【経済産業省・IPAデータ】情シスと社内SEの違いは公的には定義されていない|2030年に先端IT人材54.5万人不足・従来型は9.7万人の供給超過という推計から整理

求人票を眺めていて、こんなふうに手が止まったことはありませんか。
- 「情シス募集」と「社内SE募集」の仕事内容が、読んでもほとんど同じに見える
- 社内でも両方の呼び方が混ざっていて、どちらが正式なのか分からない
- 自分(自社)はどちらに当てはまるのか、判断する基準がほしい
先に結論をお伝えします。「情シス」と「社内SE」を定義した公的な資料は存在しません。どちらも実務上の通称です。
違いは、法律や統計ではなく各社の役割設計で決まります。この記事では経済産業省・IPA・総務省の一次データから、業務の重心の違いと自社の当てはめ方を整理します。
この記事のポイント
- 「情シス」「社内SE」を定義した公的統計は存在しない。公的な区分は、担当する技術領域とDXへの関与度で切られている
- 担当する技術領域によって需給環境は逆を向いている。2030年時点の推計は、従来型IT人材が9.7万人の供給超過、先端IT人材が54.5万人の不足
- 呼び名より、担当範囲を言語化できているかが効く。必要スキルを把握している企業とできていない企業で、質が「大幅に不足」との回答は23.4ポイント違う
出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表の推計)/IPA「DX動向2026」(2025年度調査)
情シスと社内SEに公的な定義の違いはなく、区別は各社の役割設計で決まる

「情シス」と「社内SE」の違いを定義した公的な資料は、現時点で見つかりません。どちらも現場の通称であり、法令や統計の分類語ではないからです。
公的な調査は、担当する技術領域(経済産業省)とDXへの関与度(IPA)で人材を切っています。どちらも部署名や社内の呼称を単位にしておらず、違いは各社の役割設計に委ねられています。
職種を定めた公的な標準でも同じです。IPAのデジタルスキル標準はDXを推進する人材を類型で整理していますが、そこに「情シス」「社内SE」という区分はありません。
ポイント
- 「情シス」「社内SE」という呼称を測った公的統計は存在しない
- 経済産業省の区分は担当する技術領域、IPAの区分はDXへの関与度で切られている
- IPAのデジタルスキル標準が定めるDX人材の類型にも、この2語は出てこない
- 社内でも要件を言語化できていない企業が2025年度調査で52.8%ある(母集団はDXに取組む企業)
実務では情シスが「部門」、社内SEが「職種」を指す使い分けが多い
実務の場では、情シスは組織としての部門を、社内SEはその中の職種を指す言葉として使い分けられることが多いです。ただしこれは慣習の説明であって、公的な裏づけがある事実ではありません。
実際には、情シス部門を置かずに社内SEという肩書きだけがある会社もあります。運用管理からヘルプデスクまでを含む情シスの業務範囲と、要件定義や開発を含む社内SEの仕事内容は、会社ごとに線の引き方が違います。
共通定義が無いのは社外だけではありません。IPAが2025年度に実施した調査では、DX推進に必要なスキルを把握できていない企業が52.8%にのぼります。母集団は「DXに取組んでいる」と回答した企業です。
通説どおりに部門と職種が整理されているとは限らない、というのが実態です。
経済産業省はIT人材を「先端型」と「従来型」という担当技術領域で区分している
公的な人材区分の1つ目は、経済産業省「IT人材需給に関する調査」の分け方です。AI・IoT・ビッグデータなどの新技術に対応する人材を「先端IT人材」、既存システムの運用・保守など従来のIT需要に対応する人材を「従来型IT人材」と呼びます。
2019年に公表された推計では、2030年時点で従来型IT人材は9.7万人の供給超過、先端IT人材は54.5万人の不足とされています。数値の読み解きは後の見出しでおこないます。
押さえておきたいのは、この区分の単位が「担当する技術領域」であって、部署名でも社内の呼称でもない点です。呼び名から人材区分を導くことはできません。
IPAの調査は「DXを推進する人材」という関与度で企業に不足感を尋ねている
公的な人材区分の2つ目は、IPA「DX動向」調査の切り口です。所属部署でも職種名でもなく、「DXにどう関与しているか」で人材を括り、企業に充足感を尋ねています。
2025年度の調査では、DXを推進する人材の「量」が不足していると回答した企業が85.5%、「質」が不足していると回答した企業が88.8%でした。いずれも「やや不足」と「大幅に不足」の合計です。
母集団はDXに取組んでいると回答した企業であり、全企業を分母にした数値ではありません。
この設問設計が示すのは、「不足しているのは情シスか社内SEか」という問いに公的データでは答えられないということです。
出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」/情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」/情報処理推進機構(IPA)「DX推進スキル標準(DSS-P)」
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実務上の違いは業務の重心・スキル要件・組織上の位置づけの3点に整理できる

