【経産省・IPAデータ】情シスの課題は人材・セキュリティ運用・新技術対応の3つに整理できる|DX人材の質が不足する企業は2025年時点で88.8%


情シスの仕事をしていて、こんな状態になっていませんか。

  • 目の前の対応に追われて、やるべき改善がいつまでも始められない
  • 課題は山ほどあるのに、どれから手をつけるべきか判断できない
  • 人を増やしたい、外に出したいと言うための材料が手元にない

結論から書きます。情シスが抱える課題は、「人材」「セキュリティ運用」「新技術対応」の3つに整理できます。

課題を10個並べても優先順位は決まりません。3つに束ねて、それぞれを公的なデータで裏づけたほうが、社内でも説明しやすくなります。

この記事では、総務省・経済産業省・IPAの公的調査だけを根拠に整理します。ベンダーの独自アンケートや、出所のはっきりしない相場感は使いません。

この記事のポイント

  • 情シスの課題は「人材」「セキュリティ運用」「新技術対応」の3つに整理できる
  • 人手不足は将来のリスクではなく前提条件。IT人材の需給ギャップは2030年に44.9万人と推計されている(2019年公表。出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」)
  • 増員だけでは解けない部分が残る。DX推進に必要なスキルを把握できていない企業は52.8%(2025年。出典: IPA「DX動向2026」。DXに取組んでいると回答した企業が対象)

この記事を読み終えると、自社の課題を3つに分類したうえで、増員で解ける部分と解けない部分を切り分けられます。


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目次

情シスの課題は人材・セキュリティ運用・新技術対応の3つに整理できる

情シスの課題を3つに整理

情シスの課題を書き出すと、人手不足、属人化、問い合わせ対応、セキュリティ、DX対応と、いくらでも出てきます。ただ、並べただけでは手のつけ方が決まりません。

公的調査の数値をあてはめると、情シスの課題は「人材」「セキュリティ運用」「新技術対応」の3つに束ねられます。 代表的なデータを紐づけると、次のとおりです。

課題の類型 具体的に起きていること 裏づけとなるデータ(いずれも2025年)
人材 採用しても求める水準に届かない DXを推進する人材の「質」が不足していると答えた企業は88.8%
セキュリティ運用 運用の検証まで手が回らない 何らかの対策を実施している企業は98.3%、セキュリティ監査は26.7%
新技術対応 生成AIなど新しい領域に着手できない AI導入の課題に「専門人材が不足している」を挙げた企業は50.1%

出典: IPA「DX動向2026」(88.8%・50.1%)、総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2(98.3%・26.7%)。調査主体も母集団も異なるため、類型ごとの目安として見てください。
※母集団: 88.8%はDXに取組んでいると回答した企業、50.1%は19業種の企業の経営層またはICT関連事業部門、98.3%と26.7%はインターネットを利用している企業です。

属人化はセキュリティ運用に、問い合わせ対応の負荷は人材に入ります。経営層の理解不足は、3つすべてにかかる前提条件です。

ポイント

  • 人材: 頭数ではなく、人材像と評価基準が社内にない
  • セキュリティ運用: 対策の有無ではなく配分に課題がある
  • 新技術対応: 不足は新しい技術領域に偏っている

次の章から、3つを順に掘り下げます。

出典: IPA「DX動向2026」総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2


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IT人材の需給ギャップは2030年に44.9万人まで拡大すると推計されている

人材の需給ギャップ

情シスの人手不足は、これから起きることではありません。マクロの推計でも企業の回答でも、人材が足りない状態はすでに前提条件になっています。

経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)を見ます。IT人材の需給ギャップは、2025年時点で36万人、2030年時点で44.9万人と推計されています。

企業側の実感も同じ方向です。IPA「DX動向2026」では、人材の「質」が不足していると答えた企業が2025年時点で88.8%でした。母数は、DXに取組んでいると回答した企業です。

