【2025年 総務省調査】ファイルサーバーのクラウド化はクラウド利用企業の73.3%が実施|判断基準と移行の注意点

社内のファイルサーバーが保守切れを迎えるたびに、同じ議論を繰り返していないでしょうか。入れ替えるのか、クラウドに移すのか、判断材料がないまま期限だけが近づいてきます。
- オンプレミスのファイルサーバーが保守切れ間近だが、クラウドに移すべきか判断がつかない
- 他社がどこまでクラウド化しているのか、比べる材料が社内にない
- 上司にはコスト削減で説明しているが、本当にそれが一番の理由なのか自信がない
結論から言うと、ファイル保管・データ共有はすでにクラウドの用途の中で最も多い選択肢です。総務省の通信利用動向調査によると、2025年調査時点でクラウドを利用している企業の73.3%がこの用途を挙げました。出典は総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2です。
この記事では、公表されている一次データだけを使って、利用実態・規模別や業種別の差・利用理由と見送る理由・移行時の注意点を整理します。製品ごとの料金比較は扱いませんが、社内資料にそのまま使える数値と出典を用意しました。
この記事のポイント
- 2025年調査時点で、クラウド利用企業の73.3%がファイル保管・データ共有に利用しています(総務省 通信利用動向調査)
- 利用理由の上位は可用性45.1%と保守体制が不要42.8%で、コストは19.4%にとどまります(2025年調査)
- クラウドを全社的に使う企業は、2024年調査の53.1%から2025年調査の60.0%へ増えました
ファイルサーバーのクラウド化はクラウド利用企業の73.3%が選ぶ最も多い用途になっている(2025年調査)
はじめに用語を整理します。ファイルサーバーのクラウド化には、大きく2つの方法があります。
1つは、クラウド事業者が提供するサーバー基盤(IaaS)の上に、自社でファイルサーバーを構築する方法です。もう1つは、SaaS型のクラウドストレージに置き換える方法で、一般にオンラインストレージと呼ばれるサービスもここに含まれます。
前者は既存の権限設計やフォルダ構成をそのまま持ち込みやすく、後者はサーバーの管理そのものを手放せる点が特徴です。自社の機器を自社の拠点に置くオンプレミスとの違いは、機器の調達と保守を誰が持つかにあります。
なお公的統計には「ファイルサーバーのクラウド化」という指標がありません。この記事では、総務省の通信利用動向調査にある利用目的「ファイル保管・データ共有」を、これに対応する指標として扱います。
2025年調査では、クラウドサービスを利用している企業の73.3%がこの用途を挙げました。同じ調査でクラウドサービスを利用している企業の割合は83.5%で、その中の多数派がファイル共有に使っている状態です。
クラウドサービス全体の利用率は2025年調査時点で83.5%
まず全体像を押さえます。クラウドサービスを利用している企業の割合は、2025年調査で83.5%でした。
この水準は短期間で到達したものではありません。2010年調査では13.7%で、そこから15年かけて上がり続けてきました。

| 調査年 | クラウドサービスを利用している企業の割合 |
|---|---|
| 2021年 | 70.4% |
| 2022年 | 72.2% |
| 2023年 | 77.7% |
| 2024年 | 80.4% |
| 2025年 | 83.5% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」ほか各年調査より作成。2019年・2020年調査分は本記事のデータベースに未収録のため除いています。2024年以前は無回答を含むベース、2025年は無回答を除くベースで、集計基準が異なります。
利用率は毎年上がっており、頭打ちになる兆しはまだ見えません。 自社が未導入であれば、調査対象と同じ規模帯の企業の中では少数派の位置にいます。
ファイル保管・データ共有の利用は4年で61.0%から73.3%に上がった
ファイル共有目的の利用は、この4年で大きく伸びました。2021年調査の61.0%から、2025年調査の73.3%まで上がっています。
途中の年も一貫して上向きです。2022年調査は64.1%、2023年調査は68.8%、2024年調査は70.8%と、毎年2〜5ポイントずつ増えました(本記事による計算値)。なお2024年以前は無回答を含むベース、2025年は無回答を除くベースで、集計基準が異なります。
この項目は、通信利用動向調査の利用目的の中でも回答割合が高い項目です。本記事で確認した2021年・2024年・2025年調査では、いずれもこの項目が最多でした。
