、システムだけではなく、長期的な目線で組織全体のIT教育をおこなうことも視野に入れておくようにしましょう。
組織のITリテラシー向上には「情シスカレッジ」がおすすめ

情シスのコスト削減を実現するためには、情シスだけでなく全社的なITリテラシーの底上げが欠かせません
特に、現場のIT理解が浅いと、無駄なサポート依頼やシステムの誤運用が増え、情シスの負荷とコストが増加する原因になります。
そこでおすすめなのが、情シスカレッジの活用です。
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アカウント管理やクラウド、セキュリティ対策といった内容から、AIやRPAといった現代の情シスに必要な知識も確認することが可能です。
情シスの負担を減らしたい
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まとめ | 情シスのコストは見直しと仕組み化で着実に減らせる
情シスのコスト削減は、単なる経費の削減ではありません。全体のIT運用を最適化し、企業全体の生産性や安全性を高めるための重要な経営戦略の一部です。
特に重要なのは、削減と同時に費用対効果の視点を持つことです。
情シスコストを削減するだけではなく、削減後にどのような影響があるのかや、新システム導入によってどのような効果が得られるのかシミュレーションをおこなうようにしてください。