【総務省データ】キッティングとは|作業内容と手順、テレワーク導入率50.1%(2025年)から見る外注・自動化の判断軸

「キッティング」という言葉が社内の会話で急に出てきて、戸惑ったことはありませんか。新任の情シスや、ひとりで社内IT全般を見ている方からよく聞く悩みです。
- 「キッティング」って、結局どこからどこまでの作業を指すの?
- 新入社員ぶんのPCを毎年ひとりで設定していて、正直しんどい
- 代行に出すか自社で続けるか、判断する材料がない
結論から言うと、キッティングとは新しいPCを従業員がその日から使える状態にするまでの作業全体のことです。設定作業だけでなく、資産台帳への登録や配布までが含まれます。
この記事では、言葉の意味と作業内容、5つの工程、自社対応と代行の判断軸を解説します。判断軸のパートは、総務省の通信利用動向調査を根拠に組み立てました。
この記事のポイント
- キッティングはPCを業務で使える状態にするまでの一連の作業で、設定だけでなく資産登録・配布までを含みます
- クラウドサービスの利用率は2025年に83.5%へ達しました。一方で全社的に利用している企業は60.0%で、4割の企業は全社利用に至っておらず、端末側の設定作業は残ります(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙1)」/同(別紙2))
- 判断軸は「自社で抱えるべき作業かどうか」です。企業がクラウドを選んだ理由でも「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」が2025年調査で42.8%を占めました(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」)
キッティングはPCを業務で使える状態に整える一連の作業
キッティングとは、購入したPCや業務端末を、従業員がすぐ業務に使える状態まで整える一連の作業を指します。語源は英語の kit で、必要なものを一式そろえるという意味です。
箱から出しただけのPCは、社内ネットワークにもつながらず、業務アプリも入っていません。そこにOSの初期設定から業務アプリの導入、セキュリティ設定、資産台帳への登録までをまとめて行うのがキッティングです。
情シスにとっては、入社シーズンやPCの入れ替え時期に必ず発生する定番業務にあたります。まずは、この記事全体で扱う範囲を先に押さえておきましょう。
ポイント:キッティングに含まれる作業範囲
- ハードウェアの開梱・検品・初期セットアップ
- 業務アプリ、ネットワーク、セキュリティの設定
- 資産管理台帳への登録とラベル貼付
- 動作確認(検品)と利用者への配布
キッティングはセットアップやインストールより広い範囲を指す
キッティングは、セットアップやインストールを含んだ、より広い概念です。混同されやすい言葉なので、最初に整理しておきます。
セットアップは機器そのものを使える状態にすること、インストールはソフトウェアを導入することを指します。どちらも作業の一部分を表す言葉です。
これに対してキッティングは、社内標準への統一、資産登録、配布までを含みます。つまり「その端末が社内の管理下に入り、業務で使える状態になるまで」がキッティングの範囲です。
| 用語 | 指す範囲 | ゴール |
|---|---|---|
| セットアップ | 機器単体の初期設定 | 機器が動作する状態になる |
| インストール | ソフトウェアの導入 | 必要なソフトが使える状態になる |
| キッティング | 上記に加えて社内標準化・資産登録・配布 | 従業員が業務で使える状態になる |
※用語の整理は一般的な実務上の区分であり、公的統計に基づく定義ではありません。
キッティングの対象はPCだけでなく社外に持ち出す端末にも広がっている
キッティングの対象は、いまやPCだけではありません。スマートフォンやタブレットも、業務で使う以上は同じように設定と管理が必要です。
背景にあるのが働く場所の変化です。総務省の通信利用動向調査によると、テレワークを導入している企業の割合は2019年の20.1%から、2025年には50.1%へ上がりました。
この変化から言えるのは、社外で使う端末が一時的な対応ではなく、定常的な設定対象になったという点です。持ち出す端末が増えれば、暗号化やリモート管理といった設定項目も増えます。テレワークの数値については、次の章でくわしく見ていきます。
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙2)」
