【公的データ】情報システム部のあるある5選|CISO専任27.9%(2016年)・資産管理製品10.3%(2024年)


情報システム部で働いていると、こんなことに心当たりはありませんか。

  • セキュリティもPCの手配も、気づけば全部自分の担当になっている
  • 「人が足りない」と伝えても、上にはなかなか伝わらない
  • ソフトのライセンスやサブスクの契約が、もう把握しきれない
  • 法改正のたびに仕事が増え、対応が終わっても楽にならない
  • 「PCが動かない」「パスワードを忘れた」で一日が終わる

どれも「うちの会社だけかな」と思いがちですよね。結論から言うと、これらのあるあるは個人の感覚ではなく、公的な調査データでも裏付けられます。

この記事では、IPA(情報処理推進機構)や中小企業白書などの調査をもとに、情シスのあるあるを5つ取り上げます。それぞれが起きる背景と、減らすための第一歩も紹介します。

この記事のポイント

  • 日本でCISO等を専任で置いている企業は27.9%で、米国の78.7%を大きく下回る(2016年、従業員300人以上。出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」)
  • IT資産管理製品を導入している中小企業は10.3%にとどまる(2024年、対策の必要性を感じている企業が母数。出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」)
  • 電子帳簿保存法への対応を完了した企業は28.5%、懸念・課題がある企業は95.6%(2023年。出典: 帝国データバンク「電子帳簿保存法に対する企業の対応状況アンケート」)

自分の職場の状況を、上司や経営層に説明するときの材料としても使ってみてください。


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目次

情報システム部のあるあるは「兼任」「人手不足」「管理の遅れ」「法対応」の4つに集約できる

あるあるの全体像

情シスのあるあるはたくさんありますが、整理すると「兼任」「人手不足」「管理の遅れ」「法対応」の4つに集約できます。どれも公的な調査や白書の数値で、背景を確認できるものです。

この記事で取り上げる5つのあるあると、それを裏付けるデータを先に一覧にしておきます。詳しい内容は、このあとの各見出しで説明します。

あるある 裏付けるデータ 調査年
セキュリティの責任者も兼任になりやすい CISO等を専任で置く日本企業は27.9%(従業員300人以上) 2016年
「人が足りない」が上に伝わらない 現場の責任者・担当者の54.9%がセキュリティ要員は不足と回答(従業員300人以上) 2016年
IT資産の管理が手作業になりがち IT資産管理製品を導入している中小企業は10.3% 2024年
ソフトやクラウドの契約が増え続ける 最も増えたIT費用がソフトウェア購買費の中小企業は32.2% 2025年
法改正のたびに仕事が増える 電子帳簿保存法への対応を完了した企業は28.5% 2023年

出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」/IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」/中小企業庁「2026年版中小企業白書」/帝国データバンク「電子帳簿保存法に対する企業の対応状況アンケート」

ただし、先に断っておきたいことがあります。「ひとり情シス」の割合や、情シス部門の人数を直接測った公的統計は、現時点で見当たりません。そのため、この記事では周辺の指標を組み合わせて、あるあるの背景を描いています。

つまり、ここで紹介する数値は「あるあるが起きやすい環境」を示すものです。あなたの職場の状況と照らし合わせながら読んでみてください。

出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」/IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」報告書/IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」/中小企業庁「2026年版中小企業白書」/帝国データバンク「電子帳簿保存法に対する企業の対応状況アンケート」


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セキュリティの責任者も兼任になりやすく、日本のCISO専任設置は27.9%(2016年)

セキュリティも兼任

1つ目のあるあるは「セキュリティも情シスの掛け持ち」です。PCやネットワークの管理に加えて、セキュリティの責任まで同じ人が負っている職場は多いですよね。この状況は、日本企業全体の体制の特徴として調査にも表れています。

日本のCISO専任設置は27.9%で、米国78.7%・欧州67.1%を大きく下回る

日本でCISO等を専任で置いている企業は27.9%で、欧米と比べて大きく低い水準です。 CISO(最高情報セキュリティ責任者)は、会社のセキュリティ対策に責任を持つ役職を指します。

