【IPA調査】情シスアウトソーシングの形態と契約の選び方|DX人材の質不足88.8%(2025年)

情シスのアウトソーシングを検討し始めると、こんなところで止まってしまいませんか。
- 見積もりを取ったが、常駐とリモートとBPOで何が違うのか分からない
- 準委任と請負のどちらで契約すべきか判断できない
- 丸ごと任せてよいのか、一部だけにすべきか決められない
結論から言うと、情シスのアウトソーシングは「どこまで任せるか」(委託範囲)と「どう契約するか」(契約形態)という2つの軸で整理できます。この2つは別々の軸なので、混ぜたまま比較しても決まりません。
この記事のポイント
- 委託範囲は一部委託・運用アウトソーシング・フルアウトソーシングの3段階、契約形態は準委任・請負・労働者派遣の3種。この2軸を分けて考えます
- DXに取組んでいる企業のうち、人材の「質」が不足していると答えた割合は2025年時点で88.8%。一方で、DX推進に必要なスキルを把握できていない企業も2025年時点で52.8%あります(出典: IPA「DX動向2026」)
- 契約形態を議論する前に、任せる業務の完了条件を書けるかどうかを判定します。委託先を管理する仕事は、契約形態を問わず社内に残ります
ここで読み取れるのは、同じ調査の中に「足りない」という申告と「何が必要かを書けていない」という状態が同時に現れている点です。委託先に求める水準を書けないまま契約形態だけを選んでも、任せ方は決まりません。
この記事では、公的な一次データをもとに、委託範囲と契約形態の整理、自社に合う形の見極め方、委託後に社内へ残る仕事までを順番に解説します。
情シスのアウトソーシングは「どこまで任せるか」と「どう契約するか」の2軸で整理できる

情シスのアウトソーシングを比較するときは、委託範囲と契約形態を別々の軸として分けてください。サービス名や「常駐かリモートか」から入ると、比べている対象がそろわないまま検討が進みます。
委託範囲は「どこまで」の軸です。ヘルプデスクだけを任せるのか、情シスの機能全体を任せるのかという広さの話になります。
契約形態は「どう責任を分けるか」の軸です。準委任・請負・労働者派遣のどれで結ぶかによって、成果への責任と指揮命令の所在が変わります。
この2つは掛け合わせで決まります。一部委託でも成果物を決めて請負で結ぶことはできますし、フルアウトソーシングでも運用を準委任で継続的に任せる形はあります。
委託範囲は一部委託・運用アウトソーシング・フルアウトソーシングの3段階に分かれる
委託範囲は、大きく3段階に分けて考えると整理しやすくなります。どの段階を選ぶかで、社内に残る仕事の量と種類が変わります。
- 一部委託: ヘルプデスク、キッティング、アカウント発行・停止など、業務単位で切り出して任せる形
- 運用アウトソーシング: サーバー・ネットワーク・端末の運用を一式で任せる形。日常の運用が対象で、企画や投資判断は社内に残ります
- フルアウトソーシング: 企画から運用まで、情シス機能全体を任せる形。社内には委託先を管理する役割が残ります
なお、この3段階は本記事の整理であり、公的に定められた区分ではありません。同じ名称でも事業者によって含む業務が違うため、見積もりはサービス名ではなく作業項目で比べてください。
範囲を広げる側の動機は、公的データからもうかがえます。総務省の通信利用動向調査によると、常用雇用者100人以上の企業でクラウドサービスを利用している割合は2025年時点で83.5%です。クラウド利用企業(n=2,131)が挙げた利用理由には、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」が2025年時点で42.8%入っています(複数回答)。
ただし、この42.8%はクラウド利用企業への設問です。情シス業務そのものの委託動機を直接測った数値ではない点にご注意ください。
契約形態は準委任・請負・労働者派遣の3つで、成果責任と指揮命令の所在が変わる
契約形態の違いは、「何に責任を持つか」と「誰が指示を出すか」の2点に集約されます。この2点が分かれば、サービス名が違っても比較できます。
| 契約形態 | 責任の対象 | 指揮命令を出す側 | 向く業務 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 準委任 | 業務を遂行する過程 | 委託先 | 監視、問い合わせ対応など終わりを区切りにくい業務 | 仕事の完成義務は負わないため、報告の頻度と粒度を契約で決める |
| 請負 | 成果物の完成 | 委託先 | キッティング、移行、構築など完了条件を書ける業務 | 検収の基準を先に決めないと、完成したかどうかで認識がずれる |
| 労働者派遣 | 労働力の提供 | 自社 | 社内の状況に応じて指示を変える必要がある業務 | 労働者派遣法の制約を受け、期間や手続きのルールがある |
