【総務省データ】オンプレミスとは|クラウド利用率83.5%(2025年)でも自社運用が残る理由と選定基準

「オンプレミス」という言葉、会議では当たり前のように飛び交うのに、いざ説明しようとすると詰まりませんか。

クラウドとの違いを自分の言葉で言えない。社内のサーバーを残すのか移すのか、判断する材料が見つからない。そんな状態のまま検討を任されている担当者は少なくありません。

  • オンプレミスとクラウドは、結局どこが違うのか
  • 社内のサーバーは残すべきなのか、移すべきなのか
  • クラウドが当たり前と言われるけれど、本当に全部移してよいのか

先に結論を書きます。オンプレミスとは、サーバーやソフトウェアを自社が管理する設備内に設置し、自社の責任で運用する形態です。 企業ITの主流はすでにクラウドへ移っていますが、自社運用が消えたわけではありません。

この記事では、まず定義とクラウドとの違いを整理します。そのうえで総務省の通信利用動向調査をもとに、自社運用がどれだけ残っているのか、なぜ残っているのかを数値で確認します。最後に、移行を判断するための5つの観点にまとめました。

この記事のポイント

  • オンプレミスは、サーバーやソフトウェアを自社が管理する設備内に設置して運用する形態です。IPAの資料も、自社保有(オンプレミス)とクラウドサービスを調達・運用・保守の担い手で切り分けています
  • クラウドサービスを利用している企業は2025年時点で83.5%。自社運用だけで構成する企業は少数派になりました(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要」
  • それでもオンプレミスが残る理由の上位は「必要がない」46.5%と「既存システムの改修コストが大きい」28.7%で、いずれも2025年の値です。機能面の優劣ではありません(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書」

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目次

オンプレミスは自社が管理する設備内にシステムを設置して運用する形態

オンプレミス(on-premises)とは、サーバーやネットワーク機器、ソフトウェアを自社が管理する場所に設置する形態です。構築から運用までを自社の責任で行います。premises は「建物」「構内」という意味の英単語です。

つまり「自社の構内に置く」という状態が、そのまま呼び名になっています。日本語では「自社運用」「自社構築システム」と言い換えられることもあります。

設置場所が自社ビルであるとは限りません。 データセンターの一区画を借りて自社所有の機器を置く場合も、機器と運用の責任を自社が持っていればオンプレミスと呼ばれます。

なお、総務省の統計や白書には、オンプレミスの用語定義そのものを置いた記述が見当たりません。ただし公的機関による整理はあります。IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」は、情報システムを自社保有(オンプレミス)とクラウドサービスに分けています。前者はアプリケーションからハードウェアまでを自社が調達・運用・保守する形態、後者はそれをクラウド事業者が担う形態という整理です。この記事の定義も同じ考え方に沿っています。

オンプレミスに含まれる要素

  • 機器の所有: サーバー・ストレージ・ネットワーク機器を自社の資産として持つ
  • 設置場所の管理: 自社ビルの機械室、または自社で契約したデータセンターに置く
  • 構築と運用の責任: 設計・構築・監視・障害対応・更改までを自社が担う
  • ライセンスの保有: OSやミドルウェア、業務ソフトのライセンスを自社で購入して管理する

オンプレミスとクラウドの違いは設備の所有と管理責任の所在にある

オンプレミスとクラウドの違いは、突き詰めると「誰が設備を持ち、誰が面倒を見るか」の一点に集約されます。機能の差ではなく、責任の置き場所の差だと考えてください。

オンプレミスでは、機器もライセンスも自社の資産です。障害が起きれば自社の担当者が原因を切り分け、必要なら部品を手配します。

クラウドでは、設備は事業者が持ち、利用者は必要な分だけ使って月々の料金を払います。ハードウェアの故障対応は事業者の領域です。

この違いを軸ごとに並べると、次のようになります。

比較の軸 オンプレミス クラウド
機器の所有者 自社 クラウド事業者
設置場所 自社の施設、または自社が契約したデータセンター 事業者のデータセンター
構築の主体 自社、または自社が委託したベンダー 事業者が用意した環境を利用者が設定
障害対応の主体 ハードウェアからアプリケーションまで自社 ハードウェア層は事業者、利用者の設定範囲は自社
費用の発生の仕方 購入時にまとめて発生し、以後は保守費が続く 利用量や契約人数に応じて継続的に発生
利用開始までの期間 機器の調達と構築の期間が必要 契約後すぐに使い始められる
拡張のしかた 機器の増設や更改で対応する 契約内容の変更で対応する

