【総務省2025年調査】稟議に近い「購買」のクラウド化は16.7%止まり|クラウド型ワークフローの実態と選び方

社内の申請や稟議だけが紙のまま残っている、という話はよく聞きます。ファイル共有もチャットもクラウドに載ったのに、承認印だけが出社を前提にしている職場は珍しくありません。
- 稟議書が紙のままで、承認者の出社待ちが発生している
- クラウド型ワークフローを提案したいが、他社がどこまでやっているか分からない
- ネットで見かける「導入率○%」を、どこまで信じてよいか判断できない
結論から言うと、いまの論点は「クラウドを使うかどうか」ではありません。総務省の通信利用動向調査によると、2025年調査時点のクラウド利用企業は83.5%です(出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1)。すでに大半の企業がクラウドを使い、どの業務から載せ替えるかを選ぶ段階に入っています。
この記事では、公表されている一次データだけを使って整理します。承認業務のクラウド化がどこまで進んだのか、規模や業種でどう違うのか、選定時に何を確認するのかが分かります。製品ごとの料金比較は扱いませんが、社内資料にそのまま貼れる数値と出典を用意しました。
この記事のポイント
- クラウドサービス全体の利用率は、2025年調査時点で83.5%です(総務省 通信利用動向調査)
- 稟議・発注承認に近い「購買」のクラウド利用は16.7%で、社内情報共有・ポータルの61.4%と大きく開いています(ともに2025年調査)
- 公的統計に「ワークフロー」「電子決裁」という区分は無く、導入率は「給与、財務会計、人事」56.3%などの代理指標から見るしかありません
クラウド型ワークフローは申請・承認・決裁をブラウザ上で完結させる仕組み

クラウド型ワークフローとは、申請から承認、決裁までの流れを、ベンダーが提供するクラウド環境の上で回す仕組みです。自社でサーバを構築せず、ブラウザやスマートフォンから申請書を出し、承認者が画面上で処理します。
この形態が広がった背景には、クラウドそのものの定着があります。2025年調査時点で、クラウドサービスを利用している企業の割合は83.5%です。 つまり多くの企業にとって、検討すべきなのは導入の是非ではなく、どの業務から載せ替えるかという順番の問題になっています。
グループウェアのワークフロー機能のように、既存のクラウドサービスの一部として承認機能を持つ製品もあります。まずは自社がすでに持っている環境を確認してから、単独の製品を検討しても遅くありません。
クラウドサービス全体の利用率は2025年調査時点で83.5%まで上がった
クラウドの利用は、この8年で一貫して伸びてきました。2017年調査の56.9%から2025年調査の83.5%まで、26.6ポイント上がっています(本記事による計算値)。
途中で伸びが止まった年はありません。直近3年も77.7%、80.6%、83.5%と、上昇が続いています。

| 調査年 | クラウドサービスを利用している企業の割合 |
|---|---|
| 2017年 | 56.9% |
| 2018年 | 58.7% |
| 2021年 | 70.4% |
| 2022年 | 72.2% |
| 2023年 | 77.7% |
| 2024年 | 80.6% |
| 2025年 | 83.5% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/同 別紙2/平成29年・平成30年・令和3年・令和4年・令和5年の各「通信利用動向調査の結果」より作成。2019年・2020年調査分は本記事で公表値を確認できなかったため除いています。
自社がまだ未導入であれば、同じ規模の企業の中では少数派の側にいます。社内を説得する材料としては、この推移がそのまま使えます。
オンプレミス型との違いは「場所と端末を選ばない」点にあり、利用理由でも最多
オンプレミス型との最大の違いは、承認する人が社内のPCの前にいなくてよいことです。クラウドを利用する理由の1位は「場所、機器を選ばずに利用できるから」で、2025年調査では利用企業の50.7%が挙げています。
この順位は前年から変わっていません。2024年調査でも同じ理由が50.2%で、ほぼ同じ水準です。いずれもクラウドサービスを利用している企業を分母とした値です。
一方で、テレワークを導入している企業の割合は2025年調査で50.1%あります。働く場所を広げた企業が半数ある中で、承認だけが出社を求めている状態は、業務が止まる原因になります。
サーバの構築や保守が不要になる点も違いとして挙げられますが、その効果を示す公的な数値は今回の参照範囲にありません。ここでは一般的な特徴として押さえるにとどめます。
この83.5%は常用雇用者100人以上の企業を対象にした数値
数値を自社に当てはめる前に、母集団を確認してください。総務省の通信利用動向調査(企業編)は常用雇用者100人以上の企業が対象で、2025年調査の回答企業は2,486社です。
規模の小さい企業の姿は別系統の調査から見えます。IPAの調査では、2025年調査時点でDXに取り組む企業は全体75.7%、従業員1,001人以上98.7%、従業員100人以下41.6%でした。
ここから読み取れるのは、従業員100人以下の層は「遅れている」のではなく、そもそも83.5%という数字の外側にいるという点です。41.6%を小規模企業のクラウド利用率として読み替えることはできません。
注意
本記事で扱う総務省の数値は、すべて常用雇用者100人以上の企業を対象とした調査結果です。また、無回答を除いて集計した公表値を使っているため、無回答を含めて集計している報告書の数値とはわずかに異なります。社内資料に引用するときは、必ず母集団を添えてください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/同 別紙2/IPA「DX動向2026」
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公的統計に「ワークフロー」「電子決裁」という区分は無く、導入率は代理指標でしか見られない

