【総務省・IPAデータ】クラウド移行のデメリット6つと対策|未導入企業の28.7%が改修コストを懸念(2025年)

クラウド移行の検討を任されたとき、メリットよりも「何が起きるとまずいのか」が気になる方は多いのではないでしょうか。社内で説明する立場なら、なおさらリスクの根拠を押さえておきたいところです。
- 上司からクラウド移行を検討するよう言われたが、リスクも説明できるようにしておきたい
- 「クラウドは安くて安全」と言われるが、本当にデメリットは無いのか分からない
- 自社の古いシステムを移せるのか、移すと何が起きるのか見通せない
結論から言うと、公的データで裏付けられる主な壁は「既存システムの改修」「セキュリティ」「移行を率いる人材」の3つです。一方、ベンダーロックインや移行後のコスト超過は公的データでは数値化されていません。こちらは契約前の確認で備えるリスクとして扱うのが現実的です。
この記事では、クラウド移行のデメリットを総務省・IPA・経済産業省の公表データで整理します。数値で言えることと言えないことを分けて示すので、社内資料の根拠としても使ってみてください。
この記事のポイント
- 2025年調査では、クラウドを使う予定がない企業の28.7%が既存システムの改修コストを挙げました。26.6%はセキュリティ不安を理由にしています(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」)
- 2022年度調査では、日本企業の33.5%が「移行に長けたプロジェクトリーダーがいない」と答えました。米国の14.0%を大きく上回ります(出典: IPA「DX白書2023」)
- ベンダーロックインや移行後のコスト超過は公的統計に数値が無いため、契約条件と既存システムの棚卸しで備えるのが妥当です
クラウドを導入しない企業の理由は「必要がない」に次いで改修コストとセキュリティ不安が多い

最初に、どのデメリットが企業の判断を実際に止めているのかを確認します。ここで扱う数値は、総務省の調査で「クラウドを使っておらず、今後も使う予定がない」と答えた企業が挙げた、導入前の懸念です。移行した企業の感想ではない点を先に押さえておいてください。
2025年調査ではクラウドを利用する予定のない企業の28.7%が改修コスト、26.6%がセキュリティ不安を挙げている
2025年調査で、「必要がない」を除いた最多の理由は既存システムの改修コストで、28.7%でした。 次いでセキュリティへの不安が26.6%と続きます。

| クラウドサービスを利用しない理由(2025年調査、主な項目を抜粋) | 割合 |
|---|---|
| 必要がない | 46.5% |
| 導入に伴う既存システムの改修コストが大きい | 28.7% |
| 情報漏えいなどセキュリティに不安がある | 26.6% |
| ネットワークの安定性に不安がある | 13.1% |
| ニーズに合わせたカスタマイズができない | 6.6% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6より作成。常用雇用者100人以上の企業のうち、クラウドサービスを利用しておらず今後も利用予定がない企業の回答(複数回答)です。選択肢のうち主な5項目を抜粋しており、ほかに「通信費用がかさむ」「メリットが分からない」などがあります。
この表から読み取れるのは、理由が「必要がない」、改修コストとセキュリティ、ネットワークの3段階に分かれる点です。以降の見出しでは、この順に掘り下げます。
2022〜2025年の4年間で理由の順位は変わっていない
4年分の調査を並べても、「必要がない」が最多で、改修コストとセキュリティ不安が続く順位は変わりません。