この推移から読み取れるのは、ファイル共有のクラウド化が一部の先進企業の取り組みではなくなったという点です。老朽化を機に検討を始める企業にとっては、すでに前例が十分にたまった領域だと考えられます。
この73.3%は常用雇用者100人以上の企業を対象にした調査の数値
数値を自社に当てはめる前に、母集団を確認してください。通信利用動向調査の企業編は、公務を除く産業に属する常用雇用者100人以上の企業を対象にしています。
つまり2025年調査の73.3%も、全体の利用率83.5%も、従業員数十人規模の企業を含まない数値です。ひとり情シスや小規模チームの環境は、この数値の外側にあります。
注意
この記事で扱う総務省の数値は、いずれも公務を除く産業に属する常用雇用者100人以上の企業を対象にした調査の結果です。従業員100人未満の企業の実態は、本記事で確認できた公的統計の範囲では扱われていません。自社の規模がこれより小さい場合は、「自社より大きい企業の平均」として読んでください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/同 別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/同 令和5年報告書(企業編)/同 令和4年報告書(企業編)/同 令和3年報告書(企業編)/e-Stat 統計表0003165250
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クラウド化の論点は導入の可否から全社展開に移り、全社利用は1年で53.1%から60.0%に増えた
いま社内で起きている議論は、「クラウドを入れるかどうか」ではないはずです。すでにいくつかのSaaSは使っていて、残っているのはファイルサーバーだけ、という会社は多いのではないでしょうか。
統計にも同じ動きが表れています。クラウドサービスを全社的に利用している企業の割合は、2024年調査の53.1%から2025年調査の60.0%へ増えました。
一方で、クラウドを利用している企業の割合そのものは83.5%まで来ています。導入済みの企業が大半を占める以上、残っている論点は「どこまで広げるか」に移っていると整理できます。
全社的な利用は6.9ポイント増で、全体の伸び3.1ポイントの2倍以上のペース
2つの数値を並べると、伸び方の違いがはっきりします。クラウド利用企業の割合は2024年調査の80.4%から2025年調査の83.5%へ3.1ポイントの増加でした(本記事による計算値)。
ただしこの2つは集計基準が異なります。2024年調査の値は無回答を含むベース、2025年調査の値は無回答を除くベースです。総務省は別紙2で2024年分を無回答を除く系列に揃えて再集計しており、その系列どうしで比べた場合の増加幅は3.1ポイントよりわずかに小さくなります。
同じ1年で、全社的に利用している企業は53.1%から60.0%へ6.9ポイント増えています。こちらは同一系列内の比較で、総務省が別紙2に増加幅として明記している数値です。全体の伸びの2倍以上のペースになります。
この2つの数値を並べると読み取れるのは、直近1年の増加分が新規導入よりも利用範囲の拡大によって生まれている、という構図です。すでに部門単位で使っていた企業が、対象を全社に広げた結果だと考えられます。
ただし、上で触れたとおり全体の伸びには集計基準の違いが含まれます。伸び幅の一部はその差で説明できる余地が残る点に注意が必要です。
2025年時点でも23.5%の企業は一部の事業所・部門でしか使っていない
全社展開が進む一方で、途中で止まっている企業も残っています。2025年調査で、クラウドを一部の事業所または部門で利用している企業の割合は23.5%でした。
全体の83.5%のうち、全社利用が60.0%、一部利用が23.5%という内訳です。4分の1近い企業が、部分的な利用にとどまっています。
ここから読み取れるのは、部門単位で導入しやすいサービスから先にクラウド化が進み、全社横断のシステムが後回しになっている可能性です。ファイルサーバーは全社員が使うため、まさに後回しにされやすい対象です。
自社が23.5%の側にいないか、一度点検してみてください。チャットや経費精算はクラウドなのに、ファイルサーバーだけ社内に残っている状態は、この統計上の位置とよく一致します。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/同 別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
資本金1000万円未満の企業でも2025年調査時点で75.4%がクラウドを利用している