公的な定義が無いとはいえ、実務では業務の重心・スキル要件・組織上の位置づけという3つの軸で整理できます。求人票や社内の会話で使い分けられているのは、おおむねこの3軸のどれかです。
3軸はこの先の見出しにそのまま対応しています。業務の重心は需給推計へ、スキル要件は役割定義へ、組織上の位置づけは企業規模の話へつながります。
| 観点 | 「情シス」と呼ばれるときの重心 | 「社内SE」と呼ばれるときの重心 | 関係する公的データ |
|---|---|---|---|
| 業務の重心 | 既存システムの運用・保守、ヘルプデスク、IT資産管理 | 業務要件の整理、システムの企画・開発、ベンダー調整 | 経済産業省の先端/従来型の需給推計 |
| スキル要件 | 社内全体を見渡す幅広い対応力 | 特定領域の設計・開発の深さ | IPAの必要スキルの把握状況 |
| 組織上の位置づけ | 組織としての「部門」 | 部門に所属する「職種」 | IPAのDX取組率の企業規模別データ |
この表の整理は実務上の一般的な傾向であり、公的統計に基づく分類ではありません。「関係する公的データ」欄は各行の話題に関連する調査を示したもので、その役割がその区分に該当するという意味ではありません。
注意
上の表は「そう説明されることが多い」という傾向です。自社の実態と食い違っていても間違いではありません。表に当てはめるのではなく、実際の担当業務を書き出して確認してください。
業務の重心は「動いているものを止めない」側か「新しく作る」側かで分かれる
3軸のうち、いちばん実感しやすいのが業務の重心です。情シスと呼ばれる役割は運用・保守やヘルプデスクに、社内SEと呼ばれる役割は要件定義・開発・ベンダー調整に重心が置かれやすい傾向があります。
この違いを考える材料として、経済産業省の需給推計があります。2019年に公表された推計では、2030年時点の過不足が従来型IT人材と先端IT人材で逆を向いています。数値と前提条件は次の章で扱います。
ただし同省の区分は、担当する技術領域(AI・IoT等の新技術か、従来からのIT需要か)による分け方です。運用・保守か企画・開発かという業務の分け方とは一致しません。
なお、運用・保守と新規開発の時間配分を定量化した公的統計はありません。「運用が何割」といった数値は、この記事では扱いません。
スキル要件は各社の定義次第で、共通の基準は存在しない
スキル要件にも共通の基準はありません。「情シスはジェネラリスト、社内SEはスペシャリスト」という整理はよく見かけますが、これも実務上の傾向であって公的な裏づけはありません。
共通基準どころか、社内の基準すら整っていない企業が多数派です。IPAの2025年度調査では、DX推進に必要なスキルを把握できていない企業が52.8%、人材像を設定して社内に周知している企業が16.2%でした。母集団はDXに取組む企業です。
この2つが示すのは、業界共通の物差しを探すより先に、自社の物差しを作る段階にある企業が多いということです。
組織上は情シス部門の中に社内SEが置かれる形が想定されるが、規模によって変わる
組織上の位置づけは、「情シス部門という箱の中に社内SEという職種がある」という包含関係で説明されがちです。ただしこれが成り立つのは、役割を分けて人を置ける規模の企業に限られます。
規模による差は公的データにも表れています。IPAの2025年度調査では、何らかの形でDXに取組んでいる企業の割合は従業員1,001人以上で98.7%、100人以下で41.6%でした。
この差が意味するのは、運用・保守と企画・開発を別の担当者に割り振れる前提が、企業規模で大きく変わるということです。
出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」/情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」
担当する技術領域によって、2030年時点の人材の需給環境は逆方向を向いている

