【IPA・経産省データ】IT内製化が注目される背景|2025年度調査でDX推進企業の人材「質」不足は88.8%、進める前の人材面の論点


IT内製化について調べ始めると、こんな疑問が浮かびませんか。

  • 上司から「内製化を検討して」と言われたけれど、人も足りないのにできるの?
  • 内製化するなら、いま頼んでいる外注はやめるべきなの?
  • うちくらいの規模の会社でも、内製化は必要なの?

先に結論をお伝えします。IT内製化が注目される背景には人材不足がありますが、その不足の中身は一様ではありません。 進めるのであれば、人を採るより先に「どんなスキルが必要か」を定義する作業が要ります。

この記事では、IPAと経済産業省などの公的データをもとに、人材不足の中身を分解して説明します。そのうえで、内製化を進める前に整えておきたい人材面の準備をまとめます。

この記事のポイント

  • IPAの2025年度調査では、DXに取り組む企業のうち人材の「量」が不足とした企業は85.5%、「質」が不足とした企業は88.8%(出典: IPA「DX動向2026」)
  • 2030年のIT人材不足は推計に幅があり、不足の中心は先端IT人材で、中位シナリオでは54.5万人の不足と推計されている(出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」2019年公表)
  • DX推進に必要なスキルを把握できていない企業は2025年度調査で52.8%(DXに取り組む企業が対象)。内製化の前にスキルの定義が必要(出典: IPA「DX動向2026」)

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目次

IT内製化は外部に任せていたシステムの企画・開発・運用を社内で担う取り組み

内製化とは

IT内製化とは、一般に、ITベンダーなど外部に任せていたシステムの企画・開発・運用を、自社の社員で担う取り組みを指します。すべてを社内で抱えることではなく、どこまでを社内に持つかを決めることが出発点になります。 この記事では、内製化が話題になる背景である人材不足の中身を、公的データから確認します。

ポイント

  • 内製化の範囲には段階があり、企画や要件定義だけを社内に持つ形もある
  • 公的調査で分かるのは「人材が足りない」ことまでで、内製化の実態そのものは今回のデータでは示せない

内製化と外部委託の違いは、判断とノウハウを社内に残せるかどうか

内製化と外部委託の大きな違いの一つは、システムに関する判断とノウハウを社内に残せるかどうかです。作業を誰がするかよりも、決める権限と知識が社内にあるかが分かれ目になります。

内製化の範囲には段階があります。企画と要件定義だけを社内で持ち、開発は外部に任せる形が考えられます。開発や運用まで社内で担う形も見られます。主な違いは次のとおりです。

比べる観点 内製化 外部委託
判断の主体 自社の担当者が仕様や優先順位を決める 細部はベンダーの提案に頼りやすい
ノウハウの置き場所 社内に蓄積される ベンダー側に蓄積されやすい
変更への対応 社内の判断ですぐ着手しやすい 見積もりや契約の手続きで時間がかかりやすい
人材の確保 自社で採用・育成する必要がある ベンダーの人員を活用できる

業務ごとの内製・外注の振り分けは、情シスマガジンの「情シスの内製化すべき業務と外注するべき業務」で解説しています。この記事では、その判断の前提になる人材面に絞って説明します。

今回参照した公的データで分かるのは人材不足の大きさで、内製化の実態は別の調査で確認する必要がある

今回参照した公的調査から確実に言えるのは、IT人材が足りないということです。今回参照した3機関の調査は、いずれも人材不足を数値で示しています。

調査 分かること
IPA「DX動向2026」(2025年度調査) DXに取り組む企業の85.5%が人材の「量」、88.8%が「質」の不足を感じている
経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表の推計) 2025年時点のIT人材の需給ギャップは、標準ケースで36万人と推計されている
総務省「通信利用動向調査」(2018年調査) ネットワークを利用する企業の44.4%が「運用・管理の人材が不足」を問題に挙げている

出典: IPA「DX動向2026」/経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」

3つは調査の主体も時点も指標も違うため、推移として読むことはできません。また、不足を内製で補っているのか外部委託で補っているのかも、今回の調査からは読み取れませんでした。この記事では「人材不足」と「内製化の実態」を別の話として扱います。

