VLANとは?特徴や導入するメリットを初心者でもわかりやすく解説

部署ごとにネットワークを分けたいけど、物理的に分離できない
VLANってそもそも何?
VLANを導入するメリットが知りたい
このような悩みを抱える企業のIT担当者や個人は多いです。業務内容が異なる部署間で情報を安全にやり取りするためには、ネットワークの分離が不可欠です。
そこで、役立つのがVLANです。
この記事では、VLANの基礎からメリット、種類、導入のポイントまで解説します。
VLANとは物理構成に依存せずネットワークを分割できる技術

VLAN(Virtual LAN)とは、1台のスイッチで物理的な配線に依存せずに、複数のネットワークに論理的に分割できる技術です。
- 論理的にネットワークをグループ分けできる
- 部署や役割ごとに通信範囲を制限できる
- 物理構成を変えずに柔軟なネットワーク設計が可能
部署や用途ごとに通信の範囲を区切ることができ、セキュリティや通信効率の向上につながります。フロアが異なる部門でも、同じVLANに設定すればシームレスにやり取りが可能です。
柔軟性と効率性に優れているため、現在では多くの企業で導入が進んでいます。
VLANを導入するメリット

VLANを導入するメリットは、以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
ネットワーク機器の物理配置に縛られず接続できる
VLANを導入するメリットとして、ネットワークの物理配置に縛られない点が挙げられます。
たとえば、営業部のメンバーが異なるフロアや建物にいても、同じVLANに設定することで一つのネットワークグループとして扱うことができます。
物理的に隣接していなくても、スイッチでの設定により仮想的にグループ化できるため、オフィスのレイアウト変更や部署の移動があっても、配線を変更せずにネットワーク構成を維持できます。
ネットワークの構築を柔軟に行える
VLANはネットワーク構成の柔軟性に優れており、必要に応じてネットワークの再編成が簡単におこなえます。
物理的な配線や機器の追加をせずに、スイッチの設定変更だけでグループ構成を切り替えられるため、新たなプロジェクトチームや業務変更にも迅速に対応可能です。
たとえば、期間限定のプロジェクト専用ネットワークを一時的に構築し、終了後には設定を元に戻すといった運用も容易です。
柔軟性の高いネットワーク環境を構築したいと考えている企業は、VLANを導入するべきでしょう。
セキュリティが向上する
VLANは、部門ごとに通信グループを分割できるため、情報漏えいや誤操作によるトラブルを防止できます。
- 情報漏えい
- 誤操作によるトラブル
- ネットワークを通じたウイルス・マルウェア感染
たとえば、経理部と開発部を別のVLANに設定しておけば、互いにアクセスできない環境を構築でき、機密情報の保護につながるでしょう。
また、ウイルスやマルウェアなどが発生した場合も、ネットワークを通じての感染拡大を抑えられる点が特長です。
導入時のコスト削減につながる
VLANは、ネットワークを分離するために新たな物理機器を追加せず、既存のスイッチに設定を加えるだけで導入できます。
部署ごとにネットワークを独立させたい場合でも、配線や機器導入が不要なため、ネットワーク構築時のコスト削減が可能です。
また、将来的な拡張や変更もソフトウェアの設定だけで対応できるため、運用コストの低下にもつながるでしょう。
VLANの種類と特徴
VLANには、目的や運用方針に応じてさまざまな種類が存在します。ネットワークの管理方式や識別の仕組みによって分類され、それぞれに適した活用シーンがある点を覚えておきましょう。
ここでは、代表的な7種類のVLANの特徴と活用方法を解説します。
ポートVLAN
ポートVLANは、スイッチの物理ポートごとにVLANの割り当てをおこなう一般的な方式です。
- スイッチのポート単位で明確にVLANを設定できる
- 設定内容が視覚的にわかりやすく、トラブル対応が容易
- 移動やレイアウト変更時は再設定が必要になる
ポート1はVLAN1、ポート2はVLAN2といったように直感的に設定できるため、VLAN導入の経験が浅い人でも安心して導入できます。
タグVLAN
タグVLANは、通信フレームに識別番号であるタグ情報を埋め込んでVLANを識別する方式です。
- VLANタグにより複数スイッチ間でもVLAN構成が維持される
- トランクリンクの設定が必要で、初期設計に工夫が必要
複数のスイッチをまたいでVLANを拡張できるため、中〜大規模ネットワークでの利用に適しています。
物理的な制約を超えて柔軟にVLANを構成できるため、フロアや拠点をまたぐ企業ネットワークでも活躍します。
MACベースVLAN
MACベースVLANは、端末ごとのMACアドレスをもとにVLANを割り当てる方式です。機器がどのスイッチのどのポートに接続されたかにかかわらず、アドレス情報により常に正しいVLANに割り振られます。