ここで注意したいのは、準委任と請負では、自社が委託先の担当者へ直接指示を出せない点です。契約書の名前が準委任や請負でも、実態として発注者が日々の作業指示や勤怠管理を行うと、労働者派遣に該当する(いわゆる偽装請負)と判断され得ます。
判断の基準は、厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)とその疑義応答集に示されています。契約形態を選ぶときは、名称ではなく現場での指示の出し方まで合わせて決めてください。
もう1点、準委任には履行の割合に応じて報酬を払う型と、成果に対して報酬を払う型(民法648条の2)があります。後者は2020年施行の改正民法で明文化されているため、「準委任だから成果は一切問わない」と単純化しないでください。
この記事では、契約形態ごとの普及率や費用相場の数値を出しません。本記事で参照した公的統計に、契約形態別の利用率や費用を尋ねた設問がないためです。
総務省の調査では、インターネット利用企業(n=2,480)のうち何らかのセキュリティ対策を実施している割合は2025年時点で98.3%です。同じ2025年の調査で、ID・パスワードによるアクセス制御を実施している割合は60.4%でした(複数回答)。いずれも無回答を除いて集計した数値です。
しかし、いずれの設問も実施主体が自社要員か委託先かを区別していません。
つまり、本記事で参照した公的統計は外部サービスを使っているかまでしか測っておらず、誰がどの契約形態で運用しているかは記録されていません。中小企業庁などの別の調査に該当する設問がある可能性は残ります。
注意
この記事では、契約形態別のシェアや費用相場の金額を数値で断定しません。参照した公的統計に、情シス業務の外部委託率や契約形態別の利用割合を尋ねた設問がないためです。金額の相場を知りたい場合は、複数社から実際の見積もりを取って比較してください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」/総務省「令和7年通信利用動向調査 別紙2」/厚生労働省「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集(第2集)」
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アウトソーシングに求められる中身は「量の補充」から「質の調達」へ移っている

アウトソーシングの需要は「人手不足だから」で語られがちですが、公的データはもう少し細かい姿を示します。足りないものの中身が、人数から専門性へ移っています。
根拠にするのは、IPA「DX動向2026」の人材不足に関する調査です。人材の「量」が大幅に不足していると答えた企業の割合は下がり、「質」が不足していると答えた企業の割合は上がっています。
なお、この調査の母集団はDXに取組んでいる企業です。情シス部門全体や全企業の話として一般化はできません。以降のIPAの数値はすべてこの母集団の回答です。

図の出典: 情報処理推進機構「DX動向2026」(母集団はDXに取組んでいる企業。回答企業は年により入れ替わる)
DX人材の「量」が大幅に不足していると答えた企業は2023年62.1%から2025年50.1%へ下がった
まず「量」の不足感です。IPAの調査で、DXを推進する人材の「量」が大幅に不足していると答えた企業の割合を見ます。2023年時点で62.1%、2024年時点で58.5%、2025年時点で50.1%でした。3年で12.0ポイント下がっています。
ただし、これを「人手不足が解消した」と読むのは早計です。同じ2025年の調査で、「量」が不足していると答えた企業は、大幅・ややを合わせると85.5%あります。深刻度が下がっただけで、不足そのものは残っています。
「大幅に不足」が減る動きは、採用を諦めて要求水準を下げた結果としても起こり得ます。この調査は同一企業を追跡したものではなく、回答企業は毎年入れ替わる点にも注意が必要です。
「質」の不足は2024年86.1%から2025年88.8%へ上がり、大幅な不足では質52.9%が量50.1%とほぼ並んだ
次に「質」の不足感です。DXを推進する人材の「質」が不足していると答えた企業の割合は、2024年時点で86.1%、2025年時点で88.8%でした。いずれも大幅・ややの合計で、2.7ポイント上がっています。
深刻な側だけを取り出すと、2025年時点で「質」が大幅に不足していると答えた企業は52.9%、「量」が大幅に不足していると答えた企業は50.1%です。両者はほぼ並んでおり、質の側がわずかに上回っています。
ただし「質」が大幅に不足していると答えた企業は、2024年時点では58.9%でした。2025年の52.9%はそこから下がった値で、深刻度が下がっている点は「量」と共通しています。
