【総務省2025年調査】クラウドを「安いから」選んだ企業は19.4%|導入理由と見送り理由の両面で見るコスト判断

「クラウドにすれば安くなる」と社内で言われたものの、その根拠を探して手が止まっていませんか。上司から「結局いくら下がるのか」と聞かれる立場だと、なおさら答えに困る場面が多いはずです。
- 「クラウドは安い」と言われるが、根拠を聞かれると答えられない
- 経営層に「いくら下がるのか」を聞かれても、断言できる材料がない
- 逆に「思ったより高くついた」という話も耳にして、どちらを信じてよいか分からない
結論から言うと、公的統計は「クラウドは安いから広まった」という説明を裏づけていません。総務省の通信利用動向調査によると、2025年調査でコストの安さを利用理由に挙げた企業は19.4%でした。これは、調査結果の概要に掲載された利用理由8項目の中で最下位です(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2)。
この記事では、クラウドを導入した企業と導入していない企業の両方について、コストがどう位置づけられているかを一次データで整理します。特定サービスの料金比較は扱いませんが、社内での説明にそのまま使える数値と出典を用意しました。
この記事のポイント
- 2025年調査で「コストが安いから」を利用理由に挙げた企業は19.4%で、概要資料に載る8項目中の最下位です(総務省 通信利用動向調査)
- 利用していない企業では「既存システムの改修コストが大きい」が28.7%で2番目に多い理由でした(セキュリティへの不安は26.6%)
- 公的統計が示すのは「そう回答した企業の割合」までで、月額費用や削減率といった金額の指標は扱われていません
コストの安さを理由にクラウドを選んだ企業は19.4%で、利用理由の中では最下位(2025年調査)

先に結論をお伝えします。公的統計を見る限り、コストはクラウドを選ぶ決め手になっていません。2025年調査で「既存システムよりもコストが安いから」を利用理由に挙げた企業は19.4%で、調査結果の概要に並ぶ8つの項目のうち最下位でした。
一方で、クラウドサービスを利用している企業の割合は2025年調査で83.5%に達しています。普及は進んでいるのに、その動機としてコストを挙げる企業はおよそ5社に1社にとどまります。
「クラウドが広まったのは安いからだ」という説明は、統計の上では支持されません。 ここから、利用理由の内訳を順に見ていきます。
2025年調査時点でクラウドサービスを利用している企業は83.5%
前提として、クラウドの利用はすでに多くの企業へ広がっています。総務省の通信利用動向調査によると、クラウドサービスを利用している企業の割合は2025年調査で83.5%でした。前年の2024年調査では80.6%です。
伸びているのは利用率だけではありません。全社的に利用している企業の割合も、2024年調査の53.1%から2025年調査の60.0%へ上がっています。
| 指標 | 2024年調査 | 2025年調査 |
|---|---|---|
| クラウドサービスを利用している企業の割合 | 80.6% | 83.5% |
| クラウドサービスを全社的に利用している企業の割合 | 53.1% | 60.0% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/同 別紙2 図表4-1より作成。いずれも令和7年調査の公表資料に載る同一シリーズの推移値で、無回答を除く基準に統一されています。対象は常用雇用者100人以上の企業です。
一部門での試験導入から全社利用へ移る企業が増えている段階です。 すでに使うかどうかではなく、どう使うかが論点になっており、クラウドの導入そのものを検討している企業は少数派に入ります。
利用理由の1位は「場所、機器を選ばずに利用できるから」の50.7%で、コストとは31.3ポイント差
利用理由の内訳を見ると、コストの位置づけがはっきりします。2025年調査の1位は「場所、機器を選ばずに利用できるから」で50.7%でした。最下位のコスト19.4%とは31.3ポイントの差があります(本記事による計算値)。

