【IPA・経産省データ】システム刷新が失敗する理由|課題1位は「リーダー不在」33.5%(2022年度)

基幹システムやレガシーシステムの刷新に関わっていると、こんな悩みを抱えることはありませんか。
- 刷新プロジェクトが予定どおりに進まず、遅れや手戻りが続いている
- 自社のつまずき方が、他社でもよくあるものなのか知りたい
- 経営層に説明するとき、出典のある根拠がほしい
先に結論をお伝えします。システム刷新のつまずきは「現状把握」「担い手」「やり切る段階」「成否の判定」の4段階に整理でき、それぞれ着手前の準備で備えられます。
この記事では、IPAと経済産業省の公的調査をもとに、つまずきやすい段階と着手前に決めておくことを解説します。
この記事のポイント
- レガシーシステムを保有しているユーザー企業は、2024年度時点で61.0%です(出典: 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」)
- 2022年度調査で、刷新の課題として日本企業が最も多く挙げたのは「刷新に長けたプロジェクトリーダーがいない」で33.5%です(出典: IPA「DX白書2023」)
- 2025年度調査で、DXの成果指標を設定していない企業のうち、理由に「設定方法がわからない」を挙げた企業は36.0%です(出典: IPA「DX動向2026」)
システム刷新の「失敗率」を直接示す公的統計は見当たらない

最初にお伝えしたいのは、「システム刷新の何割が失敗しているか」を示す公的統計は、確認した範囲では見当たらないという点です。
IPAや経済産業省の調査で分かるのは、刷新を阻む「課題」と、レガシーシステムの「残存状況」です。たとえば2022年度調査では、刷新の課題にプロジェクトリーダーの不在を挙げた日本企業が33.5%でした。
2024年度時点では、レガシーシステムを保有する企業が61.0%です。一方で、刷新が予定どおりの期間・予算で終わった割合のような、結果を測る指標は見つかりませんでした。
このことから、公的調査は刷新に着手する前の課題は測っていても、完了後の結果は測っていない、というのが筆者の見方です。なお、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)など民間団体の調査は、今回は内容を確認できていません。
注意
この記事に出てくる「課題として挙げた企業の割合」は、刷新の失敗率ではありません。「システム刷新の◯割が失敗」という数字を見かけたら、その出典が公的統計かどうかを確かめてみてください。
出典: IPA「DX白書2023」/経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」
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レガシーシステムは2024年度時点で61.0%の企業に残っている

まずは刷新の対象になる古いシステムが、どれくらい残っているかを確認します。経済産業省の委員会が公表した総括レポートによると、2024年度時点でレガシーシステムを保有しているユーザー企業は61.0%です。
約6割(61.0%)という数字だけを見ると、多くの企業が深刻な状態にあるように感じますよね。ここからは、企業規模による差と、残り方の深刻度に分けて見ていきます。レガシーシステムそのものの定義やリスクについては、別の記事で詳しく解説しています。
大企業のレガシーシステム保有率は74.0%で、全体より13.0ポイント高い
大企業に限ると、レガシーシステムを保有している割合は全体よりはっきり高くなります。
同じ経済産業省の総括レポートでは、2024年度時点の保有率は全体で61.0%、大企業では74.0%でした。大企業のほうが13.0ポイント高い計算です。なお、このレポートでの「大企業」の具体的な区分は、今回参照したデータからは確認できていません。
この差から読み取れるのは、システムの規模が大きく、構成が複雑な企業ほど古いシステムが残りやすいという傾向です。長年の改修で他システムとのつながりが増えるほど、一部だけを置き換えることが難しくなります。
大企業の情シスにとっては、保有していること自体は珍しくありません。大切なのは、どの範囲にどれだけ残っているかを把握することです。
「半分以上がレガシー」の企業は2024年度で28.5%で、約6割の多くは一部の残存
回答企業全体のうち、システムの半分以上が古いままの企業は28.5%と、3割弱にとどまります。
IPAの2024年度調査で、日本企業にレガシーシステムの残存状況を尋ねた結果は次のとおりです。
| 残存状況(日本・2024年度) | 割合 |
|---|---|
| 既にレガシーシステムはない | 20.0% |
| 一部領域にレガシーシステムが残っている | 34.2% |
| 半分程度がレガシーシステムである | 13.0% |
| ほとんどがレガシーシステムである | 15.5% |
| わからない | 16.8% |
出典: IPA「DX動向2025」データ集より作成(日本企業の回答。「その他」は除く)
「半分程度」と「ほとんど」を合わせた「半分以上」の割合は、次のように推移しています。
| 調査年度 | 半分以上がレガシー(日本) |
|---|---|
| 2022年度 | 41.2% |
| 2023年度 | 28.8% |
| 2024年度 | 28.5% |
出典: IPA「DX白書2023」(2022年度)/IPA「DX動向2025」データ集(2023・2024年度)より作成。「半分程度」と「ほとんど」の合計は本記事で算出したものです。