| 理由 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|---|---|
| 必要がない | 42.0% | 44.7% | 46.0% | 46.5% |
| 既存システムの改修コストが大きい | 31.2% | 24.2% | 29.6% | 28.7% |
| セキュリティに不安がある | 31.2% | 24.2% | 24.9% | 26.6% |
| ネットワークの安定性に不安がある | 19.0% | 15.2% | 14.7% | 13.1% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6より作成(各年とも複数回答)。2022年・2023年は改修コストとセキュリティ不安が同じ値ですが、原資料の値のとおりです。
注意
回答企業は各年とも少なく(150〜256社)、年ごとの増減が誤差の範囲を超えるとは言えません(本記事による概算)。読み取れるのは順位が変わっていないことだけで、割合の低下を「不安の解消」とは読めません。
このデータから言えるのは、改修コストとセキュリティが毎年上位に挙がる課題だという点です。
これらは導入前の懸念であり、移行した企業が感じたデメリットを示す数値ではない
ここまでの数値は、クラウドを使わない企業が導入前に抱く懸念です。 移行した企業が実際に困ったことを示すものではありません。
2025年調査時点で、クラウドサービスを利用している企業は83.4%です。 非利用理由に答えたのは残りの企業の一部で、利用中の多数派の声は含まれません。クラウドのメリットは別の記事で整理しています。
そのため、非利用理由は「移行前に想定されるハードル」として読むのが適切です。なお、2025年調査で最多だった「必要がない」(46.5%)は、後半の対策で改めて取り上げます。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
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既存システムの改修コストはクラウド移行で最も多く懸念されるデメリット

改修コストは、クラウドを利用する予定のない企業が「必要がない」の次に多く挙げる理由です。ここでは、なぜ改修の費用が膨らみやすいのかを、既存システムの状態から見ていきます。なお、後半で使うIPAの調査は、クラウド移行に限らずシステム刷新全般の課題を尋ねたものです。
改修コストは「必要がない」を除くと最も多い非導入理由で、2025年調査で28.7%
既存システムの改修コストは、2年続けて3割前後の企業が挙げています。 2024年調査で29.6%、2025年調査で28.7%でした。
ここで注目したいのは、総務省が尋ねているのが「利用料金が高い」ではなく「既存システムの改修コストが大きい」という点です。クラウドの月額料金が安く見えても、今あるシステムをクラウドに合わせて作り直す費用は別にかかります。データの移行、他システムとの連携の作り直し、動作確認なども含まれます。
この設問の作りから考えると、移行のコストは料金表の比較だけでは見積もれないと言えます。まず見積もるべきなのは、既存システムをどこまで直す必要があるかです。 見積もりの際は、利用料と改修費を分けて考えてみてください。
ブラックボックス化した既存システムは改修範囲を見積もれず、日本企業の31.8%が課題に挙げている
2022年度調査では、日本企業の31.8%が「ブラックボックス化で既存システムの解析が難しい」と答えました。 中身が分からなければ、どこを直すべきかも決められません。
| システム刷新・移行の課題(2022年度調査) | 日本 | 米国 |
|---|---|---|
| ブラックボックス化により既存システムの解析が難しい | 31.8% | 22.3% |
| システムが肥大化し、移行の影響範囲を想定できない | 24.2% | 25.1% |
出典: IPA「DX白書2023」より作成(レガシーシステム刷新・移行の課題、複数回答。クラウド移行に限らない設問)
総務省の調査の改修コストへの懸念と、IPAの調査の改修範囲の見積もりにくさは、同じ時期に観察されています。改修コストの重さは、既存システムの中身が分からないことと並んで現れていると考えられます。ただし、2つは対象企業も設問も異なる別の調査です。
2022年度調査では日本企業の41.2%がシステムの半分以上をレガシーと答え、米国の22.8%の2倍近かった
2022年度調査で、自社システムの半分以上がレガシーシステムだと答えた日本企業は41.2%でした。 米国は22.8%で、日本は2倍近い水準でした。
レガシーシステムとは、古い技術で作られ、仕組みが複雑になったり担当者しか分からなくなったりしたシステムを指します。こうしたシステムが多いほど、クラウドへ移す前に作り直す部分が増えます。
ただし、同じIPAの2024年度調査では、半分以上がレガシーと答えた企業は日本28.5%、米国31.3%で、日米の差は見られなくなっています(いずれも「半分程度」と「ほとんど」の合計で、本記事による計算値)。回答企業数が年度で異なるため単純な比較はできませんが、「日本は米国の2倍近い」と言えるのは2022年度時点の結果です。
それでも、日本企業の3割近くがシステムの半分以上をレガシーと答えている状況は続いています。移す前に作り直す部分の多さは、今も改修コストを見積もるうえでの前提になります。
レガシーシステムの保有率は大企業で74%と、全体の61%を13ポイント上回る
経済産業省のレポートによると、2024年度にレガシーシステムを保有する企業は全体で61%、大企業で74%でした。 差は13ポイントです(本記事による計算値)。

