【総務省2025年調査】クラウド型グループウェアの利用はクラウド利用企業の61.4%|推移・企業規模別の差・選び方

「そろそろ社内のグループウェアをクラウドに移したほうがいいのでは」と感じながら、決め手がないまま止まっていませんか。
- 社内のグループウェアをクラウド型に移すべきか判断がつかない
- 他社がどこまでクラウド型に移しているのか分からない
- 自社の規模や業種だと、どのあたりが「普通」なのか比べられない
こうした迷いは、判断の材料になる数値が手元にないことから生まれます。
結論から書きます。2025年調査時点で、クラウド利用企業の61.4%が社内情報共有・ポータルの用途でクラウドを使っています。この数値は総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2 図表4-3で公表されています。
この記事では、グループウェアに相当する3用途の推移と、企業規模や業種による差を整理します。公的統計では答えが出ない範囲にも触れます。数値はすべて調査年と母数を添えて示すので、社内資料の作成にもそのまま使えます。
この記事のポイント
- 2025年調査時点で、クラウド利用企業の61.4%が社内情報共有・ポータルにクラウドを利用(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2)
- 用途の主役は、2021年調査から2022年調査のあいだに電子メールから社内情報共有・ポータルへ入れ替わった(2022年調査で社内情報共有・ポータル52.9%が電子メール52.4%を上回る)
- 企業のクラウド利用率は、資本金1億円を境に9.2ポイント跳ね上がる(2025年調査、5000万円〜1億円未満83.1%→1億円〜5億円未満92.3%)
クラウド型グループウェアの利用はクラウド利用企業の61.4%(2025年調査)

クラウド型グループウェアに相当する3つの用途は、2025年調査でいずれも半数を超えました。まずはこの水準を押さえてください。
総務省の通信利用動向調査では、クラウド利用企業のうち社内情報共有・ポータルが61.4%と公表されています。電子メールは57.4%、スケジュール共有は53.6%でした。
いずれも母数はクラウドサービスを利用している企業で、調査対象は常用雇用者100人以上の企業です。企業全体のクラウドサービス利用率は、2025年調査時点で83.5%でした。
クラウドを使っている企業のなかでは、グループウェア用途にクラウドを充てることがすでに一般的な選択になっていると言えます。
| 用途 | 2025年調査の割合(クラウド利用企業ベース) |
|---|---|
| 社内情報共有・ポータル | 61.4% |
| 電子メール | 57.4% |
| スケジュール共有 | 53.6% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2 図表4-3をもとに作成
公的統計に「グループウェア」という調査項目は無く、3つの用途から読み取る
前提として、通信利用動向調査には「グループウェア」という調査項目がありません。この記事では3つの用途を代理指標として扱います。
同調査は「利用しているクラウドサービスの内容」を用途別に尋ねる設計で、製品カテゴリでは集計していません。そこで本記事では、グループウェアが担う機能に対応する3つの用途を合わせて読みます。社内情報共有・ポータル、電子メール、スケジュール共有の3つです。
参考までに、2025年調査で最も多い用途はファイル保管・データ共有の73.3%です。グループウェアに対応する3用途は、その次の層に位置しています。ただし3用途は連続して並んでいるわけではなく、電子メール57.4%とスケジュール共有53.6%のあいだに「給与、財務会計、人事」が入ります。
この読み替えを飛ばすと数値の意味を取り違えます。3用途はグループウェアそのものではなく、あくまで機能面で重なる用途という点を覚えておいてください。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2 図表4-3をもとに作成
クラウドサービス全体の利用率は2025年調査時点で83.5%
3用途の話に入る前に、土台となる全体の利用率を確認します。企業のクラウドサービス利用率は、2025年調査時点で83.5%です。
推移を見ると、2010年調査の13.7%、2015年調査の44.0%から一貫して上昇してきました。直近8年間でも、2018年調査の58.7%から2025年調査の83.5%まで伸びています。
なお、下の表は節目の年を抜き出したもので、全調査年を並べたものではありません。2019年と2020年の値も総務省から公表されていますが(令和3年通信利用動向調査 図表4-1)、本記事では取り上げず、コロナ禍前後の変化幅にも踏み込みません。