この章では、不足の中身を4つの角度から見ていきます。

この章で分かること

  • 需給ギャップの拡大ペースが最も強い局面は、推計上すでに過ぎている
  • 不足しているのは先端IT人材で、従来型IT人材は供給超過と推計されている
  • 不足感は企業規模を問わず高く、中小規模でも高い水準にある

需給ギャップは2018年の22万人から2030年の44.9万人へ拡大する推計になっている

経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)の標準ケースから確認します。IT人材の需給ギャップは、2018年時点で22万人、2020年時点で30万人と推計されています。

同じ推計で、2025年時点は36万人、2030年時点は44.9万人です。2030年の値はIT需要の伸び方で幅があり、高いシナリオでは78.7万人、低いシナリオでは16.4万人と試算されています。

IT人材の需給ギャップの推計(2018〜2030年)

出典: 2018年・2020年・2025年は経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」、2030年は同調査報告書(いずれも2019年公表の推計値)

この推移から読み取れるのは、拡大の勢いが最も強い局面をすでに通過している点です。上の推計値をこの記事で並べ直すと、2018年から2020年の2年間の増加幅は、2025年から2030年の5年間の増加幅とほぼ同じです。増員による解消を待つより、いまの人員を前提に業務の配分を決める段階です。

ただし、幅の大きさには注意が必要です。16.4万人から78.7万人まで振れる推計は、採用計画の単独の根拠にはできません。

注意

ここで挙げた数値は、いずれも2019年公表の推計値です。2018年・2020年の値も実績ではありません。IT需要と労働生産性の前提に依存し、生成AIの普及は織り込まれていません。対象は国内のIT人材全体で、情シス部門を切り出した数値ではありません。

不足しているのは先端IT人材で、従来型IT人材は9.7万人の供給超過と推計されている

「IT人材が足りない」という前提は、情シスの業務にそのまま当てはまるとは限りません。同じ経済産業省の推計の中で、人材の区分によって過不足の符号が逆転しているからです。

2030年時点の推計では、AI・IoT・ビッグデータなどを担う先端IT人材が54.5万人の不足とされています。一方で、従来からのIT需要に対応する従来型IT人材は、9.7万人の供給超過と推計されています(いずれも2019年公表)。

先端IT人材と従来型IT人材の需給ギャップ(2030年推計)

出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書(2019年公表の推計値)

足りないのは新技術に対応できる人材で、運用・保守を担う人材はむしろ余ると推計されている、という構図です。運用寄りの業務が中心の情シスにとっては、増員が通りにくい理由の一つとして読めます。

ただし、この構図は前提の置き方に依存します。これは、従来型から先端領域への転換率(Reスキル率)を1.0%で固定した前提の推計です。同じ報告書では、転換が需要に応じて進む前提を置くと従来型IT人材の需給ギャップの符号が変わる試算も併記されています。

もっとも、この区分は職種分類上の定義です。実務では1人が両方を兼ねますし、供給超過という推計は採用のしやすさや待遇を保証するものではありません。

DXを推進する人材の「質」が不足している企業は2025年時点で88.8%

次に、企業側の実感を見ます。マクロの推計だけでなく、実際に回答した企業の8割台後半が人材の不足を挙げています。

IPA「DX動向2026」の2025年調査の結果は次のとおりです。いずれも、DXに取組んでいると回答した企業が母数になります。集計基準が違うため、「やや不足」を含めた合計と「大幅に不足」だけの割合を分けて示します。

不足している対象 やや不足+大幅に不足 うち「大幅に不足」
人材の「量」 85.5% 50.1%
人材の「質」 88.8% 52.9%

出典: IPA「DX動向2026」(2025年調査、DXに取組んでいると回答した企業が対象)

量も質も8割台後半で、半数前後の企業が「大幅に不足」と答えています。人が足りないという感覚は、あなたの現場だけのものではありません。この数値をどう読むかは、次の章で整理します。