「うちの規模ではまだ早い」という前提は、直近のデータで更新が必要です。2025年調査で、資本金1000万円未満の企業のクラウド利用率は75.4%でした。
同じ区分は2024年調査では61.5%で、1年で水準が大きく変わっています。ひとり情シスのような少人数体制の会社でも、クラウドを使うこと自体は珍しくなくなりました。
一方、資本金50億円以上の企業は2024年調査・2025年調査とも99.8%です。大企業側はすでに動く余地が残っていません。
資本金規模による差は38.3ポイントから24.4ポイントに縮まった
規模による差は縮小しています。資本金50億円以上の99.8%と1000万円未満の61.5%の差は、2024年調査で38.3ポイントでした(本記事による計算値)。これは資本金1000万円未満と50億円以上という、両端の区分どうしの差です。
2025年調査では99.8%と75.4%で、差は24.4ポイントまで縮まっています(本記事による計算値)。大企業側が飽和している以上、全体を押し上げているのは小規模企業側です。

ここから読み取れるのは、クラウド化の議論が大企業の事例で語られてきた一方、直近で実際に動いているのは小規模企業層だという点です。ただし1年での伸び幅そのものは、後述する標本規模の制約があるため、傾向として断定はできません。
社内説明で使うなら、伸び幅よりも「同じ資本金規模でも2025年調査時点で75.4%が使っている」という水準のほうが確実です。
業種別では運輸業・郵便業の78.3%が最も低く、金融・保険業とは17.9ポイントの差がある
業種による差も確認しておきましょう。2025年調査で最も高いのは金融・保険業の96.2%、最も低いのは運輸業・郵便業の78.3%でした。両者の差は17.9ポイントです(本記事による計算値)。
最上位の業種は年によって入れ替わります。2024年調査で最も高かったのは情報通信業の96.0%で、金融・保険業の93.1%は2番目でした。2025年調査では金融・保険業が最上位に入れ替わっています。一方で、最も低いのが運輸業・郵便業である点は2年連続で共通しています。

| 業種 | 2025年調査 | 2024年調査 |
|---|---|---|
| 金融・保険業 | 96.2% | 93.1% |
| 情報通信業 | 94.8% | 96.0% |
| 建設業 | 89.2% | 86.7% |
| 製造業 | 85.6% | 80.6% |
| 運輸業・郵便業 | 78.3% | 72.6% |
| 全体 | 83.5% | 80.4% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-2より作成。2025年調査は無回答を除くベース、2024年調査は無回答を含むベースで、集計基準が異なります。
自社の業種が全体83.5%より上か下かを確認すると、社内での位置づけを説明しやすくなります。
75.4%はn=100の集計で、従業員100人未満の企業は調査対象に含まれない
この数値には2つの制約があります。1つ目は母集団です。「資本金1000万円未満」という区分でも、調査対象は常用雇用者100人以上の企業に限られます。
2つ目は標本規模です。2025年調査のこの区分はn=100と、標本が小さくなっています。2024年調査からの伸び幅を、そのまま断定的な傾向として読むのは避けたほうがよいでしょう。
注意
75.4%という数値を、そのまま「小さい会社でも4社に3社」と読むのは正確ではありません。資本金が小さくても従業員100人以上の企業だけを集計した値だからです。また61.5%から75.4%への変化幅も、標本規模が小さいため確定した傾向としては扱えません。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/同 別紙2 図表4-2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
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クラウドを利用する理由の上位は可用性45.1%と保守体制不要42.8%で、コスト削減は19.4%にとどまる
クラウド化の稟議を「コスト削減」で書いていないでしょうか。公的調査を見る限り、それは企業の実際の判断基準とずれています。
2025年調査でクラウドを利用する理由として「既存システムよりもコストが安いから」を挙げた企業は19.4%でした。一方、「安定運用、可用性が高くなるから」は45.1%、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」は42.8%です。