担当する技術領域が違えば、置かれた市場環境も違う方向を向いています。「IT人材が足りない」という総論を内訳で分解すると、この点がはっきりします。
経済産業省が2019年に公表した推計では、IT人材全体の需給ギャップは2018年時点の22万人から2030年時点の44.9万人へ広がります。ところが2030年時点を人材の種類で分けると、過不足の符号は逆になります。
ポイント
このセクションで扱う数値は、2018年度に実施され2019年に公表された推計値です。実績値ではなく、生成AIの普及による変化も織り込まれていません。
2030年時点で従来型IT人材は9.7万人の供給超過、先端IT人材は54.5万人の不足と推計されている

同じ2030年を見ているのに、人材の種類によって過不足の符号が逆になります。経済産業省が2019年に公表した推計では、2030年時点で従来型IT人材は9.7万人の供給超過、先端IT人材は54.5万人の不足です。供給が余る領域と足りない領域が同時に存在する、という姿です。
この数値には前提条件が付きます。IT需要の伸びは中位(年2〜5%程度)、生産性上昇率は0.7%、Reスキル率は1.0%固定というシナリオでの試算です。
Reスキル率1.0%固定は、報告書が置いた3つの前提のうち、従来型から先端への転換がもっとも緩やかなケースにあたります。同じシナリオでもReスキル率の前提を一段上げると、従来型の供給超過は解消する計算です。
なお報告書は、余った従来型IT人材で先端IT人材の不足を埋めることは難しいとし、実質的な需給ギャップは先端IT人材のギャップになると述べています。この推計を「従来型の仕事は不要になる」と読むのも、「差し引きで足りている」と読むのも正確ではありません。
読み取れるのは、従来からのIT需要を担い続けるか、新技術の領域に軸足を移すかで、市場の環境が違う方向を向いている点です。
IT人材全体の需給ギャップは2018年の22万人から2030年の44.9万人へ広がる推計

内訳と対比させるために、総量の推移も見ておきましょう。経済産業省が2019年に公表した標準ケースの推計は次のとおりです。
| 対象年 | IT人材の需給ギャップ(標準ケース) |
|---|---|
| 2018年 | 22万人 |
| 2020年 | 30万人 |
| 2025年 | 36万人 |
| 2030年 | 44.9万人 |
出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」(2018年・2020年・2025年の値)/同調査報告書(2030年の値)。いずれも2018年度実施・2019年公表の推計値で、標準ケースはIT需要の伸びが中位・生産性上昇率0.7%を置いた試算。概要資料は万人単位で表記されています。
総量は12年間で約2倍に開く見通しです。ただし直近の実績値ではなく、標準ケース以外のシナリオを置けば結果も変わります。その幅は次の見出しで扱います。
この区分を「情シス=従来型」「社内SE=先端」と読み替えることはできない
数値が印象的なので誤読されやすいのですが、この区分を社内の呼称に置き換えることはできません。理由は3つあります。
1つ目は、先端/従来型が担当する技術領域による分類であり、所属部署や呼称による分類ではないこと。2つ目は、実在の担当者が両方の業務を兼務しており、個人単位で割り当てられる分類ではないことです。
3つ目は、前提条件を動かせば結果が変わることです。生産性上昇率0.7%という同じ前提でも、IT需要が低位なら16.4万人、高位なら78.7万人と、推計の幅は4.8倍あります。
注意
「情シス=従来型IT人材」「社内SE=先端IT人材」という一対一の対応づけには、公的な裏づけがありません。この記事でも、需給推計は業務の重心の違いを考える参考材料として扱っています。
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DX人材の不足は「量」から「質」へ移り、2025年度は質88.8%が量85.5%を上回った