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クラウド利用が8割を超えてもキッティングがなくならない理由
「クラウドに移せば、PCの設定作業は減るはず」。そう考える方は多いと思います。ですが公表されている統計は、そうなっていません。
総務省の通信利用動向調査によると、クラウドサービスを利用している企業の割合は2025年時点で83.5%です。前年の2024年は80.4%でした。
なお同じ2024年の値は、令和7年版情報通信白書では80.6%です。本記事は調査報告書側の値に統一します。
この数値が示しているのは、クラウドの利用が8割を超えてもなお、端末を標準化する作業が企業に残り続けているという点です。普及の中身も、新規利用から全社への拡大へ移りました。
注意
この記事で引用する総務省「通信利用動向調査」の企業調査は、公務を除く産業に属する常用雇用者100人以上の企業が対象です(令和7年調査は6,040企業に調査票を配布し、設問ごとの集計対象数は2,480〜2,488社です)。100人未満の企業は含まれないため、小規模な企業では実感と差が出ることがあります。同じ年の数値でも公表資料により集計基準が違うため、出典名とあわせて確認してください。
クラウドサービスの利用率は2025年に83.5%まで上昇している
クラウドサービスの利用率は、いまも上がり続けています。総務省の通信利用動向調査では、2025年時点で83.5%の企業が利用していると回答しました。
直近は2023年が77.7%、2024年が80.4%、2025年が83.5%です。2010年代から一貫して右肩上がりで来ています。

出典: e-Stat「通信利用動向調査」、総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」、総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙1)」をもとに作成。グラフは本DBに値が登録されている年のみを表示しています。
この推移から読み取れるのは、伸び幅が年々小さくなっているとは言い切れない点です。直近3年はいずれも年3ポイント前後の増加で推移しています。
ただし、ここで並べた3つの値は公表資料が異なります。2024年の値を先ほどの80.6%に置き換えると増加幅はほぼ一定になり、単年の伸びが拡大したとも鈍化したとも言えません。年ごとの伸びの大小を比べるのは避けてください。
全社的な利用は2025年で60.0%、4割の企業は全社利用に至っていない
ここが記事の核心です。先ほどの8割という数字は、「全社で使っている」と「一部の事業所・部門で使っている」を足した値だからです。
同じ総務省の調査で、2025年にクラウドサービスを全社的に利用していた企業は60.0%でした。一部の事業所または部門での利用は23.5%です。全社利用に至っていない企業は、あわせて4割にのぼります。
全社利用は2023年50.6%、2024年53.1%、2025年60.0%と伸びています。それでも全体の利用率83.5%との差は、2025年時点で23.5ポイントあります。
この差が示しているのは、多くの企業でクラウドと社内管理の仕組みが併存しているという状況です。部門ごとに使うツールが違えば、端末側で個別に設定する作業はどうしても残ります。
なお、この23.5ポイントの差を「端末管理が残っている企業の割合」と読み替えることはできません。全社利用と答えた企業でも、社内システムは残るためです。
テレワーク導入率は2025年に50.1%へ増加し、2019年の約2.5倍の水準にある
社外で使う端末が増えたことも、キッティングが減らない理由です。総務省の通信利用動向調査によると、テレワークを導入している企業の割合は2025年時点で50.1%でした。
2021年をピークに3年連続で下がったあと、2025年は前年から2.8ポイント増えました。年ごとの値は次のとおりです。
- 2019年:20.1%
- 2020年:47.4%
- 2021年:51.8%
- 2022年:51.7%
- 2023年:49.9%
- 2024年:47.3%
- 2025年:50.1%

出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」(2019〜2024年)、総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙2)」(2025年)をもとに作成。2025年値は無回答を除く集計で、2024年以前とは集計基準が異なります。