| クラウドサービスを利用する理由(2025年調査・複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 場所、機器を選ばずに利用できるから | 50.7% |
| 安定運用、可用性が高くなるから | 45.1% |
| 資産、保守体制を社内に持つ必要がないから | 42.8% |
| 災害時のバックアップとして利用できるから | 38.7% |
| サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策) | 35.0% |
| システムの容量の変更などに迅速に対応できるから | 32.6% |
| システムの拡張性が高いから(スケーラビリティ) | 28.9% |
| 既存システムよりもコストが安いから | 19.4% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-4より作成。クラウドサービスを利用している企業2,131社が回答した複数回答の設問です。設問にはこのほかに「その他」(10.7%、無回答を含む基準)があり、上の8項目は概要資料に掲載されたものです(令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)図表3-4)。
上位3項目は、場所を選ばずに使えること、止まりにくいこと、社内に資産と保守体制を抱えなくてよいことです。いずれも金額ではなく、運用のしやすさに関する項目が並んでいます。
ここから読み取れるのは、コストが決め手としては弱いという構図です。クラウドが選ばれている理由は、価格ではなく使い方にあります。
この数値は常用雇用者100人以上の企業を対象にした調査の結果
自社に当てはめる前に、母集団を確認してください。通信利用動向調査の企業編は、公務を除く産業に属する、常用雇用者100人以上の企業(本所または単独事業所)を対象にしています。調査時点は2025年8月末で、結果は2026年5月に公表されました。
回答した企業の数も押さえておきましょう。2025年調査で利用率の算出に用いられた企業は2,486社、利用理由を回答したクラウド利用企業は2,131社です。なお同報告書は分類項目ごとの標本誤差率も公表しており、回答数が少ない区分ほど誤差が大きくなります。
注意
常用雇用者が100人未満の企業は、この調査の対象に含まれていません。ひとり情シスが多い小規模企業の実態は、19.4%や83.5%という数値の外側にあります。社内資料に使うときは「自社より規模の大きい企業の平均」として扱ってください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/同 別紙2/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」調査の概要
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クラウドを導入していない企業では「改修コストが大きい」が28.7%で2番目に多い理由(2025年調査)

同じコストでも、導入を見送る側では位置づけが変わります。2025年調査でクラウドを利用していない企業の理由を見てみましょう。「クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい」が28.7%で、2番目に多い理由でした。
1位は「必要がない」で46.5%です。「必要がない」という回答を別にすると、具体的な障壁として最も多く挙がったのが改修コストだと分かります。
コストは、導入を後押しする力としては弱く、踏みとどまらせる力としては強いという非対称な形で現れています。 この差は、同じ「コスト」でも指しているものが違うために生じます。
改修コスト28.7%はセキュリティ不安の26.6%を上回っている
クラウドを使わない理由として、まずセキュリティを思い浮かべる方は多いはずです。ところが2025年調査では、改修コストの28.7%が「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」の26.6%を上回りました。

| クラウドサービスを利用しない理由(2025年調査・複数回答、上位4項目) | 割合 |
|---|---|
| 必要がない | 46.5% |
| クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい | 28.7% |
| 情報漏えいなどセキュリティに不安がある | 26.6% |
| ネットワークの安定性に対する不安がある | 13.1% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6より作成。クラウドサービスを利用していない150社が回答した複数回答の設問です。この設問には上記のほかに「通信費用がかさむ」「メリットが分からない」「ニーズに応じたアプリケーションのカスタマイズができない」などの選択肢もあります。
なお、コストに関わる選択肢は「改修コスト」だけではありません。「通信費用がかさむ」という項目も別に用意されています。 移行時の費用と、使い続けるあいだの費用が、別々の選択肢として並んでいる点は押さえておきましょう。
ただし、この順位は固定的なものではありません。回答したのは150社で、1社の回答が割合を大きく動かします。改修コストとセキュリティ不安の2.1ポイント差(本記事による計算値)は、年によって順位が入れ替わりうる範囲です。
改修コストを挙げる企業の割合は4年間で31.2%から28.7%にしか下がっていない
この障壁は、時間が経てば自然に下がるものではありません。改修コストを非利用理由に挙げた企業は、2022年調査で31.2%、2025年調査で28.7%でした。4年間で2.5ポイントの低下にとどまります(本記事による計算値)。