クラウドサービスとは何かという基本的な仕組みは、別の記事で整理しています。
| 調査年 | 企業のクラウドサービス利用率 |
|---|---|
| 2018年 | 58.7% |
| 2021年 | 70.4% |
| 2023年 | 77.7% |
| 2024年 | 80.4% |
| 2025年 | 83.5% |
出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査」/総務省「令和3年通信利用動向調査」/総務省「令和5年通信利用動向調査」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙1をもとに作成。年ごとに公表資料が異なり、2024年の値だけが無回答を含む集計です

出典: 総務省 e-Stat 統計表/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙1をもとに作成
調査対象企業全体で見ると、社内情報共有のクラウド化は約51%にとどまる
先ほどの61.4%は、クラウド利用企業を母数とした値です。調査対象の企業全体に置き直すと、水準の印象はかなり変わります。
2025年調査の全体のクラウド利用率83.5%に、61.4%を掛けてみます。すると調査対象企業に占める割合はおよそ51%と推計できます。
同じ計算を2018年調査で行うと、58.7%×40.5%でおよそ24%です。7年でおよそ2.1倍になった計算になります。
スケジュール共有も同様に計算すると、83.5%×53.6%でおよそ45%です。企業全体で見れば、まだ半数に届いていません。
この推計から読み取れるのは、社内情報共有のクラウド化が「もう6割」ではなく「ようやく半分」の段階だという点です。母数を確かめてから数値を読む習慣が、社内での判断精度を上げます。
注意
約51%・約45%・約24%は総務省の公表値ではなく、公表されている2つの値を掛け合わせた本記事の推計です。また、クラウドを利用していない企業のなかにもオンプレミス型グループウェアの利用者が含まれます。したがってこの推計は「グループウェアを使っている企業の割合」ではなく、「グループウェア用途でクラウドを使っている企業の割合」を表します。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙1/同 別紙2/総務省「平成30年通信利用動向調査」
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クラウド用途の主役は電子メールから社内情報共有・ポータルへ入れ替わった

3用途の推移を並べると、クラウドに載せる対象そのものが変わったことが分かります。主役は2021年調査から2022年調査のあいだに、電子メールから社内情報共有・ポータルへ移りました。
2018年調査では、電子メール52.2%が社内情報共有・ポータル40.5%を11.7ポイント上回っていました。2021年調査でも電子メール52.6%が社内情報共有・ポータル52.0%を上回っています。ただし差は0.6ポイントまで縮まっていました。
2022年調査では社内情報共有・ポータル52.9%が電子メール52.4%を上回り、順位が入れ替わります。2025年調査では61.4%対57.4%となり、差は4.0ポイントに開きました。用途の主役交代は、この2年のあいだに起きています。
この推移から読み取れるのは、クラウド化の対象が「メールという単機能」から「情報共有の基盤そのもの」へ移ったという構図です。逆転そのものは0.5ポイント前後の僅差でしたが、その後は毎年差が開いています。
ポイント
- 2021年調査までは電子メールが上位で、社内情報共有・ポータルとの差は0.6ポイントだった(電子メール52.6%/社内情報共有・ポータル52.0%)
- 逆転は2021年調査から2022年調査のあいだに起き、2022年調査で社内情報共有・ポータル52.9%が電子メール52.4%を上回った
- 2018年の値は平成30年調査、2021年の値は令和3年調査、2022年以降の値は令和6年報告書と、公表資料が異なる点には注意が必要

出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査」/総務省「令和3年通信利用動向調査」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」図表3-3/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2をもとに作成
社内情報共有・ポータルは7年で40.5%から61.4%へ、20.9ポイント伸びた
社内情報共有・ポータルは、3用途のなかで最も伸び幅が大きい用途です。2018年調査の40.5%から2025年調査の61.4%まで、20.9ポイント上がりました。
