【IPA・総務省2025年】情シスの効率化は4つの順序で進める|DX人材の質不足88.8%・クラウド利用率83.5%

情シスの仕事をしていて、こんな状態になっていませんか。
- 問い合わせ対応で一日が終わり、進めたい改善がいつまでも動かない
- 効率化しようと決めたものの、どこから手をつけるか決められない
- 増員や外注を提案したいのに、上司に見せられる材料が手元にない
結論から書きます。情シスの効率化は、業務の棚卸し → 標準化 → クラウド化 → 外部化の順に進めるのが現実的です。 ツール選びから入ると、運用を回す人が決まらないまま導入だけが増えていきます。
この記事では、総務省・経済産業省・IPAの公的調査だけを根拠に、この順序の理由を説明します。ベンダーの独自アンケートや、出所のはっきりしない相場感は使いません。
この記事のポイント
- 情シスの人手不足は「頭数」より「求める水準に届く人がいない」側に移っている(DXに取組んでいる企業のうち、人材の「質」が不足していると答えた企業は2025年度時点で88.8%。出典: IPA「DX動向2026」)
- 企業規模で開いているのはツールの有無ではない。資本金1,000万円未満の企業(n=100)でもクラウド利用率は75.4%に達している(2025年。出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」)
- 効率化の余地は「導入して終わる作業」ではなく「運用が続く作業」にある(ウイルス対策対応マニュアルを策定している企業は19.7%。2025年。出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」)
この記事を読み終えると、自社の情シスがいまどの段階にいて、次に何へ着手すべきかを、社内で説明できる形で整理できます。
情シスの効率化が急がれる背景には、人材不足と守備範囲の拡大がある
情シスが忙しいのは、あなたの会社だけの事情ではありません。人材の不足と、管理する対象の広がりは、公的な調査にはっきり表れています。
IPA「DX動向2026」によると、DXに取組んでいると回答した企業のうち、DXを推進する人材の「量」が不足している(やや不足+大幅に不足)と答えた企業は、2025年度時点で85.5%です。「質」が不足していると答えた企業は88.8%で、量よりも高い水準でした。
同じ調査で、何らかの形でDXに取組んでいる企業は回答企業全体の75.7%です。この75.7%が、上に挙げた不足感の数値の母数そのものにあたります。多くの企業が取り組みを始めた一方で、それを担う人が足りていない状態だと分かります。
このセクションでは、その不足がどんな形で表れているかを4つの角度から見ていきます。
ポイント
- DXを推進する人材の不足感は「量」85.5%、「質」88.8%(2025年度・IPA。DXに取組んでいると回答した企業が対象)
- 「大幅に不足」の回答は量・質とも減っている一方、「やや不足」を含めた不足感の合計は質で増えている
- テレワークの定着で、情シスが管理する対象は社外にも広がった
DXを推進する人材が不足している企業は2025年度時点で85.5%にのぼる
まず現状の水準を押さえます。DXに取組んでいる企業に限ると、人材の不足感は「量」「質」のどちらも8割台後半で、半数前後の企業が「大幅に不足」と答えています。
IPA「DX動向2026」の2025年度調査の結果は次のとおりです。いずれもDXに取組んでいると回答した企業が母数です。「やや不足」を含めた合計と、「大幅に不足」だけの割合を分けて示します。
| 不足している対象 | やや不足+大幅に不足 | うち「大幅に不足」 |
|---|---|---|
| 人材の「量」 | 85.5% | 50.1% |
| 人材の「質」 | 88.8% | 52.9% |
出典: IPA「DX動向2026」(2025年度調査、DXに取組んでいると回答した企業が対象)
量も質も、8割台後半の企業が不足を感じています。しかも半数前後の企業が「大幅に不足」と回答しました。人が足りないという感覚は、あなたの現場だけの実感ではありません。
この数字をどう読むかは、次で推移を見てから整理します。
「量」の不足感は2年間で12.0ポイント下がり、論点は質へ移っている
先に事実を確認します。以下はいずれも、DXに取組んでいると回答した企業を母数とする数値です。DXを推進する人材の「量」が大幅に不足していると答えた企業の割合は、2023年度62.1%、2024年度58.5%、2025年度50.1%と推移しました。2023年度62.1%から2025年度50.1%へ、2年間で12.0ポイント下がっています。
「質」も「大幅に不足」だけを見ると、2024年度58.9%から2025年度52.9%へ下がっています。一方で「やや不足」を含めた合計では、2024年度86.1%から2025年度88.8%へ増えています。2025年度は「質」の88.8%が「量」の85.5%を3.3ポイント上回りました。