ただし差は2.8ポイントで、標本誤差の範囲に収まる可能性があります。「量」と「質」は別々の設問であり、回答企業が同じ基準で言葉を解釈している保証もありません。ここは「質が量を上回った」と強調できる差ではない、と押さえてください。
求めるものが人数から専門性へ移ると、選ぶべき委託形態も変わる
この2つの動きから読み取れるのは、アウトソーシングに求められる中身が変わりつつあるという点です。2025年時点で「質」の不足を訴える企業は88.8%、「量」の不足を訴える企業は85.5%で、頭数を足すだけでは埋まらない不足が残っています。
作業量を肩代わりする委託と、社内にない専門性を調達する委託では、決めるべきことが違います。前者は時間や人数で契約でき、後者は対象領域と任せる判断の範囲を先に決める必要があります。
因果関係として断定はできませんが、不足の中身の変化と、契約形態を選ぶ際の論点は同じ方向を向いています。「何人分の工数を埋めるか」より「どの領域の判断を任せるか」を先に決めると、形態の選択がぶれにくくなります。
IT人材不足の数字は、拡大を示す推計と緩和を示す実感の2種類がある

アウトソーシングの必要性を語る記事では、2030年時点のIT人材不足として最大78.7万人という数字がよく引用されます。ただし、これは2019年公表の推計値で、前提の置き方によって大きく動きます。
IT人材不足を示すデータには、性格の違う2種類があります。1つは経済産業省が公表した将来の需給ギャップの推計、もう1つはIPAが企業に毎年尋ねている不足感の調査です。
この2つは向きが逆に見えることがありますが、測っている対象が違います。ここでは数字そのものと、引用するときの前提を合わせて整理します。

図の出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/経済産業省「IT人材需給に関する調査 報告書」(2019年公表の推計値であり、実測値ではありません)
経済産業省の試算では需給ギャップは2018年22万人から2030年44.9万人へ拡大する
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」は、IT人材の需給ギャップが年を追って広がる姿を描いています。標準ケースの推計値は次のとおりです。
| 対象年 | 需給ギャップの推計値 |
|---|---|
| 2018年 | 22万人 |
| 2020年 | 30万人 |
| 2025年 | 36万人 |
| 2030年 | 44.9万人 |
表の出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/経済産業省「IT人材需給に関する調査 報告書」(標準ケースの推計。IT需要の伸びと生産性の上昇について標準的な前提を置いたもの。対象はIT企業とユーザー企業の情報システム部門などに所属するIT関係職種)
ここで押さえておきたいのは、この調査が2019年公表であり、2025年の36万人も実測ではなく推計値だという点です。2025年の実績を集計した数字ではありません。
拡大のペースにも差があります。2018年から2020年は2年で8万人増える想定ですが、2020年から2025年は5年で6万人増にとどまります。年あたりの伸びが最も速いのは2020年までです。
ただし2025年から2030年は5年で8.9万人増と、直前の5年より増え方が大きくなります。一本調子で鈍化し続ける形ではない点も押さえておいてください。
2030年の推計は前提により16.4万人から78.7万人まで開き、2016年公表時の58.7万人からも下方修正されている
同じ2030年でも、推計値は1つではありません。IT需要の伸びを高く見た場合は78.7万人、標準ケースでは44.9万人、低く見た場合は16.4万人です。いずれも2019年公表の推計です。
この幅は、企業規模や業種といったセグメントの差ではありません。IT需要がどれくらいのペースで伸びるかという前提シナリオの差です。よく引用される78.7万人は、需要が高く伸びた場合の上限にあたります。
さらに、推計値そのものも見直されています。2016年公表の前回調査では、2030年時点の推計が58.7万人でした(生産性上昇を考慮しない中位シナリオ)。2019年公表の調査では、標準ケースで44.9万人へ下がっています。推計値は前提の置き方で動く、と理解しておくと引用を誤りません。
推計と実感は測っている対象が違うため、片方だけを引くと実態を読み違える
ここで整理しておきたいのは、2つのデータが矛盾しているわけではないという点です。経済産業省の推計は2025年36万人、2030年44.9万人と拡大を描いています。一方でIPAの調査では、「量」が大幅に不足する企業は2023年62.1%から2025年50.1%へ下がっています。
