【総務省データ】クラウドサーバーとは|2025年の企業クラウド利用率83.5%と移行判断の3つの軸

社内サーバーのリプレース時期が近づくと、そのままクラウドへ移すべきか迷いますよね。判断材料が社内にないまま、ベンダーからの見積もりだけが先に届くことも珍しくありません。
- 社内サーバーの更新時期が近いが、クラウドに移すか決めきれない
- 他社がサーバー領域をどこまでクラウド化しているのか分からない
- ベンダー資料の「コスト削減」をどこまで信じてよいか判断できない
結論から言うと、企業のクラウド利用はすでに検討段階を過ぎ、全社設計の段階に入っています。総務省の通信利用動向調査によると、2025年調査時点でクラウドサービスを利用している企業は83.5%です(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1)。すでに未導入のほうが少数派です。
この記事では、公表されている一次データだけを使って、クラウドサーバーの位置づけと判断材料を整理します。メリットの優先順位、移行の障壁、自社への当てはめ方の順に見ていきます。製品ごとの料金比較は扱いませんが、社内の稟議資料にそのまま使える数値と出典をそろえました。
この記事のポイント
- 2025年調査時点で企業の83.5%がクラウドサービスを利用し、全社的に利用している企業は60.0%です(総務省 通信利用動向調査)
- 選ばれる理由の上位は可用性と保守負荷の軽減で、「既存システムよりもコストが安いから」は8項目中で最も低い19.4%です(2025年調査)
- サーバーへのウイルス対策プログラム導入は60.7%、端末は82.0%で、その差は21.3ポイントです(いずれも2025年調査。差は本記事による計算値)
クラウドサーバーは仮想化したサーバー環境をネットワーク経由で利用する仕組み