人材不足の中身も動いています。IPAの2025年度調査では、DXを推進する人材の「質」が不足していると回答した企業が88.8%、「量」が不足していると回答した企業が85.5%でした。質の不足感が量の不足感を上回っています。

| 調査年度 | 量:やや+大幅に不足 | 量:大幅に不足 | 質:やや+大幅に不足 | 質:大幅に不足 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年度 | ― | 62.1% | ― | ― |
| 2024年度 | ― | 58.5% | 86.1% | 58.9% |
| 2025年度 | 85.5% | 50.1% | 88.8% | 52.9% |
出典: 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」。母集団はDXに取組む企業。「―」は公表値が確認できない項目。
この推移から読み取れるのは、課題が「頭数が足りない」から「求める水準に届く人がいない」へ移っている段階だということです。呼び名を決めることより、その役割に何を期待するかを決めることが問われます。
ポイント
「量」と「質」は別々の設問です。両者を引き算して深刻さの差を測ることはできません。それぞれの推移がどちら向きに動いているかを見てください。
「量」の大幅な不足は2023年度62.1%から2025年度50.1%へ12.0ポイント下がった
まず「量」の不足感は和らぐ方向に動いています。「量」が大幅に不足していると回答した企業は、2023年度62.1%、2024年度58.5%、2025年度50.1%と3年続けて下がりました。3年間で12.0ポイントの低下です。
ただし解消したわけではありません。「やや不足」を含めた不足感は2025年度で85.5%と高い水準のままです。母集団はいずれもDXに取組む企業です。
この動きから読み取れるのは、採用や配置転換で頭数を揃える取り組みが一定程度は進んだ可能性です。
「質」の不足感は2024年度86.1%から2025年度88.8%へ広がっている
一方で「質」は逆方向に動いています。「質」が不足している(やや不足+大幅に不足)と回答した企業は、2024年度86.1%から2025年度88.8%へ広がりました。
内訳を見ると、「大幅に不足」は2024年度58.9%から2025年度52.9%へ下がっています。深刻な層は減りつつ、何らかの不足を感じる層の裾野は広がった形です。
この非対称な動きが示すのは、頭数より、どの役割に何を期待するかを決めることが課題になっている段階だということです。「どちらの職種が足りないか」という問いの立て方が合わなくなってきています。
情シスと社内SEを別々に置ける企業は限られ、100人以下では機能が未分化になりやすい

情シスと社内SEの呼び分けは、組織の規模と切り離して語れません。運用・保守を担う人と企画・開発を担う人を別々に置けるかは、人を割ける規模かどうかで決まるからです。
「大企業は分業、中小は兼務」という説明は公的データで裏づけを取ってみましょう。規模の差はDXへの取組率に、業種の差はシステムを導入しない理由に表れています。
ポイント
このセクションで使うIPAと総務省の調査は、調査主体も設問も母集団も異なります。2つの数値を同じ指標として比べず、それぞれが規模・業種による差を示す材料として読んでください。
DXに取組む企業は1,001人以上で98.7%、100人以下で41.6%と57.1ポイント開く