注意

内製化率や内製と外部委託の比率は、今回参照したデータの範囲に含まれていないため扱っていません。そうした公的調査が存在しないという意味ではありません。たとえばIPA「DX白書2023」(2022年度調査)の図表3-35には、ITシステムなどの領域ごとに、内製による自社開発、外部委託による開発、SaaS等の導入といった手段を日米で比べた設問があります。この記事ではデータベースに未登録のため、その数値は扱っていません。

出典: IPA「DX動向2026」/経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」/IPA「DX白書2023」

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IT内製化が注目される背景には、DX人材の「量」「質」とも8割超の企業が不足と答える状況がある

人材不足の実態

内製化が話題になる大きな理由は、社内でITを担う人材が足りていないことです。IPAの2025年度調査では、DXに取り組む企業の8割超が、人材の「量」と「質」の両方で不足を感じています。

しかも不足の形は、この数年で少しずつ変わっています。「大幅に不足」と答える企業は減り、「やや不足」と答える企業が増えているのです。

このセクションでは、最新の値、3年間の推移、情シスの現場で以前から指摘されてきた人手不足の順に見ていきます。

ポイント

  • 2025年度調査で、DX人材の「量」が不足とした企業は85.5%、「質」は88.8%(IPA、DXに取り組む企業が対象)
  • 「大幅に不足」は減り、「やや不足」が増えている。不足の深刻度は和らぐ一方、不足を感じる企業の割合は高いまま
  • 情シスの運用・管理やセキュリティの要員不足は、2010年代の調査でも指摘されていた

2025年度の調査でDX人材の「量」が不足とした企業は85.5%、「質」は88.8%

DX人材の不足は、ごく一部の企業の話ではありません。IPA「DX動向2026」の2025年度調査では、DXに取り組んでいると答えた企業の大半が、人材の不足を感じています。

この調査は、IPAが国内企業の経営層やICT関連部門を対象に行ったものです。DXを推進する人材について、人数が足りているか(量)と、能力が足りているか(質)を分けて聞いています。

不足している対象 やや不足+大幅に不足 うち「大幅に不足」
人材の「量」 85.5% 50.1%
人材の「質」 88.8% 52.9%

出典: IPA「DX動向2026」(2025年度調査、DXに取り組んでいると回答した企業が対象)

量も質も8割台後半の企業が不足と答え、半数前後が「大幅に不足」を選んでいます。 人が足りないという実感は、多くの企業に共通するものだと分かります。

「大幅に不足」は2023年度の62.1%から2025年度の50.1%に下がったが、「やや不足」が増えている

不足感は和らいだように見えて、実際には形が変わっています。先に事実を確認します。

IPA「DX動向2026」で、人材の「量」が大幅に不足とした企業の割合を見ます。2023年度調査で62.1%、2024年度調査で58.5%、2025年度調査で50.1%でした。62.1%から50.1%へ、2年間で12.0ポイント下がっています(計算値)。

「質」では、不足の合計が2024年度の86.1%から2025年度の88.8%へ上がりました。一方で「大幅に不足」は58.9%から52.9%へ下がっています。

DX人材の不足感の内訳(100%積み上げ横棒)

出典: IPA「DX動向2026」(DXに取り組んでいると回答した企業が対象。「やや不足」は計算値)

この推移から読み取れるのは、不足の中心が「大幅に不足」から「やや不足」へ移りつつある点です。内製化の文脈で言えば、深刻度は和らいでも、力量(質)の不足を感じる企業は9割近くに上ったままです。

注意

2023年度と2024年度の値は、2025年度の報告書に過去の値として載っているものです。毎年同じ企業が答えたパネル調査ではありません。数ポイントの差には標本誤差も含まれるため、小さな変化を断定的に読まないでください。

情シスの運用・管理やセキュリティの要員不足は、2010年代から指摘されている

DX人材が話題になる前から、情シスの人手不足は続いていました。古い調査ですが、当時の状況を確認しておきます。

総務省の2018年の通信利用動向調査では、ネットワークを利用する企業の44.4%が「運用・管理の人材が不足」を挙げていました。ネットワーク利用上の問題点を尋ねた設問です。この割合は前年から7.1ポイント上がっています。