2025年の50.1%は、2019年の約2.5倍の水準です。この推移から読み取れるのは、2020年以降が47〜52%の幅に収まり、社外で使う端末が定着したという点です。
同じ2025年にクラウド利用率も83.5%へ上がり、両方が同時に増えています。クラウドに移せば端末管理が減るという前提は導けません。
ただし1年の増加だけで流れの転換は断定できません。それでもキッティングの位置づけは、緊急対応から毎年の定型業務へ変わっています。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙2)」/総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙1)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」/総務省「令和5年通信利用動向調査」/総務省「令和7年版 情報通信白書」/e-Stat「通信利用動向調査」
キッティングの標準的な作業内容は大きく3つに分かれる
キッティングでやることは多岐にわたりますが、整理すると3つのグループに分けられます。ハードウェア側の作業、ソフトウェアとネットワーク・セキュリティの設定、そして資産管理と配布です。
この3つに分けて考えると、抜け漏れが見つけやすくなります。自社の作業手順書を作るときも、この単位で章立てすると整理しやすいはずです。
ここからは、それぞれのグループで具体的に何をするのかを見ていきます。
ポイント:作業内容の3グループ
- ハードウェア:開梱・検品・周辺機器の接続・OSの初期設定
- ソフトウェア/ネットワーク/セキュリティ:業務アプリ、通信設定、防御の設定
- 資産管理・配布:管理番号の付与、台帳登録、検品、引き渡し
開梱と初期セットアップはハードウェア側の作業にあたる
最初のグループは、端末そのものを扱う作業です。届いた箱を開けて中身を確認するところから始まります。
具体的には、次のような作業が該当します。単純に見えますが、初期不良を見逃すと配布後のトラブルにつながるため、検品はていねいに行ってください。
- 開梱と付属品の照合、外観と初期不良のチェック
- マウス、キーボード、ドッキングステーションなど周辺機器の接続
- BIOS/UEFIの設定変更(起動順序、セキュアブートなど)
- OSの初期セットアップと更新プログラムの適用
- コンピューター名や管理用アカウントの設定
このグループは端末を「動く状態」にする工程です。ここが終わって、ようやく社内向けの設定に入れます。
業務アプリとネットワーク、セキュリティの設定が作業の中心を占める
2つ目のグループが、実際の作業量としてはいちばん大きくなります。社内の標準環境に合わせて、端末の中身をそろえていく工程です。
主に次のような設定を行います。会社ごとに項目が違うため、標準となる設定リストを持っておくことが重要です。
- 業務アプリケーションのインストールとライセンスの適用
- プリンタ、共有フォルダ、VPN、無線LANの接続設定
- ウイルス対策ソフトの導入と定義ファイルの更新
- OSやアプリの更新プログラムの適用と自動更新の設定
- ディスク暗号化、画面ロック、パスワードポリシーの適用
ここで設定した内容が、その端末のセキュリティ水準をそのまま決めます。なぜこの工程が重要なのかは、後半の章であらためて統計とあわせて説明します。
資産管理台帳への登録とラベル貼付、配布までがキッティングに含まれる
3つ目のグループは、設定が終わったあとの作業です。キッティングは「設定して終わり」ではありません。
社内で端末を管理していくために、次の作業を行います。ここを省くと、数年後の棚卸しやリース満了の対応で必ず困ることになります。
- 管理番号の付与と、資産管理台帳への登録
- 管理番号ラベルや所属を示すラベルの貼付
- チェックリストにもとづく最終動作確認
- 梱包・発送、または利用者への引き渡しと初回説明
台帳への登録まで含めるのがキッティングです。この台帳が、配布後の運用管理につながっていきます。
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キッティングは5つの工程で進めると手戻りが起きにくい
キッティングは、作業に取りかかる前の設計で成否が決まります。おすすめは、次の5工程に分けて進める方法です。
工程を分けておくと、どこまで終わったのかが把握しやすくなります。複数人で分担するときも、引き継ぎがしやすくなるはずです。
| 工程 | 内容 | 主な成果物 |