企業規模による差は、はっきりした形で表れています。IPAの2025年度調査による、何らかの形でDXに取組んでいる企業の割合は次のとおりです。
| 従業員規模 | DXに取組んでいる企業の割合 |
|---|---|
| 100人以下 | 41.6% |
| 全体 | 75.7% |
| 1,001人以上 | 98.7% |
出典: 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」(2025年度調査。母数は同調査に回答した企業)
1,001人以上と100人以下の差は57.1ポイントです。この差が示すのは、運用・保守と企画・開発を別の担当者に割り振れる前提が整うのは一定規模以上の企業だということです。小規模な会社では、一人が両方を抱える体制になりやすくなります。
ただし、DXに取組んでいないことは企画・開発の機能が無いことと同じではありません。取組の有無は自己申告です。
システムを導入していない企業の43.7%が人材不足を理由に挙げ、建設業では53.2%にのぼる
業種による差も見ておきましょう。総務省「通信利用動向調査」は、デジタルデータの収集・解析システムを導入していない企業に、その理由を尋ねています。
次の割合は、常用雇用者100人以上の企業のうち、このシステムを導入していない企業を分母にした数値です。全企業を分母にした割合ではありません。
| 調査年 | 対象 | 「使いこなす人材がいないから」の回答割合 |
|---|---|---|
| 2022年 | 全体 | 43.9% |
| 2023年 | 全体 | 42.1% |
| 2024年 | 全体 | 43.7% |
| 2024年 | 建設業 | 53.2% |
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査」(常用雇用者100人以上の企業のうち、当該システムを導入していない企業が対象。2024年の全体はn=1,340)
3年推移はほぼ横ばいで、一時的な現象ではありません。2024年時点では建設業が53.2%と、全体の43.7%より高くなっています。
ここから読み取れるのは、規模だけでなく業種によっても、IT人材を確保できるかどうかに差があるということです。
呼称ごとの人数や設置率を示す公的統計は存在せず、数値で語れない領域が残る
ここまでのデータでも、答えられないことがあります。情報システム部門の設置率、専任担当者がいる企業の割合、いわゆるひとり情シスの比率です。これらの一次統計は、今回の調査範囲では見つかりませんでした。
民間調査による比率はネット上に流通していますが、一次データではないため採用していません。
代わりに使えるのは、2025年度調査で100人以下の企業のDX取組率が41.6%、必要なスキルを把握できていない企業が52.8%という数字です。いずれも情シスの体制を測ったものではありません。
言えるのは、自社の状況は他社比較ではなく、自社の業務棚卸しで確認するほうが確実だということです。
出典: 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」/総務省「令和6年通信利用動向調査」
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呼び名の違いより、担当範囲を言語化できているかが実務では効く

ここまでを踏まえると、「自分(自社)はどちらか」という問いへの答えが見えてきます。名称を当てはめるのではなく、職務要件が文章になっているかを見てください。
根拠になる数値もあります。IPAの2025年度調査では、DX人材の「質」が大幅に不足しているという回答に23.4ポイントの差がありました。差が付いたのは、必要スキルを把握しているかどうかです。
ここから読み取れるのは、呼称よりも、その役割に何を期待するかを言語化できているかどうかが、不足感の大小と併存しているということです。
自社チェックの3項目
- 担当業務が運用・保守側と企画・開発側のどちらに寄っているかを書き出せているか
- その役割に期待するスキルが、口頭ではなく文章になっているか
- その役割を評価する基準が定義されているか
必要なスキルを把握している企業とできていない企業で、質の不足感は23.4ポイント違う

この記事でいちばん実務に効く数値がこれです。IPAの2025年度調査による、DX人材の「質」が大幅に不足していると答えた企業の割合は次のとおりです。
- 必要スキルを把握している企業: 40.6%
- 必要スキルを把握できていない企業: 64.0%
その差は23.4ポイントです。そして、把握できていない企業は全体の52.8%を占めます。母集団はいずれもDXに取組む企業です。
注意点として、これは因果関係ではありません。人材が足りている企業ほどスキルの棚卸しに手が回る、という逆向きの説明でも同じ差は出ます。
また、この設問はDX推進人材について尋ねたものです。情シス業務全般の役割定義を測ったものではありませんが、自社を点検する手がかりにはなります。
人材像を社内に周知している企業は16.2%にとどまり、評価基準が無い企業は76.1%にのぼる
役割定義の整備状況は、むしろ後退している面があります。IPAの調査を2024年度と2025年度で並べると、次のようになります。
- 人材像を設定し社内に周知している企業: 2024年度20.4% → 2025年度16.2%
- 評価基準が「ない」と回答した企業: 2024年度75.7% → 2025年度76.1%
- 育成予算を増やした企業: 2024年度23.8% → 2025年度25.6%
人材像の周知は4.2ポイント下がり、評価基準が無い企業はほぼ横ばいです。一方で育成予算を増やした企業は微増しています。母集団はDXに取組む企業です。
この組み合わせが示すのは、役割の定義より先に投資が動いている構図です。何を期待するかが決まらないまま研修や採用にお金を使うと、成果の判定もできません。
自社がどちらかを判断するには、名称ではなく求人票と職務要件の記述を見る
判断の手順はシンプルです。名称ではなく、書かれている中身を順番に確認してください。
- 担当する業務を書き出し、運用・保守側と企画・開発側のどちらに寄っているかを見る
- 期待するスキルが文章になっているかを確認する(求人票なら「必須スキル」「歓迎スキル」の欄)
- その役割の評価基準が定義されているかを確認する
この3つが揃っていれば、呼び名が情シスでも社内SEでも実務上は困りません。揃っていなければ、名称を決めても認識のずれは残ります。
整っていなくても落ち込む必要はありませんよ。必要なスキルを把握できていない企業は2025年度調査で52.8%、人材像を周知している企業は16.2%です。まずは担当業務を1週間分書き出すところから始めてみてください。
情シスと社内SEの違いに関するよくある質問