また、IPAは2016年に、従業員300人以上の企業の情シス・セキュリティ部門の責任者と担当者を調査しています。その54.9%が「セキュリティ要員が不足している」と答えました。

どちらも1時点のデータで、いまの状況を示すものではありません。DX人材の数値とも調査が違うため、推移として比べることはできません。それでも、システムを運用する人の不足は、以前から情シスの課題だったと言えます。

出典: IPA「DX動向2026」/総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」/IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」報告書

IT人材の不足は2030年に16.4万〜78.7万人と推計され、不足の中心は先端IT人材

2030年の人材予測

国全体で見ても、IT人材は将来にわたって足りないと推計されています。ただし「何万人不足」という数字には大きな幅があり、不足しているのは主に新しい技術を扱う人材です。

このセクションで扱う数値は、すべて経済産業省が2019年に公表した推計です(比較のため同報告書が引用している、2016年公表の前回推計を含みます)。実際に何人欠けているかを数えたものではありません。

「将来〇万人が不足」という数字だけを見ると、どの人材も一様に足りないように感じるかもしれません。前提と内訳を順に確認していきましょう。

注意

このセクションの数値は、経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)による推計値です。IT需要の伸びや生産性の前提によって結果が変わります。また、生成AIの普及はこの推計の前提に入っていません。

経済産業省の推計では、IT人材の需給ギャップは2018年の22万人から2030年に約45万人へ広がる

経済産業省の推計では、IT人材の需要が供給を上回る規模は、先の年ほど大きくなります。同じ推計の中で対象年を変えた値は次のとおりです。

対象年 需給ギャップの推計値 前提
2018年 22万人 標準ケース
2020年 30万人 標準ケース
2025年 36万人 標準ケース
2030年 44.9万人 IT需要の伸びが中位のシナリオ

出典: 2018年・2020年・2025年は経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」、2030年は同調査報告書(いずれも2019年公表の推計)

この表は、2019年時点で将来を見通した値を並べたものです。実際の不足数を毎年測った推移ではありません。

なお、2025年までは「標準ケース」、2030年は「中位シナリオ」という別の区分で示されています。需給ギャップは広がる見通しですが、年ごとの数字を実測値のように扱わないでください。

2030年の不足数はシナリオによって16.4万〜78.7万人と約4.8倍の幅がある

2030年の不足数は、1つの数字では決まりません。経済産業省の2019年公表の推計では、IT需要の伸び方によって次のように幅があります。

低位シナリオでは16.4万人、中位シナリオでは44.9万人、高位シナリオでは78.7万人です。高位の78.7万人は、低位の16.4万人の約4.8倍にあたります(計算値)。

また、2016年に公表された前回の推計では、2030年の中位シナリオの不足は58.7万人でした。前回は生産性の上昇を見込んでおらず、2019年の推計とは前提が違います。そのため、この差を「不足が縮んだ」という変化として読むことはできません。

2030年のIT人材需給ギャップのシナリオ別の幅

出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書(2019年公表。前回推計は同報告書内で比較値として引用されたもの)

この幅から読み取れるのは、「〇万人不足」をそのまま内製化の根拠にすると、選ぶシナリオで主張の強さが変わってしまう点です。確かなのは、どのシナリオでも不足になっていることです。

2030年に先端IT人材は54.5万人不足する一方、従来型IT人材は9.7万人余ると推計されている

不足の中身を分けると、足りない人材と余る人材がはっきり分かれます。経済産業省の推計では、IT人材を2つに区分しています。

1つはAI・IoT・ビッグデータなど、新しい技術に対応する「先端IT人材」です。もう1つは、従来からあるシステムの開発や保守を担う「従来型IT人材」です。

2019年公表の推計(中位シナリオ)では、2030年に先端IT人材は54.5万人不足します。一方で、従来型IT人材は9.7万人、供給が需要を上回ると見込まれています。