|---|---|---|
| ①要件定義・設計 | 対象台数、機種、標準アプリ、命名規則などを決める | キッティング仕様書 |
| ②マスター作成 | 標準構成のPCを作り込む | マスターPC・マスターイメージ |
| ③複製(クローニング) | マスターイメージを対象台数ぶん展開する | 複製済みの端末 |
| ④個別設定 | 端末ごとの名前、アカウント、IPなどを設定する | 個体差を反映した端末 |
| ⑤検品・配布 | チェックリストで確認し、台帳に登録して配る | 検品記録・資産台帳 |
注意
設計を飛ばしていきなりマスターを作ると、設定漏れが見つかった時点で複製した全台をやり直すことになります。急ぐときほど①に時間をかけてください。
要件定義と設計で設定項目を確定させる
最初の工程では、作るべき端末の姿を文書に落とします。ここが曖昧なまま進むと、後工程で必ず手戻りが起きます。
決めておきたい項目は次のとおりです。これらを一覧にしたものが、いわゆるキッティング仕様書です。
- 対象台数と機種、OSのバージョン
- 標準で入れるアプリとライセンスの割り当て
- 端末の命名規則と管理者権限の扱い
- 配布スケジュール
仕様書があると、翌年以降の作業が楽になります。代行に出す場合も、この仕様書がそのまま発注内容になります。まずは自社の設定項目を書き出すところから始めてみてください。
マスター作成とクローニングで同じ設定を横展開する
2つ目と3つ目の工程は、同じ設定を効率よく広げるためのものです。端末ごとに手作業で設定していく方式と比べて、作業のばらつきを抑えられるのが利点になります。
流れは次のとおりです。まず標準構成のPCを作り込み、これをマスターPCと呼びます。
次に、そのマスターから固有情報を初期化したうえで、ディスクの内容をイメージとして抽出する流れです。このイメージを対象の端末へ複製する作業が、クローニングにあたります。
マスターを作り込む手間はかかるものの、同じ機種を複数台そろえる場面では有効な方法といえるでしょう。
個別設定と検品を経て配布する
複製が終わっても、そのままでは使えません。端末ごとに固有の情報を設定する必要があります。
ホスト名、利用者のアカウント、必要に応じてIPアドレス、部署ごとのプリンタや共有フォルダなどが対象です。ここは自動化しにくく、手作業が残りやすい部分でもあります。
そのあとがチェックリストによる検品です。チェック項目は3観点で作ると漏れにくくなります。設定した内容が反映されているか、業務アプリが実際に起動して使えるか、社内ネットワークと外部に接続できるか、の3つです。
検品結果を記録し、資産台帳に反映してから配布します。
キッティングでセキュリティ設定を作り込む理由は「適用漏れ」を防ぐことにある
キッティングでセキュリティ設定を作り込む理由は、対策を導入することそのものではありません。導入した対策を、例外なく全端末へ行き渡らせるためです。
総務省の通信利用動向調査では、何らかのセキュリティ対策を実施している企業の割合は2025年時点で98.3%に達しています。母集団は、インターネットを利用している企業です。
ここから言えるのは、企業間の差は対策の有無ではなく、その対策が全端末に適用されているかどうかに移っているという点です。配布前に設定を作り込むキッティングは、この適用漏れを防ぐ工程にあたります。
注意
この章の全体の数値は2025年調査でそろえていますが、企業規模別の被害経験率は2024年が最新です(2025年調査に規模別の内訳はありません)。被害には、取引先経由やサービス側の障害など、端末の設定と関係のない要因も含まれます。
何らかのセキュリティ対策を実施している企業は2025年時点で98.3%に達している
まず前提として、対策そのものはすでにほぼ全社に行き渡っています。総務省の通信利用動向調査によると、何らかのセキュリティ対策を実施している企業の割合は2025年時点で98.3%でした。
この数値は、インターネットを利用している企業を母集団とした割合です。
ただし、この設問の読み方には注意が必要です。「何らかの対策」は、選択肢を1つでも選べば該当します。
つまりこの数値は、対策の質や、社内のどこまでカバーできているかまでは測っていません。ウイルス対策ソフトを一部の端末にだけ入れている企業も「実施している」に含まれます。
それでも2025年には48.1%の企業がセキュリティ被害を経験している
対策がほぼ全社に行き渡る一方で、被害は少なくありません。総務省の通信利用動向調査では、インターネット利用企業のうち、2025年に何らかのセキュリティ被害を受けた割合は48.1%でした。