内訳を見ると、2017年調査の37.7%から2021年調査の52.0%へ大きく動きました。その後も2022年52.9%、2023年55.8%、2024年57.5%と毎年伸びています。
伸びが止まる兆しは、いまのところ数値に現れていません。社内ポータルやワークスペースをクラウドへ移す流れは、2025年調査時点でも続いています。
なお、2018年の値は回答企業1,302社を母数とした集計です。ただしこの母数は、同じ平成30年通信利用動向調査のなかで2通り示されています。概要部分の図表では1,302社、報告書本体の図表3-9「利用しているクラウドサービスの内容」では1,312社です。掲載されている割合(40.5%など)は両方の図表で完全に一致しているため、値そのものへの影響はありません。
| 調査年 | 社内情報共有・ポータル(クラウド利用企業ベース) |
|---|---|
| 2017年 | 37.7% |
| 2018年 | 40.5% |
| 2021年 | 52.0% |
| 2022年 | 52.9% |
| 2023年 | 55.8% |
| 2024年 | 57.5% |
| 2025年 | 61.4% |
出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査」/総務省「令和3年通信利用動向調査」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」図表3-3/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2をもとに作成。2019年と2020年は欠測
電子メールは2018年から2022年で0.2ポイントしか動いていない
電子メールは、2018年調査から2022年調査までほぼ横ばいでした。52.2%から52.4%へ、動いたのは0.2ポイントだけです。途中の2021年調査も52.6%で、同じ水準にとどまっています。
ただし、これを「クラウド化が止まった」と読み替えないでください。2017年調査の46.3%から2018年調査へ一気に上がった後の横ばいです。すでに移行が進み、上限に近い水準にあったと見るほうが自然でしょう。
その後も2023年55.1%、2024年56.7%、2025年57.4%と、緩やかな上昇が続いています。
実務に置き換えると、メールだけをクラウドに載せている状態から、情報共有の基盤ごと移す段階に来ているということです。自社がどちらの段階にいるか、確認してみてください。
| 調査年 | 電子メール(クラウド利用企業ベース) |
|---|---|
| 2017年 | 46.3% |
| 2018年 | 52.2% |
| 2021年 | 52.6% |
| 2022年 | 52.4% |
| 2023年 | 55.1% |
| 2024年 | 56.7% |
| 2025年 | 57.4% |
出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査」/総務省「令和3年通信利用動向調査」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」図表3-3/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2をもとに作成。2019年と2020年は欠測
スケジュール共有は53.6%で、3用途のなかでは最も遅い
スケジュール共有は、3用途のなかで水準が最も低い用途です。2025年調査で53.6%となり、ようやく半数を超えました。
推移を追うと、2017年調査は34.1%、2018年調査は38.4%でした。その後は2022年46.0%、2023年47.8%、2024年51.0%と上がり、2025年に53.6%に達しています。
2018年からの7年間の伸びは15.2ポイントで、社内情報共有・ポータルの20.9ポイントには届きません。予定の共有だけが移行から取り残されやすいという現場の事情も、この差の背景にあると考えられます。
情報共有基盤を先にクラウド化しても、スケジュールだけは既存の仕組みに残っている企業は少なくありません。移行計画を立てるときは、この用途を後回しにしていないか点検してみてください。
出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2
クラウド型を選ぶ理由の上位は「場所や機器を選ばない」50.7%と「資産・保守体制が不要」42.8%(2025年調査)

クラウド型を選ぶ理由は、公的統計から直接読み取れます。上位は「場所、機器を選ばずに利用できるから」50.7%です。
通信利用動向調査はオンプレミス型との直接比較を扱っていません。そのため本記事では、利用企業が挙げた理由からクラウド側の利点を読む形をとります。