2030年の先端IT人材と従来型IT人材の過不足

出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書(2019年公表、中位シナリオ)

ここから読み取れるのは、総量の約45万人は、先端の不足と従来型の余りが相殺された後の数字だという点です。先端の54.5万人から従来型の9.7万人を差し引くと44.8万人で、総量の44.9万人と端数の範囲で一致します(計算値)。

内製化で社内に置きたいのが既存システムの保守担当か、新しい技術の担当かで、2030年に向けた採用市場の見通しが大きく変わります。ただし「従来型が余る」は市場全体の話で、あなたの会社で運用担当が足りているという意味ではありません。

出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/同調査報告書(いずれも2019年公表の推計)

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IT内製化のメリットは変化への対応の速さで、課題は新しい技術を扱う人材ほど採用市場で不足していること

メリットと課題

内製化には、変更にすぐ対応できることや、ノウハウが社内に残ることといったメリットがあります。一方で課題になるのは、新しい技術を扱う人材ほど採用市場で不足していると推計されていることです。

前のセクションで見たとおり、国の推計で最も不足するのは新しい技術を扱う人材でした。企業の調査でも、同じ方向の結果が出ています。

ポイント

  • メリットは変更への対応の速さ、ノウハウの蓄積、人材の育成
  • デメリットは初期コスト、属人化、採用と育成の負担
  • 2025年度の調査では、回答企業全体の約半数が、AIの導入・運用上の課題として専門人材の不足を挙げている

内製化のメリットは、変更への対応の速さとノウハウの蓄積

内製化の主なメリットは、変更に素早く対応できることと、ノウハウが社内に残ることです。システムの中身を社内で理解していれば、外部に確認しなくても判断できるからです。

一方で、内製化には負担もあります。一般的に挙げられるメリットとデメリットを表にまとめます。

区分 内容
メリット 仕様変更や改善の要望に、社内の判断ですぐ対応できる
メリット システムの中身が分からなくなる「ブラックボックス化」を防ぎやすい
メリット 開発や運用のノウハウが社内に蓄積される
メリット 実務を通じて社内の人材が育つ
デメリット 採用、教育、開発環境の整備に初期コストがかかる
デメリット 担当者が少ないと特定の人に業務が偏り、属人化しやすい
デメリット 必要なスキルを持つ人の採用と育成に時間と手間がかかる

コスト面の効果は、対象の範囲や体制によって変わるため一概には言えません。内製化は費用を下げる手段というより、判断の速さと知識を社内に持つための手段と考えると整理しやすくなります。

内製化で求められる新技術の人材は、2025年度の調査で回答企業全体の半数がAI専門人材の不足を挙げている

内製化で確保したい人材が新しい技術の担当であれば、採用は簡単ではありません。企業の調査と国の推計の両方が、この領域の不足を示しています。

IPA「DX動向2026」の2025年度調査では、AIの導入・運用上の課題も聞いています。回答企業全体のうち、「専門人材が不足している」を挙げた企業は50.1%でした。この設問はAIを導入済みの企業に限ったものではありません。

同じ調査で、DX人材の「質」が不足とした企業は88.8%です。こちらはDXに取り組む企業が対象で、50.1%とは母集団が異なります。

経済産業省の2019年公表の推計でも、2030年に最も不足するのは先端IT人材でした。その規模は中位シナリオで54.5万人とされています。

異なる機関、異なる時点の調査が同じ方向を示していることから、1つの仮説が立ちます。企業が社内に置きたいと考えるような新しい技術の領域ほど、労働市場でも人材の取り合いになっている可能性があります。

ただし2つの調査は指標の定義も時点も違い、同じものを測ってはいません。また、企業が内製化したい領域が新しい技術だと示すデータもありません。そのうえで考えると、中途採用だけに頼らず、育成や外部との併用も組み合わせる前提で計画するのが現実的です。

出典: IPA「DX動向2026」/経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書(2019年公表の推計)