既存システムが多い企業ほど、移行時に直す部分も増えます。レポートは中小企業より大企業の保有率が高いと説明していますが、中小企業の値は図に数値で示されていません。全体の61%(516社、産業分野別の集計)と大企業の74%(402社中の企業規模別の集計)は、集計の対象数が異なります。
注意
「約6割がレガシーを持つ」は、深刻さまでは示しません。別の調査ですが、IPAの2024年度調査(日本企業)では「一部の領域に残る」34.2%、「半分程度」13.0%、「ほとんど」15.5%です。合計は6割強ですが、半分以上に絞ると3割弱です(本記事による計算値)。「既にない」は20.0%、「わからない」は16.8%でした。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/IPA「DX白書2023」/IPA「DX動向データ集2025」/経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」
セキュリティ対策の責任は移行後も利用企業側に残る

ここでは「クラウドは危ない」という話ではなく、事業者と利用企業の責任分担の観点から整理します。
クラウドを利用する予定のない企業の26.6%が情報漏えいなどセキュリティへの不安を理由に挙げている
2025年調査で、クラウドを使う予定がない企業の26.6%が、情報漏えいなどセキュリティへの不安を理由に挙げました。 4社に1社を超える割合です。
この理由は、2022年から2025年までの4回の調査を通じて、改修コストと並んで上位にあり続けています。年ごとの値には上下がありますが、回答企業が少ないため、増えた・減ったとは判断できません。
社外のサーバーに自社のデータを預けることへの抵抗感は、根強い懸念と考えてよいでしょう。情シスとしては、この不安を「漠然とした怖さ」で終わらせず、何を確認すれば解消できるかに分解することが大切です。 その手がかりが、次に説明する責任範囲の考え方です。
事業者と利用企業の責任範囲を取り違えると、設定や運用の抜けが生じる
クラウドに移しても、セキュリティ対策のすべてを事業者が担うわけではありません。 責任の線引きを誤ると、誰も対応していない部分が生まれます。
前の見出しで見たセキュリティへの不安は、この線引きの分かりにくさとも関係していると考えられます。IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026」の解説書は、クラウド利用時の追加対策を示しています。
その一つが、事故時の対応範囲を事業者と明確にすることです。事業者が仕様を変えたときに、自社の設定を見直すことも含まれます。
契約前に事業者の担当範囲を確認し、移行後も設定を定期的に点検する体制が必要です。 なお、クラウドに固有の事故件数や被害額は、今回確認した公的統計には見当たりませんでした。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」解説書(組織編)
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ネットワーク障害やクラウド停止で業務が止まるリスクがあり、2025年調査で利用予定のない企業の13.1%が不安を挙げている

2025年調査で、クラウドを使う予定がない企業の13.1%が、ネットワークの安定性への不安を理由に挙げました。 1割強と少数ですが、2022年から毎年挙がっている理由です。
2022年の19.0%から値は下がっていますが、回答企業が少ないため誤差の範囲に収まります。不安が解消されたとは読めない点に注意してください。
クラウドはインターネットなどの回線を通じて使います。そのため、回線や事業者側のシステムに障害が起きると、業務が止まるおそれがあります。社内にサーバーを置いていたときは自社で復旧を進められましたが、クラウドでは事業者の復旧を待つしかない場面も出てきます。
IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026」の解説書も、追加の対策の一つに挙げています。クラウドが止まったときの代わりの手段を用意しておくことです。停止を前提に、業務を続ける方法を移行前に決めておくことが大切です。
ポイント
- インターネット回線を二重化し、片方の障害で業務が止まらないようにする
- クラウドが使えないときの業務手順(連絡方法、紙での代替など)を決めておく
- 重要なデータは、クラウドとは別の場所にも保管しておく
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」解説書(組織編)
カスタマイズの制約とベンダーロックインは公的データで深刻度を測れないため、契約前に確認する