2025年調査の上位4項目は、次の表のとおりです。安定運用・可用性45.1%や災害時のバックアップ38.7%も、4割前後の企業が挙げています。
グループウェアの文脈では、上位2つがそのまま導入理由になります。社外や自宅から同じ画面を開けること、サーバーの保守要員を社内に抱えなくてよいことの2点です。
| クラウドサービスを利用する理由(2025年調査) | 割合(クラウド利用企業ベース) |
|---|---|
| 場所、機器を選ばずに利用できるから | 50.7% |
| 安定運用、可用性が高くなるから | 45.1% |
| 資産、保守体制を社内に持つ必要がないから | 42.8% |
| 災害時のバックアップとして利用できるから | 38.7% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2をもとに作成
上位の理由は2021年から2025年まで顔ぶれが変わっていない
クラウドを選ぶ理由の上位は、5年間ほとんど動いていません。数値の変動は1ポイント前後にとどまります。
「場所、機器を選ばずに利用できるから」は2021年調査50.2%、2024年調査50.1%、2025年調査50.7%です。「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」も41.7%、42.5%、42.8%と横ばいでした。
一方で、この間に企業全体のクラウド利用率は2021年調査70.4%から2025年調査83.5%へ13.1ポイント伸びています。
新しい動機が普及を押し上げたのではなく、同じ動機を持つ企業が順番に導入してきたという形です。稟議で理由を書くときも、目新しい理屈を探す必要はありません。
出典: 総務省「令和3年通信利用動向調査」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2
オンプレミス型との費用・運用負荷の比較は、公的統計に数値が存在しない
ここで一次データの限界をはっきり書きます。クラウド型とオンプレミス型のTCO・導入期間・運用負荷を比べた数値は、通信利用動向調査では扱われていません。
同調査は、クラウド利用の有無と用途、理由を尋ねる設計だからです。そのため本記事では、費用を数値で比較する表は作りません。
数値で言えるのはここまでです。2025年調査の利用理由では、「場所、機器を選ばずに利用できるから」50.7%が最上位でした。次いで「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」42.8%が並びます。
加えて、2024年調査ではクラウド非利用企業の29.6%が「既存システムの改修コストが大きい」を挙げています。移行コストが実在することは、この数値から確認できます。
ここからは数値ではなく、一般的な整理です。オンプレミス型は初期にサーバーを購入し、保守も社内または委託先が担います。クラウド型は月額や年額の利用料が中心で、基盤の保守は事業者側にあります。
どちらが安いかは、既存資産の残存期間と運用体制で変わります。オンプレミスとクラウドの違いは、別の記事で詳しく扱っています。
注意
上の「一般的な整理」の段落は、公的統計に基づくものではありません。総務省の通信利用動向調査には、クラウド型とオンプレミス型の費用や運用負荷を比較した数値がないためです。社内資料で費用を比較する場合は、自社の見積もりと現行の保守費用を突き合わせて算出してください。
効果があったと答えた企業は89.4%で、5年間高止まりしている
クラウドの効果に対する評価は、5年間ほぼ変わっていません。2025年調査では89.4%の利用企業が「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と回答しています。
推移は2021年調査88.2%、2022年調査89.0%、2023年調査88.4%、2024年調査87.3%です。変動幅は2.1ポイント以内で、方向のある変化とは読めません。なお2024年の87.3%だけは無回答を含む母数での集計(令和6年通信利用動向調査報告書 図表3-5)で、ほかの年は無回答を除いた集計です。基準をそろえると振れ幅はこの2.1ポイントより小さくなるため、高止まりという読み方は変わりません。
つまり、遅れて導入しても得られる効果の水準は変わっていないということです。導入時期の早さで焦る必要はありません。
ただし、この数値は導入を決めた企業自身が回答しています。効果を感じた企業ほど利用を続けるため、評価が高く出やすい構造がある点は差し引いて読んでください。
出典: 総務省「令和3年通信利用動向調査」/総務省「令和4年通信利用動向調査」/総務省「令和5年通信利用動向調査」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2