※上表は一般的なIT用語としての整理であり、統計データにもとづくものではありません。

プライベートクラウドやハウジングはオンプレミスとクラウドの中間に位置する

オンプレミスとクラウドは、白と黒に分かれているわけではありません。「所有」と「設置場所」の2軸で見ると、その中間にあたる形態がいくつも存在します。

混同されやすい用語を整理すると、次のように位置づけられます。

  • パブリッククラウド: 事業者の設備を不特定多数の利用者が共有する。所有も設置場所も事業者側
  • プライベートクラウド(オンプレミス型): 自社の設備に仮想化基盤を作り、社内向けにクラウドのように払い出す。所有は自社
  • プライベートクラウド(ホスティング型): 事業者の設備を自社専用として借りる。所有は事業者、利用は自社専有
  • ハウジング(コロケーション): 事業者のデータセンターに自社所有の機器を預ける。所有は自社、設置場所は事業者
  • ホスティング(レンタルサーバー): 事業者所有の機器を借りて使う。所有は事業者
  • ハイブリッドクラウド: 上記を組み合わせ、システムごとに置き場所を使い分ける

注意したいのは、自社データセンターに置いていればオンプレミス、という単純な線引きにはならない点です。ハウジングのように所有と設置場所が分かれる形態もあります。

自社の環境がどれに当たるかを迷ったときは、「機器の資産は誰のものか」「障害時に誰が動くか」の2つで判断すると整理しやすくなります。

出典: IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」


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クラウドサービスの利用率は2025年に83.5%となり、自社運用だけの構成は少数派になった

企業ITの主役は、すでにクラウドへ移っています。総務省の通信利用動向調査によると、2025年時点でクラウドサービスを利用している企業は83.5%でした。前年の2024年は同じ資料で80.6%であり、上昇は続いています。

つまり、社内のシステムをすべて自社設置でまかなう構成は、いまや少数派です。オンプレミスを語るときは、この前提から始める必要があります。

一方で、クラウドサービスを使っている企業がすべてを移し終えたわけでもありません。では自社運用はどれだけ残っているのか。ここからが本題です。

注意

この記事で扱う総務省「通信利用動向調査」は、常用雇用者100人以上の企業を対象とした調査です。従業員数十人規模の企業や個人事業主を含む小規模事業者全般には、そのまま当てはめられません。以降に出てくる規模別・業種別の数値も、すべてこの枠の中での値です。

クラウド利用率は2010年の13.7%から2025年の83.5%へ15年で約6倍になった

クラウド利用率は15年で立場を逆転させました。2010年時点でクラウドサービスを利用している企業は13.7%にとどまり、当時は自社設置が圧倒的多数だったことが分かります。

それが2025年には83.5%です。15年でおよそ6倍に増えた計算になります。

図表1: クラウドサービスを利用している企業の割合の推移(2010年〜2025年)

図表1: クラウドサービスを利用している企業の割合の推移(2010年〜2025年)。2019年・2020年(令和元年・令和2年)は、このグラフで用いた系列に同一基準の公表値をたどれないため欠測としています。両年の数値自体は、総務省「令和3年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-1に、無回答を含む集計として公表されています。 また2010〜2016年はe-Stat統計表、2017年以降は調査報告書・結果概要の公表値で、公表系列が途中で切り替わります。

出典: e-Stat「通信利用動向調査 統計表(0003165250)」総務省「平成29年通信利用動向調査の結果」総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」総務省「令和3年通信利用動向調査報告書(企業編)」総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要」

ここで押さえておきたい読み方があります。この数値は「オンプレミスからクラウドへ移行した企業の割合」ではなく、「その時点でクラウドを利用している企業の割合」です。

創業時から自社設備を持たない企業も、この83.5%に含まれます。グラフの上昇分がそのまま移行案件の数だとは考えないでください。

オンプレミスが残っている企業は16.5%以上40.0%以下という幅でしか示せない

自社設置システムがどれだけ残っているかを、総務省の通信利用動向調査は直接数えていません。設問が「クラウドサービスを利用しているか」という形で立てられているためです。