IPAの国際比較調査では、2016年時点で従業員300人以上の企業を対象に、CISO等の置き方を尋ねています。専任で置いている企業の割合は、米国が78.7%、欧州(英独仏)が67.1%でした。日本の27.9%は、米国の半分にも届きません。

CISO等を専任で設置している企業の割合(2016年、従業員300人以上)

出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」(2016年調査、従業員300人以上の企業。日本n=755、米国n=527、欧州n=526)

この調査は2016年と古く、その後の変化は分かりません。それでも、セキュリティの責任者を専任で置く文化が日本では弱いことは、数値からはっきり読み取れます。

CISO等を置いている日本企業でも、兼任が専任より多い

日本では、CISO等を置いている企業でも「兼任」のほうが「専任」より多い状態です。 同じ2016年の調査で、日本企業の内訳は次のようになっています。専任が27.9%、兼任が34.7%、設置なしが29.0%でした(従業員300人以上)。

日本企業のCISO等の設置形態(2016年、従業員300人以上)

出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」(2016年調査、日本n=755)

この数値から読み取れるのは、専任と兼任を足しても62.6%で、米国の専任だけの78.7%に届かないという点です。CISO等を置いている日本企業のうち、約55%は兼任で回している計算になります。

300人以上の企業でも、責任者は「別の仕事と掛け持ち」が多数派です。規模の小さい企業で情シスが何でも兼ねるのは、その延長にある状況と考えられます。中小企業を対象にしたIPAの2024年調査でも、情報セキュリティ対策の担当者を「兼務」で任命している企業は21.0%で、「専門部署(担当者)がある」企業の9.3%より多くなっています。

なお、欧米の高さには役職名の付け方の違いも含まれる可能性があります。また日本の3区分の合計は100%にならず、無回答等の扱いで比率は多少変わります。

ポイント

  • セキュリティの責任者を専任で置く日本企業は少数派(2016年、従業員300人以上)
  • 責任者を置いていても、兼任のほうが多い
  • 情シスがセキュリティまで掛け持ちするのは、日本企業ではめずらしくない体制

出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」(2016年調査、従業員300人以上の企業)/IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」(2024年調査、有効回答4,191件)


「人が足りない」は上に伝わりにくく、経営層と現場で要員の充足感が逆転している

伝わらない人手不足

2つ目のあるあるは「人手不足を訴えても伝わらない」です。現場は手が回らないのに、上からは「今の人数で回っている」と見られている。そんなもどかしさを感じたことはありませんか。

CISO等の58.7%は「要員は十分」、現場の54.9%は「不足」と答えている

同じ調査の中で、経営側と現場側の「人が足りているか」の認識は逆を向いています。 先ほどのIPA調査(2016年、従業員300人以上の日本企業)では、立場ごとに要員の充足感も尋ねています。

CISO等の回答者では、セキュリティ要員の人数は「十分」と答えた人が58.7%でした。一方、情報システム部門やセキュリティ担当部門の責任者・担当者では、「不足している」と答えた人が54.9%にのぼります。

セキュリティ要員(人数)の充足感(2016年、従業員300人以上の日本企業)

出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」関連資料(2016年調査、従業員300人以上の日本企業)

この結果から読み取れるのは、人手の足りなさが管理する側からは見えにくいという点です。「人が足りないと言っても伝わらない」というあるあるは、立場による認識の差として数値に表れています。

注意

58.7%は「十分」、54.9%は「不足」という別々の選択肢の割合です。同じ企業のCISOと担当者を組み合わせて比べたものとは限りません。そのため、2つの値を差し引いて「ズレの大きさ」を計算することはできません。

