ゼロ情シスとは?IT担当不在が招くリスクと中小企業の対処法を徹底解説

ITに詳しい社員がいないまま日々の業務をこなしている
社内システムのトラブル時に誰も対応できず、毎回右往左往
本当は専任のIT担当を置きたいけれど、人手も予算も足りない
上記のように、専任のIT担当者がいない「ゼロ情シス」の状態の中小企業は少なくないでしょう。ゼロ情シスとは、IT担当者が社内にまったく存在しない、あるいは機能していない状態を指します。
ゼロ情シスの状態を放置していると、日常業務やセキュリティに深刻な影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
この記事では、ゼロ情シスの定義から放置した場合のリスク、解決策まで解説します。
ゼロ情シスとは何か?|意味・背景・なぜ問題なのか

ここからは、中小企業で増加しているゼロ情シスについて意味や背景、問題点を解説します。
「ゼロ情シス」とは?|情シス不在が企業にもたらす課題とは
ゼロ情シスとは、IT担当者や情報システム部門が不在、あるいは実質的に機能していない状態を指します。
- 問い合わせ先が不明で、社員が自己判断で対応
- セキュリティ設定が甘く、脅威にさらされる
- ソフトウェア管理がされず、契約やライセンス切れが発生
小規模な企業やスタートアップでは、IT業務に関して「詳しい人がいない」「誰かが片手間でやっている」ことも珍しくありません。
しかし、社内ネットワークの整備、業務ツールの選定、セキュリティ対策、トラブル対応など、ITに関する課題は年々複雑化しています。
ITの管理が誰にもされていない状態が続くと、業務効率の低下や情報漏えい、業務停止のリスクが高まるでしょう。
中小企業にゼロ情シスが増えている理由
中小企業にゼロ情シスが増加している理由として、以下のことが挙げられます。
- IT専門人材を採用・育成するコストが高い
- そもそも日本のIT人材が不足ている
- 経営者のITリテラシー不足で、対策の必要性が理解されにくい
ITに精通した人材は市場価値が高く、日本は人材不足が発生しており、そもそも確保が困難です。
また、限られた人員で多くの業務をこなさなければならない中で、IT部門を独立させる余裕がない企業も少なくありません。
経営層のITへの理解不足もゼロ情シスが増加する原因のひとつです。「パソコンが動いていれば問題ない」と考え、システムやセキュリティへの投資を後回しにする企業は依然として多くあります。
ゼロ情シスが「一時しのぎ」ではなく「常態化」している現実
「トラブルがなければ問題ない」「詳しい社員が何とかしてくれている」と、一時しのぎの対応が重なれば、ゼロ情シスは一時的な問題から慢性的な課題へと変わっていきます。
特に中小企業では、ITに詳しい社員が本来の業務と兼任するケースが多く、属人化や対応スピードが遅いなどといった問題点も少なくありません。
実際にトラブルが発生するまで問題を放置されやすく、セキュリティリスクが高まる点にも注意が必要です。
ゼロ情シスがもたらす5つの深刻なリスク