コストは8項目の中で最も低く、上位の理由の半分以下の支持しかありません。 クラウド化のメリットとしてコスト削減が筆頭に語られがちですが、統計上の主役はそこではありません。
ポイント
- 稟議はコスト削減ではなく、可用性と運用負担を主軸に書くと、他社の判断基準と揃います
- 「止まらないこと」「機器と保守要員を社内に抱えないこと」が、調査に表れた上位の動機です
- コスト面は補足として添え、単年ではなく数年分の運用費で比較します
上位は場所を選ばない利用50.7%・可用性45.1%・保守体制不要42.8%の順
2025年調査の回答を、割合が高い順に並べます。首位は「場所、機器を選ばずに利用できるから」の50.7%でした。
いずれもクラウド利用企業への設問で、無回答を除くベース、回答企業数はn=2,131です。

| クラウドサービスを利用する理由(2025年調査) | 回答割合 |
|---|---|
| 場所、機器を選ばずに利用できるから | 50.7% |
| 安定運用、可用性が高くなるから | 45.1% |
| 資産、保守体制を社内に持つ必要がないから | 42.8% |
| 災害時のバックアップとして利用できるから | 38.7% |
| サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策) | 35.0% |
| システムの容量の変更などに迅速に対応できるから | 32.6% |
| システムの拡張性が高いから(スケーラビリティ) | 28.9% |
| 既存システムよりもコストが安いから | 19.4% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-4より作成。クラウドサービスを利用している企業が対象、無回答を除くベース、n=2,131。
ファイルサーバーに置き換えて読むと、社外からの参照、機器の停止リスク、保守の手離れが上位に並んだ形です。
コスト削減を挙げた企業は2年連続で19%台にとどまっている
コストの位置づけは、単年の結果ではありません。「既存システムよりもコストが安いから」は2024年調査で19.1%、2025年調査で19.4%と、ほぼ動いていません。
一方で「安定運用、可用性が高くなるから」は2024年調査の40.4%から2025年調査の45.1%へ上がりました。「災害時のバックアップとして利用できるから」も2024年調査40.2%、2025年調査38.7%と、コストの2倍前後の水準を保っています。
機器と保守要員を抱えないという動機は、2025年調査で42.8%です。保守を外部に任せる判断は、コスト以上に人手の問題として選ばれていると読めます。
なお、この結果はクラウド化がコスト面で不利であることを示すデータではありません。既存システムとの総額比較を厳密に行っていない企業が多い、という解釈も成り立ちます。
国内パブリッククラウド市場は2024年に4兆1,423億円で前年比26.1%成長
続いて費用の話です。この記事では料金比較を扱いませんが、市場全体の伸びは一次データで確認できます。
総務省の令和7年版情報通信白書によると、日本のパブリッククラウドサービス市場規模は2024年に4兆1,423億円でした。前年比では26.1%の成長です。
クラウドの費用は、契約後も増え続ける前提で見ておくのが安全です。 初年度の月額だけで判断せず、データ量の増加やユーザー追加を織り込んだ試算をおすすめします。
ただしこの数値はIDC Japanの調査に基づく推計を白書が引用したもので、総務省が自ら実施する統計調査とは性格が異なります。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-4/総務省「令和7年版情報通信白書」図表Ⅱ-1-8-5
データ保全を目的にしたクラウド利用は46.4%まで増えたが、ファイル共有用途とは26.9ポイントの差がある
移行後にいちばん起きやすい設計漏れは、バックアップです。「クラウドに置いてあるから大丈夫」と考えて、復元の手段を用意していないケースがあります。
統計にもその差が表れています。2025年調査で、クラウドをデータバックアップ目的で使う企業は46.4%でした。同じ調査のファイル保管・データ共有73.3%とは、26.9ポイントの開きがあります(本記事による計算値)。
クラウド事業者が守るのは基盤の可用性であり、利用者側の操作ミスや暗号化への備えは別に設計する必要があります。
ポイント
- 共有用途と保護用途は別に設計します。移行先にファイルがあることと、消えたファイルを戻せることは別の話です
- 世代管理の保持期間、復元の操作手順、復元にかかる時間を移行前に確認します