IT人材の不足は先端領域に集中し、運用を担う人材の採用難は総数の推計では見えにくい

国の推計では、IT人材の不足は先端領域に集中し、従来型の人材はむしろ余る見通しです。 ただし、これは「運用を担う人が採りやすくなる」ことを意味しません。

経済産業省が2019年に公表した推計では、2030年のIT人材の不足は中位シナリオで44.9万人です。前提によって16.4万人から78.7万人まで幅があります。

内訳を見ると、同じ中位シナリオで従来型から先端へのスキル転換(Reスキル)率を年1%と置いた場合、AIやIoTなどを担う先端IT人材は54.5万人の不足です。一方で、従来型IT人材は9.7万人の余剰と見込まれています。

これらは将来の推計値で、実際に数えた不足人数ではありません。対象にはIT企業側の人材も含まれます。

この推計から読み取れるのは、IT人材の不足は総数の問題というより内訳の問題だという点です。市場全体で従来型の人材が余るとしても、個々の中小企業で運用担当者を採りやすくなるとは限りません。「採用しても人が来ない」というあるあるは、総数の推計だけでは見えにくいのです。

出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」関連資料(2016年調査)/経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書(2019年公表、将来推計)


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IT資産の管理はExcel頼みになりやすく、管理製品を導入している中小企業は10.3%(2024年)

資産管理はExcel任せ

3つ目のあるあるは「PCやソフトの台帳が手作業」です。Excelの台帳を更新しきれず、どれが最新か分からなくなっている。そんな職場は少なくないはずです。

中小企業のIT資産管理製品の導入率は2024年調査で10.3%にとどまる

IT資産管理製品を導入している中小企業は、2024年調査で10.3%にとどまります。 IT資産管理とは、社内のPCやソフトウェア、ライセンスを把握して管理することです。

IPAの中小企業向け調査では、ライセンス管理やIT資産管理の製品の導入率を3時点で示しています。2016年が5.5%、2021年が6.7%、2024年が10.3%です。

中小企業のIT資産管理製品(ソフトウェアライセンス管理を含む)の導入率の推移

出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」(2016年・2021年は同報告書内の過去調査の値)

この推移から読み取れるのは、どの年でも約9割の中小企業が製品を使っていないという点です。製品を使わずに表計算ソフトの台帳などで管理している企業(管理が追いついていない企業を含む)は、今も多数派だと考えられます。

注意

2024年の10.3%は、「対策の必要性を感じたことがない」と答えた企業を除いた2,203社を母数にした値です。一方、2016年・2021年の値は回答企業全体(4,215社・4,074社)が母数で、条件がそろっていません。2024年も回答企業全体で計算し直すと、2016年・2021年と同じくらいの水準にとどまる可能性があります。そのため「導入が急に進んでいる」とは言い切れません。

小規模企業者は5.5%、101名以上の中小企業は22.9%で、規模によって約4倍の差がある

同じ中小企業でも、規模が小さいほどIT資産管理製品の導入率は低くなります。 IPAの2024年調査を企業規模別に見ると、次のとおりです。小規模企業者が5.5%、100名以下の中小企業が12.6%、101名以上の中小企業が22.9%でした。

IT資産管理製品の導入率(企業規模別、2024年)

出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」(2024年調査。母数は対策の必要性を感じている企業で、小規模企業者n=1,103、100名以下n=834、101名以上n=266)

小規模企業者と101名以上の差は、倍率で約4.2倍、ポイント差で17.4ポイントです。

この差から読み取れるのは、規模が小さい企業ほど「担当者が少ない」と「ツールが無い」が重なりやすい点です。少人数の会社で台帳の更新が追いつかないのは、担当者の努力不足ではなく、構造的に起きやすいことだと言えます。

ある民間調査では、IT資産を把握できている大手企業でも専任担当者を理由に挙げたのは54.1%

参考として、民間の小規模な調査も1つ紹介します。 政府統計ではなく、対象も限られている点に注意してください。

株式会社スリーシェイクが2024年に行った調査は、大手企業(従業員1,000名以上)の情報システム担当者104人が対象です。インターネットに公開しているIT資産を「把握できている」と答えたのは61人でした。そのうち、把握できている理由(複数回答)に「専任担当者がいる」を挙げた人は54.1%です。

