社内SEとは？仕事内容や年収・将来性まで経験者が解説！

こうした疑問を持つ人は少なくありません。特に近年は、ワークライフバランスの取れた働き方や、社内にいながらITスキルを活かせるポジションとして注目が集まっています。

筆者は約3年間事業会社の社内SEとして勤務しており、情報システムの企画・開発・運用から、ヘルプデスクやセキュリティ対応まで幅広く担当してきました。

この記事では、社内SEの仕事内容や年収、必要なスキル、キャリアパスまで、わかりやすく解説します。

記事を読めば、自分が社内SEに向いているのか、どうすれば転職できるのかまで理解できます。

社内SEとは、社内のIT環境を支えるエンジニア職のこと

社内SEとは、企業内部のIT環境を支えるエンジニアであり、社員が安心して業務に取り組めるようシステムやインフラの保守・運用を担う役職です。

社内のITに関する問い合わせ対応やシステム開発、ネットワーク構築など業務範囲が多岐に渡り、求められるスキルも多くなります。

近年は経営にも関与する機会が多く、企業の成長にも貢献できる職種といえるでしょう。

社内SEとシステムエンジニアの違い

社内SEとシステムエンジニアは、いずれもITに携わる職種ですが、業務内容や働き方には明確な違いがあります。

社内SEは自社の社員をサポートする役割であり、システムエンジニアは外部クライアント向けの開発が主業務です。

比較項目	社内SE	システムエンジニア
顧客	自社の社員	外部のクライアント
担当範囲	ITインフラの運用・保守、社内サポート	システム開発、要件定義、設計・実装
勤務スタイル	社内常駐・定時勤務が多い	プロジェクト次第で残業・出張あり、客先常駐
必要スキル傾向	幅広い知識を活かすゼネラリスト型	開発や設計などの専門特化型

社内SEは社内の人間がクライアントになるため、納期の融通などが効きやすく、ホワイトな職場環境であるケースが多いです。

そのため、安定した働き方を求める人や、社内で長期的に働きたい人には、社内SEの方が向いているといえるでしょう。

社内SEの仕事内容

社内SEの仕事は、以下のように多岐にわたります。

それぞれ詳しく解説します。いまいちどのような仕事をするのかわからない人は、ぜひ参考にしてみてください。

IT資産管理

社内SEの基本的な業務のひとつがIT資産管理です。PCやスマートフォン、ソフトウェアのライセンス、ネットワーク機器など、自社が保有するIT関連資産の配備・棚卸・廃棄までを一元的に管理します。

たとえば、誰がどのPCを使っているのか、OSやセキュリティソフトのバージョンは最新か、ライセンスは適切に管理されているかなどを記録し、トラブルや情報漏えいを未然に防ぐ役割を担います。

IT資産管理ツールを使用して自動化・可視化する企業も多く、全社的なITコストの最適化をおこなう重要な業務です。

ヘルプデスク業務

社員からのITに関する問い合わせ対応も、社内SEの主要な業務です。PCの不調やネットワーク接続のトラブル、パスワードのリセット依頼など、現場で生じる課題にスピーディーかつ丁寧に対応します。

ヘルプデスク業務では技術的なスキルだけではなく、ヒアリング力や説明力が重要です。ITに詳しくないユーザーにも分かるよう、噛み砕いて説明できるコミュニケーション能力が必要になります。

また、同じようなトラブルが頻発する場合は、ナレッジ化して社内ポータルに掲載するなど、業務効率化をおこなうのも業務のひとつです。

社内システム開発

業務の効率化や現場ニーズに応えるために、社内専用のシステムやツールを開発・改修する業務も、社内SEの重要な役割です。

業務フローに即した要件定義をおこない、開発はベンダーに委託するケースが多いものの、最近ではノーコードや内製化が進んでいます。

たとえば、Excelで管理していた情報をkintoneのようなWebシステムに置き換えることで、集計作業を自動化したり、人的ミスを減らしたりといった効果が期待できます。