企業規模で見ると、従業者2,000人以上の企業では69.5%、従業者100〜299人の企業では44.2%です。その差は25.3ポイントでした(いずれも2024年)。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙2)」(対策実施率・被害経験率の全体値/2025年)、総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」(規模別の被害経験率/2024年)をもとに作成。
規模の大きい企業では、端末を社外に出す運用も進んでいます。従業者2,000人以上のテレワーク導入率は2024年時点で82.1%で、同じ年の全体平均47.3%を上回りました。
この並びから読み取れるのは、大きい企業ほど被害に遭遇する機会が多い可能性です。ただし、これは相関の指摘にとどまります。
大企業ほど専任の担当者がいて、被害を検知して報告できる体制があります。中小規模の企業では気づいていないだけ、という読み方も成り立ちます。
配布前の工程で設定を機械的に全台へ適用することが漏れを防ぐ
ここまでの数値を踏まえると、キッティングの役割がはっきりします。対策を「入れたつもり」で終わらせないための工程だ、ということです。
対策実施率が2025年時点で98.3%という水準では、同じ製品を入れるだけでは差がつきません。差がつくのは、設定が全端末に反映されているかどうかです。
内訳を見ると、実施率は項目によって差があります(いずれも2025年、インターネット利用企業の割合、複数回答)。
- パソコンなどの端末にウイルス対策プログラムを導入:82.0%
- セキュリティポリシーの策定:48.2%
- OSへのセキュリティパッチの導入:43.5%
端末に直接入れる設定ほど実施率が高い一方、パッチ適用のように運用が続く項目は4割台です。だからこそ、人の判断に委ねず配布前の工程でまとめて適用する意味があります。
仕組みとして全台に同じ設定を入れることが、キッティングを設計する最大の理由です。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙2)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」
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キッティングの作業範囲は業種によって大きく変わる
他社のキッティング手順を、そのまま自社に持ち込むのは難しいです。理由は単純で、業種によってITの使い方が大きく違うからです。
同じ「PCの初期設定」でも、社外に端末を持ち出す業種と、社内でしか使わない業種では、必要な設定項目が変わります。VPNや持ち出し時の暗号化、資産管理エージェントの導入などが、その代表例です。
この違いは、感覚の話ではありません。次の2つの節で、2025年の公的統計から確認していきます。
ポイント:自社の設定項目を決めるときに確認する観点
- 端末を社外に持ち出す運用があるか(VPN・暗号化・紛失時の対応)
- 業務システムがクラウド中心か、社内サーバー中心か
- 部署や職種によって必要なアプリが分かれていないか
- 取引先や監査から求められる設定要件があるか
クラウド利用率の業種間の差は2025年で17.9ポイントにとどまる
まずクラウドの利用状況です。総務省の通信利用動向調査(2025年)を産業分類別に見ると、最も高いのは金融・保険業の96.2%でした。最も低いのは運輸業・郵便業の78.3%で、その差は17.9ポイントです。
上位には情報通信業94.8%が続き、下位でもサービス業・その他が79.3%です(いずれも2025年)。8つの産業分類すべてで、利用率は8割前後から9割台に収まっています。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙2)」をもとに作成
この分布が示すのは、クラウドは業種を問わず広く行き渡っているという点です。最も低い業種でも8割近くに達しており、差はあっても決定的ではありません。
テレワーク導入率は業種間で60.3ポイント開いている
一方で、端末を社外に出す運用は業種で分かれます。総務省の通信利用動向調査(2025年)では、テレワーク導入率は情報通信業が92.8%で最も高く、運輸業・郵便業が32.5%で最も低い結果でした。
その差は60.3ポイントです。同じ2025年のクラウドの業種差17.9ポイントの、3倍以上にあたります。