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導入していない企業の最多の理由は「必要がない」で46.0%(2024年調査)

社内で反対意見が出たときのために、導入していない企業の理由も押さえておきましょう。最多は「必要がない」で46.0%です。
2024年調査で、クラウドサービスを利用していない企業が挙げた理由の上位は次のとおりです。母数はクラウドを利用していない企業に限られます。
- 必要がない: 46.0%
- クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい: 29.6%
- 情報漏えいなどセキュリティに不安がある: 24.9%
- ネットワークの安定性に対する不安がある: 14.7%
反対意見の中身は、コストと不安に分かれます。どちらに寄っているかで、用意すべき資料が変わります。
この4項目には時系列のデータもあります。「必要がない」は2022年調査42.0%、2023年調査44.7%、2024年調査46.0%と、3年連続で上がっています。いずれも母数はクラウドを利用していない企業です。
ただし、この母数は2022年調査256社、2023年調査224社、2024年調査171社と小さく、数ポイントの上下は標本のばらつきに収まる範囲です。並びから「年々増えている」と断定せず、水準感をつかむ材料として扱ってください。
なお、企業規模別の内訳は公表資料で確認できないため、規模ごとの傾向としては語れません。

出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」図表3-6をもとに作成
「必要がない」46.0%と「既存システムの改修コスト」29.6%が上位2つ
非利用の理由で目立つのは、技術的な不安ではなく必要性の判断です。「必要がない」が46.0%で最多でした(2024年調査、非利用企業ベース)。
グループウェアの文脈で考えると、既存のオンプレミス環境が問題なく動いている企業ほど、この回答に寄りやすいという見方ができます。動いているものを止める理由が見つからない、という状態です。
2位は「クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい」で29.6%でした。移行コストは確かに存在しますが、非利用の理由としては1位ではありません。この項目は2022年調査31.2%、2023年調査24.2%、2024年調査29.6%と上下しており、一方向の傾向は読み取れません。
社内を説得する順番としては、コストの話より先に「いま何が困っているか」を言語化するほうが有効です。困りごとが薄いまま費用の話に入ると、議論が止まります。
セキュリティ不安は24.9%で、非利用の主因にはなっていない
セキュリティは社内説明で必ず挙がる論点ですが、実際の非利用理由としては上位ではありません。2024年調査で「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」を挙げた非利用企業は24.9%でした。
「ネットワークの安定性に対する不安がある」はさらに少なく、14.7%です。いずれも最多の「必要がない」46.0%とは差があります。
経年で見ると、この2項目はいずれも2022年調査より低い水準です。セキュリティ不安は2022年調査31.2%、2023年調査24.2%、2024年調査24.9%です。ネットワークの安定性への不安も2022年調査19.0%、2023年調査15.2%、2024年調査14.7%と推移しています。ただし前述のとおり母数が小さいため、下降が続いているとまでは読み取れません。
稟議の場では、この2つの数値が反論の材料になります。不安が大きいから使われていない、という前提は統計上そのまま成り立ちません。
とはいえ、セキュリティを気にしなくてよいという話ではありません。不安をそのままにせず、確認項目に落とすことが重要です。具体的な確認内容は、後半の選定の章で扱います。
クラウド導入率は資本金1億円を境に9.2ポイント跳ね上がる(2025年調査)

全体の83.5%という平均値だけを見て、自社が出遅れていると焦る必要はありません。導入率は企業規模によって大きく異なるからです。
2025年調査の資本金規模別データを見ると、5000万円〜1億円未満は83.1%、1億円〜5億円未満は92.3%でした。この2つの階層のあいだに9.2ポイントの差があります。
比べるべきは全体平均ではなく、自社と同じ資本金帯の数値です。まずは自社がどの階層にいるかを確認してください。
この段差から読み取れるのは、企業規模による差が緩やかな傾斜ではなく、特定の規模を境にした段差として現れているという点です。詳細は次の見出しで確認します。