なお「大幅に不足」のみの割合と、「やや不足」を含めた合計は集計基準が違います。同じ系列として並べて比べないようにしてください。

出典: IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)
この推移から読み取れるのは、情シスの人手不足の性質が変わりつつある点です。採用で頭数を満たせば解消する問題から、任せられる水準に届いているかどうかの問題へ移っています。打ち手の重心は、増員よりも業務の標準化と外部化に寄っています。
ただし別の説明も成り立ちます。「量」の緩和は、DXの推進範囲そのものを縮めた企業が「不足していない」側に回った結果とも読めるからです。
IT人材の需給ギャップは2030年に44.9万人まで拡大すると推計されている
中長期で見ると、採用で埋める前提は置きにくくなります。経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)の中位シナリオ(IT需要の伸びと労働生産性の上昇を一定の水準に置いた基本ケース)では、IT人材の需給ギャップが次のように推計されています。
| 対象年 | 需給ギャップの推計値 |
|---|---|
| 2018年 | 22万人 |
| 2020年 | 30万人 |
| 2025年 | 36万人 |
| 2030年 | 44.9万人(概要では45万人と表記) |
出典: 2018年・2020年・2025年は経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」、2030年は同調査報告書(いずれも2019年公表、中位シナリオ)
2030年の値はIT需要の伸び方で幅があります。需要が高く伸びるシナリオでは78.7万人、低く伸びるシナリオでは16.4万人と試算されています。
注意
この需給ギャップは2019年に公表された推計値で、直近の実績を示すものではありません。「2030年に44.9万人不足する」と断定できる数値ではなく、IT需要の伸び方の前提によって16.4万人から78.7万人まで幅があります。将来の見通しの一つとして扱ってください。
テレワークの定着で情シスが管理する対象は社外にも広がっている
人は増えていないのに、管理する対象は増えました。総務省「令和7年通信利用動向調査」によると、テレワークを導入している企業は2025年時点で50.1%です。なおこの調査の対象は常用雇用者100人以上の企業です。
導入率は2020年前後に大きく伸びたあと、横ばいから微減で推移し、2025年に再び上向いています。コロナ禍の一時的な対応ではなく、運用として定着したと見てよさそうです。
規模や業種による差も大きいです。2024年時点では、従業者2,000人以上の企業で82.1%、情報通信業で94.3%が導入しています。
同じ情シスでも前提が違う、ということです。社外の端末や回線が管理対象に入れば、資産管理も問い合わせ対応も自然に増えます。
出典: IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙1(別紙の図表は無回答を除いて集計)/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/同調査報告書
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効率化の第一歩は、自社に必要な業務とスキルを言語化することにある
効率化と聞くと、まずツール選びを思い浮かべるかもしれません。ですが最初に着手すべきなのは、自社の業務と必要なスキルを書き出して言語化することです。 予算も承認も要らず、社内で完結します。
IPA「DX動向2026」によると、DXに取組んでいると回答した企業のうち、DX推進に必要なスキルを把握できていない企業は2025年度時点で52.8%です。DXを推進する人材像を設定して社内に周知している企業は16.2%にとどまります。
つまり、多くの企業が「何ができる人が必要か」を決めないまま人材不足を語っている状態です。ここを整理するだけでも、ひとり情シスの状況は変わります。
最初にやる棚卸しの観点
- 自分がいま抱えている業務を、すべて一覧に書き出す
- 1週間分でよいので、業務ごとの対応時間を記録する
- 自分しか手順を知らない作業に印をつける
- 手順書があれば他の人や社外にも渡せる作業を切り分ける
必要スキルを把握している企業と把握できていない企業で、質の不足感に23.4ポイントの差がある
まず事実です。IPA「DX動向2026」の2025年度調査には、必要スキルの把握状況で回答を分けた集計があります。母数はいずれもDXに取組んでいると回答した企業です。人材の「質が大幅に不足している」と答えた割合は次のとおりです。