この推移から読み取れるのは、「半分以上」の割合が2023年度以降はほぼ横ばいになっている点です。
また、何らかの形で残っていると答えた企業は合計62.7%で、経済産業省の61.0%とほぼ同じ水準です。よく引用される「約6割」には一部だけ残る企業も含まれており、深刻度を表す数字ではないと読むのが妥当です。
注意
2022年度の値はIPA「DX白書2023」、2023年度以降の値はIPA「DX動向」の調査によるもので、標本の設計が異なります。2022年度から2023年度にかけての下がり幅は、調査設計の違いも含んだ値として見てください。
出典: 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」/IPA「DX白書2023」/IPA「DX動向2025」データ集
刷新の課題として日本企業が最も多く挙げたのはプロジェクトリーダーの不在で33.5%

刷新の課題として日本企業が最も多く挙げたのは、「刷新・移行に長けたプロジェクトリーダーがいない」で33.5%でした。
IPA「DX白書2023」の2022年度調査で、刷新・移行の課題を尋ねた結果(複数回答)を多い順に並べます。
| 刷新・移行の課題(日本・2022年度) | 割合 |
|---|---|
| 刷新・移行に長けたプロジェクトリーダーがいない | 33.5% |
| 利用者の既存業務フローや操作性へのこだわりが解消できない | 32.2% |
| ブラックボックス化で解析が難しい | 31.8% |
| 経営者に困難さが理解されず、予算や納期を確保できない | 25.7% |
| システムが肥大化し、移行の影響度を想定できない | 24.2% |
| DXなど他の案件に手一杯で、移行に要員を割けない | 20.1% |
| 古い技術を理解した技術者を確保できない | 19.5% |
| 経営者に刷新・移行の必要性が理解されない | 18.8% |
出典: IPA「DX白書2023」より作成(日本企業の回答、複数回答。「その他」は除く)

経営層に必要性が理解されないという回答は、8項目の中で最も少ない結果でした。上位には、推進役の不在、利用部門とのすれ違い、システムの中身が見えないことが並びます。このあとの章では、これらを4段階に分けて見ていきます。
日米の差が最も大きいのはリーダー不在で、予算・納期の確保は米国のほうが高い
日米を比べると、日本ではリーダー不在が目立ち、米国では予算・納期の確保が目立ちます。
同じ2022年度調査では、米国企業にも同じ設問で尋ねています。差が目立つ3項目を並べると次のとおりです。
| 課題(2022年度) | 日本 | 米国 |
|---|---|---|
| 刷新・移行に長けたプロジェクトリーダーがいない | 33.5% | 14.0% |
| 経営者に困難さが理解されず、予算や納期を確保できない | 25.7% | 36.8% |
| 経営者に必要性が理解されない | 18.8% | 22.5% |
出典: IPA「DX白書2023」より作成(複数回答。日米の差が目立つ3項目を抜粋)
この比較から読み取れるのは、日本では経営判断よりも推進体制の課題が目立つという点です。経営層の理解不足だけを原因とみなすと、日本企業のつまずきを見誤るおそれがあります。
ただし、この設問では日本企業のほうが1社あたりの選択数が多く、日本の高い項目の一部は回答の傾向で説明できる可能性もあります。
既存業務へのこだわりが解消できない企業は32.2%で、課題の2番目に多い
利用部門の既存業務へのこだわりは、日米どちらでも上位に入る共通の課題です。
2022年度調査で、「利用者の既存業務フローやシステムの操作性へのこだわりが解消できない」を挙げた企業は、日本で32.2%、米国で29.0%でした。日本では8項目中2番目に多い課題です。
新しいシステムに合わせて業務を変えるより、今の画面や手順をそのまま再現してほしいという要望が出ることは多いですよね。その要望をすべて受け入れると、刷新の範囲も費用も膨らんでしまいます。
利用部門とのすれ違いは国を問わず起きやすい課題です。対策は、後半の「刷新を率いる担当者を社内で決め、利用部門と業務フローの見直しから進める」で取り上げます。
ポイント
日本企業の刷新の課題は、上位3つ(リーダー不在・既存業務へのこだわり・ブラックボックス化)がいずれも3割台で並んでいます(2022年度、33.5%・32.2%・31.8%)。経営層の理解だけでなく、推進体制・利用部門・システムの中身の3方向に目を配る必要があります。
出典: IPA「DX白書2023」(複数回答)
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つまずき1 現状把握の段階でシステムの中身が見えていない