- 機器の接続場所に関係なくVLAN設定が自動適用
- 社用端末と個人所有デバイスを別々のネットワークに分離できる
- ネットワーク変更のたびに再設定が不要
MACアドレスをあらかじめ認証サーバーに登録しておくことで、ネットワークに接続する機器を管理可能です。
機器単位で動的なネットワーク構成が実現できるため、働き方の多様化が進む企業では特に有効です。
プライベートVLAN
プライベートVLANは、同一VLAN内にある端末間の通信を制御・制限する方式です。
- VLAN内の端末感通信を意図的に遮断できる
- 情報セキュリティリスクを抑えられる
- 設定が複雑なため高度なネットワーク設計スキルが求められる
特定の機器(例:ゲートウェイやサーバー)との通信だけを遮断し、共有する機器へのアクセスのみを許可する場合に使用します。
たとえば、複数の顧客サーバーを1台のスイッチに接続する場合、プライベートVLANを使えば、顧客同士のデータ通信を遮断し、インターネット接続のみ許可する構成を構築できます。
マルウェアの感染や情報漏えいといったセキュリティリスクを防止できるため、セキュリティを強化したい企業に向いているでしょう。
マルチプルVLAN
マルチプルVLANは、1つのスイッチポートに複数のVLANを同時に割り当てる方式です。
- 1ポートで複数のVLANに接続できる
- 通信内容やプロトコルごとにVLANを使い分け可能
- ネットワーク資源の最適化に役立つ
複合機やIP電話のように、1台の機器が複数のネットワークにまたがる必要がある場合に活用されます。
ただし、マルチプルポートからブロードキャストやマルチキャストパケットは全ポートに向けて送信されるため、接続端末が多いほどネットワーク速度の低下が発生する可能性があります。
ユーザーベースVLAN
ユーザーベースVLANは、端末ではなくユーザーの認証情報に基づいてVLANを割り当てる動的な構成方式です。
- ユーザー認証に応じて自動的にVLANを割り当て
- 認証基盤との連携によりアクセス制御が柔軟
認証の状態に応じて自動的にVLANの割り当てがおこなわれるため、接続する場所に関係なく、ユーザーIDでネットワーク環境を自動的に切り替えることが可能です。
たとえば、認証された開発部の人はファイルサーバーへとアクセスできますが、認証されていない場合はインターネットのみの利用が可能といったような制御ができます。
なお、導入にはRADIUSや802.1Xなどの認証基盤が必要となるため、初期設計には専門的な知識が求められます。
サブネットベースVLAN
サブネットベースVLANは、IPアドレスの範囲(サブネット)に基づいてVLANを割り当てる方式です。
- IPアドレスの範囲でVLANを自動分類できる
- 既存のネットワーク構成をそのまま活用しやすい
- DHCPサーバーとの連携で管理が効率化される
たとえば、「192.168.10.0/24」は営業部、「192.168.20.0/24」は開発部といったように、アドレス帯域ごとにVLANを分類します。
ルーターやL3スイッチでルーティング設定を簡潔におこないたい場合や、IPアドレスが既に部門ごとに設計されている組織にとっておすすめの方式です。
VLANに関するよくある質問
VLANと広域イーサネットの違いは?
広域イーサネットは、地理的に離れた拠点のLANをつなぐWANサービスです。
項目 | VLAN | 広域イーサネット |
---|---|---|
主な利用範囲 | 同一建物・拠点内 | 拠点間・地域をまたぐ通信 |
技術の本質 | LANの論理分割 | 地理的に離れたLANの接続 |
構築者 | 自社内で設定・運用 | 通信事業者が提供するサービス |
導入コスト | 比較的低コスト | 初期費用・月額費用が発生 |
たとえば、東京と大阪のオフィスを同じネットワークにしたい場合は、VLANではなく広域イーサネットを用いる必要があります。
一方、1つのフロア内で部署をわけたいときには、VLANで十分に対応できます。
VLANを狙ったサイバー攻撃はありますか?
VLANを狙ったサイバー攻撃は、以下のとおりです。
- VLANホッピング
- ダブルタグ
VLANホッピングは本来アクセスできないはずのVLANに対して、不正アクセスする攻撃のことです。
一方ダブルタグは、イーサネットフレームに偽装した2重のVLANタグを付与し、VLANに不正データを送りつける攻撃になります。
まとめ | VLANはネットワークの効率化・コスト削減・安全性をすべて実現できる
VLANは、限られたネットワーク機器を活用して、安全かつ効率的に社内ネットワークを構築・管理できる技術です。
物理構成に縛られず、部署や業務ごとに柔軟なネットワーク分割が可能なため、企業の成長や働き方の多様化にも対応できます。
部門ごとの通信を隔離してセキュリティを強化し、配線や機器追加を最小限に抑えてコスト削減を実現できる点も、大きな魅力です。