TCPとは?仕組みやメリット・デメリット、他のプロトコルとの違いを解説

TCPとはどんなプロトコル?
TCPを導入するメリット・デメリットは?
他のプロトコルとは何が異なるの?
TCPは「Transmission Control Protocol」の略で、信頼性を最優先にした通信方式です。パケットの欠落や順序の乱れを自動で補正し、確実にデータを届けます。
TCPの仕組みを正確に理解できれば、なぜメールやWeb閲覧が安定しているのか納得できるはずです。
この記事では、TCPがどのようなプロトコルなのか、使用するメリット・デメリット、他のプロトコルとの違いまで詳しく解説します。
TCPとは信頼性を重視した通信プロトコル

TCP(Transmission Control Protocol)は、インターネット上で最も広く使われている通信方式のひとつです。大きな特徴は信頼性を最優先する点です。
データを小さなパケットに分割して送信し、受信側で順序通りに並び替え、欠落があれば再送を要求します。これにより、途中でデータが失われたり破損しても正しく復元できます。
Webサイト閲覧やメール送信、ファイル転送など、確実性が求められる通信の多くはTCPによって支えられています。
TCPの仕組み

TCPは「接続の開始から終了までの手順」を順序立てて実行することで、高い信頼性を実現します。具体的には次のような流れで動作します。
- コネクションの確立(3ウェイハンドシェイク)
SYN → SYN/ACK → ACK の3段階で送受信の準備を整える。 - データの送信
データをセグメントに分割し、シーケンス番号を付与して送信。受信側は番号に基づいて正しい順序に並べ替える。 - 確認応答(ACK)と再送制御
受信側が各セグメントに対してACKを返す。応答がなければ送信側は再送を行う。 - コネクションの終了(4ウェイハンドシェイク)
FIN → ACK → FIN → ACK の4段階で接続を安全に切断する。
これらの仕組みにより、TCPは途中でデータが欠落したり順番が乱れても、正確な通信を保証できます。
TCP/IPとはインターネットの基盤を支える通信モデル

TCP/IPは、インターネットや企業ネットワークの通信を支える基本モデルです。
IPが宛先にデータを届ける「住所の役割」を担い、TCPが届いたデータを正しい順序で復元する「品質保証の役割」を果たします。
この二つを組み合わせることで、Web閲覧やメール送信などの信頼性の高い通信が可能です。TCP/IPは階層型の仕組みを持ち、役割を分担することで柔軟な拡張性と互換性を実現しています。
層 | 主なプロトコル | 役割 |
---|---|---|
アプリケーション層 | HTTP, SMTP, FTP | サービス提供 |
トランスポート層 | TCP, UDP | 信頼性や速度を制御 |
ネットワーク層 | IP | 宛先指定と配送 |
データリンク層 | Ethernet, Wi-Fi | 物理的転送 |
TCPを使用するメリット

TCPを使用するメリットは、以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
データの信頼性が高い
TCPは、送信したデータの信頼性が高い点が大きなメリットです。インターネットの通信は途中でパケットが欠落したり順序が入れ替わることが少なくありません。
仮に補正がおこなわれなければ、Webページが崩れたりファイルが壊れたりするリスクがあります。
TCPは、データの破損を防ぐためにもパケットに番号を振って順序を管理し、受信確認を行う仕組みを備えています。
また、欠落が見つかれば再送をおこない、完全な状態に復元するため、利用者は不安定な環境でも安定した通信が利用可能です。
エラー検出と修正が可能
TCPはデータを確実に届けるために、送信した情報にチェックサムと呼ばれる検査値を付与します。受信側は届いたパケットを検証し、内容に誤りがあれば再送を要求します。
そのため、ネットワーク途中で生じる電波干渉やパケット破損といった影響の最小化が可能です。
処理速度に合わせたフロー制御が可能
TCPは、通信の安定性を保つためにフロー制御が可能です。フロー制御は送信側が相手の処理能力を考慮し、データを送りすぎないように調整する機能です。
たとえば、受信側の処理が追いつかない状況で一方的にデータを送り続ければ、バッファがあふれてパケットの破棄や通信障害が発生します。
TCPではウィンドウサイズと呼ばれる制御値を用いて、相手が処理できる範囲に合わせて転送量を調整します。そのため、通信環境が不安定でも安定したやり取りが可能です。
TCPを使用するデメリット