この結果から読み取れるのは、資産を把握できている大手企業でも、専任担当者を理由に挙げない企業が半数近くあるという点です。理由に挙げなかったことが、専任担当者がいないことを意味するとは限りません。それでも、大手企業でも兼任や別の仕組みで管理を回しているケースはあると考えられます。ただし、回答者104人の民間調査なので、この値は参考にとどめるべきです。

出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」/株式会社スリーシェイク「セキュリティガバナンスに関する実態調査」(2024年、民間調査)


ソフトウェアやクラウドの契約が増えて管理が追いつかず、最も増えたIT費用の6割はこの2項目

増え続ける契約

4つ目のあるあるは「誰がどのライセンスを使っているか分からない」です。気づけば使われていないサブスクの支払いが続いていた、という経験がある方もいるでしょう。IT費用の中身を見ると、その背景が見えてきます。

中小企業で最も増えたIT費用はソフトウェア購買費32.2%、クラウドサービス使用料28.6%

中小企業で最も増えたIT費用は、ソフトウェア購買費とクラウドサービス使用料が上位を占めます。 2026年版中小企業白書では、2025年の調査で中小企業11,020社に質問しています。2019年以降で最も金額が増えた費目を、1つ選んでもらう形式です。

最も増えた費目 回答の割合
ソフトウェア購買費 32.2%
クラウドサービス使用料 28.6%
リース・レンタル料 20.3%
保守料 12.9%
その他 5.9%

2019年以降に最も増えた情報処理・通信費(中小企業、2025年調査)

出典: 中小企業庁「2026年版中小企業白書」(帝国データバンクによる2025年調査、中小企業n=11,020)

ソフトウェアとクラウドを合わせると60.8%で、6割を超えます。なお、これは「最も増えた項目を1つ選んだ割合」で、各費目の増加額を示すものではありません。

この結果から読み取れるのは、IT費用が増えた主な理由が機器ではなく、ツールの利用料だという点です。

従業者一人当たりの情報処理・通信費は、2014年度を100として2023年度に中小企業148.0・大企業162.1

中小企業でも、従業者一人当たりのIT費用は2014年度から2023年度にかけて約1.5倍になっています。 同じ中小企業白書は、経済産業省「企業活動基本調査」のデータを加工して、IT費用の伸びを示しています。

従業者一人当たりの情報処理・通信費を、2014年度を100とした指数で比べたものです。2023年度の値は、中小企業が148.0、大企業が162.1でした。

前の見出しで見た「最も増えた費目」の結果と並べると、中小企業の一人当たりIT費用は増えており、増えた費目としてはソフトウェアやクラウドの支払いが多く挙がっています。ただし、2つは調査の主体も年度も異なり、一人当たり費用の増加分の内訳を示すものではありません。それでも、情シスが管理しなければならない契約は、費用とともに増えている可能性が高いと考えられます。

費用が増える一方で、ライセンスやIT資産の管理製品を導入している中小企業は約1割

IT費用、特にソフトウェアとクラウドの支払いは増えているのに、それを管理する道具は追いついていない可能性があります。 これがこの記事で最も伝えたい点の1つです。

ここまでの数値を並べてみます。最も増えた費目にソフトウェア購買費を挙げた中小企業は32.2%、クラウドサービス使用料は28.6%でした(2025年調査)。

一方、ライセンス管理やIT資産管理の製品を導入している中小企業は10.3%です(2024年調査)。101名以上の中小企業でも22.9%にとどまります。

この組み合わせから読み取れるのは、契約やライセンスが増えやすい費目が伸びる一方で、管理の手段が追いついていない可能性です。「解約漏れのサブスクがある」というあるあるの背景として、筋の通る見方だと考えます。

ただし、2つは別々の調査で、同じ企業を測ったものではありません。因果関係までは言えない点に注意してください。

補足として、IPAが2022年にSaaSの調査を行っています(n=457)。2020年4月以降にSaaSの選定・承認に関わった回答者のうち、情報システム部門の人は26.9%でした。