| 調査年 | 「改修コストが大きい」を挙げた企業の割合 |
|---|---|
| 2022年 | 31.2% |
| 2023年 | 24.2% |
| 2024年 | 29.6% |
| 2025年 | 28.7% |
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6(時系列)/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6より作成。2022〜2024年は令和6年報告書、2025年は令和7年報告書からの取得で、いずれも同じ図表3-6の時系列に掲載された値です。
この間、クラウドの利用率は2024年調査の80.6%から2025年調査の83.5%へ上がり、回答する非利用企業自体は減っています。それでも割合が下がりきらない点が特徴です。
ここから読み取れるのは、オンプレミスで動く既存システムの改修費用が、年数の経過だけでは解消されないという構造です。改修コストという障壁の水準は下がらないまま、対象となる非利用企業の数だけが減っている状態だと読めます。 ただし2023年は24.2%まで下がっており、横ばいというより振れながら緩やかに低下していると見るのが妥当です。
利用理由と非利用理由は別の設問で、回答した企業の数が10倍以上違う
この2つの数値を社内資料に載せるときは、扱い方に注意してください。利用理由と非利用理由は別々の設問で、回答している企業もまったく違います。
利用理由に回答したのはクラウド利用企業2,131社、非利用理由に回答したのは非利用企業150社です。母数の規模が10倍以上違うため、両者を同じ基準で単純に比較することはできません。どちらも複数回答の設問なので、1社が複数の理由を選んでいる点も押さえておきましょう。
注意
選択肢の文言も、指している費用が異なります。「既存システムよりもコストが安いから」は運用が始まった後の比較、「導入に伴う既存システムの改修コストが大きい」は移行時にかかる初期費用です。19.4%と28.7%は、同じ費用について賛否が分かれた数値ではありません。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2
クラウドの使い方は5年で深まったが、コストを動機に挙げる企業は2割前後で動いていない

「クラウドが広まったのは安いからだ」という説明は、時系列で見るとさらに疑わしくなります。全社的にクラウドを使う企業は2021年調査の42.7%から2025年調査の60.0%へ増えました。
一方、コストの安さを利用理由に挙げた企業は2024年調査の19.1%から2025年調査の19.4%と、ほとんど動いていません。
使い方は年々深まっているのに、動機としてのコストは2割前後で止まったままです。 普及の勢いと価格の評価は、別々に動いていると考えられます。
全社的にクラウドを利用する企業は2021年42.7%から2025年60.0%へ増えた
まず、使い方の変化を確認します。全社的にクラウドを利用している企業の割合は、5年間で42.7%から60.0%へ17.3ポイント上がりました(本記事による計算値)。

| 調査年 | クラウドサービスを全社的に利用している企業の割合 |
|---|---|
| 2021年 | 42.7% |
| 2022年 | 44.9% |
| 2023年 | 50.6% |
| 2024年 | 53.1% |
| 2025年 | 60.0% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1より作成。同一資料の推移表から取得した、無回答を除く基準の値です。
直近1年でも53.1%から60.0%へ6.9ポイント伸びています(本記事による計算値)。一部門での試験導入から全社利用へ切り替える企業が、着実に増えている状況です。
効果があったと答えた企業は5年間87〜89%台で安定している
導入した企業の評価も高い水準で安定しています。2025年調査で「非常に効果があった」「ある程度効果があった」と回答した企業の合計は89.4%でした。
| 調査年 | 効果があったと回答した企業の割合 |
|---|---|
| 2021年 | 88.2% |
| 2022年 | 89.0% |
| 2023年 | 88.4% |
| 2024年 | 87.3% |
| 2025年 | 89.4% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-5/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-5ほか各年調査より作成。2024年の値のみ無回答を含む基準(令和6年報告書)で、他の年は無回答を除く基準です。2024年がやや低く見えるのは集計基準の差によるもので、評価が下がったことを示すものではありません。
ここで一点だけ先にお伝えします。この設問が尋ねているのは効果の有無であり、削減できた金額に換算されたものではありません。
「効果があった」と答えた企業が9割近くいることは、費用が下がったことの証明にはなりません。 社内で数値を示す前に、この点は押さえておいてください。
一方でコストを理由に挙げる企業は19.1%から19.4%と0.3ポイントしか動いていない
普及と評価が伸びる一方で、コストを動機に挙げる企業は増えていません。2024年調査の19.1%に対し、2025年調査は19.4%で、差は0.3ポイントです(本記事による計算値)。
同じ調査の概要資料では、前年から最も伸びた利用理由として「システムの拡張性が高いから(スケーラビリティ)」が挙げられています。この項目を選んだ企業は2024年調査の22.1%から2025年調査の28.9%へ、6.8ポイント増えました(本記事による計算値)。
ここから読み取れるのは、利用が広がり定着するほど「安いから使っている」と答える企業が増える、という関係が数字の上では見えないことです。企業が評価しているのは価格以外の要素だと考えられます。
ポイント
- 全社的な利用は5年で42.7%から60.0%へ伸びました
- 効果があったとする企業は2025年調査で89.4%と高水準です
- コストを理由に挙げる企業は19.1%から19.4%とほぼ横ばいです
- 同一基準のデータは2年分しかなく、0.3ポイントの差は標本誤差の範囲を出ません
なお、動機としてコストを挙げる企業が増えていないことは、実際の費用が下がっていないことを意味しません。あくまで「何を理由に選んだか」の分布の話として扱ってください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/同 別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
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資本金規模によるクラウド利用率の差は25.0ポイントある(2025年調査)