資本金1億円未満は74.8〜84.1%、1億円以上はすべて92.3%以上
資本金規模別の8階層を並べると、1億円のところで数値が不連続に跳ねます。1億円未満の階層は74.8%から84.1%の範囲に収まる一方、1億円以上はすべて92.3%以上です。
最大の差は、5000万円〜1億円未満83.1%と1億円〜5億円未満92.3%のあいだにある9.2ポイントの段差です。以降は5億円〜10億円未満92.5%、10億円〜50億円未満97.5%、50億円以上99.8%と、高い水準で推移します。
この段差は、情シスの専任者を置ける規模帯とおおむね重なります。ただし資本金と情シス体制の関係を示すデータはないため、あくまで仮説として受け取ってください。
一方で、1億円未満の帯でも4社に3社はすでにクラウドを導入済みです。全体83.5%との差ばかりを見ず、この水準感も押さえておきましょう。
| 資本金規模 | クラウドサービス利用率(2025年調査) |
|---|---|
| 1000万円未満 | 75.4% |
| 1000万円〜3000万円未満 | 74.8% |
| 3000万円〜5000万円未満 | 84.1% |
| 5000万円〜1億円未満 | 83.1% |
| 1億円〜5億円未満 | 92.3% |
| 5億円〜10億円未満 | 92.5% |
| 10億円〜50億円未満 | 97.5% |
| 50億円以上 | 99.8% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2をもとに作成。無回答を除く集計。1000万円未満はその上の階層より高く、単調増加ではない。同階層は標本が100社と小さいため、順位の逆転は根拠に使えない。またこの表はクラウド全体の利用率であり、グループウェア用途に限った規模別データではない

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2をもとに作成
この数値は常用雇用者100人以上の企業のもので、それ未満は調査対象外
ここまでの数値には、共通する制約があります。通信利用動向調査(企業編)の母集団は、公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業です。
つまり、全体の83.5%も、社内情報共有・ポータルの61.4%も同じ条件です。資本金1000万円未満の75.4%も、従業員100人以上の企業について集計された数値になります。
従業員100人未満の企業は、この調査の対象に入っていません。ひとり情シスの体制で運用している企業の多くは、この数値の外側にいることになります。
自社が100人未満なら、記事中の数値は参考値として扱い、そのまま当てはめないでください。小規模企業の実態を知りたい場合は、中小企業庁やIPAの中小企業向け調査で補う必要があります。
注意
この記事で紹介している総務省の数値は、すべて常用雇用者100人以上の企業を対象とした調査結果です。従業員数が100人に満たない企業は調査対象に含まれないため、自社の状況を測る基準としてそのまま使うことはできません。社内資料に引用する際は、母集団の条件も併記してください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2/同 別紙1
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テレワーク導入率が高い業種ほどクラウド利用率も高い(2025年調査)

グループウェアの必要度は、業種によって差があります。2025年調査で8業種を並べると、クラウド利用率の高い順とテレワーク導入率の高い順がほぼ一致します。
たとえば情報通信業はクラウド利用率94.8%、テレワーク導入率92.8%です。一方の運輸業・郵便業はクラウド利用率78.3%、テレワーク導入率32.5%でした。企業全体のテレワーク導入率は50.1%です。
この並びから読み取れるのは、両指標が業種という集団単位で同じ向きに現れているという点です。デスクワーク中心か現場作業中心かという業務形態が、両方の背景にあるという見方ができます。
ただし、これを因果として読まないでください。個々の企業について「テレワークをしているからクラウドを使う」と言えるものではありません。
業種別のクラウド利用率は金融・保険業96.2%から運輸業・郵便業78.3%まで
業種別に見ると、クラウド利用率の幅は思ったほど大きくありません。最も高い金融・保険業96.2%と、最も低い運輸業・郵便業78.3%の差は17.9ポイントです。
上位は金融・保険業96.2%と情報通信業94.8%で、下位はサービス業その他79.3%と運輸業・郵便業78.3%でした。全体は83.5%です。