SaaSの選定には、情シス以外の部門も関わっている様子がうかがえます。ただし、これは回答者の所属の内訳で、企業ごとに選定を担った部門の割合を示すものではありません。情シスが知らないところで契約が増えるのも、無理のない話かもしれません。

出典: 中小企業庁「2026年版中小企業白書」/IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」/IPA「クラウドサービス(SaaS)のサプライチェーンリスクマネジメント実態調査」


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法改正のたびに仕事が増え、電子帳簿保存法の対応完了は2023年で28.5%にとどまる

終わらない法対応

5つ目のあるあるは「法対応は情シスに回ってくるのに、終わっても楽にならない」です。経理から相談されてシステムの選定や設定を引き受ける、という流れはよくありますよね。ここでは電子帳簿保存法を例に見ていきます。

電子帳簿保存法に対応を完了した企業は28.5%で、規模が小さいほど低い

帝国データバンクの2023年調査では、電子帳簿保存法への対応を完了した企業は28.5%でした。 有効回答は全国の企業1,023社です。まず、全体の対応状況を見てみます。

対応状況(2023年) 割合
対応が完了している 28.5%
一部対応できている 39.5%
現時点で未対応だが、対応予定はある 23.9%

企業規模別の完了率は次のとおりです。規模が小さいほど、完了している割合は低くなっています。

企業規模(2023年) 対応完了の割合
大企業 38.8%
中小企業 26.8%
小規模企業 21.2%

電子帳簿保存法の対応完了率(企業規模別、2023年)

出典: 帝国データバンク「電子帳簿保存法に対する企業の対応状況アンケート」(2023年調査、有効回答1,023社)

大企業と小規模企業の差は、ポイント差で17.6ポイント、倍率で約1.8倍です。法対応はすべての企業に求められますが、完了まで進めている企業は全体でも3割に届いていません。

懸念・課題がある企業は95.6%で、対応を終えた企業の8割強も懸念を抱えている計算になる

電子帳簿保存法への対応に懸念・課題があると答えた企業は、2023年調査で95.6%でした。 ほぼすべての企業が、何らかの不安を抱えていることになります。

懸念・課題の内容で最も多かったのは「業務負担の増加」で69.8%です。「社内での理解・連携不足」の43.4%が続きました(複数回答)。

電子帳簿保存法対応の懸念・課題の内容(2023年、上位2項目)

出典: 帝国データバンク「電子帳簿保存法に対する企業の対応状況アンケート」(2023年調査、複数回答)

この数値から計算すると、懸念がない企業は多くても4.4%です。対応完了の28.5%のうち、少なくとも24.1ポイント分は懸念も抱えていることになります。完了企業の約85%にあたります。

ここから読み取れるのは、法対応は「終われば楽になる」ものではないという点です。ただし、この計算は懸念の設問が全回答企業を対象にしている前提に立っています。回答者が情シスとは限らず、経理部門の回答も含まれる点にも注意が必要です。

「対応済み」の割合は調査によって28.5%とも76.2%とも出るため、どの要件まで対応したかの確認が必要

電子帳簿保存法の「対応済み」は、調査によって数値が大きく違います。 これは矛盾ではなく、どこまでを「対応」と数えるかの違いです。

帝国データバンクの2023年調査では、法全体への対応が完了した企業は28.5%、一部対応が39.5%でした。一方、ラクスが2024年に経理担当者248人に聞いた調査では、電子取引データの保存に「対応済み」が76.2%です。

2つは調査主体も年も聞いている範囲も違うため、経年の変化として並べることはできません。

この違いから読み取れるのは、社内で「電帳法は対応済み」と言われても、範囲を確かめないと実態が分からないという点です。情シスと経理の間で「対応済み」の意味がずれていた、というのもよくある話ではないでしょうか。

注意

帝国データバンク(2023年)は、法全体への対応を尋ねています。ラクス(2024年)が尋ねたのは、電子取引データの保存という一部の要件への対応です。数値の差を「1年で対応が進んだ」と読まないようにしてください。