図表2: 2025年のクラウドサービス利用形態の内訳

図表2: 2025年のクラウドサービス利用形態の内訳(全社的に利用60.0%/一部の事業所又は部門で利用23.5%/利用していない16.5%)。16.5%は公表値ではなく、利用83.5%の補数として算出した導出値です。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要(別紙2)」総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要」

そこで、クラウド利用率の裏側から計算します。下限は16.5%です。2025年の利用企業が83.5%なので、100から引いた残りが一切利用していない企業にあたります。

上限は40.0%です。同じ2025年の調査では、回答企業全体のうち全社的な利用が60.0%、一部の事業所または部門での利用が23.5%です。この23.5%を16.5%に足した値が上限になります。

この計算から読み取れるのは、オンプレミスが現役で残る企業は16.5%以上40.0%以下という幅でしか表せないということです。「クラウドが8割だからオンプレミスは2割」という引き算は、部分利用という中間層を落としています。

注意

16.5%と40.0%は総務省の公表値ではなく、公表値から計算した導出値です。また「一部の事業所又は部門で利用」の残りが必ずオンプレミスとは限らず、システム化されていない業務も含まれるため、40.0%は上限としても過大な可能性があります。

資本金規模別では50億円以上の99.8%と1,000万〜3,000万円未満の74.8%で25.0ポイント開く

企業規模が大きいほどクラウド利用率は高く、その傾向は一貫しています。2025年の資本金規模別で見ると、最も低いのは1,000万〜3,000万円未満の74.8%、次に低いのが1,000万円未満の75.4%でした。

これに対し資本金1億〜5億円未満は92.3%、最も高い50億円以上は99.8%です。最小の区分と最大の区分の開きは25.0ポイントになります。

図表3: 資本金規模別のクラウドサービス利用率(2025年)

図表3: 資本金規模別のクラウドサービス利用率(2025年)。調査対象は常用雇用者100人以上の企業です。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要(別紙2)」

ただし、「小規模な企業ほどオンプレミス中心」という図式は数値と合いません。 資本金1,000万円未満でも75.4%が利用しており、その層でもクラウドはすでに多数派です。

この75.4%は常用雇用者100人以上という枠の中での資本金1,000万円未満であり、小規模事業者全般には一般化できません。

この差から読み取れるのは、利用率の低い層がオンプレミスを積極的に選び続けているというより、全体平均の数年前の位置にいるという可能性です。規模が小さいほど更改の周期が長く、動き出しが遅れていると考えるほうが数値には合います。

業種別では金融・保険業96.2%と運輸業・郵便業78.3%で17.9ポイント開く

業種によってもクラウド利用率は違います。2025年の値では金融・保険業が96.2%、情報通信業が94.8%と高い水準です。

一方、サービス業・その他は79.3%、運輸業・郵便業は78.3%でした。最上位と最下位の差は17.9ポイントです。

図表4: 業種別のクラウドサービス利用率(2025年)

図表4: 業種別のクラウドサービス利用率(2025年)。調査対象は常用雇用者100人以上の企業です。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要(別紙2)」

注目したいのは、業種の差(17.9ポイント)より資本金規模の差(25.0ポイント)のほうが大きい点です。自社の位置を推し量るときは、まず規模の軸で見るほうが実態に近くなります。

なお、規制の厳しさやレガシー資産の多さが原因だと断定はできません。この調査は業種ごとの利用率を示すだけで、その背景までは調べていないからです。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要」総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要(別紙2)」総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」総務省「平成29年通信利用動向調査の結果」総務省「令和3年通信利用動向調査報告書(企業編)」e-Stat「通信利用動向調査 統計表(0003165250)」


オンプレミスのメリットは自社での統制と既存資産の活用にある

オンプレミスの利点は、環境を自社の裁量で決められる点にあります。設計も設定も更改時期も、社内の事情に合わせて選べます。

一般的な解説では、次の4点がメリットとして挙げられます。ただしこの記事では一覧を示して終わりにしません。そのうちのどれが、統計上も実際の継続理由になっているのかを確かめます。

実際、クラウドを利用していない企業が挙げる理由を見ると、2025年で最も多いのは「必要がない」46.5%でした。「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」は26.6%で、3番目にとどまっています。

一般に挙げられるオンプレミスのメリット

  • カスタマイズの自由度: 業務に合わせて仕様を作り込める
  • 閉じたネットワークでの運用: 社内網の中だけでシステムを完結させられる
  • 既存資産の活用: すでに購入した機器やライセンスを使い切れる
  • 応答速度: 社内ネットワーク内での通信になるため遅延が起きにくい