クラウドサーバーとは、事業者のデータセンターにある物理サーバーを仮想化し、その一部をネットワーク経由で借りて使う仕組みです。代表的なサービス形態はIaaS(Infrastructure as a Service)です。
VPSも仮想サーバーを借りる点は共通します。ただしNISTのクラウド定義が必須要件として挙げる「オンデマンドのセルフサービス」や「迅速な拡張性」をどこまで満たすかはサービスによって異なり、IaaSと区別して扱われることもあります。本記事では両者を分けて整理します。
自社で機器を購入して設置する代わりに、必要な性能のサーバーを申し込んで利用する形です。台数やスペックの変更も、機器の調達を待たずに管理画面から行えます。
ここで先に断っておきたい点があります。「クラウドサーバーの普及率」を直接示す数値は、総務省の通信利用動向調査をはじめとする主要な公的統計では現時点で見当たりません。 理由は調査の設計が変わったためで、まずはその経緯から説明します。
ポイント
- クラウドサーバーは、事業者の設備を仮想化してネットワーク経由で使うサーバーです(代表例はIaaS)
- 総務省調査は2018年調査まで「サーバ利用」を独立項目で数えていましたが、現在は用途別の項目に再編されています
- オンプレミス・レンタルサーバー・VPSとの違いは、リソースの増減のしやすさと保守責任の持ち方に出ます
総務省調査では2018年時点でクラウド利用企業の51.0%が「サーバ利用」を目的に挙げていた
クラウドサーバーは、かつて公的統計でも独立した利用形態として数えられていました。総務省の通信利用動向調査では、2018年調査(平成30年調査)まで「サーバ利用」が利用しているクラウドサービスの選択肢に入っていたためです。少なくとも2015年調査から選択肢に含まれており、2018年調査を最後に外されました。
表に示した3年間では、その割合は上昇しています。2016年調査の46.7%から、2018年調査では51.0%まで伸びました。
| 調査年 | 「サーバ利用」を挙げた企業の割合 |
|---|---|
| 2016年 | 46.7% |
| 2017年 | 47.6% |
| 2018年 | 51.0% |
出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査報告書」図表3-9/総務省「平成29年通信利用動向調査報告書」図表3-9より作成。割合の分母はクラウドサービスを利用している企業です。
2018年時点では、クラウドを使う企業のおよそ半数がサーバー用途で使っていたことになります。 クラウドサーバーは最近登場した選択肢ではなく、10年近く前から一定の広がりを持っていました。
2019年以降の調査に「サーバ利用」の項目はなく、用途別データから読み取るしかない
一方で、2019年以降の調査には「サーバ利用」という項目がありません。選択肢が業務用途別に再編され、このカテゴリ自体が表から消えました。
現在の利用実態は、用途別の数値で間接的に見ることになります。2025年調査では「ファイル保管・データ共有」が73.3%、「給与、財務会計、人事」が56.3%、「データバックアップ」が46.4%でした。
この調査設計の変化から読み取れるのは、IaaSやVPSの普及度を直接示す公的統計が現在は存在しないという点です。「クラウドサーバーの利用率」が見つからない理由は、普及していないからではなく、調査の項目立てが変わったことにあります。
注意
選択肢が再編された理由そのものは、調査票の改定理由として公表されているわけではありません。ただし令和2年の報告書には「「サーバ利用」は平成30年調査までの選択肢」という注記があり、意図的に外されたことは確認できます。また2016〜2018年の「サーバ利用」と現在の用途別項目は、選択肢の構成も集計基準も異なります。同じ指標の推移として並べて読まないでください。用途別の割合は、いずれもクラウドサービスを利用している企業を分母とした値です。なお「ファイル保管・データ共有」「給与、財務会計、人事」は無回答を除く集計、「データバックアップ」は無回答を含む集計で、0.1ポイント程度の差が生じます。
レンタルサーバー・VPS・オンプレミスとの違いは拡張性と保守の持ち方に出る
サーバーの調達方法は大きく4つに分かれます。違いが最も出るのは、リソースを後から増減できるかと、ハードウェアの保守を誰が持つかの2点です。
| 形態 | リソースの増減 | 初期費用の持ち方 | ハードウェアの保守責任 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
| オンプレミス | 機器の調達が必要で時間がかかる | 資産としての購入のほか、リースやサブスクリプションでの調達もある | 自社(保守をベンダーに委託する場合も、最終的な責任は自社) | 要件が固定で、機器を自社資産として持ちたい業務 |
| レンタルサーバー | 上位プランへの変更が中心 | 月額のみ | 事業者 | Webサイトやメールなど用途が決まった業務 |
| VPS | プラン変更で段階的に増減 | 月額のみ | 事業者 | 小規模で自由度が必要な検証環境・業務システム |
| クラウドサーバー(IaaS) | 管理画面から随時増減 | 月額・従量が中心 | 事業者 | 負荷が変動する業務、拡張予定のある基幹系 |
クラウドの定義はIPA訳「NISTによるクラウドコンピューティングの定義」(NIST SP 800-145)、責任の持ち方は総務省「クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドラインの概要」を参照して整理しています。
この比較軸は机上のものではありません。2025年調査でクラウドを利用する理由でも、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」が42.8%選ばれています。「システムの拡張性が高いから」も28.9%が挙げました。
ただし、この4分類は業界で一意に決まったものではありません。とくにVPSとIaaSの線引きは事業者やサービスによって変わります。自社で比較するときは名称ではなく、リソースを後から増減できるか、保守責任がどこまで移るかという条件で確認してください。
概念としてのオンプレミスとクラウドの違いを先に整理したい場合は、別記事にまとめてあります。本記事はこの先、サーバー基盤をクラウドへ移すかどうかの判断材料に絞って進めます。
出典: 総務省「平成30年通信利用動向調査報告書」/総務省「平成29年通信利用動向調査報告書」/総務省「平成28年通信利用動向調査報告書」/総務省「令和2年通信利用動向調査報告書」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/IPA訳「NISTによるクラウドコンピューティングの定義」/総務省「クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドラインの概要」
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企業のクラウド利用率は2025年に83.5%へ達し、全社利用が60.0%を占める