不足感は企業規模を問わず高く、従業員100人以下でも「質」の不足は7割を超える

不足感は大企業だけの話ではありません。IPA「DX動向2026」を従業員規模別に見ると、規模の大小にかかわらず高い水準です。

2025年時点の状況は次のとおりで、いずれもDXに取組んでいると回答した企業が母数です。

  • 従業員301人以上: 人材の「質」の不足は9割を超える、「量」の不足も9割を超える
  • 従業員100人以下: 人材の「質」の不足は7割を超える、「量」の不足は6割を超える

情シスが1人か数人という規模の会社でも、質は7割超、量は6割超が不足を感じています。自社が特別に遅れているわけではない、という前提を押さえておいてください。

注意

この4つの数値は、報告書本文の「9割を超える」「7割を超えている」という概数の記述から取っています。正確な百分率が公表されていないため、規模区分どうしのポイント差は算出できません。

出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」同調査報告書(いずれも2019年公表)/IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)


人材不足の裏側には、必要な人材像と評価基準が社内にない状態がある

人材像と評価基準

人材の課題は、採用市場だけの問題ではありません。必要な人材を社内で定義できていない状態が、統計にはっきり表れています。

IPA「DX動向2026」によると、2025年時点でDX推進に必要なスキルを把握できていないと答えた企業は52.8%です。人材像を設定して社内に周知できている企業は16.2%にとどまります。いずれも、DXに取組んでいると回答した企業が母数です。

不足を訴える企業が9割近くいる一方で、必要な人材を定義できている企業はごく少数です。定義づくりは予算も承認も要らないので、ひとり情シスでも今日から着手できます。

自社で確認したい3点

  • 情シスに必要なスキルを書き出したものが社内にあるか
  • その人材像を、上司や経営層と共有できているか
  • 情シスの仕事を評価する基準が決まっているか

必要なスキルを把握できていない企業は52.8%、人材像を周知できている企業は16.2%にとどまる

まず事実を並べます。IPA「DX動向2026」の数値は次のとおりです。いずれも同一調査内の比較で、DXに取組んでいると回答した企業が母数になります。

  • DX推進に必要なスキルを把握できていない企業: 2025年52.8%
  • 人材像を設定して社内に周知している企業: 2024年20.4% → 2025年16.2%
  • DX人材の評価基準が「ない」企業: 2024年75.7% → 2025年76.1%

人材像の周知は1年で下がり、評価基準が「ない」企業の割合はほとんど動いていません。不足を訴える声は大きいのに、それを定義して評価する仕組みは広がっていない状態です。

なお、この設問はDX推進人材全般を対象としており、情シス部門の要員を直接指しているわけではありません。

ただし、周知率の低下には別の説明も成り立ちます。各年の回答企業は入れ替わるため、母集団の裾野が広がって取り組み初期の企業が増えれば、周知率だけが下がることもありえます。

スキルを把握できていない企業は「質が大幅に不足」の回答が23.4ポイント高い

同じ調査の中に、実務に効くクロス集計があります。必要なスキルを把握できているかどうかで、人材の不足感が大きく変わります。

2025年時点で、DX推進に必要なスキルを把握している企業のうち、人材の「質」が大幅に不足していると答えた企業は40.6%でした。把握できていない企業では64.0%です。

スキルの把握状況別「質が大幅に不足」の割合(2025年)

出典: IPA「DX動向2026」(2025年調査、DXに取組んでいると回答した企業が対象)

この数値から読み取れるのは、スキルを把握できていない企業ほど不足感が強く、その差は23.4ポイントに達するという関係です。何が足りないか分からない状態では、不足の感覚だけが大きくなります。

ただし、これは因果ではなく併走関係として見てください。人材を確保できている企業ほど整理に手を回せる、という逆向きの説明も成り立ちます。企業規模やDXの成熟度も統制されていません。