カスタマイズの制約とロックインはよく挙がるデメリットですが、公的データで測れる範囲はごく一部です。
「カスタマイズができない」を理由に挙げる利用予定のない企業は2025年調査で6.6%にとどまる
「ニーズに合わせたカスタマイズができない」を理由に挙げた企業は、2025年調査で6.6%でした。 2024年調査も6.5%で、導入を止める理由としては少数派です。
SaaSのように完成したサービスを使う形では、自社の業務に合わせて画面や機能を作り変えることが難しい場合があります。この制約自体はよく知られており、移行後に「前のシステムでできたことができない」と感じる場面は起こり得ます。
それでも、導入をやめる決め手になる企業は1割に届きません。カスタマイズの制約は、改修コストやセキュリティほど判断を左右していないと読めます。
ただし、カスタマイズの制約とベンダーロックインは別の問題です。この値が低いからといって、ロックインの心配が小さいとは言えません。
ベンダーロックインは公的統計に数値が無く、契約条件とデータの持ち出し手段で備える
ベンダーロックインの深刻さは、今回確認した公的統計では測られていません。 総務省の非利用理由にも、IPAの刷新・移行の課題にも、乗り換えの難しさを直接尋ねる項目がありません。最も近いカスタマイズの項目も、ロックインそのものは尋ねていません。
ロックインは、特定の事業者に依存して乗り換えにくくなる状態です。独自の機能やデータ形式、厳しい解約条件があると起きやすくなります。数値がない以上、契約前に次の点を確認しておくほうが実務的です。
契約前の確認ポイント
- データをどの形式・どの手段で取り出せるか
- 契約終了時に、データの返却や削除がどう扱われるか
- 事業者独自の機能に、どこまで依存することになるか
- 料金の改定や仕様の変更が、いつ・どのように通知されるか
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/IPA「DX白書2023」
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移行後のコスト超過と運用体制の変化は公的データの空白で、定性的なリスクとして見積もる

移行後に何が起きるかは、公的統計ではほとんど測られていません。ここでは起こりやすいことを定性的に整理します。
公的統計が測っているのは導入前の懸念と計画段階の課題までで、移行後の予算超過は測られていない
今回確認した公的統計には、移行後に予算を超えた企業の割合を示す数値がありません。 測られているのは移行前の段階までです。
総務省の調査が尋ねるのは、クラウドの利用率(2025年調査時点で83.4%)と、使わない企業の理由です。IPAの2022年度調査では日本企業の25.7%が予算・納期の確保を課題に挙げていますが、これも計画段階の課題です。
注意
移行後のコスト超過は民間企業の調査も公表されていますが、本記事は官公庁の一次データに限るため引用していません。社内資料で使う際は、調査主体と対象を確認してください。
利用率が8割を超えた今、最も知りたい「移行後の実態」は公的データの空白だと言えます。数値がないからといってリスクが小さいわけではなく、自社で見積もる必要があります。
従量課金によるコスト超過と、情シスの業務内容の変化は移行前に想定しておく
コスト超過と運用の変化は、数値がない分、起こりやすい場面をあらかじめ洗い出しておくことが大切です。 前に見たとおり、改修コストは上位の懸念で、計画段階でも予算の確保が課題になっています。移行前の想定が甘いと、費用は膨らみやすいと考えられます。
コストが想定を超えやすい場面と、情シスの仕事が変わるポイントは次のとおりです。
- 移行期間中は、オンプレミスとクラウドの両方に費用がかかる
- 従量課金のサービスでは、利用量が増えるとそのまま費用が増える
- データをクラウドの外へ転送する際に、別料金がかかる場合がある
- 移行の途中で、想定していなかった改修が追加で見つかる
- 運用の中心が、機器の保守からアカウント・権限・設定の管理に移る
- 契約内容や毎月の利用料を確認する業務が新たに増える
いずれも、移行前に想定しておけば予算や体制の計画に織り込める項目です。毎月の利用料を確認する担当と手順を、移行前に決めておくと安心です。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/IPA「DX白書2023」
クラウド移行を進める人材と推進体制が不足しやすい