出典: 帝国データバンク「電子帳簿保存法に対する企業の対応状況アンケート」(2023年調査)/株式会社ラクス「2024年1月から義務化の電子帳簿保存法『電子取引データの保存』、対応率は約8割」(2024年、経理担当者248人)


あるあるは企業規模が小さいほど重なりやすく、その実態は公的統計でも測りきれていない

測りきれない実態

ここまでの5つのあるあるには、共通点があります。それは、企業の規模が小さいほど重なりやすいということです。一方で、小さな会社の情シスの実態は、公的な統計でも十分に測られていません。

規模による差を倍率で見ると、任意で選ぶツール投資のほうが義務的な法対応より大きく開く

規模による差を倍率で見ると、IT資産管理製品の導入のほうが、電子帳簿保存法の対応完了より大きく開いています。 ただし、ポイント差で見るとほぼ同じになります。見方によって印象が変わる点に注意してください。

指標 小さい規模 大きい規模 倍率 ポイント差
IT資産管理製品の導入率(2024年、IPA) 小規模企業者 5.5% 中小企業101名以上 22.9% 約4.2倍 17.4ポイント
電子帳簿保存法の対応完了率(2023年、帝国データバンク) 小規模企業 21.2% 大企業 38.8% 約1.8倍 17.6ポイント

出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」/帝国データバンク「電子帳簿保存法に対する企業の対応状況アンケート」

この比較から読み取れるのは、次の構図です。法対応はどの規模にも同じように求められる一方、それを支える道具は小さい企業ほど揃いにくいのです。小さな会社の情シスが「やることは大企業並みなのに道具が無い」と感じるのは、この構図と重なります。

ただし、2つの調査は主体も年も規模の区分も異なります。義務か任意かが差の大きさを生んでいる、という因果までは示せません。

「ひとり情シス」の割合を示す公的統計は無いが、中小企業の約7割は2024年時点でセキュリティ対策を組織的に行っていない

「ひとり情シスが何%いるか」を直接示す公的統計は、現時点で見当たりません。 ただし、体制の薄さを示す公的データはあります。

IPAの2024年度中小企業調査は、情報セキュリティ対策の体制を尋ねています(有効回答4,191件)。「組織的には行っていない(各自の対応)」が69.7%で最も多く、「兼務だが、担当者が任命されている」が21.0%、「専門部署(担当者)がある」は9.3%でした。

とはいえ、これはセキュリティ対策の体制を尋ねた設問です。情シス全体の人数や、担当者が1人かどうかを測ったものではありません。大企業のCISO等の調査(2016年、従業員300人以上、専任27.9%)も対象が限られます。民間調査で分かるのも、資産把握の理由に専任担当者を挙げた割合(2024年、54.1%)程度です。

この空白から読み取れるのは、小さな会社の情シスの実態ほど統計に表れにくいという点です。そのため、「ひとり情シスは◯%」と言い切る情報を見かけたら、調査の主体や対象を確かめるようにしてください。

出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」/IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」/帝国データバンク「電子帳簿保存法に対する企業の対応状況アンケート」/株式会社スリーシェイク「セキュリティガバナンスに関する実態調査」


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あるあるを減らす第一歩は、体制・契約・法対応の状況を数字で見える化すること

見える化の第一歩

あるあるの背景が分かったら、次は減らすための行動です。どれも大きな予算は要りません。共通するのは、今の状況を数字や一覧にして「見える化」することです。

人手不足は「感覚」ではなく、現場の業務量と担当範囲として経営層に示す

人手不足を伝えるときは、「忙しい」ではなく、担当している業務の範囲と量を一覧にして示すのが効果的です。 経営側と現場側では、要員の充足感が逆を向いているからです。

先に見たIPA調査(2016年、従業員300人以上の日本企業)では、CISO等の58.7%が要員は「十分」と答えていました。一方で、現場の責任者・担当者の54.9%は「不足」と答えています。同じ調査で、CISO等を兼任で置く日本企業も34.7%ありました。