また、開発後の社内展開・マニュアル整備・運用支援まで関わるため、プロジェクト全体を俯瞰するマネジメントスキルも求められるでしょう。

セキュリティ対策

情報漏えいやサイバー攻撃を防ぐためのセキュリティ対策も、社内SEの重要な業務です。

ウイルス対策ソフトの導入、アクセス権限の設定、パスワードポリシーの策定、外部クラウドとの接続管理など、実施すべきセキュリティ対策は多岐に渡ります。

近年では、ランサムウェアやフィッシング詐欺による被害が増加しており、IT担当者としてのリスク管理能力が問われています。

また、セキュリティ教育の実施やインシデント対応マニュアルの整備など、組織全体のリテラシーを向上させることも社内SEの業務です。

社内ITの導入・運用・保守

社内SEは、新しいITツールやソフトウェアの導入、既存システムの運用保守もおこないます。

導入時は、現場の課題を把握し、最適なソリューションを選定するところから始まります。その後、テスト環境の構築や導入後の研修・マニュアル作成といったサポートを社内SEがおこなわなければなりません。

運用段階では、不具合対応やアップデート管理、ユーザーアカウントの管理などのサポートも役割のひとつです。

社内インフラ構築・管理

ネットワークやサーバー、VPN、Wi-Fi環境といった社内インフラの構築・管理も社内SEの重要な業務のひとつです。

インフラ基盤が安定していなければ、どれだけ優れたシステムを導入しても日常業務に支障が出てしまいます。

たとえば、拠点間を結ぶVPN接続の設定や、社内サーバーの監視、障害発生時の原因特定と復旧対応などが社内インフラ業務として挙げられます。

最近ではクラウド活用（AWS、Azureなど）も進んでおり、クラウドの知見を持った人材も求められるようになっているため、身につけておくと転職市場でも有利になるでしょう。

社内SEに求められるスキル

社内SEに求められるスキルは、以下のとおりです。

それぞれ詳しく解説します。

コミュニケーションスキル

社内SEは、他部署やベンダーなどさまざまな人と関わる機会があるため、コミュニケーションスキルが必須です。

ヘルプデスク業務や経営層にITの必要性を理解してもらう場面では、相手の困りごとを正確に聞き取り、技術的な解決策をわかりやすく伝える力が求められます。

たとえば「ネットがつながらない」と問い合わせを受けた場合、PCの設定ミス、LANケーブルの断線、回線トラブルなどさまざまな要因が隠れています。

ユーザーの言葉を鵜呑みにせず、冷静に状況を聞き出すヒアリング力が重要です。

IT全般の知識・スキル

社内SEの業務は多岐にわたるため、IT全般の知識・スキルを身につける必要があります。

ネットワークからOS、クラウド、セキュリティ、業務システムまで幅広い領域を担当することが多いため、専門分野に偏らない「IT全般の知識」が必須です。

プログラマーやシステムエンジニアのように特定の領域に特化するのではなく、幅広く対応できるのが社内SEには求められます。

プロジェクトマネジメントスキル

社内SEは、新しいシステムやITツールの導入時にプロジェクトマネージャーとしての役割も求められます。

システムの企画立案から導入、社内浸透、運用まで一連のプロセスを管理するスキルが必要です。

たとえば、部署横断で使う新システムを導入する際、現場のニーズを吸い上げ、予算やスケジュールを調整し、ベンダーと連携して開発を進めるといったタスクを担います。

進行中のプロジェクトにおいては、トラブルや遅延が発生した際のリスク管理や、関係者間の調整力も重要です。

予算管理スキル

社内SEは、IT資産やシステム投資に関わる予算管理スキルも必要です。高性能なツールを導入するだけでなく、費用対効果や導入後の維持コストまで踏まえた予算管理が欠かせません。

たとえば、クラウドサービスの選定では「初期費用が安いが月額費用が高い」「逆に導入コストはかかるが運用コストが抑えられる」といった比較をおこない、最適な選択をする必要があります。

