【IPA調査】ヘルプデスクとは|役割とサービスデスクとの違い、専門部署がある中小企業は9.3%(2024年)という実態

社内の問い合わせが気づけば全部自分のところに集まっている、という状態になっていませんか。新任の情シスや、ひとりで社内IT全般を見ている方からよく聞く悩みです。
- 「ヘルプデスク」と「サービスデスク」は、何がどう違うの?
- 問い合わせが全部こちらに来るけれど、本来は誰の担当なんだろう
- ひとりで受けている状態を、どう体制として整えればいいのか分からない
結論から言うと、ヘルプデスクは部署の名前ではありません。社内外からのIT関連の問い合わせを受けて、一次対応する「機能」を指す言葉です。
この記事では、ヘルプデスクの定義と業務内容、サービスデスクや社内SEとの違いを整理します。そのうえで、その機能が企業のなかで実際にどう置かれているのかを、IPAと経済産業省の一次データから見ていきましょう。
この記事のポイント
- ヘルプデスクは部署の名前ではなく、社内外からのIT問い合わせを受けて一次対応する「機能」を指します
- 情報セキュリティ対策に専門部署(担当者)がある中小企業等は2024年調査時点で9.3%です。兼務だが担当者が任命されているのは21.0%です(出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」)
- 従業員300人以上の企業でも専門部署があるのは45.2%(2016年調査時点)です。受け手を専任の組織として抱える形は、日本では多数派になっていません(出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」報告書)
ヘルプデスクは社内外からのIT関連の問い合わせを受け、一次対応する窓口機能
ヘルプデスクとは、従業員や顧客から寄せられるIT関連の問い合わせを受け付け、一次対応を行う窓口機能です。ここで押さえたいのは、ヘルプデスクが組織の名前ではなく役割の名前だという点です。
専任の部署として置かれることもありますし、情シス担当者が他の業務と並行して担うこともあります。呼び方や置き方は企業によって違いますが、担っている内容そのものは共通しています。
PCが起動しない、パスワードを忘れた、共有フォルダに入れない。こうした困りごとを受け止めて、解決するか適切な相手に引き継ぐまでがヘルプデスクの役割です。
まずは、この記事で扱う範囲を先に整理しておきましょう。
ポイント:ヘルプデスクが担う範囲
- 社内外からのIT関連の問い合わせを受け付ける
- 状況を聞き取り、原因を切り分けて一次対応する
- 自力で解決できない案件を適切な担当へ引き継ぐ
- 対応の内容と結果を記録し、次の問い合わせに備える
社内ヘルプデスクは従業員、社外ヘルプデスクは顧客を対応相手とする
ヘルプデスクは、対応する相手によって社内向けと社外向けに分かれます。この記事で扱うのは、従業員を相手にする社内ヘルプデスクです。
違いは対応相手です。社内は自社の従業員、社外は自社製品を使う顧客を相手にします。担い手も、情報システム部門とカスタマーサポート部門に分かれます。
同じ言葉でも、相手が違えば動き方も変わります。会議や求人で出てきたときは、どちら側の話なのかを先に確かめてみてください。
| 区分 | 対応相手 | 扱う内容 | 担当する部門 |
|---|---|---|---|
| 社内ヘルプデスク | 自社の従業員 | 業務用PC・アカウント・社内システムの困りごと | 情報システム部門、または兼務の担当者 |
| 社外ヘルプデスク | 自社製品・サービスの顧客 | 製品の使い方、技術的な質問、障害の申告 | カスタマーサポート部門、コールセンター |
業務は受付・一次対応・エスカレーション・記録の4つに分かれる
ヘルプデスクの業務は、受付・一次対応・エスカレーション・記録という流れで整理できます。問い合わせに答えて終わりではなく、記録を残すところまでが一連の対応です。
流れで押さえておくと、自社のどこが抜けているのかも見えやすくなります。
- 受付: 電話・メール・チャット・専用フォームなどで問い合わせを受け取り、内容と依頼者を把握します
- 一次対応: 症状を聞き取って原因を切り分け、その場で解決できるものは自分で解決します
- エスカレーション: 権限や専門性が足りない案件を、社内の担当部門やベンダーへ引き継ぎます
- 記録: 問い合わせ内容と対応結果を残し、繰り返し聞かれるものはFAQとして公開します
このうち記録とFAQの整備は、目の前の対応に追われると後回しになりがちです。ただ、同じ質問を二度受けないための仕組みは負担を大きく左右するため、記事の後半であらためて取り上げます。