IT内製化は採用より先に、必要なスキルの定義と人材像・評価基準の整備から進める

スキル定義から始める

内製化を進めると決めたら、最初にやることは採用ではありません。まず、自社に必要なスキルを言葉にし、求める人材像と評価基準を決めることです。

採用市場で人材が足りない以上、社内の人を育てる道も必要です。ところが、何を学ばせ、育ったかをどう測るかが決まっていない企業が多いのが現状です。

ポイント

  • DX推進に必要なスキルを把握できていない企業は2025年度調査で52.8%(IPA、DXに取り組む企業が対象)
  • 人材像を周知している企業は16.2%、評価基準が無い企業は76.1%(2025年度)
  • 判断業務から社内に置き、学び直しの行き先を決め、足りない部分は外部と組む

必要なスキルを把握できていない企業は52.8%で、「質」の大幅不足は把握済みの企業より23.4ポイント高い

内製化の最初の一歩は、必要なスキルを把握することです。スキルを把握しているかどうかで、人材の不足感に大きな差が出ているからです。

IPA「DX動向2026」の2025年度調査では、DX推進に必要なスキルを把握できていない企業が52.8%でした。「質」が大幅に不足と答えた割合は、把握している企業で40.6%、把握できていない企業で64.0%です。

スキル把握状況別の「質」大幅不足

出典: IPA「DX動向2026」(2025年度調査、DXに取り組んでいると回答した企業が対象)

64.0%と40.6%の差は23.4ポイントです(計算値)。52.8%を重みに2つの値を加重平均すると約53.0%で、全体の52.9%とほぼ一致します(計算値)。

この結果から読み取れるのは、スキルを把握できていない過半数の企業が、全体の大幅不足を押し上げている構図です。ただし相関であり、因果までは示していません。

「誰を採るか」より先に「どのスキルが要るか」を言葉にすることが、内製化の出発点です。 整理の方法は情報システム部門のスキルマップの作り方も参考にしてください。

DX人材像を周知している企業は16.2%に減り、評価基準が無い企業は76.1%のまま

スキルの次に必要な人材像と評価基準も、多くの企業で整っていません。IPA「DX動向2026」から、2024年度と2025年度の状況を比べます。

項目 2024年度 2025年度
DXを推進する人材像を設定し、社内に周知している 20.4% 16.2%
DX人材の評価基準が「ない」 75.7% 76.1%
DX人材の育成予算を増やした 23.8% 25.6%

出典: IPA「DX動向2026」(DXに取り組んでいると回答した企業が対象)

人材像を周知している企業は減りました。評価基準が無い企業と、育成予算を増やした企業は、差が小さく標本誤差の範囲のため、横ばいと見るのが妥当です。

この比較から読み取れるのは、育成にお金をかける動きはあっても、受け皿が整っていないという点です。「どんな人を育てるか」と「育ったかをどう測るか」が決まらないままでは、社内で担える人は育ちにくくなります。

既存社員の学び直しと外部パートナーを組み合わせ、小さな範囲から内製化する

採用が難しいなら、既存社員の学び直しと外部の力を組み合わせるのが現実的です。

経済産業省の2019年公表の推計では、2030年に従来型IT人材は9.7万人余り、先端IT人材は54.5万人不足します。この推計は、従来型から先端への学び直し(リスキル)が一定の割合で進むことを前提にしています。

一方、2025年度調査では、スキルを把握できていない企業が52.8%でした。人材像を周知している企業は16.2%、評価基準が無い企業は76.1%です。これらを並べると、学び直しの行き先を決められている企業は、少数にとどまっている可能性があります。

そこで、次の3段階で小さく始めることをおすすめします。

  • 判断業務から社内に置く: 企画、要件定義、ベンダー管理など、決める仕事から担う
  • 学び直しの行き先を決める: 必要なスキルを書き出し、誰に何を学んでもらうかを決める
  • 足りない部分は外部と組む: 賄えない開発や運用は情シスの外注も使い、段階的に引き取る

人材の取り合いが続く領域ほど、採用だけに頼る計画は崩れやすくなると考えられます。まずは判断を社内に持つところから始めてみてください。

出典: IPA「DX動向2026」/経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書(2019年公表の推計)

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企業規模によって足りないものが違い、100人以下の企業では「量」より「質」の不足感が高い