ゼロ情シスの状態が続くと、以下のようなリスクがあるため注意が必要です。
それぞれ詳しく解説します。ゼロ情シスは日常業務だけではなく、企業の信頼にもかかわるため、リスクについてよく確認しておきましょう。
セキュリティ対策が不十分になり、サイバー攻撃の被害を受けやすい
ゼロ情シス状態では、セキュリティ対策が後回しになりがちです。専門知識がないまま設定や運用が行われるため、脆弱性が放置されやすくなります。
その結果、サイバー攻撃の標的になりやすく、ランサムウェアや情報漏えいといったセキュリティ事故につながる可能性が高くなります。
- 社員全員が管理者権限を持っている
- ファイアウォールやUTMの導入がない
- 社外持ち出しPCの管理がされていない
- 退職者のアカウント削除が遅れる …etc
セキュリティ事故が発生し、個人情報や取引先の情報が漏洩すると企業の信用失墜にもつながるため、早めに対策を講じる必要があるでしょう。
ITトラブルの対応遅れによる業務停止リスク
PCやネットワーク、プリンター、クラウドサービスなど、業務はさまざまなIT機器やツールに支えられています。
社内に情シスがいない場合、トラブル発生時の問題解決に時間を要するため、復旧が遅れることが多くなるでしょう。
ITトラブルに対応できなければ、業務が完全に停止し、納期の遅延や顧客対応に影響を及ぼします。
大きな損失や企業の信用を低下させる前に、ITトラブルにも迅速に対応できる体制を整えておく必要があるでしょう。
シャドーITの拡大で情報資産の統制が取れなくなる
ゼロ情シス状態では、社員が業務上の課題を自己判断で解決しようとする場面が増えます。
その結果、会社が許可していないクラウドサービスやフリーソフト、個人アカウントによるツール利用が横行し、いわゆる「シャドーIT」が蔓延します。
- 情報漏えい(クラウドの誤操作や共有設定ミス)
- 契約管理外でのツール使用による法令違反
- 社外での作業端末紛失による顧客データの消失
たとえば、個人のGoogleドライブやDropboxに業務ファイルを保存する行為は、外部からの不正アクセスや、社員の退職時にデータが持ち出されるといったリスクを伴うでしょう。
また、無料ツールの利用はセキュリティレベルが低く、情報漏えいやマルウェア感染の原因にもなります。
ITツールの利便性が高まる現代では、使用環境の統制や明確なルール化をおこなう情シスの重要性が高いといえるでしょう。

担当業務が属人化し、ブラックボックス化で引き継ぎが困難に
ゼロ情シスの企業では、ITに関する業務を詳しい人に集中する傾向があります。
担当者が在籍中であれば問題ありませんが、退職や異動のタイミングで、IT業務に対応できる人材がいなくなり、引き継ぎも困難になるでしょう。
特に属人化のリスクは非常に高く、社内のネットワーク構成やサーバー、アカウント情報、契約中のSaaSサービスまで、担当者の頭の中だけに情報が蓄積されているケースも少なくありません。
属人化を防ぐためには、業務内容や手順、管理情報を可視化・文書化し、誰でも対応できる体制を整えることが重要です。
情報資産の管理があいまいになる
ゼロ情シス状態では、社内の情報資産管理があいまいになるリスクもあります。
- 情報漏えいにつながる
- ライセンス違反のリスクがある
- 無駄なIT資産への投資問題
社員のアカウント情報やハードウェア、ライセンスといった情報資産を適切に管理していないと、情報漏えいやライセンス違反といったリスクに発展します。
特にクラウドサービスやSaaSが増えている現在では「誰が、どのツールに、どのアカウントでアクセスできるのか」を把握することが非常に重要です。
ゼロ情シスから脱却する5つの解決策|今すぐ実践すべき対応とは