自社の位置を測る前に、全体の現在地を押さえておきましょう。2025年調査でクラウドサービスを利用している企業は83.5%、そのうち全社的に利用している企業は60.0%です。
ここで注目したいのは、利用の有無よりも利用の広さが動いている点です。詳しく見ていきます。
クラウド利用率は2010年の13.7%から15年で83.5%まで伸びた
企業のクラウド利用は、15年をかけて例外から標準へ変わりました。2010年調査では13.7%でしたが、2025年調査では83.5%に達しています。
途中の年も一貫して上向きです。2015年調査で44.0%、2018年調査で58.7%、2023年調査で77.7%と積み上がってきました。

| 調査年 | クラウドサービスを利用している企業の割合 |
|---|---|
| 2010年 | 13.7% |
| 2015年 | 44.0% |
| 2018年 | 58.7% |
| 2021年 | 70.4% |
| 2023年 | 77.7% |
| 2024年 | 80.6% |
| 2025年 | 83.5% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1ほか各年の同調査より作成。2021〜2025年は別紙1の時系列(無回答を除く集計)、それ以前は各年の報告書・統計表の値で、無回答の扱いなど集計基準は年によって異なります。2019年・2020年調査分は本記事で公表値を確認できなかったため除いています。
未導入のままでいると、同規模の企業の中では少数派に入る位置になります。 クラウドの導入を進めるかどうかは、もはや先進的な取り組みではなく、標準的な選択肢の一つとして検討する段階に来ています。
2025年に増えたのは新規導入よりも部門利用から全社展開への切り替え
利用率の伸び幅だけを見ると、2025年の動きは大きくありません。2024年調査の80.6%から2025年調査の83.5%まで、2.9ポイントの増加です(本記事による計算値)。
一方で、内訳は総数の伸び以上に動いています。全社的な利用が6.9ポイント増え、一部の事業所または部門での利用は4.1ポイント減りました(いずれも本記事による計算値)。

| 利用の広さ | 2024年調査 | 2025年調査 |
|---|---|---|
| 全社的に利用している | 53.1% | 60.0% |
| 一部の事業所又は部門で利用している | 27.6% | 23.5% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1より作成。いずれも無回答を除く集計です。四捨五入のため、内訳の合計と全体の値は一致しません。
この内訳の動きから読み取れるのは、2025年に増えた分の多くが新規導入ではなく、部門利用から全社展開への切り替えだという点です。情シスにとっては、部門が個別にSaaSを契約する段階が終わったことを意味します。全社共通のサーバー基盤をどう設計し統制するかが、次に問われる論点です。
注意
通信利用動向調査は毎年別のサンプルを対象とする断面調査で、同一企業が「一部利用から全社利用へ」移行したことを直接示すデータではありません。回答企業の構成が変わるだけでも同じ動きは生じます。また83.5%は無回答を除いて集計した値です。無回答を含めて集計する令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)では83.4%となります。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「通信利用動向調査 企業編 クラウドサービスの利用状況」(e-Stat)
クラウドサーバーが選ばれる理由は可用性と運用負荷の軽減が上位で、コストは最下位

クラウドのメリットは、どの記事でも似た項目が並びます。ただし実際の企業にとって、それらは同じ重さではありません。
総務省の通信利用動向調査は、クラウドを利用する理由を複数回答で聞いています。ここでは選択率という形で、メリットに優先順位を付けて見ていきます。
利用理由の1位は「場所、機器を選ばない」50.7%、可用性が45.1%で続く
2025年調査で最も多く選ばれた理由は「場所、機器を選ばずに利用できるから」の50.7%でした。サーバー基盤の観点で見ると、次に続く可用性とバックアップの2項目が重要です。
同じ2025年調査で「安定運用、可用性が高くなるから」は45.1%、「災害時のバックアップとして利用できるから」は38.7%が選んでいます。自社のデータセンターだけでは確保しにくい冗長性を、サービスとして調達できる点が評価されていると分かります。