求められるのは製品知識よりも、切り分けと記録を続ける力
ヘルプデスクで効いてくるのは、幅広い製品知識よりも、原因を絞り込んで記録を残し続ける力です。製品の仕様は調べれば分かりますが、症状から原因にたどり着く進め方は経験で身につきます。
たとえば「インターネットにつながらない」という問い合わせがあったとします。端末側か、ネットワーク側か、アカウント側かを順に確かめていく作業が一次対応の中心です。
- 切り分け: 症状の再現条件を聞き、原因の候補を順番に絞り込む進め方
- 説明: 専門用語を使わず、非IT部門の相手にも伝わる言葉で手順を案内する力
- 記録: 対応内容を残し、同じ質問が来たときに再利用できる形に整える習慣
資格や製品名を並べるより、これら三つを自分の型として持っているほうが日々の対応は楽になります。
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ヘルプデスクとサービスデスク、社内SEは担当する範囲が異なる
ヘルプデスク、サービスデスク、社内SEの違いは、担当する範囲の広さと、こちらから能動的に動くかどうかという二点に集約できます。
ヘルプデスクは問い合わせへの応答が中心で、受けた案件に答えることが役割です。サービスデスクは利用者とIT部門をつなぐ窓口として、案件が終わるまでを追い、情報発信まで行います。
社内SEや情シスは、システムの企画から構築・運用まで含む広い担当範囲を持ち、ヘルプデスクはそのなかのひとつの機能にあたります。以下で順に分解していきましょう。
注意
実務では、これら三つが同じ担当者に集まっていることが少なくありません。名称の違いが自社の役割分担をそのまま表しているとは限らないため、言葉の定義と自社の実態は分けて考えてください。
サービスデスクはITILで定義された単一窓口で、ヘルプデスクより範囲が広い
サービスデスクは、ITサービス管理のフレームワークであるITILのなかで位置づけられた考え方です。利用者とIT部門をつなぐ単一の窓口として、受け付けた案件のクローズまでを追う役割だと一般に整理されます。
具体的には、問い合わせへの応答に加えて、FAQの公表や更新、計画停止の事前アナウンスといった能動的な情報発信も担います。窓口を一本化することで、対応の状況を一元的に把握できる形にするわけです。
ヘルプデスクは問い合わせへの応答が中心で、自分で対応できないものは別部門へ引き継ぎます。ITILのバージョンや解釈によって定義の書き方は異なるため、ここでは一般的な整理として押さえておいてください。
| 比較の軸 | ヘルプデスク | サービスデスク |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 問い合わせ・障害の受付と一次対応 | 利用者とIT部門をつなぐ単一窓口としての全体 |
| 動き方 | 受けた問い合わせに応答する | 情報発信や事前案内も含めて能動的に動く |
| 案件の終わり方 | 対応できないものは別部門へ引き継ぐ | クローズまで進捗を追う |
社内SEと情シスはシステムの企画・構築まで含み、ヘルプデスクはその一部にあたる
社内SEや情報システム部門の担当範囲は、ヘルプデスクよりもかなり広いです。ヘルプデスクは、情シス業務のなかのひとつの機能として位置づけられます。
情報システム部門が持つ業務は、おおむね次のように広がります。
- システムの企画・選定と導入プロジェクトの推進
- ネットワークやサーバーなど社内インフラの運用
- 情報セキュリティ対策の立案と運用
- PC・ソフトウェアなどIT資産の管理
- 従業員からの問い合わせ対応(ヘルプデスク)
このうち問い合わせ対応だけを切り出した呼び方がヘルプデスクです。担当者がひとりしかいないひとり情シスの環境では、これらすべてが同じ人の担当になります。
役割の名前が分かれていても、実際に動く人が分かれているとは限りません。ここを混同すると、業務の抜けや属人化の原因が見えにくくなります。
テクニカルサポートは製品単位、ヘルプデスクは利用者単位で対応する
テクニカルサポートとの違いは、対応の起点が製品か利用者かという点にあります。テクニカルサポートは製品に紐づき、ヘルプデスクは利用者の困りごと全般に紐づきます。
テクニカルサポートは、自社製品やサービスの技術的な問い合わせを受ける役割です。扱う範囲がその製品に限られるため、深い製品知識が求められます。
カスタマーサポートは顧客対応の窓口を指し、契約や請求などの非技術的な相談も含みます。一方の社内ヘルプデスクは、相手が従業員であり、製品の境目にかかわらず困りごとを受け止める立場です。