企業規模による違い

人材不足の中身は、企業の規模によっても違います。DXに取り組む企業で見ると、従業員301人以上の企業は量も質も足りず、100人以下の企業では頭数より力量の不足を感じる企業が多くなっています。

ひとり情シスや少人数の情シスで働いている方は、規模の大きな企業を前提にした内製化の進め方がそのまま当てはまるとは限りません。規模ごとの違いを確認しておきましょう。

注意

規模別の不足感は、報告書で「9割超」「6割超」のような幅でしか示されていません。そのため、正確な差のポイント数は出せません。また、いずれもDXに取り組んでいると回答した企業が対象です。

従業員301人以上の企業では、DX人材の「量」「質」ともに9割超が不足と答えている

従業員301人以上の企業は、100人以下の企業より人材の不足感が強くなっています。IPA「DX動向2026」の2025年度調査では、DXに取り組む従業員301人以上の企業の9割超が、量と質の両方で不足と答えました。

従業員100人以下の企業と比べると、次のとおりです。

従業員規模 「量」が不足(やや+大幅) 「質」が不足(やや+大幅)
301人以上 9割超 9割超
100人以下 6割超 7割超

出典: IPA「DX動向2026」(2025年度調査、DXに取り組んでいると回答した企業が対象)

この表から読み取れるのは、301人以上では量・質とも9割超で差が見えない一方、100人以下では「質」の不足感が「量」より一段高い区分にある点です。幅の表現のため、規模の差が量と質のどちらで大きいかまでは断定できません。301人以上の企業では、採用で人数を増やすことと、育成で力量を上げることの両方が必要な状況です。

100人以下の企業では、DXに取り組む企業の「質」不足が7割超、DXに取り組んでいない企業の54.0%がメリットが分からないと答えている

DXに取り組む100人以下の企業では、頭数より力量の不足を感じる企業が多くなっています。前の表のとおり、2025年度調査で「量」の不足は6割超、「質」の不足は7割超でした。

一方、同じ調査では、DXに取り組んでいない100人以下の企業にも理由を聞いています。その54.0%が「自社がDXに取り組むメリットが分からない」と答えました。この数値は、上の6割超・7割超とは別の母集団の回答です。

ここから読み取れるのは、小規模な企業では「人を増やして内製化する」という進め方が当てはまりにくい点です。DXに取り組んでいない企業の回答を見ると、何を社内で担うかを決める前の段階にいる企業もあると考えられます。

なお、DXに取り組む100人以下の企業で不足感が相対的に低いことは、人材が足りていることを意味しません。DXの取組範囲が限られていて不足が表に出にくい可能性や、回答企業数が少なく結果にばらつきが出やすい可能性も考えられます。ひとり情シスの体制であれば、まず自分が担う判断業務の範囲を決めることから始めるのが現実的です。

出典: IPA「DX動向2026」

まとめ: IT内製化は、人材不足の中身を把握してスキルの定義から始める

IT内製化が注目される背景には人材不足がありますが、その中身は一様ではありません。この記事で確認した要点を振り返ります。

  • IPAの2025年度調査では、DXに取り組む企業のうち人材の「量」が不足とした企業は85.5%、「質」は88.8%。「大幅に不足」は減り、「やや不足」が増えている
  • 経済産業省の2019年公表の推計では、2030年に最も不足するのは先端IT人材で、中位シナリオで54.5万人。不足の総数はシナリオによって大きく変わる
  • DX推進に必要なスキルを把握できていない企業は2025年度調査で52.8%(DXに取り組む企業が対象)。把握できていない企業ほど「質」の大幅不足が多い
  • DXに取り組む100人以下の企業では頭数より力量の不足を感じる企業が多く、規模の大きな企業を前提にした進め方はそのまま当てはまりにくい

内製化は、内製か外注かの二択ではありません。判断業務と必要なスキルの定義を社内に持ち、足りない部分は育成と外部の力で補うことが、現実的な進め方です。

まずは、自社のシステムについて「社内で決めるべきこと」と「そのために必要なスキル」を書き出すところから始めてみてください。


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※出典

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