| 産業分類 | テレワーク導入率 | クラウド利用率 |
|---|---|---|
| 情報通信業 | 92.8% | 94.8% |
| 金融・保険業 | 81.9% | 96.2% |
| 不動産業 | 66.3% | 90.9% |
| 建設業 | 57.8% | 89.2% |
| 製造業 | 54.5% | 85.6% |
| 卸売・小売業 | 45.6% | 83.6% |
| サービス業、その他 | 43.3% | 79.3% |
| 運輸業・郵便業 | 32.5% | 78.3% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙2)」(いずれも2025年、常用雇用者100人以上の企業)
この対比が示しているのは、クラウドの普及が業種横断的だった一方、端末の持ち出しは業種ごとに採否が分かれるという構図です。運輸業・郵便業はクラウドが78.3%、テレワークが32.5%で、45.8ポイント開いています。
サービス業・その他や建設業も同じ形です。クラウドは使うけれど端末は社外に出さない業種があるため、他社の設定項目をそのまま流用しても自社には合いません。
注意
産業分類別の集計対象数は178〜380社で、全体(テレワーク2,488社・クラウド2,486社)より小さくなります。1〜2ポイント程度の差は標本誤差の範囲に入るため、中位の業種の順位は断定できません。テレワーク導入率は制度の導入企業の割合で、端末の台数を示すものではありません。
自社対応と代行サービスの判断軸は「自社で抱えるべき作業か」に集約される
自社で続けるか、代行に出すか。この判断は、突き詰めると「その作業を自社で抱えるべきかどうか」の一点に集約されます。
コストだけで比べると判断を誤りやすいです。台数が年によって大きく動くのか、設定変更をどれくらいの速さで反映したいのか、社内にノウハウを残す必要があるのか。こうした条件によって答えが変わります。
なお、代行に出すほうが常に合理的だと言いたいわけではありません。ここからは判断に使える観点を、比較表と公的統計の両面から整理していきます。
ポイント:自社対応か代行かを判断する観点
- 年間の作業台数が、時期によって大きく偏っていないか
- 設定内容の変更頻度が高く、社内で即応する必要があるか
- 端末の設定ノウハウを社内に残す必要があるか
- 情報の受け渡しにともなうリスクを、どちらが負うのが適切か
自社対応は柔軟性、代行は繁忙期の平準化に強みがある
自社対応と代行では、得意な場面がはっきり分かれます。どちらが優れているという話ではなく、自社の状況に合うほうを選ぶことになります。
自社対応は、設定変更にその場で対応できる点が強みです。一方の代行は、入社シーズンのように作業が集中する時期の負荷を外に出せます。
主な違いを整理すると、次のとおりです。
| 比較軸 | 自社対応 | 代行サービス |
|---|---|---|
| 初期コストの持ち方 | 設備・ツールを自社で用意する | 台数に応じた費用として発生する |
| 台数変動への対応 | 人員の空きに左右されやすい | 台数の増減に合わせて委託しやすい |
| 設定変更の速さ | その場で変更・反映できる | 仕様変更の連絡と調整が必要になる |
| ノウハウの蓄積 | 社内に残る | 社内に残りにくい |
| 情報漏えいリスクの所在 | 自社の管理体制に依存する | 委託先の管理体制と契約に依存する |
| 繁忙期の負荷 | 情シスに集中しやすい | 外部に振り分けて平準化できる |
自社の状況をこの6軸に当てはめて、どちらに寄せるかを決めてみてください。すべてを外に出すのではなく、繁忙期だけ代行を使うといった組み合わせも現実的です。
企業がクラウドを選んだ理由の上位は「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」42.8%(2025年)
判断軸のヒントは、企業がクラウドを選んだ理由にあります。総務省の通信利用動向調査(2025年)のクラウド利用企業では、「場所、機器を選ばずに利用できるから」50.7%が最も多く挙がりました。
続くのが「安定運用、可用性が高くなるから」45.1%と、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」42.8%です。「災害時のバックアップとして利用できるから」も38.7%でした(いずれも2025年・複数回答)。