向きが逆に見えるのは、測っている対象が違うためです。前者は2019年公表の将来推計で、IT企業とユーザー企業の情報システム部門などに所属するIT関係職種を対象に、人数で見たものです。後者はDXに取組んでいる企業に毎年尋ねた主観的な不足感で、母集団も回答企業も年ごとに変わります。
アウトソーシングの必要性を「不足は拡大の一途」と単線で説明すると、この差を踏みつぶすことになります。社内で説明するときは、どちらの数字を使っているのかを添えてください。
注意
経済産業省の推計とIPAの調査は、調査主体・調査年・母集団・指標の定義がすべて異なります。2つを並べて同一指標の経年推移として読むことはできません。この記事でも、比較ではなく読み方の違いとして扱っています。
出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査 報告書」/経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/情報処理推進機構「DX動向2026」
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自社に合う委託形態は、任せる業務の範囲と完了条件を書けるかどうかで決まる

ここからが本題です。自社に合う委託形態は、任せる業務の完了条件を書けるかどうかで決まります。 準委任にするか請負にするかを先に議論しても、答えは出ません。
理由は、契約形態が「何をもって終わりとするか」の取り決めだからです。完了条件を書けない業務を請負で結ぶと、検収の段階で認識がずれます。
そして、要件を書けているかどうかは会社によって差があります。IPAの調査には、不足を訴える割合と要件を言語化できている割合のあいだに大きな開きが現れています。
委託形態を決める前のチェックリスト
- 任せたい業務を、作業レベルまで書き出せているか
- その業務が「終わった」と言える条件を、文章で定義できるか
- 成果物がある場合、自社側で検収できる基準を持っているか
- 日々の状況に応じて自社が指示を出す必要があるか
質の不足を訴える企業は88.8%ある一方、必要なスキルを把握できていない企業が52.8%ある
IPAの同じ調査の中に、対照的な2つの数値が並んでいます。DXを推進する人材の「質」が不足していると答えた企業は、2025年時点で88.8%です。一方、DX推進に必要なスキルを把握できていないと答えた企業は、2025年時点で52.8%でした。いずれもDXに取組んでいる企業の回答です。
つまり、足りないと感じている企業は約9割、何が必要かを把握できていない企業は半数を超えるという状態です。不足の申告と要件の言語化のあいだに開きがあります。
ただし、この2つの設問はクロス集計を持っていません。「質が不足」と答えた企業と「スキルを把握できていない」企業が同一である保証はない点にご注意ください。ここで言えるのは、同じ課題構造が現れやすいという仮説の範囲です。
人材像を社内に周知している企業は16.2%、評価基準がない企業は76.1%
要件を書けていない状態は、別の設問にも表れています。DXを推進する人材像を設定し社内に周知していると答えた企業は、2025年時点で16.2%です。DX人材の評価基準が「ない」と答えた企業は、2024年時点で75.7%、2025年時点で76.1%でした。1年でほとんど動いていません。
人材像を社内に周知できている企業は、6社に1社程度という結果です。求める人物像も、達成度を測る基準も、多くの企業では明文化されていません。
社内向けに要件を書けていない状態と、委託先に求める成果水準や責任範囲を書けない状態は、重なりやすい関係にあります。ただし両者は論理的には別の能力であり、それを結ぶ調査データはありません。ここも仮説として読んでください。
完了条件を定義できる業務は請負、定義しきれない業務は準委任から始める
実務に落とし込みます。任せたい業務を書き出し、1件ずつ完了条件を書けるか判定して、書ける業務から契約形態を割り当てるという順番です。この順番なら、業務ごとに違う形態を選べます。
判定は次の4つの問いで進めます。
| 判定の問い | 回答 | 対応する契約形態 |
|---|---|---|
| 完了条件を文章で書けるか | 書ける | 請負を検討する |
| 完了条件を書けず、継続的に対応してもらう業務か | そうだ | 準委任を検討する |
| 成果物を自社で検収できるか | できない | 請負は避け、準委任で報告の頻度と粒度を決める |
| 日々の状況に応じて自社が指示を出す必要があるか | ある | 労働者派遣を検討する |
判定の観点は、必要なスキルを把握できていない企業が2025年時点で52.8%(情報処理推進機構「DX動向2026」)という調査結果を踏まえ、要件の言語化から逆算する形で本記事が整理したものです。
書き出してみると、1つの委託先に頼む業務の中にも、請負向きのものと準委任向きのものが混ざっていると分かります。まずは完了条件を書ける業務だけを切り出して、一部委託から始めてみてください。