自社ネットワーク内で完結させられる点はセキュリティ上の利点として語られる

データを社外に出さない構成は、オンプレミスの利点としてよく挙げられます。社内ネットワークの中だけで完結させれば、外部への経路そのものを持たずに済むためです。

ただし統計を見ると、この点は思ったほど単純ではありません。「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」を非利用理由に挙げた企業は、2025年で26.6%でした。2024年は24.9%で、いずれも最大の理由ではありません。

逆にクラウド利用企業では、「サービスの信頼性が高いから(情報漏えいなど対策)」が利用理由に挙がります。2025年の値で35.0%です。

この2つを並べて読み取れるのは、セキュリティは導入前の懸念としては働くものの、導入後はむしろ評価する側に回っているという構図です。

したがって「オンプレミスなら安全」とは言えません。閉じた環境であっても、パッチ適用も監視もバックアップも自社で回し続ける必要があります。

注意

26.6%はクラウドを利用していない企業(2025年はn=150)への設問、35.0%はクラウドを利用している企業への設問です。母集団が異なるため、両者を引き算して優劣を論じることはできません。

カスタマイズの自由度は利点として語られるが、継続理由としては6.6%にとどまる

オンプレミスの解説では、業務に合わせた作り込みの自由度が筆頭のメリットとして紹介されます。ところが統計上、それを理由に挙げる企業はごくわずかです。

「ニーズに応じたアプリケーションのカスタマイズができない」を非利用理由に選んだ企業は、2025年で6.6%でした。2024年は6.5%で、2年続けて選択肢の下位にとどまっています。ただし2025年の調査では、この項目よりさらに低い選択肢も複数あります

上位を占めるのは「必要がない」46.5%と「既存システムの改修コストが大きい」28.7%(いずれも2025年)です。

この数値から読み取れるのは、オンプレミスを続ける企業の多くが作り込みの自由度を求めて残っているのではないということです。動いているものを止める理由がないから残っている、と考えるほうが数値には合います。

ただし解釈には留保が要ります。設問は「カスタマイズができない」という否定形でクラウドの制約を問う形です。カスタマイズを重視して自社運用を続けている企業は、それを不満と感じず「必要がない」を選んでいる可能性があります。

なお非利用企業の母数は2025年でn=150、2024年でn=171と小さく、1社が0.6〜0.7ポイントに相当します。6.5%と6.6%の差は増減として読めません。

既存システムが動いている状態そのものがオンプレミスを残す最大の理由になっている

オンプレミスが残る最大の理由は、技術的な優位性ではありません。すでに動いているシステムがあり、それを作り替える理由と費用の見通しが立たない、という状態です。

数値でも同じ傾向が出ています。「必要がない」は2025年で46.5%、2024年で46.0%と2年続けて4割台の最上位でした。「既存システムの改修コストが大きい」は2025年で28.7%、2024年で29.6%です。

図表7: クラウドサービスを利用しない理由(2025年)

図表7: クラウドサービスを利用しない理由(2025年)。対象はクラウドを利用していない企業(n=150)で、複数回答です。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書」

ここから読み取れるのは、クラウド非利用企業に残っている壁が技術的な不安ではなく、必要性の認識だという点です。裏を返せば、オンプレミスは選ばれているというより、見直されていないだけかもしれません。

読者の皆さんに考えていただきたいのは、自社がどちらなのかという点です。積極的に自社運用を選んでいるのか、それとも判断を先送りしているのか。 その切り分けが、次の章で扱う選定の出発点になります。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書」総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要(別紙2)」


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オンプレミスのデメリットは調達・保守・可用性の負担を自社で抱える点にある

オンプレミスの短所は、機器の調達から障害対応、災害への備えまでを自社で抱える点にあります。人と予算をそこに割く前提が必要です。

ここで使える統計の切り口があります。通信利用動向調査は「なぜクラウドを選んだのか」を毎年聞いており、その理由を裏返すと、そのままオンプレミス側の制約として読めます。

2025年の利用理由の最上位は「場所、機器を選ばずに利用できるから」で50.7%です。「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」も42.8%が挙げています。裏返せば、オンプレミスは場所と機器に紐づき、保守体制を社内に持つ構成だということです。