| クラウドサービスを利用する理由(2025年調査) | 選択した企業の割合 |
|---|---|
| 場所、機器を選ばずに利用できるから | 50.7% |
| 安定運用、可用性が高くなるから | 45.1% |
| 資産、保守体制を社内に持つ必要がないから | 42.8% |
| 災害時のバックアップとして利用できるから | 38.7% |
| サービスの信頼性が高いから | 35.0% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-4より作成。複数回答で、母集団はクラウドサービスを利用している企業(無回答を除く、n=2,131)です。
上位に並ぶのは、自前で用意すると手間と費用がかかる項目です。 稼働の維持と災害対策を外部の設備に任せられる点が、クラウドサーバーの中心的な価値になっています。
1年で最も伸びた理由は「拡張性」で6.8ポイント増
8つの理由のうち、直近1年で最も伸びたのは拡張性です。「システムの拡張性が高いから」は2024年調査の22.1%から2025年調査の28.9%へ、6.8ポイント増えました。これは本記事の計算ではなく、総務省が別紙1で明記している内容です。
関連する項目も同じ方向に動いています。「システムの容量の変更などに迅速に対応できるから」は2024年調査の30.9%から2025年調査の32.6%へ、1.7ポイントの増加です(本記事による計算値)。
| クラウドサービスを利用する理由 | 2024年調査 | 2025年調査 |
|---|---|---|
| システムの容量の変更などに迅速に対応できるから | 30.9% | 32.6% |
| システムの拡張性が高いから | 22.1% | 28.9% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-4より作成。2024年欄は無回答を除く再集計値(n=1,937)で、報告書本体の公表値とは基準が異なります。
どちらもサーバーの容量設計に直結する項目です。先の需要を読み切らずに始められることが、選ばれる理由として強まっています。 ただし比較できるのは2時点だけで、趨勢か単年の振れかはまだ判別できません。
「既存システムよりコストが安い」は19.4%にとどまり8項目中で最下位
コスト削減を主な動機に挙げる企業は、実は多くありません。「既存システムよりもコストが安いから」は2025年調査で19.4%、2024年調査でも19.1%で、8項目の中で最も低い水準です。
対照的に「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」は42.8%と、2024年調査の42.6%から高い水準を保っています。
別紙2 図表4-4 は8項目で構成されています。令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)図表3-4 には、このほかに「その他」(2025年 10.7%)があります。
ここから読み取れるのは、クラウドサーバーが「安く上がるから」ではなく「あとから増減でき、社内で抱えずに済むから」選ばれているという構図です。コストが下がらないという意味ではなく、初期投資の回避や保守要員の削減といった効果が、保守体制の項目に流れていると考えられます。
稟議でコスト削減だけを訴求すると、導入企業の実態とずれます。 拡張性と運用負荷の軽減を主軸に置き、コストは副次的な効果として説明するほうが実態に沿います。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-4/同 別紙1/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」
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導入をためらう理由は既存システムの改修コスト28.7%とセキュリティ不安26.6%に集中している

デメリットを一般論で並べても、自社の判断材料にはなりません。ここでは、実際にクラウドを利用していない企業が挙げた理由を確認しましょう。
同じ通信利用動向調査には「クラウドサービスを利用しない理由」の設問があります。移行を止めている要因が、技術面なのか費用面なのかがここから分かります。
利用しない理由の最多は「必要がない」で46.5%
最も多い回答は、技術的な障壁ではありません。「必要がない」が2025年調査で46.5%、2024年調査でも46.0%と、いずれも最多です。
つまり移行が進まない一番の理由は、検討して見送った結果ではなく、そもそも検討の俎上に載っていないことにあります。現行のオンプレミス環境で業務が回っていれば、更新時期が来るまで議論が始まらないのは自然です。