| DX推進に必要なスキルの把握状況 | 「質が大幅に不足」と回答した割合 |
|---|---|
| 把握している | 40.6% |
| 把握できていない | 64.0% |
出典: IPA「DX動向2026」(2025年度調査、DXに取組んでいると回答した企業が対象)
把握している企業の40.6%と把握できていない企業の64.0%の差は、23.4ポイントあります。
ここから読み取れるのは、人材の不足感が外部の採用市場だけで決まっていない点です。自社が何を求めているかを定義できているかという社内側の条件と、一緒に動いています。
求めるものが曖昧なままだと、誰を採っても、どれだけ育てても足りない感覚が残ります。
ただしこれは因果ではなく併走関係として読んでください。人材を確保できている企業だから必要スキルを整理する余裕がある、という逆向きの説明も成り立ちます。この集計は企業規模やDXの成熟度を統制していない点にも注意が必要です。
必要スキルを把握できていない企業は52.8%、人材像を周知できている企業は16.2%にとどまる
差がつく条件は分かりましたが、実際にはその条件を満たせている企業のほうが少数です。IPA「DX動向2026」の2025年度調査から、人材まわりの整備状況を並べます。いずれもDXに取組んでいると回答した企業が母数です。
- DX推進に必要なスキルを把握できていない企業: 52.8%
- DXを推進する人材像を設定し、社内に周知している企業: 16.2%
- DX人材の評価基準が「ない」企業: 76.1%
- DXを推進する人材の育成予算を増やした企業: 25.6%
育成予算を増やした企業の割合は、前年度からは微増にとどまっています。整備が進んでいないのは自社だけではありません。だからこそ、棚卸しに着手するだけで差がつきます。
まずは業務一覧を作るところからで十分です。完璧な人材要件を書く必要はありません。
出典: IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)
企業規模で開いているのはツールの有無ではなく、取り組みの体制
中小企業にはツールが入っていない、という前提は、いまのデータには合いません。規模で開いているのは道具の有無ではなく、それを組織の取り組みとして位置づけ、続ける体制のほうです。
IPA「DX動向2026」によると、何らかの形でDXに取組んでいる企業は2025年度時点で全体の75.7%です。ところが従業員100人以下では41.6%、1,001人以上では98.7%と大きく分かれます。
取り組みとして立ち上がっているかどうかは、規模で大きく開いています。一方でクラウドの利用状況を見ると、様子はかなり違います。
ポイント
- DXに取組んでいる企業の割合は、従業員100人以下で41.6%、1,001人以上で98.7%(2025年度・IPA)
- クラウド利用率は資本金1,000万円未満(n=100)でも75.4%(2025年・総務省)。道具はすでに手元にある
DXに取組んでいる企業は従業員100人以下で41.6%、1,001人以上で98.7%
まず取り組みの側から見ます。IPA「DX動向2026」の2025年度調査によると、何らかの形でDXに取組んでいる企業は全体で75.7%でした。従業員規模別に見ると、100人以下で41.6%、1,001人以上で98.7%です。

出典: IPA「DX動向2026」(2025年度調査)
100人以下の41.6%と1,001人以上の98.7%の差は、57.1ポイントです。 ひとり情シスや少人数の情シスが多いのは従業員100人以下の層で、そこでは効率化を語る前に、取り組み自体が立ち上がっていない企業が過半を占めます。
ただし「DXに取組んでいる」は自己申告です。大企業ほど社内にDXという言葉が定着していて、肯定側に回答しやすい面もあります。差のすべてが実態の差とは限りません。
クラウド利用率は資本金1,000万円未満でも75.4%に達している
次に道具の側を見ます。総務省「令和7年通信利用動向調査」によると、2025年時点のクラウドサービス利用率は全体で83.5%でした。資本金規模別では、1,000万円未満で75.4%、50億円以上で99.8%です。資本金規模別の回答企業数は、1,000万円未満(n=100)、50億円以上(n=165)と多くありません。
1,000万円未満の75.4%と50億円以上の99.8%の差は、24.4ポイントにとどまります。前の項で見たDXの取組率の開き方とは、かなり印象が違いますよね。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2(2025年、常用雇用者100人以上の企業。別紙の図表は無回答を除いて集計)
ここから読み取れるのは、規模の小さい企業にもクラウドという道具はすでに入っており、開いているのは組織的な位置づけと継続する体制の側だという点です。効率化の余地は、新しいツールを増やすことよりも、すでに使っているものを整理して運用に載せることにあります。