中位には不動産業90.9%、建設業89.2%、製造業85.6%、卸売・小売業83.6%が並びます。全体83.5%は、ちょうど卸売・小売業と同じあたりの水準です。
下位の業種でも8割近くがクラウドを使っている点は押さえておきましょう。業種を理由に導入を見送る説明は、統計上は通りにくくなっています。
| 業種(2025年調査) | クラウドサービス利用率 |
|---|---|
| 金融・保険業 | 96.2% |
| 情報通信業 | 94.8% |
| 不動産業 | 90.9% |
| 建設業 | 89.2% |
| 製造業 | 85.6% |
| 卸売・小売業 | 83.6% |
| サービス業、その他 | 79.3% |
| 運輸業・郵便業 | 78.3% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2をもとに作成。無回答を除く集計。業種区分は8区分で、金融・保険業など標本の小さい業種を含む
テレワーク側の差は60.3ポイントで、クラウド側の3倍以上開いている
業種差の大きさは、2つの指標でまったく違います。情報通信業と運輸業・郵便業を比べると、クラウド利用率の差が16.5ポイントなのに対し、テレワーク導入率の差は60.3ポイントあります。
具体的には、情報通信業のクラウド利用率94.8%に対し運輸業・郵便業は78.3%です。同じ2025年調査のテレワーク導入率では、情報通信業92.8%に対し運輸業・郵便業は32.5%でした。
背景として、テレワーク導入率は2024年調査47.3%から2025年調査50.1%へ推移しています。情報通信業は2024年調査で94.3%に達していました。
この対比から読み取れるのは、クラウド化自体はテレワークの有無にかかわらず進むという点です。一方で、離れた場所の共同作業を支える用途の必要度は、業種で大きく異なります。
自社の業種でグループウェアの優先度をどこに置くかは、この温度差を踏まえて決めてください。
なお、3用途の業種別内訳は公表されておらず、必要度の差は数値の裏づけがない推論です。8業種の相関係数0.95は本記事の計算値のため、主要な根拠には使いません。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2をもとに作成
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」
クラウド型グループウェアの選定は、統計で埋まらない範囲を要件整理で補う

選定の話に移ります。結論として、他社比較ではなく自社の要件整理から始めるのが現実的です。
理由は単純で、製品ごとの機能や料金は公的資料から取得できないためです。本記事では製品比較表を作らず、判断軸の整理に置き換えます。
判断の起点になるのは、2025年調査で示された3用途の水準です。社内情報共有・ポータル61.4%、電子メール57.4%、スケジュール共有53.6%の3つです。このうち自社でクラウド化できていない用途を洗い出してみてください。
そのうえで、セキュリティ面の確認項目を契約前に固めます。2024年調査で非利用企業の24.9%が挙げたセキュリティ不安は、確認項目に落とすことで扱える論点になります。
グループウェア用途の規模別・業種別データは公表されておらず、他社比較はできない
読者が最も知りたい「自社と同じ規模・業種ではどうか」という問いには、一次データで答えられません。ここは正直に書いておきます。
クラウド全体の利用率については、2025年調査で細かい内訳が公表されています。資本金は1000万円未満75.4%から50億円以上99.8%まで8階層あります。業種も情報通信業94.8%や運輸業・郵便業78.3%を含む8区分で公表されています。
一方、社内情報共有・ポータル61.4%、電子メール57.4%、スケジュール共有53.6%の3用途は、いずれも全体値のみです。同じ調査票の設問群でありながら、公表の粒度が異なります。
この差から読み取れるのは、「従業員300人の製造業でスケジュール共有はどこまで進んでいるか」という問いに答えられないという点です。だからこそ、選定は他社比較ではなく自社の要件整理から始めるしかありません。
なお、これは「公的統計に存在しない」という意味ではありません。通信利用動向調査の公表資料では扱われていない、という範囲の話です。
事業者選定・責任分界点・停止時の代替案・設定見直しの4点を確認する
クラウドサービスを使ううえでの確認項目は、IPAが整理しています。ここでは選定チェックリストの形にまとめます。
前提として、2024年調査で非利用企業が挙げた理由を思い出してください。セキュリティ不安は24.9%、ネットワーク安定性への不安は14.7%でした。どちらも確認手順に置き換えられる論点です。
「不安がある」で止めず、「何を確認するか」に変換していきましょう。