1つ目のつまずきは、刷新の計画を立てる前の現状把握です。日本企業は、システムの中身も残存状況も、米国企業より見えていない傾向があります。
刷新の範囲や工数、移行の影響度は、現状把握を前提に見積もります。ここが不確かなまま計画を立てると、後工程で見積もりが崩れやすくなるのではないか、というのが筆者の考えです。ただし、これは一次統計で因果を確かめられない仮説です。
ブラックボックス化で解析が難しいと答えた企業は日本31.8%で、米国より9.5ポイント高い
「中身が読めない」という課題は日本で特に多く、「大きすぎる」という課題は日米で差がありません。
2022年度調査で、「ブラックボックス化によりレガシーシステムの解析が難しい」を挙げた企業は、日本31.8%、米国22.3%でした。日本のほうが9.5ポイント高い結果です。
一方、「システムが肥大化し、移行の影響度を想定できない」は、日本24.2%、米国25.1%でほぼ同じでした。システムが大きいこと自体は日米共通の悩みだと分かります。
この2つを並べて読み取れるのは、日本では長年の改修で設計書と実態がずれ、担当者しか分からない状態になっている企業が多いのではないか、という点です。システムの規模より、中身が見えていないことのほうが日本特有の課題になっています。
ポイント
- ブラックボックス化は日本31.8%・米国22.3%で、日本が高い(2022年度)
- 肥大化で影響度を想定できないは日本24.2%・米国25.1%で、ほぼ同じ(2022年度)
- 見積もりの前に、まずシステムの中身を見える状態にすることが出発点になる
自社のレガシーの残存状況を「わからない」企業は2024年度で16.8%、DXに取組んでいない企業では40.8%
自社にレガシーシステムがどれだけ残っているかを「わからない」と答える企業は、日本で米国より多い状態が続いています。
IPAの調査で、レガシーシステムの残存状況を「わからない」と答えた企業の割合は次のとおりです。
| 調査年度 | 日本 | 米国 | 日米の差 |
|---|---|---|---|
| 2022年度 | 18.5% | 12.4% | 6.1ポイント |
| 2024年度 | 16.8% | 9.2% | 7.6ポイント |
出典: IPA「DX白書2023」(2022年度)/IPA「DX動向2025」データ集(2024年度)より作成。「日米の差」は本記事で算出したものです。
2022年度の日本企業をDXへの取組状況で分けると、「わからない」の割合には大きな差がありました。
| DXへの取組(日本・2022年度) | 「わからない」と答えた割合 |
|---|---|
| 取組んでいる企業 | 8.2% |
| 取組んでいない企業 | 40.8% |
出典: IPA「DX白書2023」より作成(日本企業の回答)
この結果から読み取れるのは、日米の差が2年たっても縮んでいないことと、DXに取組んでいない企業ほど現状を把握できていないことです。
ただし、2022年度と2024年度では標本の設計が異なります。また、日本の回答者には経営層も含まれ、システムの詳細を知らない立場の回答が「わからない」を押し上げている可能性もあります。
出典: IPA「DX白書2023」/IPA「DX動向2025」データ集
つまずき2 刷新の担い手として足りないのは移行を率いる人材