- テクニカルサポート: 起点は製品。自社製品の技術的な質問や障害に対応する
- カスタマーサポート: 起点は顧客。技術以外の相談も含めて広く受ける
- 社内ヘルプデスク: 起点は利用者。従業員の困りごとを製品を問わず受ける
問い合わせの担当者が制度として決まっている中小企業は3割にとどまる
ここからは、ヘルプデスクという機能が企業のなかで実際にどう置かれているのかを、一次データで見ていきます。その前に、ひとつ前提を共有させてください。
問い合わせ件数や一次解決率のように、ヘルプデスク業務そのものを測った公的な定量データは乏しいのが実情です。 そこで本記事では、IPAが中小企業に対して調べている「情報セキュリティ対策の体制」の区分を、問い合わせを受ける担い手が社内にどう置かれているかを示す代理指標として読みます。
IPAの2024年度調査(中小企業等、有効回答4,191件)では、体制を3つの区分で聞いています。専門部署(担当者)があるのは9.3%、兼務だが担当者が任命されているのは21.0%です。組織的には行わず各自の対応としている企業は69.7%でした。
注意
この設問は情報セキュリティ対策の体制を聞いたものであり、問い合わせ窓口の有無を直接尋ねた調査ではありません。また、運用や問い合わせ対応を外部のIT事業者に委託している企業が「組織的には行っていない」に分類されている可能性もあります。担当者が社内にいないことが、そのまま対応の不在を意味するわけではない点にご注意ください。
専門部署があるのは9.3%、兼務での担当者任命が21.0%(2024年調査)
2024年調査の中小企業等(有効回答4,191件)の結果を見てみましょう。専門部署(担当者)がある企業は9.3%、兼務だが担当者が任命されている企業は21.0%でした。組織的には行わず各自の対応としている企業は69.7%です。
専任と兼務を合わせると、担当者が置かれている側は9.3%と21.0%の合計で3割ほどになります。この合計値は公表されている数値ではなく、2つの公表値を足したものです。
この数値から読み取れるのは、担当者が置かれている企業でも、その多数派は専任部署ではなく兼務の担当者だという点です。問い合わせを受ける役割は、独立した部署になる前に、他の業務を持つ誰かの職務として立ち上がります。 だからこそ、ヘルプデスクを部署の名前ではなく機能として定義する意味があります。
規模が小さいほど「各自の対応」が増え、小規模企業者では84.5%に達する
同じ2024年調査を企業規模別に見ると、体制の置き方は段階的に変わります。組織的には行わず各自の対応としている割合は、小規模企業者で84.5%、中小企業100名以下で47.6%、101名以上で13.6%です。

出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」図3-121をもとに作成
規模が上がると各自の対応は減りますが、その担い手は専任部署ではありません。専門部署があるのは4.4%・14.8%・34.6%と増えていきます。一方で兼務での担当者任命は11.1%・37.6%・51.9%と、それ以上に大きく増えます。
つまりどの規模帯でも、兼務が専任を上回っています。各自の対応から誰かの担当業務へ変わる境目は、従業員100名前後にあると読めます。
なお101名以上の回答は295件と他の区分より少ないため、数ポイントの差を細かく読むには向きません。規模区分の定義も業種で異なり、小規模企業者は商業・サービス業で1〜5名、製造業その他で1〜20名です。
「ひとり情シス」は公的調査の用語ではなく、兼務での担当者任命が近い実態を示す
「ひとり情シス」という言葉は、官公庁の調査で使われている用語ではありません。アンケートの選択肢としても存在しないため、その比率を示す公的な数値は出てきません。
近い実態を示す代理指標として使えるのが、兼務での担当者任命の割合です。2024年調査では全体で21.0%、中小企業100名以下で37.6%、101名以上で51.9%が兼務で担当者を任命しています。
情報システム部門の人数や業務内容を、現在も継続して測っている公的統計はありません。経済産業省の「情報処理実態調査」が社内の情報処理関係従業者数を調べていましたが、公表されている最新は平成29年(2017年)調査で、対象も一定規模以上の企業に限られていました。業務量は周辺の指標から推定するしかないのが現状です。
その前提を置いたうえで言えるのは、他の業務と兼務しながら問い合わせを受けている状態は、珍しい形ではないということです。 ご自身の環境を例外だと考える必要はありません。