不足感は1年で2.7ポイント上がったが、育成予算を増やした企業は25.6%にとどまる

不足感と社内の手当ての間には開きがあります。IPA「DX動向2026」の同一調査内で比べると、次のような推移です。いずれもDXに取組んでいると回答した企業が母数になります。

  • 人材の「質」が不足していると答えた企業: 2024年86.1% → 2025年88.8%
  • 育成予算を増やしたと答えた企業: 2024年23.8% → 2025年25.6%

上に挙げた2組の値の差を、この記事で計算してみます。不足感の上昇は2.7ポイントですが、育成予算を増やした企業の増加は1.8ポイントにとどまります。

一方で「大幅に不足」は2024年58.9%から2025年52.9%へ下がっています。深刻度の側は緩んでいる、という読み方もできます。

ここから読み取れるのは、不足を感じる企業と、不足を埋める仕組みを持つ企業の間に60ポイント以上の開きがあるという点です。深刻度の側が下がっても、この開きは1年で縮まっていません。増員や育成の要望が通りにくいのは、あなたの会社だけの事情ではないということです。

裏を返せば、人材像の定義から着手するだけでも他社との差がつきます。まずは定義から始めてみてください。

なお、各年の回答企業は入れ替わります。また「予算を増やした」は増減の方向を聞いた設問で、金額の水準を示すものではありません。

出典: IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)


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セキュリティ対応は実施率98.3%に対し、監査は26.7%で運用の検証まで届いていない

セキュリティ運用の配分

セキュリティ対応は「やっているかどうか」で語られがちです。ただ、統計を見ると論点はそこにありません。課題は対策の有無ではなく、対策の配分にあります。

総務省「令和7年通信利用動向調査」によると、2025年時点で何らかのセキュリティ対策を実施している企業は98.3%です。一方、セキュリティ監査を実施している企業は26.7%にとどまります。いずれも母集団はインターネットを利用している企業です。

対策はほぼすべての企業が入れているのに、その運用を点検する仕組みまでは届いていません。この章では、実施項目の内訳から情シスの負荷のかかり方を見ていきます。

この章の結論

  • 導入で終わる対策は普及し、運用が続く対策は普及していない
  • 情シスの工数を増やす対策が主軸で、工数を外に出す対策は広がっていない

何らかの対策は98.3%だが、対応マニュアルの策定は19.7%にとどまる

まず内訳を確認します。以下はすべて、総務省「令和7年通信利用動向調査」の2025年時点の値です。母集団はインターネットを利用している企業で、複数回答の設問にあたります。

何らかのセキュリティ対策を実施している企業は98.3%、端末にウイルス対策プログラムを導入している企業は82.0%です。社員教育は54.7%、OSへのセキュリティパッチの導入は43.5%でした。セキュリティ監査は26.7%、セキュリティ管理のアウトソーシングは20.2%です。

そして、ウイルス対策の対応マニュアルを策定している企業は19.7%です。

セキュリティ対策の実施率の落差(2025年)

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2(2025年、インターネット利用企業、複数回答のため合計は100%になりません)

ウイルス対策の対応手順を文書にしている企業は5社に1社です。よく語られる「属人化」の一端は、この19.7%という数値で説明できます。手順が文書になっていなければ、対応の中身は担当者の頭の中にしか残りません。

ただし読み方には幅があります。「何らかの対策」は1つ選べば該当する設問設計のため、高く出やすい数値です。パッチ適用がSaaS側で自動実施されていれば、自社の対策として認識されず低く出ることもありえます。

社員教育54.7%に対し、外部委託は20.2%で工数は情シスに残っている

次に、2024年からの動きを見ます。総務省「令和7年通信利用動向調査」の同一設問群で比べると、次のとおりです。いずれも母集団はインターネットを利用している企業です。