ただし、この2つの数値は性質が異なる調査から来ています。次の注意点を踏まえて読んでください。
注意
DXの取組率はIPAの調査で従業員規模別、クラウド利用率は総務省の調査で資本金規模別の集計です。調査主体も母集団も区分の軸も異なります。両者のポイント差をそのまま突き合わせて比較することはできません。また総務省の調査は常用雇用者100人以上の企業が対象です。それより小さい企業は含まれていません。資本金1,000万円未満の集計は回答企業数が100社と標本が小さい点にも注意してください。ここでは「取り組みの差は大きく、道具の差は小さい」という傾向の違いを見る目的で並べています。
出典: IPA「DX動向2026」/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2(別紙の図表は無回答を除いて集計)
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クラウド活用は効率化の打ち手として9割近い企業が効果を実感している
打ち手の話に移ります。効率化の手段のなかで、効果が最も広く検証されているのがクラウドの活用です。
総務省「令和7年通信利用動向調査」によると、クラウドサービスを利用している企業は2025年時点で83.5%です。そのうち「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と答えた企業は89.4%にのぼります。
利用も効果実感も高い水準で、しかも長く続いています。ここでは利用率の推移、効果実感の中身、そして使わない企業の理由という3点を順に見ていきます。
ポイント
- クラウド利用率は2025年時点で83.5%(総務省、常用雇用者100人以上の企業)
- 利用企業の89.4%が効果を実感している(2025年、無回答を除く)
- ただし「非常に効果があった」は36.0%。導入後の使い方で結果が分かれる
クラウド利用率は2010年の13.7%から2025年の83.5%へ69.8ポイント上昇した
クラウドの利用は15年でほぼ全社的なものになりました。総務省の通信利用動向調査によると、クラウドサービスを利用している企業の割合は2023年時点で77.7%です。
さかのぼると、2010年の13.7%から2025年の83.5%へ、15年間で69.8ポイントの上昇です。いずれも常用雇用者100人以上の企業を対象とした調査の数値です。

出典: 2025年は総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙1(別紙の図表は無回答を除いて集計)、2023年は総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」、2010年はe-Stat「通信利用動向調査」統計表
もはやクラウドを使うかどうかは論点ではなく、どう使って運用の手間を減らすかが論点です。 自社が遅れていると感じる必要はありません。
効果実感は4年間ほぼ9割で動かず、「非常に効果があった」は36.0%にとどまる
先に事実を見ます。クラウドの利用効果について「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と答えた企業の割合を並べます。2021年時点で88.2%、2024年時点で87.3%、2025年時点で89.4%でした。
2021年から2025年までの4年間、ほぼ9割前後で動いていません。ただし内訳を見ると、2025年時点で「非常に効果があった」は36.0%、「ある程度効果があった」は53.5%でした。

出典: 2025年は総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2(別紙の図表は無回答を除いて集計)、2024年は総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」、2021年は総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」
ここから読み取れるのは、後から導入した企業でも先行企業と同じ水準の効果を得ているという点です。出遅れを理由にクラウド化をあきらめる必要はありません。
一方で、強い手応えを得ているのは36.0%で、3社に1社にとどまります。導入そのものよりも、導入後にどこまで運用を任せられる形にしたかで結果が分かれていると読めます。
ただし2025年の値は無回答を除く集計で、それ以前の年とは基準が異なります。1〜2ポイントの差を変化として読まないでください。
導入しない理由の上位は「必要がない」46.0%と「既存システムの改修コスト」29.6%