出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」/経済産業省「情報処理実態調査」
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従業員300人以上の企業でも専門部署があるのは45.2%(2016年調査時点)
ここまでの数値を見て「うちが小さいからだ」と受け取った方もいるかもしれません。ただ、受け手を専任の組織として置いていない状況は、中小企業に固有の話ではありません。
IPAは従業員300人以上の企業を対象にした調査も行っています(2016年調査時点、有効回答755件)。この調査では、情報セキュリティ対策の専門部署(担当者)がある日本企業は45.2%でした。
一定の規模がある企業でも、半数以上は専門部署を置いていないという結果です。
この数値から読み取れるのは、専任の受け手を抱えられる企業は規模を問わず限られているという点です。兼務や社内での役割分担、外部委託を含めた設計として考えるほうが、実態に近い進め方になります。
注意
この調査は2016年に実施されたもので、10年近く前の状況を示しています。現在も同じ水準とは限りません。また設問は情報セキュリティに関するもので、ヘルプデスク要員の充足を尋ねたものではありません。
専門部署の設置率は日本45.2%、米国69.1%、欧州51.7%と差がある
同じ2016年調査は、日本・米国・欧州を比較しています。専門部署(担当者)がある企業は日本45.2%、米国69.1%、欧州51.7%で、日本は3地域のうち最も低い水準です。
統括する立場の置き方も国によって違います。CISO等を専任で設置している企業は日本27.9%、米国78.7%、欧州67.1%でした。

出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」報告書図3.2-36・図5.6-1をもとに作成
ただし日本では、34.7%がCISO等を兼任で設置しています。専任と兼任を合わせれば、米国との差は縮みます。
国際比較そのものは本記事の主題ではありません。「専門部署」や「CISO等」が指す組織・役職の範囲は、日米欧で同じとは限りません。 日本の45.2%という水準を確かめるための補助として見てください。
現場の54.9%が要員は不足していると回答している
同じ2016年調査は、日本企業(従業員300人以上)の責任者・担当者に要員の充足も聞いています。回答者のうち54.9%が、セキュリティ要員の人数は不足していると答えました。一方で、統括する立場のCISO等は34.7%が兼任で置かれている状況でした。
この構図から読み取れるのは、体制を統括する立場が兼任で置かれ、現場は要員の不足を訴えているという組み合わせです。体制が足りているかどうかの受け止めは、経営層と現場の担当者で一致しないことがあります。
ヘルプデスク業務の仕組み化を提案しても通りにくいのは、この受け止めのずれが背景にある場合があります。 現状の負担を数値で示せるようにしておくことが、話を前に進める材料になります。
なお54.9%は「セキュリティ要員」の不足であり、ヘルプデスク要員の充足を聞いたものではありません。
出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」報告書
ヘルプデスクの体制を数値で語るときは、調査年より先に対象企業規模を確認する
ここまでで、似た文言の設問を扱う2つのIPA調査を紹介しました。読み方を補足します。
2016年調査は従業員300人以上が母集団で、専門部署は45.2%(有効回答755件)。2024年調査は中小企業等が母集団で9.3%(有効回答4,191件、うち2,775件が小規模企業者)です。
数えている企業が違うため、同じ指標の変化として引き算はできません。同じ2024年調査でも101名以上は34.6%、小規模企業者は4.4%です。調査年や手法も違うため、差を規模だけに帰せません。
「専門部署は1割以下」も「約半数」も、母集団を書かなければ誤読を招きます。 まず、どの規模を数えた値かを確かめてください。
出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」/IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」報告書
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問い合わせの切り分けに必要なIT資産情報を仕組みで持つ企業は1割にとどまる