2つ目のつまずきは、刷新を進める担い手です。データを見る限り、足りないのは古い技術を扱える技術者の頭数よりも、移行を率いる推進役です。
2022年度調査で、リーダー不在を挙げた日本企業は33.5%、古い技術者を確保できないは19.5%でした。よく言われる「ベンダーへの丸投げ」も、社内に推進役がいないことの裏返しと考えられます。
古い技術を扱える技術者の確保は19.5%で、リーダー不在の33.5%を14.0ポイント下回る
刷新の課題として、古い技術者の確保は8項目中7番目にとどまり、リーダー不在とは大きな差があります。
2022年度調査で、「古い技術を理解した技術者を確保できない」を挙げた日本企業は19.5%でした。リーダー不在の33.5%を14.0ポイント下回ります。「他の案件に手一杯で移行に要員を割けない」も20.1%で、技術者の確保と同じくらいの水準でした。
経済産業省が2019年に公表した推計も見てみます。IT需要の伸びを中位とし、生産性上昇率を年0.7%と仮定したシナリオでは、2030年に従来型IT人材が9.7万人の供給過多、先端IT人材が54.5万人の不足とされています。
2つの資料を並べて読み取れるのは、刷新で足りないのは既存システムを保守する人の数より、移行計画を組み立てて関係者を動かす人だという見方です。「COBOLを読める人を集めれば刷新は進む」という対策だけでは、課題の上位と合わない可能性があります。
ただし、2つの資料は調査主体・年・対象がすべて違い、同じ現象を測ったものではありません。特定の古い言語やメインフレームに詳しい技術者が足りていない企業があることも否定できません。
ポイント
- 刷新の課題1位はリーダー不在33.5%、古い技術者の確保は19.5%(2022年度)
- 技術者の確保だけを対策にすると、上位の課題が残ったままになるおそれがある
- ベンダーに任せる範囲を広げる前に、社内の推進役を決めることが先になる
DX推進人材の「質」が不足していると答えた企業は2025年度で88.8%に上る
DXを推進する人材は、「量」よりも「質」の不足を感じている企業が多く、その割合は増えています。
IPAの調査で、DXに取組んでいる企業が人材の不足をどう感じているかをまとめると次のとおりです。
| 指標 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|
| 「質」が不足(やや+大幅) | ― | 86.1% | 88.8% |
| 「量」が不足(やや+大幅) | ― | ― | 85.5% |
| うち「量」が大幅に不足 | 62.1% | 58.5% | 50.1% |
| DX推進に必要なスキルを把握できていない | ― | ― | 52.8% |
出典: IPA「DX動向2026」より作成(DXに取組んでいる企業が対象。「―」は本記事で値を掲載していない年度で、元の資料に値が無いという意味ではありません)
「量」が大幅に不足という回答は下がっていますが、「やや不足」を合わせると2025年度でも85.5%です。不足が解消したというより、答え方が「大幅」から「やや」に移っているだけかもしれません。
なお、IPAの報告書自身は、この変化を「やや解消傾向」「一服感がみられる」と評価しています。本記事の読み方とは評価が分かれる点として受け止めてください。
この表から読み取れるのは、刷新の推進役が足りないことと、人材の質の不足や必要なスキルを言葉にできていないことが、同じ方向を示している点です。
出典: IPA「DX白書2023」/IPA「DX動向2026」(人材の項目はDXに取組んでいる企業が対象)/経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書(2019年公表)
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つまずき3 大企業は着手後に、中小企業は着手前に止まっている

3つ目のつまずきは、刷新をやり切る段階です。IPAの2025年度調査では、何らかの形でDXに取組んでいる企業は回答企業全体の75.7%でした。
ただし、取組の広がり方は企業規模によって大きく違います。 データを並べると、大企業は着手したあとに、中小企業は着手する前に止まっている可能性が見えてきます。

出典: IPA「DX動向2026」より作成
従業員1,001人以上の98.7%がDXに取組む一方、大企業の74.0%にレガシーが残る
大企業では、DXに取組むかどうかの段階はほぼ終わっていますが、古いシステムはまだ多く残っています。
IPAの2025年度調査では、従業員1,001人以上の企業の98.7%がDXに取組んでいます。一方、経済産業省の総括レポートでは、2024年度時点で大企業の74.0%がレガシーシステムを保有していました。
さらに2025年度には、DXに取組む従業員301人以上の企業のうち、DX推進人材の「量」が不足と答えた企業が9割超、「質」が不足と答えた企業も9割超でした。2022年度調査では、DXなど他の案件に手一杯で移行に要員を割けない企業も20.1%ありました。
これらから読み取れるのは、大企業のつまずきは「着手が遅い」ことより、完了まで進める人手と体制が足りないことにあるという点です。DXの案件と刷新の案件が、同じ人材を取り合っている姿が浮かびます。
ただし、98.7%と74.0%は調査主体・年度・規模の区分がすべて違い、同じ企業群の数値ではありません。傾向を見るための目安として読んでください。
従業員100人以下ではDXに取組む企業が41.6%で、刷新の前段階にとどまる企業が多い
中小企業では、刷新をやり切る前に、そもそも着手していない企業が多い状況です。
IPAの2025年度調査で、DXに取組んでいる企業は従業員100人以下で41.6%でした。DXに取組む100人以下の企業で推進人材が不足と答えた企業は、「量」で6割超、「質」で7割超と、301人以上の企業より低い水準です。
不足の実感が低いのは、人が足りているからとは限りません。着手している企業が少ないため、不足を感じる場面自体が少ない可能性がある、というのが筆者の見方です。
前の章で見たとおり、2022年度調査では、DXに取組んでいない企業の40.8%が自社のレガシーの状況を「わからない」と答えていました。中小企業では、刷新の計画より先に、まず現状把握から始める必要があります。
注意
IPAの「1,001人以上」「301人以上」と、経済産業省レポートの「大企業」は別の区分です。また「DXに取組んでいる」には一部門だけの取組も含まれ、基幹システムの刷新に着手していることを意味するわけではありません。
出典: IPA「DX動向2026」/経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」/IPA「DX白書2023」
つまずき4 成否を判定する基準が無く、失敗として振り返られない