社員教育は2024年52.9%から2025年54.7%へ、セキュリティ監査は2024年26.2%から2025年26.7%へ推移しました。セキュリティ管理のアウトソーシングは2024年18.3%から2025年20.2%です。

工数を増やす対策と外に出せる対策の推移(2024→2025年)

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2(両年とも無回答を除いた算出。回答企業数は令和6年 n=2,314、令和7年 n=2,480)

この内訳から読み取れるのは、情シスの工数を増やす対策が主軸になっている点です。社員教育は情シスが企画・実施・フォローまで担うため、実施するほど担当者の手が取られます。

その社員教育が54.7%で、工数を外に出せるアウトソーシングは20.2%です。両者をこの記事で割ると、比率は約2.7倍になります。

伸び方も見ておきます。外部委託は2024年から2025年にかけて1.9ポイント増えており、比率としては小さいながら広がっています。情シス業務の外注を検討するなら、まず何を外に出すかを決めるところから始めてみてください。

なお、1〜2ポイントの増減は回答企業の入れ替わりで説明がつく範囲です。変化として読み込みすぎないようにしてください。

セキュリティ被害を受けた企業は2025年時点で48.1%ある

対策を入れれば終わり、というわけにはいきません。実施率が高くても、被害を経験した企業は一定数あります。

総務省「令和7年通信利用動向調査」の2025年時点の数値は次のとおりです。いずれも母集団はインターネットを利用している企業です。

  • 何らかのセキュリティ対策を実施している企業: 98.3%
  • 何らかのセキュリティ被害を受けた企業: 48.1%

対策の実施と被害の有無は、単純な引き算の関係にはなりません。だからこそ、監査やマニュアルのような「運用を点検する対策」が意味を持ちます。中小企業のセキュリティ対策を考えるときも、導入した対策が動いているかを確かめる工程を組み込んでおくと安心です。

外部に委託した場合も、管理の責任は自社に残ります。委託範囲と自社の責任範囲を書き出しておいてください。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2(2024年の値は同資料の令和6年欄。いずれもインターネット利用企業が対象)


新技術への対応は情シスの課題の中心に移り、AI導入では50.1%が専門人材の不足を挙げている

新技術への対応

生成AIの活用は、いまや情シスに必ず話が来るテーマですよね。そして人材の課題は、頭数の問題から、対応できる領域の問題へ移っています。

IPA「DX動向2026」によると、2025年時点でAIの導入・運用上の課題として「専門人材が不足している」を挙げた企業は50.1%です。この設問の母集団は、19業種の企業の経営層またはICT関連事業部門にあたります。

同じ調査で、DX推進に必要なスキルを把握できていない企業は52.8%でした。こちらはDXに取組んでいると回答した企業が母数です。新しい領域ほど、必要なスキルの輪郭がつかめていない状態がうかがえます。

ポイント

  • AI導入の障壁は技術そのものではなく、人と社内ルールの側にある
  • システム導入を見送る理由でも、人材の不足が上位に入り続けている
  • 増員しても埋まらない部分が残るため、育成と外部化の設計が要る

AI導入・運用の課題は専門人材の不足50.1%、効果とリスクの理解不足45.8%

事実を並べます。IPA「DX動向2026」で挙がったAIの導入・運用上の課題は、2025年時点で次のような回答割合でした。複数回答の設問で、母集団は19業種の企業の経営層またはICT関連事業部門です。

最も多いのは「専門人材が不足している」で50.1%です。次いで「生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している」が45.8%でした。「適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい」は39.7%です。

AI導入・運用上の課題(2025年)

出典: IPA「DX動向2026」(2025年、複数回答のため合計は100%になりません)