ここまでの数値は全企業の平均です。自社の判断材料にする前に、規模による差を見ておきましょう。2025年調査では、資本金1,000万〜3,000万円未満の企業の利用率が74.8%、50億円以上の企業が99.8%でした。
その差は25.0ポイント(本記事による計算値)です。全体値の83.5%は、利用率が99.8%に達する大規模企業に引き上げられた数字だと分かります。
中小企業の情シスにとって、平均83.5%はそのまま自社の基準にはなりません。 規模別・業種別の数値を見て、自社に近い区分を基準にしてください。
資本金3,000万円未満の2区分は74〜75%台で全体の83.5%を下回る
資本金規模別に並べると、傾向がはっきりします。資本金3,000万円未満の2区分は74〜75%台にとどまり、全体値の83.5%を下回りました。

| 資本金規模(2025年調査) | クラウドサービスの利用率 |
|---|---|
| 1,000万円未満 | 75.4% |
| 1,000万〜3,000万円未満 | 74.8% |
| 3,000万〜5,000万円未満 | 84.1% |
| 5,000万〜1億円未満 | 83.1% |
| 1億〜5億円未満 | 92.3% |
| 5億〜10億円未満 | 92.5% |
| 10億〜50億円未満 | 97.5% |
| 50億円以上 | 99.8% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-2より作成。全体値83.5%(別紙1)と規模別の値は、いずれも無回答を除く同じ基準で集計されています。
資本金の規模が上がるほど利用率もおおむね上がりますが、並びは単調ではありません。 1,000万円未満(75.4%)が1,000万〜3,000万円未満(74.8%)を上回り、3,000万〜5,000万円未満(84.1%)が5,000万〜1億円未満(83.1%)を上回る逆転が2か所あります。
全体値83.5%を下回るのは、1,000万円未満・1,000万〜3,000万円未満・5,000万〜1億円未満の3区分です。 資本金5億円以上の区分では、いずれも9割を超えています。
業種別では金融・保険業96.2%と運輸業・郵便業78.3%で17.9ポイントの差がある
業種によっても差があります。2025年調査で最も高いのは金融・保険業の96.2%、最も低いのは運輸業・郵便業の78.3%でした。
| 産業分類(2025年調査) | クラウドサービスの利用率 |
|---|---|
| 金融・保険業 | 96.2% |
| 情報通信業 | 94.8% |
| 不動産業 | 90.9% |
| 建設業 | 89.2% |
| 製造業 | 85.6% |
| 卸売・小売業 | 83.6% |
| サービス業、その他 | 79.3% |
| 運輸業・郵便業 | 78.3% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-2より作成。無回答を除く基準の値です。「サービス業、その他」は、農林水産業・鉱業・電気ガス水道業・宿泊飲食業・医療福祉・教育などをまとめた区分で、単一の業種ではありません(令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)調査の概要)。
上下の差は17.9ポイントあります(本記事による計算値)。ただし、業種の性格だけで並びを説明することはできません。現場作業が中心の建設業は89.2%と高く、ITとの距離だけでは説明がつかないためです。
製造業85.6%や卸売・小売業83.6%は、全体値に近い水準にあります。自社の遅れを測るなら、全体平均ではなく自社の業種の数値と比べたほうが実態に近づきます。
規模別・業種別の利用理由は概要資料には無く、e-Statの統計表で公表されている
ここで、データの探し方をお伝えしておきます。「中小企業ほどコストを理由に導入している、あるいは見送っているのか」という問いは、この記事が使っている概要資料や報告書本文では答えられません。 これらに載っているのは全体の値だけだからです。
一方で、産業別・資本金額別・従業者数別に利用理由と非利用理由を集計した統計表は、e-Statで公表されています(企業編13表・15表)。自社の規模に近い区分まで踏み込みたい場合は、こちらを直接確認してください。
この記事では概要資料と報告書に掲載された全体値だけを扱っているため、規模による利用率の差をコストに帰属させる根拠は、本記事の数値からは示せません。
注意
資本金1,000万円未満の75.4%は、1,000万〜3,000万円未満の74.8%をわずかに上回っています。ただし0.6ポイントの差(本記事による計算値)は標本誤差の範囲で、この逆転を主張の根拠にはできません。資本金1,000万円未満は回答が100社と少なく、報告書が示す標本誤差率も全体より大きい区分です。またこの調査は常用雇用者100人以上の企業が対象のため、資本金が小さい区分も「資本金は小さいが従業員数は多い企業」に限られます。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-2/同 別紙1/e-Stat「通信利用動向調査 企業編 クラウドサービスを利用している理由(産業別、資本金額別ほか)」
公的統計は「コストを理由に挙げた企業の割合」までで、金額そのものは扱っていない