使わない企業の理由も見ておきましょう。総務省「令和6年通信利用動向調査」では、クラウドサービスを利用しない理由として次の項目が挙げられています。母数はクラウドサービスを利用していない企業(n=171)に限られます。
| クラウドサービスを利用しない理由 | 利用していない企業のうち回答した割合(2024年) |
|---|---|
| 必要がない | 46.0% |
| 既存システムの改修コストが大きい | 29.6% |
| 情報漏えいなどセキュリティに不安がある | 24.9% |
| ネットワークの安定性に対する不安がある | 14.7% |
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」(2024年、クラウドサービスを利用していない企業 n=171、複数回答)
最も多いのは「必要がない」でした。次いで既存システムの改修コストが挙がっています。技術的な不安よりも、必要性の判断と移行コストが壁になっている構図です。
自社で検討する際も、この順番で確認すると話が早く進みます。まず対象業務にクラウド化の必要があるか、次に移行コストがどれくらいかを見てください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙1/別紙2(別紙の図表は無回答を除いて集計)/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」/総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」/e-Stat「通信利用動向調査」統計表
効率化の対象になるのは、導入して終わる作業ではなく運用が続く作業
どの業務から効率化するかで迷ったら、判断の基準はひとつです。手間が一度で終わる作業ではなく、毎週・毎月ずっと発生する作業から手をつけてください。
その落差はセキュリティ対策のデータにはっきり出ています。総務省「令和7年通信利用動向調査」によると、2025年時点で何らかのセキュリティ対策を実施している企業は98.3%です。ところが、ウイルス対策対応マニュアルを策定している企業は19.7%にとどまります。
導入すれば終わる対策はほぼ全社に行き渡り、続ける手間がかかる対策は残されています。情シスの負荷が溜まるのは、後者です。
自動化・外部化を検討すべき業務の見分け方
- 毎週・毎月など、決まった頻度で繰り返し発生する
- 手順が決まっていて、判断の余地が小さい
- やらなくても当日は困らないが、放置すると後で問題になる
- 担当者が休むと止まる、または誰も代われない
何らかのセキュリティ対策は98.3%だが、対応マニュアルの策定は19.7%にとどまる
事実から確認します。以下はいずれも総務省「令和7年通信利用動向調査」の2025年時点の数値で、同じ調査から取っています。
何らかの対策を実施している企業は98.3%、端末へのウイルス対策プログラムの導入は82.0%です。ここからOSへのセキュリティパッチの導入が43.5%、セキュリティ監査の実施が26.7%、ウイルス対策対応マニュアルの策定が19.7%と下がっていきます。

出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2図表5-5(2025年、インターネットを利用している常用雇用者100人以上の企業 n=2,480。別紙の図表は無回答を除いて集計)
ウイルス対策プログラムの導入82.0%とOSへのパッチ導入43.5%の間だけで、38.5ポイントの差があります。ここから読み取れるのは、実施率が二層に割れている点です。買って入れれば完了する対策は8割を超え、継続的な手間がかかる対策は2〜4割台にとどまります。
ただし数値の読み方には幅があります。「何らかの対策」は選択肢を1つでも選べば該当するため、そもそも高く出る指標です。またSaaS側で自動的に行われるパッチ適用やログ監査が、自社の対策として認識されずに低く出ている可能性もあります。
システム導入を見送った企業の43.7%が「使いこなす人材がいない」を挙げている
ツールを入れれば効率化する、という前提は現場では崩れます。総務省「令和6年通信利用動向調査」では、デジタルデータの収集・解析のためのシステムを導入していない企業に、導入しない理由を聞いています。「使いこなす人材がいないから」を挙げた企業は、2024年時点で43.7%でした。複数回答のため、理由ごとの構成比ではありません。
この割合は年によってほとんど動いていません。いずれも当該システムを導入していない企業が母数です。
- 2022年: 43.9%
- 2023年: 42.1%
- 2024年: 43.7%
3回分の調査でほぼ横ばいということは、一時的な事情ではなく恒常的な導入の壁だということです。業種別では、2024年時点の建設業が53.2%と高い水準です。業種ごとの人材事情の違いも表れています。