4つ目のつまずきは、刷新が成功したか失敗したかを判定する段階です。成否を判定する基準を事前に決めていないと、遅れや効果不足があっても「失敗」と判定されず、振り返りにもつながりません。
2025年度調査では、DXの成果指標を設定していない企業のうち36.0%が「設定方法がわからない」と答えています。多くの企業が、刷新の成否を判定する基準を持てていない可能性があります。
注意
この章の数値は、いずれもDX全般の成果指標や投資対効果を尋ねた設問によるものです。システム刷新のプロジェクトに限った値ではない点に注意してください。
DXの成果指標の設定方法がわからない企業は2025年度で36.0%、1年で7.3ポイント増えた
成果指標の設定方法がわからないという企業は、1年で増えています。
IPAの調査では、DXの成果指標を設定していない企業にその理由を尋ねています。「評価指標の設定方法がわからない」は2024年度28.7%、2025年度36.0%でした。1年で7.3ポイント増えた計算です。

出典: IPA「DX動向2026」より作成(DXの成果指標を設定していない企業が対象)
この推移から読み取れるのは、取組が広がる一方で、成果をどう測ればよいか分からない企業が増えているという点です。システム刷新は投資額が大きく期間も長いため、基準が無いことの影響は大きくなります。
ただし、この上昇は、指標を設定していない企業の顔ぶれや数が年によって変わった結果とも考えられます。同じ企業が分からなくなったとは限りません。
投資対効果が上回ると答えた企業は2025年度で14.6%にとどまる
DXの投資対効果が投資額を上回ると答えた企業は、2025年度で14.6%にとどまっています。
IPAの2025年度調査で、DXに取組んでいる企業のうち、投資対効果が「大幅に上回る」「上回る」と答えた企業は14.6%でした。
ただし、残りの企業がすべて「効果が低い」と答えたわけではありません。この中には「まだ判断できない」と答えた企業も含まれうるため、投資対効果が低いと結論づけることはできません。
この数値から読み取れるのは、効果を「上回る」と言い切れる企業が少ないこと自体が、成否を判定する基準の不足とつながっている可能性です。刷新でも、どうなれば成功かを先に決めておかないと、効果を説明できない状態が続きます。
出典: IPA「DX動向2026」(成果指標の理由は「設定していない」企業、投資対効果はDXに取組んでいる企業が対象)
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システム刷新を計画どおり進めるには、4つのつまずきごとに着手前の準備を決めておく