委託先を管理する仕事は、契約形態を問わず社内に残る

アウトソーシングを導入しても、委託先を管理する仕事は社内に残ります。フルアウトソーシングでも同じです。
理由は、委託先が自社のシステムに触れる以上、その対策状況とアウトプットを確認し続ける必要があるためです。ここを契約に書いていないと、確認したくても根拠がない状態になります。
このセクションでは、よく挙げられる「情報漏えいのリスク」という話を、契約に書く項目へ置き換えていきます。
「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」は8年連続で組織向け10大脅威に選ばれている
委託先を経由した攻撃は、以前から継続して警戒されている脅威です。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」(組織向け)では、次の状況になっています。
| 脅威 | 2026年版の位置づけ | 選出の状況 |
|---|---|---|
| サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 | 2位 | 10大脅威に8年連続で選出 |
| ランサム攻撃による被害 | 1位 | 上記との1位・2位の組み合わせが4年連続 |
表の出典: 情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威 2026(組織編)解説書」(10大脅威選考会委員の投票による順位づけ)
ここで押さえたいのは、この順位が投票による選出であり、被害件数の実測ではないという点です。順位の高さは注目度の高さを示すもので、自社で発生する確率を示すものではありません。
同解説書には、マネージドサービス事業者が使う資産管理ソフトウェアにマルウェアが仕込まれる手口が事例として挙げられています。そこから顧客企業の端末やサーバーへ感染が広がります。運用を外部に任せると、委託先の対策状況が自社のリスクに直結する構造になります。
「保守体制を社内に持たなくてよい」という動機で外部化しても、確認し続ける工数は残る
外部化の動機は、体制の縮小にあります。総務省の調査では、クラウド利用企業(n=2,131)の利用理由を複数回答で聞いています。「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」との回答は、2025年時点で42.8%でした。一方で、インターネット利用企業のうち何らかのセキュリティ被害を受けた企業は2025年時点で48.1%です。
ここから読み取れるのは、体制を持たない選択をしても、確認する仕事までは消えないという点です。外部化で減るのは運用作業であって、委託先を見続ける工数ではありません。
なお、この48.1%は被害の深刻度を区別しておらず、軽微なウイルスの発見なども含まれます。48.1%のうち委託先を経由した被害がどれだけかも、この数値からは分かりません。本記事で参照した範囲には委託先管理の工数を測った公的データも見当たらないため、「負荷が残る」という主張は定量的には示せない読み取りです。
契約時に決めるのは責任範囲・報告義務・対策状況の確認方法・納品物の検証
管理の工数が残るなら、確認できる根拠を契約に書いておくのが実務的です。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026(組織編)解説書」が、この脅威への対策として挙げている項目を、自社の言葉に置き換えると次のようになります。
契約時に決めておく項目
- 委託先の選定基準: 何をもって信頼できると判断したかを記録に残す
- 責任範囲: どこまでが委託先の作業で、事故が起きたとき誰が何を負うのか
- 報告義務: 何を、どの頻度で、どの粒度で報告してもらうか
- 対策状況の確認方法: 委託先のセキュリティ対策を定期的に確認できる条項を入れる
- 納品物の検証: 受け取った成果物を自社側で確認する手順と基準
報告の頻度と粒度は、契約形態に合わせて決めてください。請負なら検収の基準が終わりの定義になりますが、準委任では「何をどこまでやったか」の報告そのものが確認の材料になります。
出典: 情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威 2026(組織編)解説書」/総務省「令和7年通信利用動向調査 別紙2」
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全面委託と内製の二択ではなく、一部を委託しながら判断の基準を社内に残す

最後に、委託したあとの社内体制の話をします。委託と育成は二者択一ではありません。