移行のデメリットは、技術や費用だけではありません。移行を進める人と体制の不足も、大きな課題になります。ここで使うIPA「DX白書2023」の数値は2022年度の単年データで、クラウド移行に限らずシステム刷新全般について尋ねた設問です。

日本企業の33.5%が「移行に長けたプロジェクトリーダーがいない」と回答し、米国の14.0%を19.5ポイント上回る
2022年度調査で、日本企業の33.5%が「刷新・移行に長けたプロジェクトリーダーがいない」と答えました。 米国は14.0%で、差は19.5ポイントです(本記事による計算値)。
| 人材に関する課題(2022年度調査) | 日本 | 米国 |
|---|---|---|
| 刷新・移行に長けたプロジェクトリーダーがいない | 33.5% | 14.0% |
| 古い技術を理解した技術者を確保できない | 19.5% | 17.9% |
| DXなど他の案件で手一杯で、移行に人を割けない | 20.1% | 18.7% |
出典: IPA「DX白書2023」より作成(レガシーシステム刷新・移行の課題、複数回答)
技術者や要員の不足に日米で大きな差はなく、差が目立つのはリーダーの有無です。日本の情シスにとっての課題は、技術の難しさより「率いる人がいない」ことにある可能性があります。
米国では経営層の予算・納期確保が36.8%で最大の課題となり、日本とボトルネックが異なる
米国企業で最も多い課題は「経営者に困難さが理解されず、予算や納期を確保できない」で、36.8%でした。 日本は25.7%です。
「経営者に必要性が理解されない」も、日本18.8%、米国22.5%と米国が上回ります。日本は推進体制、米国は経営判断に、課題が集まっている形です。
ただし、複数回答の選び方には国による差があります。8項目の選択率の合計は日本205.8%、米国186.3%で(本記事による計算値)、日本のほうが多くの項目を選んでいます。日本側の値が高めに出る一因と考えられます。
※合計は本記事による計算値です。IPA「DX白書2023」図表5-28「レガシーシステムの課題」(複数回答、日本538社・米国386社)の選択肢のうち、「その他」を除く8項目の選択率を国ごとに足しています。
とはいえ、日本でも4社に1社が予算・納期の確保を課題に挙げています。移行の難しさを経営層に事前に説明しておくことは、日本の情シスにとっても欠かせない準備です。
利用部門の業務フローへのこだわりも、日本企業の32.2%が移行の課題に挙げている
2022年度調査で、日本企業の32.2%が「利用者の既存の業務フローや操作性へのこだわりを解消できない」と答えました。 米国も29.0%で、日米ともに上位の課題です。
クラウド、特にSaaSでは、これまでの画面や操作をそのまま再現できないことがよくあります。利用部門から「前と同じようにしてほしい」と求められると、調整は情シスの負担になります。カスタマイズの制約の見出しで触れた点が、ここでも人の問題として表れます。
移行計画には、システムに業務を合わせるという合意を利用部門と取る工程を含めておくことが大切です。 移行前に業務の流れを見直す場を設けると、後からの手戻りを減らせます。
出典: IPA「DX白書2023」
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クラウド移行のデメリットは、移行前の棚卸しと対象の選別で小さくできる