さらに、クラウドを利用した企業の89.4%が「非常に」または「ある程度」効果があったと回答しています(2025年)。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙2)」をもとに作成。母集団はクラウドサービス利用企業で、設問は複数回答です。
これらの数値が示しているのは、企業がすでに「自社で持って自社で保守する形」をやめ、その結果を評価している点です。キッティングの代行や自動化は、同じ考え方の延長線上にある選択肢と整理できます。
ただし、クラウドの動機とキッティング外注の動機が同じだと示す一次データはありません。判断基準の構造が似ている、という範囲でお読みください。
キッティングの費用相場や工数を示す公的統計は存在しない
ここで正直にお伝えしたいことがあります。キッティングの費用相場や1台あたりの所要時間を示す統計は、本記事が参照した総務省の通信利用動向調査には見当たりません。
この調査は、クラウドの利用内容や効果まで細かく調べています。2025年の集計では、クラウドサービス利用企業のうち、利用しているサービスの内容は「ファイル保管・データ共有」が73.3%、利用効果があったとする回答が89.4%でした。
セキュリティ対策の実施率も2025年で98.3%まで把握されています。設問はここまで細かく設計されています。
それでも、PCの調達から設定・配布までの工数、キッティングの外注率、MDMやIT資産管理ツールの導入率を測る設問はありません。Web上で見かける費用相場は、ベンダーや比較サイトが独自に示した数値です。
相場を鵜呑みにせず、自社の台数と設定項目を書き出して見積もりを取ってみてください。仕様が具体的なほど、比較できる見積もりが返ってきます。
注意
Web上に流通しているキッティングの費用相場や作業時間には、公的統計の裏づけがありません。ここでの「存在しない」は、本記事が参照した総務省「通信利用動向調査」の範囲での話で、他の調査に類似の設問がある可能性は否定できません。
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キッティングの効率化は自動化とツール活用に集約される
キッティングを楽にする方法は、突き詰めると自動化とツール活用の2つです。人がやる工程をどれだけ仕組みに置き換えられるかが分かれ目になります。
外部や仕組みに任せるという判断は、すでに多くの企業が別の場面で実行しています。クラウドサービスでは、利用した企業の89.4%が「非常に」または「ある程度」効果があったと回答しました(2025年・総務省の通信利用動向調査)。
端末の初期設定も同じ考え方で見直せます。ここからは、効率化の具体的な進め方を3つの側面から見ていきます。
ポイント:効率化の3段階
- 手作業方式:端末ごとに設定する。対象が少ないうちは選択肢になる
- クローニング方式:マスターイメージを複製し、同じ構成を横展開する
- ゼロタッチ方式:利用者が電源を入れると、設定が自動で適用される
クローニングとゼロタッチ方式で手作業の工程を減らす
効率化の第一歩は、同じ作業のくり返しをなくすことです。手作業方式では、台数が増えるほど作業時間と設定ミスの機会が比例して増えていきます。
クローニング方式で行うのは、作り込んだマスターイメージの複製です。同じ機種を複数台そろえる場面で効果を発揮しますが、機種やOSのバージョンが変わるとマスターを作り直す必要があります。
さらに進んだのがゼロタッチ方式です。Windows AutopilotとMicrosoft Intuneの組み合わせなどが代表例にあたります。
利用者が端末の電源を入れてサインインすると、あらかじめ登録した設定やアプリが自動で適用されます。マスターイメージを作らずに済む点が、従来方式からの大きな転換です。
ただし、ライセンスや端末の事前登録、対応OS、初回設定時のネットワーク環境といった前提条件があります。導入前に、自社の契約と環境で使えるかを確認してください。
MDMとIT資産管理ツールで配布後の運用まで含めて設計する
キッティングは、配って終わりにしないほうが結果的に楽になります。設計の段階で、配布後の運用まで見通しておきたいところです。
MDM(モバイルデバイス管理)やIT資産管理ツールを使うと、更新プログラムの配信や設定変更、インストール状況の把握を一元化できます。棚卸しから廃棄までを同じ仕組みで追える点も利点です。キッティング時に管理エージェントを入れておけば、この流れがつながります。
前半で触れた資産管理台帳が生きてくるのも、この場面です。台帳とツールの情報が一致していれば、リース満了や監査対応で手作業の確認をせずに済みます。