ヘルプデスクを機能として置くときは、窓口を決めることと、答えるための前提情報を一元化することをセットで考える必要があります。 片方だけでは回りにくいからです。
2024年調査では、対策を組織的には行わず各自の対応としている中小企業等が全体で69.7%、小規模企業者では84.5%でした。IT資産管理やソフトウェアライセンス管理の製品を導入している企業は10.3%です(母数が異なる設問のため、先の数値とは足し引きできません)。
窓口の担い手と、担い手が参照する情報。この両方が整っていない状態が同じ調査に並んでいます。先に決めておくとよい項目を挙げます。
ポイント:ヘルプデスク機能を置くときに先に決めること
- 受付経路の一本化(電話・メール・チャットのどこで受けるか)
- 対応履歴の残し方(どこに、どの粒度で記録するか)
- 資産情報の引き方(誰がどの端末とアカウントを使っているかをどう確認するか)
- 引き継ぎ先の決め方(自分で対応しない案件を誰に渡すか)
IT資産管理・ライセンス管理製品を導入している中小企業は10.3%(2024年調査)
2024年のIPA調査では、情報セキュリティ対策の必要性を感じたことがない企業を除いた中小企業(この設問の母数2,203件)のうち、IT資産管理やライセンス管理の製品を導入しているのは10.3%でした。同じ調査で専門部署は9.3%、兼務での担当者任命は21.0%です。
ヘルプデスクの一次対応は、その端末に何が入っているか、誰が使っているかを前提に進めます。IT資産管理の情報を引ければ、切り分けは早くなります。
ここから読み取れるのは、担当者が決まっていない状態と資産情報を引けない状態が同じ方向に並ぶ点です。ただしこれは相関であり、因果ではありません。 未導入でも台帳で管理している企業はあり、未導入が把握なしを意味するわけではありません。
注意
10.3%の母数は「対策の必要性を感じたことがない」以外を選んだ企業(2,203件)で、体制の3区分(69.7%など)の母数である有効回答4,191件とは異なります。母数が違うため、同じ企業群として引き算したり、同じグラフに並べたりはできません。
窓口の一本化と資産情報の整備はセットで設計する
専任の部署を作れない前提で考えるなら、兼務の担当者でも回る形にするのが現実的です。2024年調査でも、担当者を置いている企業の多数派は兼務での任命(21.0%)でした。
兼務でも回る形にするには、受付経路を絞り、履歴を残し、資産情報を引ける状態を作る、という順番が扱いやすいです。 資産管理製品の導入が10.3%にとどまる現状を踏まえると、まずは台帳の整備から始める判断もあり得ます。
- 受付経路を絞る: 受け口を1か所に集め、どこに来た問い合わせでもそこに転記する
- 履歴を残す: 誰が・何を・どう解決したかを、後から検索できる場所に記録する
- 資産情報を引けるようにする: 利用者と端末・アカウントの対応を一覧で確認できる状態にする
ツールの選定や自動化の進め方など、ヘルプデスクの効率化の具体策は別の記事でまとめています。本記事では、機能としての置き方の整理までにとどめます。
出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」
IT人材の不足という説明は、ヘルプデスク業務にそのまま当てはまらない
「IT人材が足りないから仕方ない」という説明は、よく聞きます。ただ、公的な推計を読むと、その一言で自社の状況を説明できないことが分かります。
経済産業省が2019年に公表した報告書を見てみましょう。2030年時点のIT人材の需給ギャップは、標準ケースで44.9万人と推計されています。推計の対象は、IT企業やユーザー企業の情報システム部門などに属する技術者です。
この推計は全国のIT職業人口を対象にしたマクロな試算であり、ヘルプデスク業務の担い手が何人足りないかを示したものではありません。 前の章で扱った体制のデータとは母集団が違うため、両者を並べて因果や相関を語ることもできません。
注意
この推計は、IT企業とユーザー企業の情報システム部門等に属する技術者を対象にした全国規模のマクロ推計です。自社の要員計画の根拠としては使えません。また、いずれも2019年公表の報告書における将来推計であり、実績値ではありません。
2030年の需給ギャップ推計は前提次第で16.4万人から78.7万人まで動く
需給ギャップの推計値は、置く前提によって大きく変わります。2019年公表の報告書は、2030年時点の推計を標準ケースで44.9万人としています(報告書の表では45万人と表記)。IT需要の伸びを低く見た場合は16.4万人、高く見た場合は78.7万人です。
| シナリオ | 2030年の需給ギャップ推計 | 公表年 |