最後に、この記事で扱ってきた数値の性質を整理します。ここまでの数値はすべて「そう回答した企業の割合」であり、月額費用や削減率といった金額の指標ではありません。
利用理由のコスト19.4%も、非利用理由の改修コスト28.7%も、何円かかったかを尋ねた結果ではないのです。
だからこの記事は「クラウドは安い」とも「高い」とも断定しません。 測られていないものを測られていないと書いたうえで、判断に使える材料だけをお渡しします。
通信利用動向調査に月額費用や削減率の指標は含まれていない
効果を尋ねた設問も同じ性質です。2025年調査で効果があったと回答した企業は89.4%に達しますが、これは効果の有無を尋ねたもので、金額には換算されていません。
公的統計から言えるのは、次の2点までです。安さを理由にクラウドを選ぶ企業はおよそ5社に1社、改修費用を理由に見送る企業は非利用企業の約3割、という分布の話にとどまります。
なお、これは通信利用動向調査の当該設問群での話です。金額ベースの調査が公的機関に一切存在しない、という意味ではありません。他機関の調査に踏み込む場合は、調査主体と母集団が変わる点にご注意ください。
使えるのは金額ではなく、他社が何を論点にしているかという情報
金額の根拠にはなりませんが、論点の分布は社内説明の材料になります。他社が何を見てクラウドを選び、何を理由に止まっているかは、自社の検討項目をそろえるうえで役に立ちます。
- 他社は価格より運用のしやすさを評価しています(場所を選ばない50.7%、資産と保守体制を社内に持たなくてよい42.8%)
- 選ぶ理由としてのコストは、概要資料に並ぶ8項目の中で最下位です(2025年調査で19.4%)
- 見送る理由としては移行時の改修費用が上位です(2025年調査で28.7%、2024年調査で29.6%)
比べるべきは月額料金ではなく、移行にかかる改修費用を含めた総額です。 稟議の資料では、サービスの料金表より先に既存システムの改修範囲と費用を見積もってください。
そのうえで、価格以外の効果も評価対象に入れましょう。クラウドのメリットとして他社が挙げている項目は、自社の評価軸をそろえる出発点になります。
数値を引用するときは調査年・集計基準・母集団をセットで書く
社内資料に転用するときは、数値だけを抜き出さないでください。同じ調査年でも、掲載資料によって値がわずかに違うことがあります。
たとえば2024年調査のクラウド利用率は、令和7年調査の公表資料では80.6%、令和6年報告書では80.4%です。無回答を集計から除くかどうかで、小数点以下がずれます。
ポイント
- 調査年を必ず書く(例: 2025年調査で83.5%。調査時点は2025年8月末)
- 出典文書と集計基準を添える(報告書か概要か、無回答を含むか除くか)
- 母集団を書く(常用雇用者100人以上の企業、利用理由はクラウド利用企業のみ)
- 経年比較は同一資料・同一基準の値どうしでそろえる(例: 19.1%と19.4%)
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-2
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まとめ: クラウドが安いかどうかは、自社の既存システムの状況で変わる
この記事で確認した内容を、実務で使う順に整理します。
- 2025年調査でコストの安さを利用理由に挙げた企業は19.4%で、概要資料に並ぶ8項目中の最下位でした
- クラウドを利用していない企業では、改修コストが28.7%で2番目に多い理由でした
- 全体の利用率83.5%は大規模企業に引き上げられた値で、資本金1,000万〜3,000万円未満では74.8%です
- 公的統計は「そう回答した企業の割合」までで、金額の根拠には使えません
「クラウドは安い」とも「高い」とも、公的データからは断定できません。答えを左右するのは、自社が抱えている既存システムの状況です。
明日からできることは2つあります。既存システムの改修費用を先に見積もること、そして比較対象の数値を自社の資本金規模や業種に近い区分に置き換えることです。この2つを押さえるだけで、社内での説明はぐらつきにくくなります。
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クラウドのコストを社内で説明するには、統計の読み方から既存システムの構成まで、幅広い知識が必要になります。近くに相談できる先輩がいない環境だと、その土台をつくる機会がなかなか持てません。
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※出典