なお、この設問の母集団はクラウドサービスを利用していない企業に限られ、2025年調査の回答企業数は150社です。数ポイントの差は誤差の範囲として読み、順位の大枠だけを参考にしてください。
逆に言えば、更新時期は数少ない検討の機会です。 機器のリプレース見積もりが出た時点で、クラウドの費用と条件も並べて比較すると判断しやすくなります。
既存システムの改修コストが28.7%、セキュリティ不安が26.6%で続く
必要性の次に来るのは、費用とセキュリティです。2025年調査では「クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい」が28.7%でした。「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」は26.6%です。
| クラウドサービスを利用しない理由 | 2023年調査 | 2024年調査 | 2025年調査 |
|---|---|---|---|
| クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい | 24.2% | 29.6% | 28.7% |
| 情報漏えいなどセキュリティに不安がある | 24.2% | 24.9% | 26.6% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6より作成。母集団はクラウドサービスを利用していない企業(2025年調査 n=150)です。
改修コストは2024年調査で29.6%まで上がったあと2025年に下がっており、一貫した増加傾向とは言えません。セキュリティ不安のほうは3年続けて緩やかに上がっています。いずれにせよ、移行費用の見積もりとセキュリティ要件の整理は依然として2大論点です。
一方、競合記事がよく挙げるカスタマイズの制約は上位に来ていません。「ニーズに応じたアプリケーションのカスタマイズができない」は2025年調査で6.6%にとどまります。
ネットワークの安定性への不安は13.1%まで低下し、可用性は選ぶ理由の側に回った
「クラウドは回線が落ちたら止まる」という論点は、かつて比較記事の定番でした。しかし非利用企業の回答では、この不安は縮んでいます。
「ネットワークの安定性に対する不安がある」を挙げた企業は、2023年調査の15.2%から2025年調査では13.1%に下がりました。
利用企業側の回答は逆方向です。「安定運用、可用性が高くなるから」を理由に挙げた企業は、2024年調査の40.4%から2025年調査の45.1%へ増えています。
母集団の異なる2つの設問が、可用性について同じ方向の結果を示しました。かつてクラウドの弱点と見なされた可用性が、いまは選ぶ理由の側に回っていると読めます。
注意
これは企業の認識に関するデータであり、実際の稼働率やダウンタイムを比較した数値ではありません。利用企業と非利用企業では母集団も異なります。また、利用率の上昇に伴い、非利用企業の母集団自体が縮小している点にも注意が必要です。その場合、「不安が減った」のではなく「不安を持っていた企業が先に導入して母集団から抜けた」とも読めます。SLAや冗長構成は、サービスごとに個別に確認してください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
サーバー層のセキュリティ対策は端末より21ポイント低く、侵入口と重なっている

クラウドサーバーのセキュリティは、責任共有モデルの図解で説明されることが多い領域です。ただ、図の理解より先に確認したいのは、自社が実際にどこまで対策できているかです。
通信利用動向調査には、対策の種類別の実施率があります。そこには、層によって対策の厚みが違うという構造が表れています。
端末のウイルス対策82.0%に対し、サーバーへの導入は60.7%にとどまる
何らかのセキュリティ対策を実施している企業は、2025年調査で98.3%とほぼ全数です。しかし内訳を見ると、守る対象によって実施率は大きく違います。
端末へのウイルス対策プログラム導入は2025年調査で82.0%、サーバーへの導入は同じ2025年調査で60.7%です。その差は21.3ポイントあります(本記事による計算値)。

| 実施している対策(2025年調査) | 実施した企業の割合 |
|---|---|
| 何らかのセキュリティ対策を実施 | 98.3% |
| 端末にウイルス対策プログラムを導入 | 82.0% |
| サーバにウイルス対策プログラムを導入 | 60.7% |
| ファイアウォールの設置・導入 | 51.9% |
| データやネットワークの暗号化 | 27.4% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表5-5より作成。複数回答で、母集団はインターネットを利用している企業(n=2,480)です。
端末からサーバー、ネットワーク機器へと層が下がるほど、実施率は下がります。 目に見える手元の機器から手当てが進み、基盤側が後回しになりやすい構図です。
注意
「サーバにウイルス対策プログラムを導入」の母数はインターネットを利用している企業全体であり、サーバーを保有している企業に限定されていません。自社サーバーを持たない企業が選択しないことで、実施率が低く出ている可能性があります。その場合、端末との差はセキュリティ水準の差ではなくサーバー保有率の差を示します。
ランサムウェアの感染経路の87.0%はVPN機器・リモートデスクトップ経由
対策が薄い層は、実際の侵入口と重なっています。IPAの資料によると、2025年のランサムウェア感染経路はVPN機器経由が66.3%、リモートデスクトップ経由が20.7%で、合計87.0%でした。原データは警察庁「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」で、感染経路が判明した事案を分母とした割合です。
被害そのものも珍しい出来事ではありません。2025年調査では何らかのセキュリティ被害を受けた企業が48.1%、ウイルスを発見または感染した企業が22.9%あります。
両者は調査主体も母集団も異なるため、並べられるのは傾向の照合までです。それでも、対策が薄い層と実際の侵入口が重なっている点は押さえておきたいところです。
自社でサーバーを持つ場合は、社外からの入り口とサーバー本体の両方を継続的に守る必要があります。 クラウドサーバーでは基盤層の対策を事業者と分担できる点が、オンプレミスとの実務上の違いになります。
クラウドサーバーでも暗号化と教育は自社の担当として残る
クラウドサーバーに移しても、セキュリティの仕事がなくなるわけではありません。責任の境界は、おおむね次のように分かれます。
- 物理的なデータセンターとハードウェア、ゲストOSが動作する仮想環境の構築と管理はサービス事業者の担当です
- IaaSでは、仮想環境上で動作するゲストOSを含むすべてのソフトウェアの管理が自社の担当です。パッチ適用、アクセス権の設定、データの暗号化がこれにあたります
- 利用者の教育と運用ルールの整備は、環境の置き場所にかかわらず自社に残ります
- 設定作業をSIerなどに委託しても、最終的な責任はクラウドサービスの利用者が負うと整理されています
- この境界はSaaS・PaaS・IaaSで変わり、同じIaaSでもサービス内容や契約条件によって異なります。一律には決まりません
自社側に残る領域は、実施率が高くありません。2025年調査でデータやネットワークの暗号化は27.4%、社員教育の実施は54.7%です。
移行の検討では、事業者に任せられる範囲と自社に残る範囲を契約前に線引きしてください。 境界が曖昧なまま移すと、どちらも手を付けない領域が生まれます。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/総務省「クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドラインの概要」/IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書[組織編]/警察庁「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」
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クラウドサーバーが自社に向くかは規模・期待値・運用体制の3点で判断できる