ツールを選ぶ前に、その運用を誰がどう回すかを決めてください。 ここを決めずに導入すると、効率化どころか管理対象が1つ増えるだけになります。
セキュリティ被害を経験した企業は2025年時点で48.1%ある
効率化は、手を抜くこととは違います。総務省の調査によると、情報通信ネットワークの利用の際に何らかのセキュリティ被害を受けた企業は、2025年時点で48.1%でした。この割合はインターネットを利用している企業を母数としたもので、年によって上下しています。
対策の実施率とあわせて見ると、状況が分かります。このうち被害の数値は、いずれもインターネットを利用している企業が母数です。
- 何らかのセキュリティ対策を実施している企業: 98.3%(2025年)
- 何らかの被害を受けた企業: 48.1%(2025年)
- 被害を受けた企業(従業者100〜299人): 44.2%(2024年)
- 被害を受けた企業(従業者2,000人以上): 69.5%(2024年)
対策をしていても、被害の経験自体はおよそ半数の企業にあります。規模が大きいほど高いのは、狙われやすさに加えて、検知の体制が整っていて被害が見えやすい面もありそうです。
自動化や外部化をしても、管理する責任は社内に残ります。 何を任せて、何を自分で確認するかは、最初に決めておいてください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2(別紙の図表は無回答を除いて集計)/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
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情シスの効率化は棚卸し・標準化・クラウド化・外部化の順に進める
ここまでのデータを、実際の進め方に組み替えます。効率化の方法は並列に選ぶものではなく、順序があります。 棚卸し、標準化、クラウド化、外部化の順です。
先にツールを入れたり外注したりすると、何を任せたのか分からないまま管理対象だけが増えます。逆に棚卸しと標準化を先に済ませておくと、クラウド化も外部化も判断が速くなります。
| ステップ | 具体的な作業 | 根拠になるデータ |
|---|---|---|
| 1. 棚卸し | 業務を一覧化し、1週間分の対応時間を記録する | DX推進に必要なスキルを把握できていない企業は52.8%(2025年度・IPA、DXに取組んでいると回答した企業が対象) |
| 2. 標準化 | 手順書とFAQを作り、他の人でも回せる形にする | ウイルス対策対応マニュアルを策定している企業は19.7%(2025年・総務省) |
| 3. クラウド化 | 自社で持たなくてよい基盤・運用をサービスに移す | クラウド利用企業の89.4%が効果を実感(2025年・総務省) |
| 4. 外部化 | 手順が固まった運用作業を社外に委託する | 従業員100人以下でDXに取組んでいる企業は41.6%(2025年度・IPA) |
出典: IPA「DX動向2026」/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙1/同 別紙2(別紙の図表は無回答を除いて集計)
ポイント
- 1と2は予算も承認も要らず、社内で完結します
- 3と4は費用と社内調整が必要なため、1と2を終えてから検討します
- 経営層の理解や社員のITリテラシー向上は、どのステップでも前提になります
- 棚卸しで作った業務一覧は、増員や外注を提案するときの材料にもなります
棚卸しと標準化は社内で完結し、ひとり情シスでも今日から着手できる
最初の2つは、今日から始められます。必要なのは業務の一覧と、手順を書き出す時間だけです。
前に見たとおり、DXに取組んでいると回答した企業のうち、DX推進に必要なスキルを把握できていない企業は2025年度時点で52.8%、人材像を設定して社内に周知している企業は16.2%でした。DX人材の評価基準が「ない」企業も76.1%あります。
手順の明文化も同様です。ウイルス対策対応マニュアルを策定している企業は19.7%で、多くの現場では手順が個人の頭の中に残ったままです。
まずは自分の業務を書き出し、頻度と所要時間を記録してください。そのうえで、自分しか知らない手順から順に文書化します。ここが片づくと、次のクラウド化・外部化で「何を渡すか」を説明できるようになります。
クラウド化と外部化は、運用が続く作業から順に検討する
3と4のステップでは、対象の選び方が結果を左右します。一度きりの構築ではなく、毎週・毎月続く運用から外に出してください。
判断材料は前のセクションで見たとおりです。OSへのセキュリティパッチの導入は2025年時点で43.5%、セキュリティ監査の実施は26.7%にとどまり、続ける手間がかかる作業ほど社内に残っています。こうした作業はサービス側の機能や委託で肩代わりしやすい領域です。