TCPを使用するデメリットは、以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
オーバーヘッドが大きくなる
TCPは高い信頼性を実現する一方で、制御機能の多さが通信の効率を下げる原因にもなる点には注意が必要です。
データ送信時には確認応答や再送、順序制御など複雑な処理がおこなわれるため、オーバーヘッドが増加しやすくなります。
オーバーヘッドが大きくなると、通信速度の低下や遅延につながりやすくなります。
リアルタイム性が求められるオンラインゲームや音声通話では、信頼性より速度を優先するUDPが採用されることも少なくありません。
データの遅延が発生する可能性がある
TCPは信頼性を優先するため、確認応答や再送制御といった複雑な処理をおこないます。
データの正確性は高まる反面、TCPの確認応答や再送制御といった仕組みは、通信に遅延を発生させる要因ともなります。
たとえば動画配信やオンラインゲームのようにリアルタイム性が重視される場面では、数百ミリ秒の遅延でも大きな影響を与えるでしょう。
TCPは安定性に優れる一方で、速度面では必ずしも最適ではないことを理解しておく必要があります。
TCPと他のプロトコルとの違い

ここからは、TCPとよく比較されるプロトコルについてそれぞれ違いを確認していきます。
UDPとの比較
TCPが確認応答や再送制御によって信頼性を確保するのに対し、UDPは「送ったら送りっぱなし」のシンプルな仕組みです。
そのためオーバーヘッドが小さく、遅延も最小限に抑えられます。UDPは仕組み上、オンラインゲーム、ストリーミング、VoIPなどリアルタイム性が重要な用途で多く採用されています。
一方で信頼性が担保されないため、正確性が求められるWeb通信やファイル転送には不向きです。
特徴 | TCP | UDP |
---|---|---|
通信方式 | コネクション型 | コネクションレス型 |
信頼性 | 高い(再送・順序制御あり) | 低い(確認応答なし) |
オーバーヘッド | 大きい | 小さい |
適した用途 | Web、メール、ファイル転送 | ゲーム、動画配信、音声通話 |
SCTPとの比較
SCTP(Stream Control Transmission Protocol)は、TCPとUDPの両方の特徴を取り入れたプロトコルです。
TCPのようにコネクションを確立して信頼性を担保しつつ、UDPのように複数のストリームを同時に扱える柔軟性を持っています。
マルチストーリミング機能が備わっており、一部のデータが遅延しても他の通信に影響を与えません。
また、マルチホーミング機能により、複数のネットワーク経路を使って冗長性を確保できる点も特徴です。
TCPにはどのようなセキュリティ機能がある?

TCP自体にはセキュリティ機能は備わっていませんが、使用時は下記のようなセキュリティ対策が利用されます。
それぞれ詳しく解説します。
ファイアウォール
ファイアウォールは、TCP通信を安全に利用するための基本的なセキュリティ対策です。
TCPではポート番号を用いて通信をおこないますが、ファイアウォールはTCPのポートを基準に通信を許可または拒否します。
不要なポートはファイアウォールでブロックすることで、不正アクセスによるリスクを減らせます。
IPS/IDS
IDSは、TCP通信を監視して不正なアクセスや異常な挙動を検知する仕組みです。たとえば、大量の接続要求や不自然なポートスキャンを検出し、管理者にアラートを出します。
一方のIPSは、検知だけでなく自動的に不正通信を遮断する機能を備えており、攻撃を未然に防ぎます。
IPSやIDSを導入すれば、ネットワーク内の不正な動きを検出し、セキュリティリスクを防止することが可能です。
TLS
TLSは、TCP通信の上に暗号化を施し、安全性を高める技術です。TCP単体ではデータが平文で流れるため、盗聴や改ざんのリスクがあります。
TLSを導入しておけば、通信内容は暗号化され、第三者がデータを読み取ったり改ざんすることが困難になります。Web通信においては、HTTPSがTLSを利用する代表例です。
まとめ | TCPは信頼性を優先する通信に欠かせないプロトコル
TCPは、パケットの順序制御や再送機能により信頼性を最優先する通信プロトコルです。Web閲覧、メール送信、ファイル転送など正確性が不可欠なサービスはTCPなしには成り立ちません。
一方で遅延やオーバーヘッドの課題もあるため、用途によってはUDPやSCTPが選ばれるケースもあります。
TCPは信頼性を優先する通信に欠かせないプロトコルであることを覚えておきましょう。