上位3項目は、いずれも技術そのものではなく、人と社内ルールに関する課題です。裏を返せば、情シスが手を打てる余地はルールづくりの側に多く残っています。

システム導入を見送る理由に「使いこなす人材がいない」を挙げた企業は43.7%

「ツールを入れれば解決する」という前提は、現場で崩れます。導入を見送る理由として、人材の不足が長く上位に居続けているからです。

総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」に、その手がかりがあります。デジタルデータの収集・解析のためのシステムを導入しない理由の設問です。「使いこなす人材がいないから」を挙げた企業の割合は次のとおりでした。

母集団は、そうしたシステムを導入していない企業(常用雇用者100人以上)に限られます。

  • 2022年: 43.9%
  • 2023年: 42.1%
  • 2024年: 43.7%

3年間で42〜44%の範囲に収まっており、恒常的な導入障壁になっていることが分かります。なお2024年を業種別に見ると、建設業は53.2%と高めでした。

順位も押さえておいてください。「使いこなす人材がいないから」は最も多い理由ではなく、2番目に多い理由として3年連続で挙がっています。

マクロ推計と企業の回答は、不足が新技術領域に偏る点で一致している

ここまでの数値を並べると、方向がそろっているのが分かります。手元にある根拠は次の4つです。

  • 2030年時点の先端IT人材は54.5万人の不足(2019年公表の推計)
  • 同じ推計で、従来型IT人材は9.7万人の供給超過
  • 2025年時点でAI導入の課題に「専門人材が不足している」を挙げた企業は50.1%
  • 2025年時点でDX推進に必要なスキルを把握できていない企業は52.8%

この並びから読み取れるのは、2019年のマクロ推計と2025年の企業回答が、いずれも新しい技術領域に不足が偏るという同じ方向を指している点です。情シスの人材課題を頭数の不足として捉えると、増員しても埋まらない部分が残ります。

ただし、この2つは調査主体も手法も定義も異なります。並べられるのは方向の一致までで、量的な裏づけにはなりません。経済産業省の「先端IT人材」とIPA調査の「AIの専門人材」が同じ範囲を指す保証もない点は押さえておいてください。

出典: IPA「DX動向2026」総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書(2019年公表)


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経営層との認識ギャップは、DXに取組んでいない100人以下の企業の54.0%が「メリットがわからない」と答えている点に表れている

経営層との認識ギャップ

提案が通らないのは、説明の巧拙だけの問題ではありません。経営側にIT投資の必要性が伝わっていない状態が、統計にも表れています。

IPA「DX動向2026」に、DXに取組んでいない理由を聞いた設問があります。DXに取組んでいない従業員100人以下の企業のうち、2025年時点で54.0%が「自社がDXに取組むメリットがわからない」を挙げました。同じ調査で、従業員100人以下のDX取組率は41.6%です。

つまり小規模な企業では、取り組みが始まっていない会社が過半を占めます。そして取り組んでいない企業の半数が、メリットの不明確さを理由に挙げています。情シスの業務を効率化する提案をするなら、効果の説明から入る必要があるということです。

経営層に伝えるときの論点

  • 投資の目的を、業務量や対応時間など社内の言葉に置き換える
  • 他社の取り組み状況を、規模をそろえた数値で示す
  • 管理対象が増えていることを、端末や拠点の実数で示す

DXに取組んでいる企業は従業員100人以下で41.6%、1,001人以上で98.7%

まず規模別の実態を確認します。IPA「DX動向2026」の2025年時点の数値は次のとおりです。母集団は同調査の回答企業です。

従業員100人以下のDX取組率は41.6%、回答企業全体では75.7%、従業員1,001人以上では98.7%でした。100人以下と1,001人以上を比べると、DXに取組んでいる企業の割合には大きな開きがあります。

DXに取組んでいる企業の割合(従業員規模別・2025年)

出典: IPA「DX動向2026」(2025年、同調査の回答企業が対象)

ひとり情シスが多い100人以下の層では、効率化の議論以前に、会社としての取り組みが立ち上がっていない企業が過半を占めます。自社の状況を責める前に、この分布を知っておいてください。