ゼロ情シス問題を放置していると、情報漏えいや業務の停止などさまざまなリスクが伴います。ゼロ情シスから脱却するためには、以下の解決策を実践しましょう。
それぞれ詳しく解説します。
ITアウトソーシングの活用
ゼロ情シス問題に対応するためには、ITアウトソーシングの活用がおすすめです。
社内にITの専門人材を置かずとも、必要な時だけ専門家に頼ることで、トラブル対応やセキュリティ対策を低コストで実現できます。
- 社内にITの専門知識を持つ人材がいない
- パソコンやネットワークのトラブル対応が後手に回っている
- セキュリティ対策に不安がある
アウトソーシングの種類もさまざまで、定期的な保守契約から、必要なときだけ利用するスポット対応型まで選択肢が豊富です。
また、ベンダーによっては月額数万円から利用可能なため、コストを抑えながらIT体制を整えられます。
社内マニュアル・ルールの整備で属人化を解消
IT業務が属人化していると、担当者の不在時に業務が停止してしまいます。そこで重要なのが、社内マニュアルとルールの整備です。
IT機器の初期設定方法やトラブル時の対応フロー、ソフトウェアの利用ルールなどを文書にまとめることで、誰でも対応できるような体制を築くことができます。
- PC・プリンターの初期設定と不具合対応手順
- 社内アカウントの登録・削除方法
- 使用中のソフトウェア一覧と契約状況
- ファイルの保存ルールとバックアップ手順
また、社内ルールとして「ツールの導入時は事前申請」「退職者のアカウント削除は○日以内」といった基準を設けることで、トラブルの未然防止にもつながります。
クラウドサービスの導入でIT管理の手間を減らす
ゼロ情シスからの脱却において、IT管理の負担を削減するためにはクラウドサービスの利用がおすすめです。
- 自動アップデートにより、常に最新の状態で利用できる
- 専門知識不要で簡単に導入・設定が可能
- データは安全なデータセンターで保管され、災害時のBCP対策にも有効
従来のオンプレミス型システムでは、サーバーの設置・運用・メンテナンスに手間とコストがかかります。
一方、クラウドサービスなら、ネットワーク機器の整備やメンテナンスをベンダー側で対応してもらえるため、社内にITの専門知識がなくても安心して利用可能です。
経営視点でIT戦略を立てることで長期的な改善につながる
ゼロ情シス問題を解決するためには、ITを単にコストとみなすのではなく、利益を生み出すリソースとして経営的な視点を持つことが重要です。
たとえば、情報共有の仕組みをクラウド化して社員の生産性を高めたり、業務の自動化で人件費を削減したりと、ITの戦略的活用は事業全体に影響があります。
経営層がITに関与しない企業では、現場任せ・外注任せになりやすく、無駄なシステム投資や業務の非効率が起こりがちです。
反対に、経営視点から「何に投資すべきか」「どこにリスクがあるか」を判断することで、継続的な改善が可能になります。
経営視点でIT戦略を立案し、ゼロ情シスにおける課題を解消していきましょう。
情シス人材の育成で“ゼロ情シス”からの脱却を目指す
ゼロ情シスを抜け出すには、外部リソースを活用するだけでなく、社内でIT人材を育成することが根本的な解決につながります。
一時的な対応ではなく、長期的な視点で「社内IT人材の育成」に取り組むことで、自走できる情シス体制を構築できます。
ITの専門人材を新たに採用するのは難しくても、既存社員の中から興味や素養のある人を選び、育てることで組織全体のITリテラシーを底上げ可能です。
- 社内でITに関心がある人をヒアリングで把握する
- 社外研修やeラーニングを活用して基礎知識を習得
- 定期的に実務で使えるテーマを与えて実践とフィードバックを行う
短期間でマスターする必要はないため、簡単な部分から少しずつIT人材を育成することが重要です。
情シス人材の育成は「情シスカレッジ」がおすすめ

自社内で情シス人材を育てるにあたり、効率よく・確実にスキルを身につけさせるには、体系化された研修プログラムの活用が不可欠です。
そこで、おすすめなのが企業の情シス育成に特化した情シスカレッジです。
- マイクロラーニング形式の動画でスキマ時間に学習できる
- 情シス業務に必要なITの基礎知識が身につく
- 研修が随時更新される
情シスカレッジでは、未経験者でも理解しやすいマイクロラーニング形式の動画研修を中心に、情シスの実務で役立つ内容を体系的に学ぶことができます。
IT基礎からクラウド、セキュリティ、資産管理、ヘルプデスク対応など、情シス業務の全体像を網羅的にカバーしています。
また、研修受講後も何度も動画を見返せるため、実務中に困った際にも有効活用が可能です。
企業のゼロ情シス問題を解決するためにも、情シスカレッジを利用して、社内のIT体制を整えましょう。
\ 情シス人材の育成でゼロ情シスを脱却 /
まとめ | ゼロ情シスによるリスクの対策を講じよう
ゼロ情シスは、問題が起きていないから大丈夫と考えられがちですが、トラブル発生時には手遅れな場合も少なくありません。
セキュリティ対策の遅れ、業務の属人化、情報資産の管理不足は、企業の信用や存続を揺るがす問題ともいえます。
ゼロ情シスのリスクを理解し、外部リソースの活用や社内ルールの整備、クラウドの導入といった対策を講じることで、無理なくリスクを軽減できます。