注意

この章で扱う数値はクラウドを利用する理由を聞いたもので、オンプレミスの短所を直接調べた調査ではありません。「裏返すとオンプレミスの制約になる」という読み方は、この記事による解釈です。

クラウドを選ぶ理由の最上位は「場所、機器を選ばずに利用できる」50.7%である

クラウドが選ばれる理由の上位3つは、いずれも運用の負担と使う場所に関わる項目です。2025年の値では「場所、機器を選ばずに利用できるから」が50.7%で最上位です。続く「安定運用、可用性が高くなるから」は45.1%、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」は42.8%でした。

図表5: クラウドサービスを利用する理由(2025年)

図表5: クラウドサービスを利用する理由(2025年)。対象はクラウドを利用している企業(n=2,131)で、複数回答です。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要(別紙2)」

一方、最下位級だったのが「既存システムよりもコストが安いから」で19.4%です(2025年)。「災害時のバックアップとして利用できるから」38.7%、「システムの容量の変更などに迅速に対応できるから」32.6%、「システムの拡張性が高いから」28.9%のいずれよりも低い水準でした。

この並びから読み取れるのは、クラウド導入の動機が運用負荷の外出しとアクセス性にあり、コスト削減ではないという点です。オンプレミスの制約も、費用より運用の抱え込みに現れると考えるのが自然です。

安定運用と災害時の備えを自社で確保する必要がある

オンプレミスでは、止まらない仕組みを自社の設計と予算で用意しなければなりません。冗長化、バックアップ、遠隔地保管、停電対策のすべてが自社の担当範囲です。

統計では、可用性が2つの向きで現れています。クラウド利用企業では「安定運用、可用性が高くなるから」が45.1%、「災害時のバックアップとして利用できるから」が38.7%です。いずれも2025年の導入理由としての値です。

対してクラウド非利用企業では、「ネットワークの安定性に対する不安がある」が13.1%です(2025年、n=150)。安定性は非利用側では上位の理由になっていません。

この非対称から読み取れるのは、可用性がすでにクラウドを選ぶ側の理由になっており、自社運用を続ける理由としては働いていないということです。母集団が異なる数値である点には注意してください。

なお、オンプレミスとクラウドの実際の稼働率や復旧時間を比較できる公的統計は見当たりません。この記事では数値による優劣の判定は行いません。

初期投資とTCOの優劣を公的統計で比較することはできない

コスト比較の話をする前に、正直に書いておきます。オンプレミスとクラウドの費用を公的統計で比較することは、現時点ではできません。

総務省の通信利用動向調査は、クラウドの利用状況・利用理由・効果まで細かく調べています。しかしオンプレミスの保有コストも、移行後の費用の変化も測っていません。よく見かける「初期費用はいくらかかる」「何年で費用が逆転する」といった相場の数字は、この調査には存在しません。

統計から言えるのは向きだけです。コストの安さがクラウド選択の動機になっている割合は、2025年で19.4%と低い水準です。逆に「既存システムの改修コストが大きい」は、同年の非利用理由として28.7%に達します。

つまりコストは、導入の動機ではなく移行の障壁として現れています。

だからこそ、相場を鵜呑みにせず自社の数字を作ってください。最低限、次の項目を書き出すところから始められます。

  • 現行機器の取得価額と減価償却の残り
  • 年間の保守契約費とライセンス費
  • 次回更改で必要になる機器の想定費用と時期
  • 運用にかかっている人の工数(監視・障害対応・パッチ適用)
  • 移行する場合に発生する既存システムの改修費と並行稼働の費用

注意

ここでの指摘は「総務省 通信利用動向調査には存在しない」という限定つきです。他の官公庁統計や民間調査に該当データがある可能性は残ります。数値を引用するときは、調査主体・調査年・母集団を必ず確認してください。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要(別紙2)」総務省「令和7年通信利用動向調査報告書」


オンプレミスとクラウドの選定は5つの観点で判断する

オンプレミスとクラウドの選定は、優劣ではなく条件の当てはめで決まります。どちらが優れているかを一般論で決めることはできません。

判断材料として押さえておきたい数値があります。すでにクラウドを利用している企業のうち、2025年時点で89.4%が「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と回答しています。評価そのものは高い水準です。