ここまでの数値を、自社の判断に当てはめていきます。製品を比べる前に決めるべきなのは、どこまでを自前で持つかという方針です。
判断の材料になるのは、同規模企業の利用状況、導入後に得られる効果の水準、移行後の運用体制の3点です。順に見ていきます。
資本金規模による差は25ポイントで、業種差の17.9ポイントより大きい
クラウド利用率の差は、業種よりも企業規模で大きく開きます。2025年調査の資本金規模別では、50億円以上が99.8%、1000万円〜3000万円未満が74.8%でした。その差は25.0ポイントあります(本記事による計算値)。

| 資本金規模 | クラウドサービスを利用している企業の割合(2025年調査) |
|---|---|
| 50億円以上 | 99.8% |
| 10億円〜50億円未満 | 97.5% |
| 1億円〜5億円未満 | 92.3% |
| 3000万円〜5000万円未満 | 84.1% |
| 1000万円未満 | 75.4% |
| 1000万円〜3000万円未満 | 74.8% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-2より作成(主な区分を抜粋、無回答を除く)。母集団は常用雇用者100人以上の企業です。
産業分類別の開きは、これより小さくなります。同じ2025年調査で最も高いのは金融・保険業の96.2%、次いで情報通信業の94.8%でした。最も低い運輸業・郵便業は78.3%です。差は17.9ポイントで、規模による差のほうが7ポイント大きくなっています(本記事による計算値)。
この差から読み取れるのは、従業員規模が同水準でも投資余力で差が残るという点です。「うちの業種はまだ早い」ではなく「自社の投資余力でどこまでを自前で持つか」という問いに置き換えるほうが、実態に近い判断ができます。
注意
資本金規模別と産業分類別はそれぞれ単純集計であり、両者のクロス集計ではありません。金融・保険業などは資本金の大きい企業の比率が高いため、業種差の一部は規模差で説明できる可能性があります。また2025年調査の最小区分では、1000万円未満が75.4%、1000万円〜3000万円未満が74.8%でした。この差はわずかであり、下位区分の順位は誤差として扱ってください。この調査の母集団は常用雇用者100人以上の企業です。
効果があったと答えた企業は89.4%だが「非常に効果があった」は36.0%にとどまる
導入後の期待値も、事前に見積もっておきましょう。クラウドの利用効果を「非常に」または「ある程度」効果があったと答えた企業は、2025年調査で89.4%です。
この水準は5年間ほとんど動いていません。2021年調査は88.2%、2022年調査は89.0%、2023年調査は88.4%、2024年調査は87.3%でした。