最後に、検索されることの多い疑問をまとめて扱います。この領域は、公的データで答えられるものと答えられないものがはっきり分かれます。
年収のように一次統計が無い論点では、金額を書かずに「測られていない」と示します。目指す方向の判断や兼務の扱いについては、ここまで見てきた調査の数値がそのまま材料になります。
いずれの答えも出発点は同じです。名称ではなく、担当する業務の中身から考えてください。
年収の違いは公的統計では測られておらず、比較できるデータが無い
「情シスと社内SEでは年収が違うのか」という質問をよく見かけます。結論から言うと、この記事では金額を提示できません。公的統計が測っているのは全国の需給や企業の不足感であり、呼称別の個人の処遇ではないためです。
参考になるのは、需給が逼迫している技術領域はどこかという見方です。経済産業省が2019年に公表した推計では、2030年時点のIT人材全体の需給ギャップは44.9万人、先端IT人材に限れば54.5万人の不足です。
全体の値は従来型の供給超過と差し引きした後の数字であり、先端側の不足のほうが大きくなります。市場環境の話として読んでください。
未経験からどちらを目指すかは、求人票に書かれた業務の重心で判断する
「未経験ならどちらを目指すべきか」という質問もあります。判断材料にすべきは名称ではなく、求人票に書かれた業務の記述です。運用・保守が中心なのか、要件定義や開発が中心なのかを読み取ってください。
あわせて、入社後の育成に期待しすぎない準備もしておきましょう。IPAの2025年度調査では、DX人材の育成予算を増やした企業は25.6%、必要なスキルを把握できていない企業は52.8%です。母集団はDXに取組む企業です。
兼務している場合は、どちらか一方に当てはめる必要はない
「運用も開発も両方やっているが、どちらなのか」という質問への答えは明快です。どちらか一方に当てはめる必要はありません。この区分は公的なものではなく、各社の役割設計の問題だからです。
規模を考えれば、兼務はむしろ自然な状態です。IPAの2025年度調査では、DXに取組んでいる企業の割合は従業員100人以下で41.6%にとどまります。
役割を分けて人を置ける企業のほうが限られています。名乗り方に迷ったら、担当業務を並べて説明するのが実務的です。
出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」/情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」
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まとめ
情シスと社内SEの違いを、公的データから整理してきました。押さえておきたいのは次の3点です。
- 公的な定義は無く、区別は各社の役割設計で決まる。経済産業省は担当技術領域で、IPAはDXへの関与度で人材を切っています。
- 業務の重心が違えば、市場の需給環境も逆を向く。2019年公表の推計では、2030年時点で従来型IT人材は9.7万人の供給超過、先端IT人材は54.5万人の不足です。ただし「情シス=従来型」という置き換えはできません。
- 呼び名より、担当範囲を言語化できているかが効く。IPAの2025年度調査では、質が大幅に不足していると答えた企業は、必要スキルを把握している側で40.6%、できていない側で64.0%です。把握できていない企業は52.8%を占めます。
迷ったら、名称ではなく担当業務とスキル要件を書き出してみてください。
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