そのうえで、自社の条件に照らして判断してください。運用を担う人数が限られるひとり情シスの職場では、自社で抱え込む運用の範囲そのものが判断材料になります。

観点は次の5つに分けると整理しやすくなります。

選定の5観点チェックリスト

  • 既存システムの改修コスト: 今動いているものを作り替える費用と期間はどれくらいか
  • 扱うデータと統制の要件: 法令・業界ルール・取引先要件で保管場所の制約はあるか
  • 可用性と災害対策: 冗長化とバックアップをどこまで自社で持つか
  • 利用場所と端末の広がり: 社外や複数拠点からの利用がどれだけあるか
  • 移行の単位: 全社一括で移すのか、領域ごとに切り分けるのか

既存システムの改修コストは4年連続で3割前後の障壁として残っている

移行を止めている最大の要因は、クラウド側の機能不足ではありません。いま動いているシステムを作り替える費用です。

「クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい」を非利用理由に挙げた企業は、2025年で28.7%、2024年で29.6%でした。2022年の31.2%、2023年の24.2%を含めて、4年間おおむね3割前後で推移しています。

同じ期間、「必要がない」は4割台で推移しました。2022年42.0%、2023年44.7%、2024年46.0%、2025年46.5%です。

図表6: クラウドサービスを利用しない理由の推移(2022年〜2025年)

図表6: クラウドサービスを利用しない理由の推移(2022年〜2025年)。対象はクラウドを利用していない企業で、母数は2022年がn=256、2023年がn=224、2024年がn=171、2025年がn=150です。いずれも母数が小さく、年ごとの数ポイントの上下は傾向として読めません。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書」総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」

年ごとの上下は母数の小ささから読み取れません。読めるのは、改修コストが数年にわたって障壁であり続けているという水準の話だけです。

実務への落とし込みは単純です。移行費用を「クラウドの月額利用料」ではなく、「既存システムの作り替え費用」として見積もってください。

クラウド利用企業の89.4%が効果を実感している事実を判断材料に置く

移行済みの企業側の評価は高く出ています。クラウドを利用している企業のうち、2025年時点で89.4%が「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と回答しました。

一方、クラウドを利用していない企業では46.5%が「必要がない」を理由に挙げています(2025年)。評価している側と、評価する場を持っていない側に分かれている形です。

この2つを並べて考えたいのは、自社がどちらなのかという点です。移行を検討していないのは、評価したうえで不要と判断したからなのか、それとも評価そのものをしていないからなのか。 後者であれば、まず比較の土俵を作る必要があります。

注意

89.4%はクラウドを利用している企業による自己評価の回答です。移行プロジェクトの成否を測った数値ではないため、「移行すれば9割が成功する」とは読めません。46.5%とは母集団も異なります。

全社一括ではなく領域ごとに切り分ける構成が現実的な選択肢になる

オンプレミスとクラウドは、二者択一ではありません。データを見ると、両者の併存はむしろ普通の状態です。

2025年にクラウドを利用している企業は83.5%です。この83.5%の内訳を回答企業全体でみると、全社的に利用している企業が60.0%、一部の事業所または部門で利用している企業が23.5%でした。つまり4社に1社近くが、部分的な利用の段階にいます。

先ほど示した「オンプレミスが残る企業は16.5%以上40.0%以下」という幅は、この構造から生まれています。もっとも、部分利用企業の残りが必ずオンプレミスとは限らない点は変わりません。

自社で切り分けるときは、次の観点で領域を分けると判断しやすくなります。

  • 扱うデータの機微度(個人情報・取引情報・設計データなど)
  • 既存資産の残存年数(機器の保守期限とライセンスの残り)
  • 外部からのアクセス頻度(社外・複数拠点・取引先との連携)
  • 更改タイミング(次に機器を入れ替える時期)

判断の材料が足りない領域では公的統計に頼らず自社の数字を作る

公的統計で分かるのは、他社がどう選んでいるかまでです。自社の機器がいつ更改を迎え、いくらかかり、誰が運用しているかは、どの統計にも書かれていません。

実際、コストの安さを選択理由に挙げた企業は2025年で19.4%、同じ年に効果を実感している企業は89.4%です。それでも、自社が移行すべきかどうかまでは決まりません。

オンプレミスの保有台数や情報システム部門の人員体制を示す一次統計も、今回の調査範囲では見つかりませんでした。手が足りない場合は、情シスのアウトソーシングも含めて体制ごと検討してください。