また、経営層に対してITツールを導入する意味を説明する場面もあり、数字で納得感を出せる資料作成やプレゼン能力も必要になります。

業界の知識

社内SEは自社の業務フローや法律に準拠したシステムの導入などをおこなうために、所属する業界の知識が求められます。

たとえば製造業であれば、在庫管理や工程管理の知識が、物流業であれば配送ルートや追跡システムの仕組みを覚える必要があるでしょう。

現場の業務を理解していると、ニーズの本質を素早くつかむことができ、現場の満足度が高いIT活用を実現できます。

社内SEとして働く魅力3選！

社内SEとして働く魅力は、以下の3つです。

それぞれ詳しく解説します。

ユーザーから直接感謝されるやりがいがある

社内SEは、トラブル対応や業務サポートを通じて、社内の社員から直接「ありがとう」と感謝されることが多い職種です。

ユーザーに近い距離で仕事ができるため、自分の仕事が誰かの役に立っている実感を得やすいのが特徴です。

誰かの役に立つことに対してやりがいを感じる場合は、社内SEの仕事が向いているでしょう。

インフラ・開発・サポートなど幅広い経験を積める

社内SEは、インフラ構築、業務システムの導入、ユーザーサポート、セキュリティ対策など、多岐にわたる業務を経験できます。

特定の領域に絞られることがないため、幅広くITに携わりたい人におすすめです。

顧客が社内のため融通が利きやすい

社内SEの大きな魅力のひとつは、顧客が自社の社員であるため、スケジュールや要件の調整がしやすい点です。

外部のクライアントを相手にする開発職やSIerでは納期や仕様が厳しく固定されがちですが、社内SEは柔軟に進められるケースが多くあります。

そのため、ワークライフバランスを重視する人は、社内SEの働き方が適しているといえるでしょう。

社内SEに向いている人の特徴

社内SEに向いている人の特徴は、以下のとおりです。

それぞれ詳しく解説します。

コミュニケーションスキルのある人

社内SEは、社内のさまざまな部署や社員と日常的に関わるため、技術力だけでなく「話す力」「聞く力」が非常に重要です。

ITの専門知識がない人とも円滑にコミュニケーションを取れる人は、社内SEに向いています。

また、部門間の調整やベンダーとの交渉も発生するため、相手の立場を理解し、論理的に話せる力がある人は重宝されます。

ワークライフバランスを重視している人

「無理なく働き続けたい」「家庭や趣味との両立を図りたい」と考える人にとって、社内SEは魅力的な職種です。

納期や障害対応に追われがちな開発職と比べて、残業や休日出勤の頻度が低く、比較的安定した働き方が可能です。

特に自社の業務スケジュールに合わせてIT施策を進められるため、自分で仕事の段取りを組みやすいメリットがあります。

テレワークやフレックス勤務を導入している企業も増えており、柔軟な働き方が選べる環境も整っています。ワークライフバランスを重視して長くIT分野で活躍したい人におすすめです。

ITの力で経営改善に貢献したい人

社内SEは、単にITのトラブル対応をするだけでなく、業務効率化や売上や生産性をITを活用してどう上げるのかといった経営視点も求められます。

そのため、ITを使って企業活動全体をよくしたい思考のある人に向いています。

たとえば、手作業で行っていた報告業務を自動化したり、無駄なライセンス費用を削減するためのシステム再編を提案したりと、社内SEの判断がそのままコスト削減や業績改善につながることも少なくありません。

ITの力で業績に貢献したいと考えている人にとって、社内SEは最適な職種といえるでしょう。

ゼネラリスト的な存在を目指したい人

社内SEは、インフラ、開発、運用、セキュリティ、サポートまで幅広く関わるため、自然とゼネラリストとしてのスキルが身につきます。

特定の技術にとどまらず、IT全般に触れたいと考えている人に向いています。

将来的にIT部門の責任者やCIOを目指す場合にも、広範な経験は大きな強みとなるでしょう。

社内SEはDX推進やセキュリティ強化の需要で今後も将来性が高い

近年、企業のDXやクラウド導入が加速する中、社内SEの重要性がますます高まっています。特に、業務のIT化やデータ活用を推進するには、現場を理解した内部のIT人材が不可欠です。

さらに、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクが増大する中で、社内のセキュリティ強化も急務となっています。

こうした背景から、社内SEは今後も継続的に需要がある職種であり、安定したキャリアを築きたい人にとって魅力的な選択肢です。

社内SEに関するよくある質問

まとめ | 社内SEは“社内のIT何でも屋”として活躍できる存在

社内SEは、トラブル対応だけでなく、業務改善やDX推進、セキュリティ強化など、企業全体を支える重要な職種です。

幅広いスキルを活かして現場に貢献できるため、やりがいも大きく、将来性も非常に高いといえるでしょう。

未経験からの転職も可能で、安定した働き方や柔軟なキャリア形成を求める人にとって魅力的な選択肢といえます。