この認識の差を踏まえると、感覚で訴えるだけでは上に伝わりにくいと考えられます。兼任している業務を洗い出し、それぞれにかかる時間を書き出してみてください。「何をやめれば何ができるか」を示せると、話が進みやすくなります。

ソフトウェアとクラウドの契約から台帳にまとめ、製品の導入はその後に検討する

IT資産の管理は、まずソフトウェアとクラウドの契約を台帳にまとめるところから始めるのがおすすめです。 増えている費目から手を付けると、効果が見えやすいからです。

2025年調査で、最も増えたIT費用にソフトウェア購買費を挙げた中小企業は32.2%でした。クラウドサービス使用料は28.6%です。一方、管理製品を導入している中小企業は10.3%です(2024年調査)。

こうした状況から考えると、いきなり製品を選ぶより、先に現状を把握するほうが現実的です。契約名、費用、利用者、更新日を表計算ソフトで一覧にしてみてください。件数が増えて手作業で追えなくなった段階で、管理製品の導入を検討すれば十分です。

法改正対応は「対応済み」の範囲を要件ごとに確認し、完了後の運用負担も見積もる

法改正への対応は、「対応済み」かどうかではなく、要件ごとにどこまで済んでいるかで確認しましょう。 「対応済み」の意味は、人や調査によって違うからです。

2023年の帝国データバンク調査では、電子帳簿保存法に一部だけ対応している企業が39.5%ありました。2024年のラクス調査では、電子取引データの保存に限ると76.2%が対応済みです。また、2023年調査で最も多かった懸念は業務負担の増加(69.8%)でした。

この結果から考えると、要件ごとの対応状況を一覧にして、経理と共有するのが確実です。あわせて、完了後の運用手順と負担も見積もっておきましょう。対応が終わっても負担は残るからです。

ポイント: 見える化の第一歩チェックリスト

  • 体制: 兼任している業務と、それぞれにかかる時間を一覧にしたか
  • 契約: ソフトウェアとクラウドの契約名・費用・利用者・更新日を台帳にまとめたか
  • 法対応: 要件ごとの対応状況と、完了後の運用手順を経理と共有したか

出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」/IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」関連資料/中小企業庁「2026年版中小企業白書」/IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」/帝国データバンク「電子帳簿保存法に対する企業の対応状況アンケート」/株式会社ラクス「2024年1月から義務化の電子帳簿保存法『電子取引データの保存』、対応率は約8割」


まとめ: 情報システム部のあるあるは、兼任体制と管理の遅れが重なって生まれている

情報システム部のあるあるは、担当者個人の問題ではありません。兼任が当たり前の体制と、増え続ける契約や法対応に管理が追いつかない状況が重なって生まれています。

この記事で取り上げた5つのあるあるを、データとあわせて振り返ります。

1つ目は、セキュリティの責任者も兼任になりやすいことです。CISO等を専任で置く日本企業は27.9%でした(2016年、従業員300人以上)。

2つ目は、人手不足が上に伝わりにくいことです。経営側と現場側で、要員の充足感が逆を向いていました。

3つ目は、IT資産の管理が手作業になりがちなことです。管理製品を導入している中小企業は10.3%でした(2024年)。

4つ目は、契約の管理が追いつかないことです。最も増えたIT費用はソフトウェア購買費が32.2%、クラウドが28.6%でした(2025年調査)。

5つ目は、法改正のたびに仕事が増えることです。電子帳簿保存法の対応完了は28.5%、懸念・課題がある企業は95.6%でした(2023年)。

どれも「自分の職場だけの問題」ではないと分かると、少し気持ちが楽になりますよね。まずは体制・契約・法対応のうち1つを選び、今の状況を一覧にするところから始めてみてください。


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この記事で見てきたように、情シスは兼任で多くの業務を抱えがちです。そのため、新しく入った担当者への引き継ぎや教育に、なかなか時間を割けませんよね。教える人も教わる人も、日々の対応に追われているのが実情ではないでしょうか。

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