|---|---|---|
| 標準ケース | 44.9万人 | 2019年 |
| IT需要の伸び・低位シナリオ | 16.4万人 | 2019年 |
| IT需要の伸び・高位シナリオ | 78.7万人 | 2019年 |
| 2016年公表の前回調査による推計 | 58.7万人 | 2016年 |
出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書をもとに作成(上位3行は2019年公表の推計値、最下行は同報告書が比較として引用する2016年公表の前回調査の推計値。いずれも実績値ではありません)
同じ2030年を対象にしても、前提が変われば推計は数倍動きます。2016年公表の前回調査では、2030年時点を58.7万人と推計していました。これは同一調査の経年比較ではなく、前提が変われば結果も変わる例です。
ここから言えるのは、単一の数字を断定的に引いて自社の判断根拠にはできないということです。 「何万人足りない」という表現を見たときは、どのシナリオの値なのかを確かめてみてください。
先端IT人材は54.5万人不足、従来型IT人材は9.7万人の供給過剰という推計になっている
同じ報告書では、人材を種類で分けた推計も示されています。2030年時点で先端IT人材は54.5万人の不足、従来型IT人材は9.7万人の供給過剰という結果です。いずれもIT需要の伸び中位・Reスキル率1.0%固定という条件下の推計です。

出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書表3-14をもとに作成(2019年公表の推計値。実績値ではありません)
つまり人手不足の向きは、人材の種類によって逆になっています。人手不足は一様ではなく、スキル領域によって不足と過剰が分かれるという推計です。
ここで注意したいのは、推計上の「従来型IT人材」にヘルプデスク業務がどこまで含まれるかは定義上分からない点です。「だからヘルプデスク人材は確保しやすい」とは言えません。 言えるのは、人材不足という一言で自社の状況を説明できないことです。外部委託も、人手の穴埋めではなく業務の配分を決める判断になります。
不足の拡大ペースが最も速いのは2020年までで、以降は緩やかになる想定である
同じ報告書は、標準ケースの需給ギャップを複数の対象年について推計しています。2018年は22万人、2020年は30万人、2025年は36万人、2030年は44.9万人です。

出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」調査結果概要/経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書をもとに作成。2019年公表の報告書による将来推計であり、定点調査の実績推移ではありません
推計値の差を見ると、2018年から2020年までの2年間の増え方が、その後の5年刻みの増え方に近い規模です。拡大のペースが最も速いのは2020年までで、以降は緩やかになる想定です。
この推計は毎年の実績を積み上げたものではなく、2019年公表の報告書のなかで複数の対象年を予測したカーブです。将来に向けて不足が一方的に加速していく前提は、この推計には含まれていません。
出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書/経済産業省「IT人材需給に関する調査」調査結果概要
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ヘルプデスクに関するよくある質問
現場でよく聞かれる質問を、Q&A形式でまとめました。
Q1. 自社の窓口は、ヘルプデスクとサービスデスクのどちらを名乗るべきですか。
受けた問い合わせに応答することが中心ならヘルプデスク、窓口を一本化して案件のクローズや情報発信まで担うならサービスデスクが近いです。実務では、名称よりも「どこまでを自分たちの責任範囲とするか」を先に決めるほうが役立ちます。
Q2. ヘルプデスクの業務はきついと言われますが、実際はどうですか。
主観的な評価は人によって変わるため、ここでは構造だけ示します。2024年のIPA調査では、中小企業等で担当者を置いている企業の多数派は兼務での任命で、その割合は21.0%でした。
対応の幅が広いうえに他業務と並行しやすい構造があるため、負担が集中しやすい面はあります。受付経路と引き継ぎ先を決めておくことが、負担の偏りを抑える現実的な手立てです。
Q3. ヘルプデスクに向いているのはどのような人ですか。