- バックアップの保管先は1系統をオフライン、または変更不可(イミュータブル)設定にし、本体と同時に暗号化されない状態を作ります
- 復元テストを一度実施し、結果を記録に残しておきます
バックアップ目的の利用は2023年42.0%から2025年46.4%に増えた
保護目的の利用も伸びてはいます。データバックアップを目的にクラウドを使う企業の割合は、2022年調査で36.9%、2023年調査で42.0%でした。
その後も2024年調査43.6%、2025年調査46.4%と、毎年上がっています。この推移も2024年以前は無回答を含むベース、2025年は無回答を除くベースで、集計基準が異なります。

ただし同じ2025年調査のファイル保管・データ共有は73.3%で、水準には差が残ったままです。共有目的が先行し、保護目的が後を追う構図が続いているのが実情です。
社内で「クラウド化」と言うとき、多くの場合は共有の話をしています。 保護の話が同じ会議で出ていないなら、そこが抜けている可能性があります。
ランサム攻撃は11年連続で組織向け脅威に選出され1位、内部不正は7位
保護設計が必要な理由として、脅威側の状況も確認しておきましょう。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、ランサム攻撃による被害が組織向けの1位で、2016年以降11年連続で選出されています。
同じ資料では、1位がランサム攻撃による被害、2位がサプライチェーンや委託先を狙った攻撃という並びが4年連続で変わっていません。この2位の脅威は8年連続の選出、7位は内部不正による情報漏えい等でした。
ファイルサーバーは、社内の重要なデータが集まる場所です。暗号化や持ち出しの対象になりやすく、ランサムウェアの被害状況を踏まえた復旧手段の確保が求められます。
なおこのランキングは、IPAが選出した候補に専門家が投票して順位を決めたもので、被害件数の統計ではありません。公表年ベースで2026年の資料であり、総務省の調査年とは基準が異なります。
共有用途と保護用途は別に設計する必要がある
ここまでの数値から読み取れるのは、クラウド移行の議論が共有の利便性に寄っており、保護の設計が遅れているという構図です。2025年調査で26.9ポイントの差が残っていること自体が、その表れだと考えられます(73.3%と46.4%の差、本記事による計算値)。
一方で、利用理由としての「災害時のバックアップとして利用できるから」は2025年調査で38.7%でした。意識している企業は一定数いる、という読み方もできます。
ここで念のための補足です。脅威の継続とバックアップ用途の増加は、同じ時期に観測された事実を並べたものであって、因果関係を示すものではありません。ファイルサーバーやNAS経由の被害件数など、両者を直接つなぐ一次統計は本記事の範囲では確認できていません。
実務としては、移行先のサービスで世代管理と復元手順を確認し、一度実際に戻してみるところまでを移行計画に含めてください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-3/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書(組織編)
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テレワーク導入率が横ばいの中でもファイル共有のクラウド化は伸び続けている
「テレワークで需要が増えたからクラウド化が進んでいる」という説明をよく見かけます。ただ、この説明だけでは直近の動きを説明できません。
テレワークを導入している企業の割合は、2025年調査で50.1%です。2021年調査の51.8%から4年間ほぼ横ばいなのに対し、同じ期間にファイル保管・データ共有は61.0%から73.3%まで上がりました。ただし直近1年に限れば、テレワーク導入率も2024年調査の47.3%から増えています。
ファイル共有のクラウド化は、リモート対応以外の動機も含んで進んでいると考えられます。 保守負担の軽減や運用工数の削減、拠点間の共有といった理由が、そこに含まれます。
テレワーク導入率は2025年で50.1%と、4年前とほぼ同じ水準にある
まずテレワーク側の推移です。2020年調査で47.4%へ急伸したあと、2021年調査の51.8%をピークに横ばいから微減で推移しています。
2025年調査は50.1%で、4年前とほぼ同じ水準です。

| 調査年 | テレワークを導入している企業の割合 |
|---|---|
| 2019年 | 20.1% |
| 2020年 | 47.4% |
| 2021年 | 51.8% |
| 2022年 | 51.7% |
| 2023年 | 49.9% |