人手が足りないから全部外に出す、という選択には弱点があります。委託先の報告が妥当かどうかを判断できる人が社内にいなくなると、契約内容を見直す判断もできなくなるためです。
そして、その判断力を社内に残す仕組みは、多くの企業でまだ整っていません。IPAの調査から、その土台の弱さが見えてきます。
必要なスキルを把握できていない企業52.8%、人材像を周知している企業16.2%という土台の弱さ
まず数値を確認します。DXに取組んでいる企業のうち、必要なスキルを把握できていない企業は2025年時点で52.8%です。人材像を設定し社内に周知している企業は2025年時点で16.2%です。DX人材の評価基準が「ない」企業は2025年時点で76.1%でした。
先ほどは委託先への要求仕様という観点で見ましたが、ここでは社内の育成という観点で見ます。求める人材像も評価基準も定まっていない状態では、社内に知識が積み上がる仕組みを作れません。
育成予算を増やした企業は2024年時点で23.8%、2025年時点で25.6%とわずかに増えています。投資の側だけが先に動き、人材像の周知や評価基準の整備は追いついていません。この状態で委託範囲だけを広げると、社内には判断材料が残りません。
委託しても社内に残すのは、判断の基準と委託先を評価する力
ここから言えるのは、委託範囲を決める判断には、社内に残す能力の設計が伴うという点です。2025年時点で人材の「量」が不足している企業は85.5%、「質」が不足している企業は88.8%(いずれもDXに取組んでいる企業の回答)で、社内だけで抱え込む前提は現実的ではありません。
一方で、フルアウトソーシングにしても、報告を読んで妥当性を判断する人は社内に必要です。その判断力は、業務にまったく触れない状態では育ちにくいものです。
そのため現実的なのは、一部委託から始めて、判断の基準と委託先を評価する力を社内に残す進め方です。委託範囲を広げるかどうかは、社内で評価できる範囲が広がってから判断すれば間に合います。
まとめ
情シスのアウトソーシングで迷ったら、委託範囲と契約形態の2軸に戻ってください。サービス名や常駐かリモートかという切り口は、この2軸が決まったあとの話です。
この記事の要点を整理します。
- 2軸で整理する: 委託範囲(一部委託・運用アウトソーシング・フルアウトソーシング)と契約形態(準委任・請負・労働者派遣)は独立した軸です。求められる中身が人数の補充から専門性の調達へ移っている今、掛け合わせで自社の形を決める必要があります
- 契約形態より先に完了条件を書く: DXに取組んでいる企業のうち、人材の「質」が不足していると答えた企業は2025年時点で88.8%です。同じ調査で、必要なスキルを把握できていない企業は2025年時点で52.8%でした。同じ構造は委託先への要求仕様にも現れやすくなります
- 契約書の名称と実態をそろえる: 準委任・請負でも、発注者が委託先の担当者へ日々の作業指示を出すと偽装請負と判断され得ます。指揮命令の出し方まで含めて形態を決めてください
- 数字は前提とセットで引く: 経済産業省の推計では2030年時点の需給ギャップが44.9万人ですが、これは2019年公表の推計値です。実測値として引用すると説明を誤ります
- 委託先管理は社内に残る: 責任範囲、報告義務、対策状況の確認方法、納品物の検証を契約に書いておくと、委託後に確認する根拠ができます
まずは任せたい業務を書き出して、1件ずつ完了条件を書けるか判定するところから始めてみてください。この仕分けができれば、見積もりの読み方も、上長への説明も進めやすくなります。
出典: 情報処理推進機構「DX動向2026」/経済産業省「IT人材需給に関する調査 報告書」/厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集(第2集)」
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情シスカレッジ(新人・ひとり情シスのためのマイクロラーニングLMS)
この記事の結論のとおり、アウトソーシングしても判断の基準は社内に残ります。委託先の報告を読み解き、責任範囲を自分の言葉で定義するには、担当者側にIT運用の基礎知識が必要です。とはいえ、日々の業務に追われながらまとまった研修時間を確保するのは難しいですよね。
情シスカレッジは、新人・ひとり情シスのためのマイクロラーニングLMSです。短い動画で学び、小テストで理解度を確認する形式なので、業務の合間に少しずつ進められます。
情シスカレッジの特徴
- 数分の動画+小テスト: すきま時間で学べ、理解度をその場で確認できます
- 必修割り当て・期限・進捗ダッシュボード: 誰がどこまで進んだかを管理者がひと目で把握できます
- 自社カリキュラム編成・CSV教育記録: 自社に必要な講座を組み合わせ、教育記録をCSVで出力できます
導入は5名から可能で、請求書払いに対応しています。初期設定は約10分で完了します。
※出典