なお「DXに取組んでいる」は自己申告です。大企業ほど社内に用語が定着していて肯定回答しやすい面がある点は、割り引いて読む必要があります。

管理対象は社外にも広がり、テレワーク導入企業は2025年時点で50.1%

人は増えていないのに、管理する対象は増えました。社外の端末や回線が管理範囲に入れば、資産管理も問い合わせ対応も自然に増えます。

総務省「令和7年通信利用動向調査」の数値は次のとおりです。

  • テレワークを導入している企業の割合: 2025年時点で50.1%
  • 母集団: 常用雇用者100人以上の回答企業(n=2,488)

2社に1社がテレワークを導入しています。これは働き方の話であると同時に、情シスの管理対象が社内から社外へ広がったという話でもあります。

経営層に体制の話をするときは、この点を材料にしてください。人員は変わらないのに管理範囲が広がった、という説明は数値で裏づけられます。

出典: IPA「DX動向2026」総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙1


ひとり情シスの実態を示す一次データは、今回参照した公的統計には見当たらない

ひとり情シスの実態

最後に、この記事で書けなかったことを書いておきます。ひとり情シスの人数や比率を示す数値は、今回参照した総務省・経済産業省・IPAの調査では扱われていませんでした。

理由は、集計の単位にあります。今回確認した範囲では、次のような構造でした。

  • 不足感は企業規模別に集計されているが、最も小さい区分が「従業員100人以下」で一括り(質の不足は301人以上で9割超、100人以下で7割超)
  • そのため、担当者が1人の企業と数名体制の企業が同じ枠に入る
  • 総務省の集計は企業単位で、何らかの対策の実施は98.3%だが、誰が何人で担うかは設問にない
  • 体制の薄さを示すのは、アウトソーシング20.2%のような間接的な指標に限られる

この空白は、公開データ側の限界です。だからこそ、自社の実態は自分で測る必要があります。1週間分の作業ログを取る、問い合わせを分類するといった記録から始めてみてください。

その記録は、他社の平均値よりも説得力のある提案材料になります。

注意

ここで述べたのは、今回参照した調査の範囲での空白です。「公的統計に存在しない」と断定するものではなく、業界団体の調査や詳細集計表に該当データがある可能性は残ります。なお本記事では、出所を確認できない数値は採用していません。

出典: IPA「DX動向2026」総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2


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まとめ

情シスの課題は「人材」「セキュリティ運用」「新技術対応」の3つに整理できます。この記事で確認した根拠を並べます。

  • 人材: IT人材の需給ギャップは2030年に44.9万人と推計される一方、従来型IT人材は9.7万人の供給超過とされる(2019年公表)
  • 人材: DX推進に必要なスキルを把握できていない企業は2025年時点で52.8%。定義がないまま不足感だけが積み上がっている
  • セキュリティ運用: ウイルス対策の対応マニュアルを策定している企業は2025年時点で19.7%、セキュリティ管理のアウトソーシングは20.2%。工数を増やす対策に偏っている
  • 新技術対応と経営: DXに取組んでいない従業員100人以下の企業のうち、54.0%が「メリットがわからない」を理由に挙げている(2025年)
  • ひとり情シスの実態を示す数値は、今回参照した公的統計では扱われていない

明日からやることは1つに絞ってください。自分の1週間の作業を記録することです。 何にどれだけ時間を使っているかが分かれば、増やす対策と外に出せる対策を切り分けられます。

その一覧は、そのまま経営層への提案材料になります。まずは今週分から記録を始めてみてください。

出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書(2019年公表)/IPA「DX動向2026」総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2


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この記事で見たとおり、不足しているのは頭数だけではありません。対応できる領域と、必要な人材を定義する仕組みが足りていない状態です。とはいえ、日々の対応に追われながらまとまった研修時間を取るのは難しいですよね。

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導入は5名から可能で、請求書払いに対応しています。初期設定は約10分で完了します。

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