ここまで見てきたデメリットの多くは、移行前の準備で小さくできます。最後に、何から手を付けるべきかを、既存システムの把握と移行対象の選び方の2点で整理します。
DXに取り組んでいない企業の40.8%は自社のレガシーシステムの状況を把握できていない
2022年度調査で、DXに取り組んでいない日本企業の40.8%が、自社のレガシーシステムの状況を「わからない」と答えました。 DXに取り組む企業では8.2%、日本企業全体では18.5%です。
DXに取り組んでいない企業では、「わからない」の割合がDX取組企業の約5倍にあたります(本記事による計算値)。ただし、取り組んでいないから把握できていないのか、把握できていないから取り組めないのかは、このデータからは判断できません。
この差から読み取れるのは、現状を把握していない企業ほど、移行のデメリットを正しく見積もれないという点です。改修の範囲も費用もリスクも、既存システムが分かって初めて見積もれます。見積もれなければ、デメリットを過小にも過大にも評価してしまいます。
最初の一歩は、システムの棚卸しです。 対象のシステム、連携しているほかのシステム、保守の期限、担当者を一覧にするところから始めてみてください。
移さないシステムを決め、契約前に責任範囲と撤退手段を確認する
すべてのシステムをクラウドに移す必要はありません。 2025年調査で、クラウドを使う予定がない企業の最多の理由は「必要がない」の46.5%でした。業務上の必要性と改修の負担を比べ、移す対象を選ぶ判断は十分に成り立ちます。
段階的に移す、一部のシステムは社内に残す、といった選択肢も検討してみてください。IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026」の解説書でも、クラウドを選ぶ前に事前の調査を行うことが挙げられています。ロックインのように数値で測れないリスクも、契約前の確認で備えられます。
移行前のチェックリスト
- 既存システムの棚卸しが済んでいるか
- 移す対象と残す対象の線引きができているか
- 事業者と自社の責任範囲を確認したか
- クラウドが止まったときの代わりの手段があるか
- データの取り出し方法と解約条件を確認したか
- 移行を率いる担当者を決め、経営層に説明したか
出典: IPA「DX白書2023」/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」解説書(組織編)
まとめ

クラウド移行のデメリットは、公的データで測れるものと測れないものに分けて考えると整理しやすくなります。この記事の要点は次の3つです。
- 公的データで裏付けられる主な壁は、既存システムの改修コスト、セキュリティへの不安、移行を率いる人材の不足の3つです
- ベンダーロックイン、移行後のコスト超過、運用の変化は公的統計に数値がないため、契約前の確認と事前の見積もりで備えます
- 最初の一歩は既存システムの棚卸しで、ここが分かれば改修の範囲も費用も見積もれるようになります
デメリットを並べると移行に慎重になりがちですが、多くは準備で小さくできます。まずは自社のシステムを一覧にするところから始めてみてください。
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移行を率いる情シスを育てるなら「情シスカレッジ」
この記事では、移行を率いる人材の不足が日本企業の大きな課題になっていることを紹介しました。クラウド移行を進めるには、責任範囲の考え方や契約の確認点など、幅広い基礎知識が欠かせません。新人やひとり情シスが、それを一人で身につけるのは簡単ではありません。
情シスカレッジは、新人・ひとり情シスのためのマイクロラーニングLMSです。数分の動画と小テストで、業務の合間に必要な知識を少しずつ積み上げられます。
情シスカレッジの特徴
- 数分の動画+小テストで、まとまった学習時間を取らずに進められます
- 必修の割り当て・期限設定・進捗ダッシュボードで、受講状況をまとめて管理できます
- 自社カリキュラムの編成とCSVでの教育記録に対応し、社内の教育履歴として残せます
5名から利用でき、請求書払いにも対応しています。初期設定はおよそ10分で、担当者が1人でも始められます。
※出典