次の一手は1つに絞ります。現行のサーバー・機器の保守期限と更改時期を一覧にすると、領域ごとの切り分けも決まります。

自社で書き出す項目

  • サーバー・ストレージ・ネットワーク機器の一覧と設置場所
  • 各機器のハードウェア保守期限とOS・ミドルウェアのサポート期限
  • 次回更改の想定時期と概算費用
  • そのシステムが扱うデータの種類と、社外からの利用の有無
  • 運用を担当している人と、月あたりの工数

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要」総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要(別紙2)」総務省「令和7年通信利用動向調査報告書」総務省「令和6年通信利用動向調査報告書」


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オンプレミスに関するよくある質問

検索されることの多い疑問を、Q&A形式でまとめました。

Q1. オンプレミスの読み方と語源を教えてください。

「オンプレミス」と読みます。英語の on-premises が語源で、premises は「建物」「構内」を意味します。自社の構内に機器を置いて使う状態を指す言葉として定着し、省略して「オンプレ」と呼ばれることもあります。

Q2. オンプレミスとホスティング・ハウジングの違いは何ですか。

機器の所有者と設置場所の組み合わせが違います。ホスティングは事業者の機器を借りて使う形態で所有は事業者側、ハウジングは自社所有の機器を事業者のデータセンターに預ける形態で所有は自社に残ります。判断の軸は、所有と運用責任が自社にあるかどうかです。

Q3. オンプレミスは減っているのでしょうか。

減少傾向にあるとは言えますが、正確な規模は分かりません。オンプレミスの保有を直接数える設問が総務省の通信利用動向調査には無く、クラウド利用率の裏側から推定するしかないためです。2025年のクラウド利用率は83.5%で、そこから導くと自社運用が残る企業は16.5%以上40.0%以下という幅になります。

Q4. オンプレミスのほうがセキュリティは高いのでしょうか。

構成だけでは決まりません。社外にデータを出さない設計は利点になりますが、パッチ適用・監視・バックアップ・アクセス管理はすべて自社で回す必要があります。運用を継続できる体制があるかどうかが実際の安全性を左右します。

Q5. オンプレミス回帰は起きているのでしょうか。

回帰の規模を示す公的統計は、今回の調査範囲では見つかりませんでした。数値で語れるのは、回答企業全体の23.5%がクラウドの利用を一部の事業所または部門にとどめている点までです(2025年)。全部を移すか戻すかではなく、併存が普通の状態だと考えるほうが実態に近いでしょう。

Q6. 中小企業はオンプレミスとクラウドのどちらを選ぶべきですか。

規模で一律には決まりません。総務省の調査は常用雇用者100人以上の企業が対象で、それより小さい企業の実態は含まれていません。非利用理由の最上位が「必要がない」46.5%である点を踏まえると(2025年)、まず自社の業務にどんな要件があるかを整理するのが先です。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要」総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要(別紙2)」総務省「令和7年通信利用動向調査報告書」


まとめ

オンプレミスとは、サーバーやソフトウェアを自社が管理する設備内に設置し、自社の責任で運用する形態です。クラウドとの違いは、設備の所有と管理責任の所在に集約されます。

利用実態としては、2025年にクラウドサービスを利用している企業が83.5%に達しました。ただし回答企業全体でみると23.5%は一部の事業所または部門での利用にとどまり、併存が例外ではないことが分かります。

非利用理由の上位は「必要がない」46.5%と「既存システムの改修コストが大きい」28.7%です(いずれも2025年)。通説で語られるカスタマイズ性は6.6%にとどまります。

判断を止めているのは技術的な優劣ではなく、既存環境が動いている状態です

この記事の要点

  • オンプレミスは、機器の所有と運用責任を自社が持つ形態を指す
  • クラウド利用率は2025年に83.5%となり、自社運用だけの構成は少数派になった
  • オンプレミスが残る企業の割合は、公的統計では16.5%以上40.0%以下という幅でしか示せない
  • 継続の理由は「必要がない」「改修コストが大きい」で、カスタマイズ性ではない
  • オンプレミスとクラウドの費用比較は、総務省の調査では測られていない

最後に次の一手を1つだけ挙げます。現行のサーバー・機器の保守期限と更改時期を一覧にしてみてください。判断に必要な材料は、統計ではなく自社の台帳の中にあります。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要」総務省「令和7年通信利用動向調査 結果概要(別紙2)」総務省「令和7年通信利用動向調査報告書」


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