一方で内訳を見ると、2025年調査で「非常に効果があった」は36.0%、「ある程度効果があった」は53.5%です。過半は「ある程度」にとどまります。
利用率が伸び続けた期間に効果実感の水準が動いていないことは、後から導入した企業も先行企業と同程度の満足度を得ていることを示します。クラウドサーバーへの移行は失敗しにくい選択ですが、劇的な効果を前提にした投資判断はしにくいと考えたほうが安全です。
なお2025年の89.4%は無回答を除く集計で、それ以前の年とは基準が一致しません。無回答を含めて集計する報告書(企業編)では88.8%で、いずれにせよ87〜89%の範囲に収まります。またこの設問はクラウドを利用中の企業への質問で、効果が出ずに利用をやめた企業は母集団に含まれません。
DXに取り組む企業は75.7%、一方でDX人材の量が不足している企業は85.5%
3つ目の軸は、移行後に誰が運用を回すかです。IPA「DX動向2026」によると、2025年時点で何らかの形でDXに取り組んでいる企業は75.7%でした。
規模による差は大きく開いています。同じ調査では、従業員1,001人以上の98.7%が取り組んでいる一方、従業員100人以下では41.6%です。なおこの数値は総務省調査とは母集団が異なるため、先の資本金規模別の数値と並べて比較はできません。
同じ調査では、DXに取り組んでいると回答した企業のうち、DXを推進する人材の「量」が不足していると答えた企業が85.5%あります。ひとり情シスの環境であればなおさら、移行そのものより移行後の運用が負担になります。
移行の可否より先に、移行後の運用を誰が担うかを決めてください。 監視・バックアップ・権限管理を回す体制がないまま移すと、オンプレミス時代の課題がそのまま持ち込まれます。
移行前に確認する3つのポイント
- 投資余力: 機器を資産として持ち続けるか、月額で外部の設備を使うか、自社の資金計画から決めます
- 期待値: 2025年調査で効果を「非常にあった」と答えた企業は36.0%です。運用負荷の軽減を主目的に置き、コスト削減は副次的な効果として見込みます
- 運用体制: ゲストOSを含むソフトウェアのパッチ適用、アクセス権管理、暗号化を誰が担当するかを移行前に決めます
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」/同 令和4年/同 令和5年/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/IPA「DX動向2026」
まとめ

この記事で確認した内容を、判断に使う順で整理します。
- 2025年調査でクラウドサービスを利用している企業は83.5%、全社的に利用している企業は60.0%で、議論の焦点は導入の是非から全社基盤の設計に移っています
- 2025年調査で選ばれる理由がもっとも伸びたのは拡張性の28.9%で、「既存システムよりもコストが安いから」は19.4%と最下位です
- 移行の障壁は既存システムの改修コストで、2025年調査では非利用企業の28.7%が挙げています
- サーバへのウイルス対策プログラム導入は2025年調査で60.7%にとどまり、端末の82.0%より21.3ポイント低い水準です
- 2025年調査で効果を「非常にあった」と答えた企業は36.0%で、期待値は控えめに置くほうが実態に合います
まず着手するなら、次のサーバー更新の見積もりが出た段階で、クラウドとの比較表を作ってみてください。そのとき比べるのは金額だけでなく、自社の投資余力・期待する効果の水準・移行後の運用体制の3点です。
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この記事で扱った責任分界点の線引きや、サーバー層の対策は、独学では抜けが生まれやすい領域です。近くに聞ける先輩がいない環境だと、移行後に問題が起きてから気づくことも少なくありません。
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5名から利用でき、請求書払いにも対応可能です。初期設定はおよそ10分で、担当者が1人でも始められます。
※出典
- 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1(ポイント)
- 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2(結果の概要)
- 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」
- 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
- 総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」
- 総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」
- 総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」
- 総務省「令和2年通信利用動向調査報告書(企業編)」
- 総務省「平成30年通信利用動向調査報告書(企業編)」
- 総務省「平成29年通信利用動向調査報告書(企業編)」
- 総務省「平成28年通信利用動向調査報告書(企業編)」
- 総務省「通信利用動向調査 企業編 クラウドサービスの利用状況」(e-Stat 統計表 0003165250)
- 総務省「クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドラインの概要」
- IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」解説書[組織編]
- IPA「DX動向2026」
- IPA訳「NISTによるクラウドコンピューティングの定義」(NIST SP 800-145)
- 警察庁「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」