人物像を断定はできませんが、業務の性質から必要な力は整理できます。症状から原因を絞る切り分け、非IT部門にも伝わる説明、同じ質問を二度受けないための記録の3点です。
Q4. ヘルプデスクの問い合わせ件数や一次解決率の平均はどれくらいですか。
参照できる公的な定量データが乏しく、平均値としてお示しできる数値はありません。Web上に流通する相場値の多くは調査対象や算出方法が明示されていないため、本記事では採用していません。
まずは自社で1か月分の受付件数と、その場で解決できた件数を数えてみてください。自社の実数のほうが、体制を見直す材料としては役立ちます。
Q5. ひとりで問い合わせ対応をしている状態は珍しいのでしょうか。
珍しい状態ではありません。2024年のIPA調査(中小企業等)では、情報セキュリティ対策の専門部署があるのは9.3%でした。兼務だが担当者が任命されているのは21.0%です。
ただしこの設問は情報セキュリティ対策の体制を聞いたもので、問い合わせ窓口の有無を直接尋ねたものではありません。あくまで近い実態を示す代理指標として見てください。
Q6. 未経験でヘルプデスクを担当することになったら、何から始めるべきですか。
誰がどの端末とアカウントを使っているかを把握するところからです。2024年のIPA調査では、IT資産管理やライセンス管理の製品を導入している中小企業は10.3%にとどまります。多くの企業は台帳で管理している状況です。
あわせて受付経路を一本化し、対応履歴を残す場所を決めておきましょう。この2つが決まっていれば、知識は対応しながら積み上がります。
出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」
まとめ
ヘルプデスクとは、社内外からのIT関連の問い合わせを受け、一次対応する窓口機能です。部署の名前ではなく、誰かが担っている機能として捉えるほうが実態に合います。
サービスデスクとの違いは担当範囲の広さと能動的に動くかどうか、社内SEとの違いはシステムの企画・構築まで含むかどうかにあります。
体制のデータを見ると、専任で受け手を抱える形は多数派ではありません。まずは自社の受付経路と資産情報の在りかを書き出すところから始めてみてください。 それが、兼務でも回る形を設計する出発点になります。
ポイント:この記事の要点
- ヘルプデスクは部署ではなく、問い合わせを受けて一次対応する機能です
- 2024年調査の中小企業等では、専門部署があるのが9.3%、兼務での担当者任命が21.0%、各自の対応が69.7%でした
- 従業員300人以上の企業でも専門部署があるのは45.2%(2016年調査時点)で、体制の薄さは中小企業だけの話ではありません
- IT資産管理・ライセンス管理製品の導入は2024年調査で10.3%。窓口の一本化と資産情報の整備はセットで設計します
- 体制の数値を読むときは、調査年より先に対象企業規模を確認してください
出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」/IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」報告書
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情シスカレッジのご案内
ヘルプデスクを兼務で担っていると、知識の習得や引き継ぎの整備は後回しになりがちです。担当者が交代したときに対応の質が落ちない形にしておきたい、という悩みもよく聞きます。
情シスカレッジは、新人・ひとり情シスのためのマイクロラーニングLMSです。情シス業務に必要な知識を、短い動画で学べる形にまとめています。
情シスカレッジの特徴
- 数分の動画と小テストで、すきま時間に学習を進められます
- 必修の割り当て・期限設定・進捗ダッシュボードで受講状況を管理できます
- 自社カリキュラムの編成と、CSVでの教育記録の出力に対応しています
5名からご利用いただけます。請求書払いにも対応しており、初期設定にかかる時間は約10分です。
出典一覧
※出典
– IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」
– IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」報告書(Web Archive 保存版)
– 経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書
– 経済産業省「IT人材需給に関する調査」調査結果概要
– 経済産業省「情報処理実態調査」