クラウド化の効果は、利用企業の89.4%が実感しています。一方で「非常に効果があった」は36.0%で、移し方によって手応えが分かれます。移す前に運用の手順を決めておくことが、この差につながります。
外部化を検討する場合は、情シスのアウトソーシングで任せる範囲と、社内に残す確認の役割を先に分けてください。定型的な作業であれば、RPAや生成AIを使った自動化も選択肢になります。
出典: IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)/総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙1/同 別紙2(別紙の図表は無回答を除いて集計)
効率化の効果を測る一次データは、今回参照した公的統計には存在しない
最後に、この記事で書けなかったことをはっきりさせておきます。情シス1人あたりの業務量や、効率化によって減った時間を示す一次データは、今回参照した総務省・経済産業省・IPAの調査には含まれていません。
人材不足を示す公的データは、性質の違う2つの層に分かれています。
- マクロの層: 国全体のIT人材の需給ギャップを推計する。2025年時点で36万人、2030年時点で44.9万人(経済産業省、2019年公表の中位シナリオの推計)
- ミクロの層: 当該システムを導入していない企業に導入しない理由を聞く。「使いこなす人材がいないから」は2022年43.9%、2023年42.1%、2024年43.7%(総務省)
この2つの中間にある「1社の情報システム部門が何人で構成され、どの業務に何時間使っているか」は、どちらの層にも入っていません。ひとり情シスという働き方が広く語られる一方で、その負荷と効率化の効果を公的なデータで検証できない状態が続いています。
だからこの記事では、他社の平均工数や外注の費用相場を数値で示していません。出所のはっきりしない数値を根拠にすると、社内の説明もそこで止まってしまうからです。
代わりにおすすめしたいのが、自社で測ることです。1週間分の作業ログを取るだけで、公的統計より役に立つ自社のデータが手に入ります。
注意
ここで述べているのは「今回参照した総務省・経済産業省・IPAの各調査では扱われていない」という範囲の話です。未確認の政府統計や学術調査に該当データが存在する可能性は残ります。また経済産業省の需給ギャップは2019年公表の推計値で、直近の実績を示すものではありません。IPAの人材不足の数値は、DXに取組んでいると回答した企業を母数としています。
出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/同調査報告書/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
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まとめ
情シスの効率化は、棚卸し → 標準化 → クラウド化 → 外部化の順に進めるのが現実的です。この記事で確認した根拠を整理します。
- 人手不足の論点は「量」から「質」へ移っている。DXに取組んでいる企業のうち、人材の質が不足していると答えた企業は2025年度時点で88.8%(IPA)
- 規模で開いているのはツールではなく体制。従業員100人以下のDX取組率は41.6%だが、資本金1,000万円未満(n=100)のクラウド利用率は75.4%(2025年)
- 負荷が溜まるのは運用が続く作業。ウイルス対策対応マニュアルの策定は19.7%にとどまる(2025年・総務省)
- クラウド化の効果は利用企業の89.4%が実感している(2025年・総務省)
明日からやることは1つに絞ってください。1週間分の作業ログを取ることです。 何にどれだけ時間を使っているかが分かれば、標準化する対象も、外に出す対象も自然に決まります。
その一覧は、増員や外注を提案するときの材料にもなります。まずはメモ帳でも表計算ソフトでも構いません。今週分から記録を始めてみてください。
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この記事で見たとおり、いま不足しているのは頭数よりも、任せられる水準に届く人です。標準化や外部化を進めるにも、担当者側にIT運用の基礎知識が必要になります。とはいえ、日々の対応に追われながらまとまった研修時間を取るのは難しいですよね。
情シスカレッジは、新人・ひとり情シスのためのマイクロラーニングLMSです。短い動画で学び、小テストで理解を確認する形式なので、業務の合間に少しずつ進められます。
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導入は5名から可能で、請求書払いに対応しています。初期設定は約10分で完了します。
※出典