なお、MDMやIT資産管理ツールの導入率を示す統計は、本記事が参照した調査には見当たりませんでした。そのため、普及の度合いには触れません。
標準化とチェックリストは自社対応・代行のどちらでも前提になる
最後に、どの方式を選んでも共通して必要になるものがあります。設定内容の標準化と、手順書・検品チェックリストの整備です。
これがないと、担当者ごとに設定が微妙に違う端末が生まれます。属人化した状態では、担当者が不在のときに誰も対応できません。次のものは、早い段階でそろえておくと効きます。
- 標準の設定項目一覧(キッティング仕様書)
- 作業手順書と、判断に迷ったときの例外ルール
- 検品チェックリストと、その記録を残す様式
- 資産台帳の記入ルールと更新のタイミング
代行に出す場合も同じです。仕様書がなければ、見積もりの精度も納品物の品質も安定しません。まずは自社の設定項目を書き出すところから着手してみてください。
キッティングに関するよくある質問
読者からよく寄せられる質問を、Q&A形式でまとめました。
Q1. キッティングの語源は何ですか。
英語の kit が語源です。必要なものを一式そろえるという意味から、「業務で使えるように端末一式を整える作業」を指す言葉になりました。公的統計に同じ指標はありません。
Q2. キッティングとセットアップは何が違いますか。
作業範囲の広さが違います。セットアップは機器単体を使える状態にすることを指し、キッティングはそれに加えて社内標準への統一、資産管理台帳への登録、配布までを含みます。
Q3. スマートフォンやタブレットもキッティングの対象になりますか。
対象になります。業務で使う以上、アプリの導入やセキュリティ設定、資産登録が必要だからです。
総務省の通信利用動向調査では、テレワーク導入企業の割合が2025年時点で50.1%でした。社外で使う端末は、多くの企業で日常的な管理対象です。
Q4. クラウドを導入すればキッティングは不要になりますか。
不要にはなりません。総務省の通信利用動向調査では、2025年時点でクラウドサービスを全社的に利用している企業は60.0%でした。一部の事業所または部門での利用は23.5%です。
つまり4割は全社利用に至っていません。クラウドと社内管理の仕組みが併存する以上、端末側の設定作業は残ります。
Q5. 何台からなら代行を検討すべきですか。
台数の目安を示す公的統計はないため、具体的な台数は挙げません。判断材料になるのは、作業時期の集中、担当者の負荷、設定変更の頻度の3点です。
Q6. キッティングは情シスの業務範囲に含まれますか。
一般的には含まれます。端末の標準構成を決め、セキュリティ設定を適用し、資産として管理する役割は情報システム部門が担うためです。
ただし作業自体は代行に委託できます。仕様を決めて品質を管理する部分が情シスに残ります。
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まとめ
キッティングは、PCや業務端末を従業員がその日から使える状態にするまでの一連の作業です。設定だけでなく、資産登録と配布までが含まれます。
作業内容は3グループ、手順は5工程に整理できます。この単位で標準化しておくと、自社対応でも代行でも回しやすくなります。判断軸は「その作業を自社で抱えるべきかどうか」の一点です。
まずは自社の設定項目を書き出して、キッティング仕様書にまとめるところから始めてみてください。自動化にも、代行の見積もりにもそのまま使えます。
ポイント:この記事の要点
- キッティングは初期設定から資産登録・配布までを含む一連の作業です
- クラウド利用率は2025年に83.5%まで上がりましたが、同じ年の全社利用は60.0%で、4割の企業では端末側の設定作業が残ります
- セキュリティ対策の実施率は2025年で98.3%。差がつくのは対策の有無ではなく、全端末に適用できているかどうかです
- テレワーク導入率は3年連続の低下ののち、2025年は50.1%へ増えました。社外で使う端末は定常的な設定対象です
- 判断軸は、クラウドを選んだ理由の上位「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」42.8%(2025年)と同じ考え方の延長線上にあります
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙2)」/総務省「令和7年通信利用動向調査(別紙1)」
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