| 2024年 | 47.3% |
| 2025年 | 50.1% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表4-1より作成。2019年から2024年までの値は令和6年報告書 図表4-1、2025年の値は令和7年別紙1によります。2024年以前は無回答を含むベース、2025年は無回答を除くベースで、集計基準が異なります。全企業を分母とした割合です。
同じ期間に、ファイル保管・データ共有は2021年調査で61.0%、2024年調査で70.8%でした。2025年調査は73.3%で、4年間で12.3ポイントの上昇です(本記事による計算値)。なおこの4年間の比較にも、2024年以前と2025年の集計基準の違いが含まれます。
この対比から読み取れるのは、クラウド化の伸びをテレワークだけでは説明できないという点です。
テレワーク導入率の業種差60.3ポイントに対し、クラウド利用率の差は16.5ポイント
業種別に見ると、この違いはさらにはっきりします。2025年調査のテレワーク導入率は、情報通信業が92.8%、運輸業・郵便業が32.5%で、差は60.3ポイントです(本記事による計算値)。
同じ2業種のクラウド利用率は、情報通信業94.8%、運輸業・郵便業78.3%で、差は16.5ポイントにとどまります(本記事による計算値)。

この対比から読み取れるのは、テレワークの浸透度が大きく異なる業種の間でも、クラウド利用率の差はその3割弱にとどまるという点です。現場業務が中心の業種でも、クラウドは別の理由で使われていると考えられます。
ただし解釈には注意が必要です。テレワーク導入率は一部でも導入していれば導入企業と数える指標で、実施人数や頻度の変化は表れません。
またファイル保管・データ共有の分母はクラウド利用企業、テレワーク導入率の分母は全企業で、そもそも母集団が異なります。運輸業・郵便業のように現場業務が中心の業態要因が、2つの指標に別々に効いている可能性も残ります。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/同 別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表4-1/同 令和3年報告書(企業編)
クラウド化を見送る理由の最多は「必要がない」で46.0%、改修コストと不安が続く
クラウド化しない判断も、検討の材料になります。見送った企業の回答も、公的調査には残っているからです。
2024年調査でクラウドサービスを利用しない理由の最多は「必要がない」で46.0%でした。技術的な障害よりも、必要性を感じていないという回答が半数近くを占めます。
ただしこの設問は、クラウドを利用しておらず、今後も利用する予定がないと回答した企業への設問です。回答企業数もn=171と小さい点に注意してください。 全体の傾向としてそのまま扱うには、母数が限られます。
実際の障壁は既存システムの改修コスト29.6%とセキュリティ不安24.9%
必要性以外の理由を見ると、実務的な障壁が並びます。2位は既存システムの改修コストで29.6%でした。
| クラウドサービスを利用しない理由(2024年調査) | 回答割合 |
|---|---|
| 必要がない | 46.0% |
| クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい | 29.6% |
| 情報漏えいなどセキュリティに不安がある | 24.9% |
| ネットワークの安定性に対する不安がある | 14.7% |
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6より作成。クラウドサービスを利用しておらず、今後も利用する予定がないと回答した企業が対象、n=171。
オンプレミスのファイルサーバーを運用している会社にとって、改修コストは実感しやすい項目です。長年積み上げてきたフォルダ構成とアクセス権を作り直す作業が、移行の主な負担になります。
移行を見送るなら、その理由がこの4項目のどれに当たるのかを言語化しておくと、次回の検討で議論を再開しやすくなります。
セキュリティは利用しない理由24.9%と利用する理由35.0%の両方に挙がっている
セキュリティは、判断を分ける項目です。2024年調査では、利用しない理由として情報漏えいなどへの不安が24.9%挙がっています。
一方で2025年調査の利用する理由では、「サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策)」が35.0%でした。同じ論点が、使わない理由にも使う理由にもなっています。