この4点は、稟議書のリスク欄にそのまま書ける粒度になっています。2025年調査で最も多い利用理由は「場所、機器を選ばずに利用できるから」50.7%でした。この利点を活かすためにも、確認は契約前に済ませておきましょう。
契約前に確認する4点
- 事業者・サービスの選定: 公的なガイドラインに沿って運営されている事業者か、契約前に調べる
- 責任分界点: 障害や情報漏えいが起きたとき、自社と事業者のどちらが、どこまでインシデント対応の責任を負うのかを契約時に確認する
- 停止時の代替案: サービスが止まっても業務が止まらないよう、代わりの手段を決めておく
- 設定の見直し: 仕様変更の告知を追いかけ、意図せず変わった設定を戻す運用を用意する
IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書および「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」の整理をもとに、本記事で再構成しています。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書
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公的統計の数値を社内資料に使うときは、資料と調査年をそろえる

最後に、数値を引用するときの実務的な注意です。同じ調査・同じ年でも、公表資料によって数値がわずかに異なります。
たとえば2024年の企業のクラウド利用率は、令和6年通信利用動向調査報告書では80.4%です。ところが令和7年版情報通信白書では80.6%と紹介されています。この80.6%は白書だけの値ではなく、令和7年通信利用動向調査 別紙2の図表4-1にある「令和6年」の欄にも同じ値で載っています。
社内情報共有・ポータルも、2024年の確報値57.5%に対し、翌年公表の速報改定値は57.6%でした。
ずれの理由は、無回答をどう扱うかという集計基準の違いです。令和6年通信利用動向調査報告書の図表3-1は回答企業2,330社を母数とし、無回答を含めて集計しています。一方、令和7年通信利用動向調査 別紙2の図表4-1は同じ2024年分を2,323社で集計しており、無回答の列がありません。母数がその分だけ小さくなるため、割合がわずかに高く出ます。
0.1〜0.2ポイントの差そのものは実務判断に影響しませんが、複数資料の値を混ぜて経年グラフを作ると問題が起きます。実際には存在しない増減が、1年分だけ現れてしまうためです。
注意
経年グラフを作るときは、単一の資料に載っている時系列表の系列をそのまま使うのが安全です。本記事の利用率推移表は各年の公表資料から1年分ずつ拾っており、この作法を満たしていません。2024年の80.4%だけが無回答を含む集計(令和6年通信利用動向調査報告書)で、ほかの年は無回答を含まない集計です。同じ表を自分で作り直すときは、令和7年通信利用動向調査 別紙2 図表4-1のように5か年が1つの図表に並んだ系列を使ってください。調査の信頼性の問題ではなく、引用時の作法の問題として扱ってください。
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「令和7年版情報通信白書」/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2
まとめ

クラウド型グループウェアの現在地を、4点に整理します。
- グループウェアに相当する用途は、クラウド利用企業の6割前後まで広がった(2025年調査で社内情報共有・ポータル61.4%)
- 用途の主役は2021年調査から2022年調査のあいだに入れ替わり、2022年調査で社内情報共有・ポータル52.9%が電子メール52.4%を上回った
- 導入率は資本金1億円を境に段差があり(2025年調査で1億円〜5億円未満92.3%)、平均値と自社を単純に比べない
- 用途別の規模別データは公表されていないため、選定は他社比較ではなく自社の要件整理から始める
効果があったと答えた企業は2025年調査で89.4%と高い水準が続いています。導入時期の早さで焦らず、自社の困りごとから優先順位を決めていきましょう。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「平成30年通信利用動向調査」
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この記事で見てきたとおり、公表されている平均値と自社の状況をそのまま比べることはできません。母集団や母数を確かめ、自社の要件に引き直す作業が必要になります。こうした判断は、新人やひとり情シスの方が独学で身につけるには時間がかかる領域です。
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※出典