ここまで見てきた4つのつまずきは、どれも着手前の準備で備えられます。刷新を計画どおり進めるには、つまずきの段階ごとに「着手前に何を決めておくか」をはっきりさせることが大切です。
課題の1位がリーダー不在の33.5%(2022年度)だったように、つまずきの多くは技術よりも計画と体制の問題です。次のチェックリストで、自社の準備状況を確かめてみてください。
着手前のチェックリスト
- 現状把握: システム一覧・依存関係・利用状況を洗い出したか
- 担い手: 刷新を率いる社内の担当者を決め、役割を言葉にしたか
- やり切る体制: 予算・納期の前提を経営層と合意し、要員の取り合いを避ける計画にしたか
- 成否の判定: 成功基準を数値で決め、完了後に振り返る場を予定したか
着手前に資産の棚卸しを行い、残存状況を「わからない」状態から抜け出す
刷新の最初の一歩は、要件定義より前に、今あるシステムの棚卸しを行うことです。
2024年度時点で、自社のレガシーの残存状況を「わからない」と答えた日本企業は16.8%でした。2022年度調査では、ブラックボックス化で解析が難しいことを刷新の課題に挙げた企業が31.8%ありました。
中身が見えないまま見積もると、移行の途中で想定外のつながりが見つかり、計画が崩れるおそれがあります。具体的には、システムの一覧、システム同士の依存関係、実際の利用状況(誰がどの機能を使っているか)を洗い出します。
日ごろからIT資産の構成管理を整えておくと、この棚卸しの手間を大きく減らせます。まずは「わからない」と答えずに済む状態を目指してみてください。
刷新を率いる担当者を社内で決め、利用部門と業務フローの見直しから進める
刷新の推進役は社内で決め、利用部門と一緒に業務フローを見直すところから始めます。
2022年度調査では、リーダー不在を挙げた企業が33.5%、既存業務へのこだわりが解消できない企業が32.2%でした。推進役がいないままベンダーに任せると、利用部門の要望をそのまま受け入れ、範囲が膨らみやすくなります。
2025年度には、DXに取組んでいる企業の52.8%が、必要なスキルを把握できていないと答えています。そこで、リーダーに求める役割(業務部門との調整、ベンダーの管理、移行判断など)を先に言葉にしておくことが大切です。
外部の力を借りる場合でも、判断の軸は社内に残す必要があります。IT内製化の考え方も参考にしながら、社内で担う範囲を決めてみてください。
経営層と予算・納期の前提を合意し、ほかの案件と要員を取り合わない計画にする
刷新の難しさを経営層と共有し、一度に全部を置き換えない段階的な計画にします。
2022年度調査で、経営者に困難さが理解されず予算や納期を確保できないと答えた日本企業は25.7%、他の案件に手一杯で要員を割けない企業は20.1%でした。大企業ではレガシーシステムの保有率が2024年度時点で74.0%と高く、置き換える範囲も広くなりがちです。
日本では予算・納期より推進体制の課題が目立ちますが、予算・納期も4社に1社(25.7%)が挙げる課題です。また、DXの案件と刷新が同じ人材を取り合うと、どちらも止まりかねません。
そのため、刷新の範囲を区切り、段階的に移行する計画にしておくと、要員の集中を避けられます。経営層には、各段階で必要な期間と人員を具体的に示して合意を取りましょう。
刷新の成功基準を着手前に数値で決め、完了後に振り返る
刷新の成功基準は、着手前に数値で決めておきます。
2025年度調査では、DXの成果指標を設定していない企業のうち36.0%が、設定方法がわからないと答えていました。DXに取組んでいる企業で、投資対効果が上回ると答えた企業も14.6%にとどまります。
基準が無いと、遅れや効果不足があっても振り返りにつながりません。具体的には、期間と費用の計画値に加えて、処理時間や月次決算の日数といった業務の指標を決めておきます。
指標は社内の効率化だけでなく、利用部門や顧客にとっての効果も含めると、刷新の価値を経営層に説明しやすくなります。完了後には計画値と実績を比べ、次の刷新に生かす振り返りの場を設けてみてください。
出典: IPA「DX白書2023」/IPA「DX動向2025」データ集/IPA「DX動向2026」/経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」
まとめ システム刷新の失敗は4つの段階のつまずきとして事前に備えられる

システム刷新の失敗は、4つの段階のつまずきとして整理でき、着手前の準備で備えられます。 2024年度時点でレガシーシステムを保有する企業は61.0%で、刷新は多くの企業にとって身近な課題です。
この記事で見た4つのつまずきと、それぞれの代表的な数値をまとめます。
- 現状把握: ブラックボックス化で解析が難しいと答えた日本企業は31.8%(2022年度)
- 担い手: 刷新の課題1位はプロジェクトリーダーの不在で33.5%(2022年度)
- やり切る段階: 従業員1,001人以上の98.7%がDXに取組む一方(2025年度)、大企業の74.0%にレガシーが残る(2024年度)
- 成否の判定: 成果指標を設定していない企業のうち、設定方法がわからない企業は36.0%(2025年度)
刷新の「失敗率」を示す公的統計は、確認した範囲では見当たりません。だからこそ、自社で成功基準を持ち、計画と実績を比べられる状態にしておくことが最初の一歩になります。まずは自社がどの段階でつまずきやすいかを、チェックリストで確かめてみてください。
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情シスカレッジのご紹介
刷新で足りないのは、移行を率いる推進役でした。推進役は社内で育てる必要がありますが、運用の合間に研修時間を取るのは難しいですよね。
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導入は5名から可能で、請求書払いに対応しています。初期設定は約10分で完了します。
※出典