この2つはいずれも総務省の通信利用動向調査の数値ですが、調査年も回答している企業層も異なります。調査どうしが矛盾しているのではなく、立場によって評価が分かれていると読むのが正確です。
実務の結論はここです。クラウドが安全とも危険とも統計からは言えないため、自社の現在の運用と比べて判断してください。パッチ適用の遅れや退職者アカウントの残存が起きている環境なら、比較の起点はそこになります。
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-4
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利用企業の89.4%が効果を実感しており、移行は段階的に進めるのが基本
最後に、実際に使った企業の評価を見ておきます。2025年調査で、クラウドサービスの効果があったと答えた企業は89.4%でした。
移行の進め方そのものについては、公的統計にデータがありません。そのため以下は一般的な進め方の紹介にとどめますが、順番を守るだけで手戻りは大きく減らせます。
ポイント|移行前に確認する4項目
- 既存のファイルサーバー・NASの台数とデータ量を棚卸しします(移行時間の見積もりに直結します)
- 一部の部門・データで試験移行し、アクセス権の再現と操作性を確認します
- 移行前にバックアップを取り、戻せる状態を作ってから作業します
- 優先順位を決めて段階的に移行し、一度に全社を切り替えないようにします
「非常に効果があった」36.0%・「ある程度効果があった」53.5%(2025年調査)
効果の内訳も公表されています。2025年調査では「非常に効果があった」が36.0%、「ある程度効果があった」が53.5%でした。
両者を合わせた公表値は89.4%です(内訳の単純合算とは、統計上の四捨五入のため一致しません)。いずれも無回答を除くベースで集計された数値です。
ただし、この設問に答えているのはクラウドを導入した企業だけです。導入を決めた側が評価しているため、数値は高めに出やすい構造にあります。 期待値をそのまま社内に伝えるのではなく、参考値として扱ってください。
効果ありの割合は5年間87〜89%台で高止まりしている
この評価は最近だけの傾向ではありません。効果があったと答えた企業の割合は、2021年調査88.2%、2022年調査89.0%、2023年調査88.4%でした。
2024年調査は87.3%、2025年調査は89.4%です。5年間ほぼ横ばいで、いずれの年も9割近くを維持しています。

後発で始めても、得られる評価が下がっているわけではありません。 老朽化を機に検討する会社にとっては、後押しになる材料です。
なお2025年調査の89.4%は無回答を除くベースで、2021年から2024年までの値とは集計基準が異なります。単純な経年比較として扱う場合は、この点を注記してください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-5/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/同 令和5年報告書(企業編)/同 令和4年報告書(企業編)/同 令和3年報告書(企業編)
まとめ
この記事で確認した内容を、判断に使う順に整理します。
- ファイル保管・データ共有は、2025年調査でクラウド利用企業の73.3%が挙げる定着した用途です
- 論点は導入の可否ではなく全社展開に移っています(2025年調査で全社利用60.0%)
- 稟議はコスト削減ではなく、可用性45.1%と運用負担を軸に書きます(コストは19.4%)
- クラウドに置くこととバックアップを取ることは別です(73.3%に対しバックアップ用途は46.4%)
- これらの数値は常用雇用者100人以上の企業を対象にした調査の値で、それ以下の規模は含みません
まず着手するなら、いま社内にあるファイルサーバーとNASの台数、データ量、保守期限を一覧にしてみてください。移行の可否を判断する前に、その表がないと見積もりも比較もできません。
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この記事で扱った「クラウドに置くこととバックアップを取ることは別」という論点は、独学では気づきにくい領域です。少人数の情シス体制では判断を誤ったときの後戻りが大きく、事故が起きてから知るという事態も起こります。
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5名から利用でき、請求書払いにも対応しています。初期設定はおよそ10分で、担当者が1人でも始められます。
※出典