他媒体で「ワークフローシステムの導入率は○%」という数値を見かけたら、まず母集団を確認してください。今回参照した一次統計の範囲では、「ワークフロー」「稟議」「決裁」に当たる調査区分は見当たりませんでした。
総務省の通信利用動向調査には「利用しているクラウドサービスの内容」という設問があります。ただし選択肢は「その他」を除いて17区分で構成され、承認業務を直接指すものはありません。そのため本記事では、稟議や申請承認に近い区分を代理指標として扱います。
具体的には、経費精算や稟議に近い「給与、財務会計、人事」56.3%と、発注承認に近い「購買」16.7%の2区分です(ともに2025年調査)。比較対象として、社内情報共有・ポータルの61.4%も併せて見ていきます。
稟議・申請承認に近いのは「給与、財務会計、人事」と「購買」の2区分にとどまる
代理指標として使える区分は、多く見積もっても2つです。2025年調査では「給与、財務会計、人事」がクラウド利用企業の56.3%、「購買」が16.7%でした。
ただし、この2つはワークフローシステムの導入率そのものではありません。稟議や申請承認の一部がこれらの区分に含まれていると解釈できるだけで、承認機能を使っているかどうかまでは分かりません。
設問は複数回答で、分母はクラウドサービスを利用している企業です。同じ設問の「社内情報共有・ポータル」61.4%と比べると、承認を伴う業務が数値の上で後ろに位置していることは読み取れます。
紙と押印の残存を示す公的数値は「文書の電子化が進んでいないから」12.2%程度しかない
承認プロセスの電子化を測る公的な数値は、本記事が参照した一次統計の範囲ではほとんど存在しません。数少ない手がかりが、テレワークを導入しない理由のうち「文書の電子化が進んでいないから」で、2024年調査で12.2%です。
この比率はほぼ動いていません。2022年調査12.9%、2023年調査13.0%、2024年調査12.2%と横ばいです。いずれもテレワークを導入しておらず導入予定もない企業に限った回答で、2024年調査の回答企業は1,012社でした。
同じ設問で「業務の進行が難しいから」を挙げた企業は33.6%あります。ここから読み取れるのは、紙と押印そのものより、承認や回覧の進め方が障壁として語られているという点です。統計上、社内の意思決定プロセスの電子化はほとんど測られていない領域だと言えます。
注意
民間ベンダーの調査には「ワークフローシステム導入率」の数値が存在しますが、母集団が自社の顧客や会員に偏るため、本記事では採用していません。他媒体の数値を社内資料に使う場合は、調査主体・調査年・回答企業数の3点を確認してから引用してください。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」
承認を伴う業務のクラウド化は情報共有系より遅れ、2025年時点で購買は16.7%

「ファイル共有やチャットは入ったのに、稟議だけ紙のまま」という実感は、数値でも裏づけられます。同じ設問の同じ選択肢を2022年調査と2025年調査で比べると、用途によって進み方がはっきり分かれています。
進んでいるのは情報を共有する業務で、遅れているのは承認を伴う業務です。2025年調査では社内情報共有・ポータルが61.4%、給与・財務会計・人事が56.3%、購買が16.7%でした。
この差は、どの業務から手を付けるかを決めるときの材料になります。 以下のとおり、伸び方にも偏りが出ています。
ポイント
- 2022年調査から2025年調査で、給与・財務会計・人事は46.5%から56.3%へ伸びました
- 同じ期間に社内情報共有・ポータルは52.9%から61.4%へ伸びています
- 一方で購買は11.5%から16.7%にとどまり、この3区分の中では伸び幅が最も小さい区分です
- いずれもクラウドサービスを利用している企業を分母とした複数回答の値です
給与・財務会計・人事は56.3%、社内情報共有・ポータルは61.4%まで伸びた
情報共有と定型的な管理業務は、すでに半数を超えています。「給与、財務会計、人事」は2022年調査の46.5%から2025年調査の56.3%へ上がりました。「社内情報共有・ポータル」も同じ期間に52.9%から61.4%へ伸びています。
途中の年も含めると、次のような推移になります。経費精算や人事関連の申請は、この区分に含まれていると考えられます。
| 調査年 | 給与、財務会計、人事 | 社内情報共有・ポータル |
|---|---|---|
| 2022年 | 46.5% | 52.9% |
| 2023年 | 48.3% | — |
| 2024年 | 52.0% | 57.6% |
| 2025年 | 56.3% | 61.4% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-3より作成。2023年の社内情報共有・ポータルは本記事で公表値を確認できなかったため空欄にしています。2022〜2024年は報告書(無回答を含む集計)、2025年は別紙2(無回答を除く集計)の値で、集計基準が違うため同じ年でも公表資料によってわずかに値が異なります。2024年の給与、財務会計、人事には別紙2による52.1%という値もあり、本文では報告書の52.0%を使っています。
半数以上の企業が、給与や会計に関わる業務をすでにクラウド上で扱っています。 申請や承認の一部も、この流れの中にあると考えられます。
購買は2022年11.5%から2025年16.7%で、伸びは5.2ポイントにとどまる
一方、発注承認に近い「購買」は低い水準のままです。2025年調査で購買をクラウドで利用している企業は16.7%で、2022年調査の11.5%から5.2ポイントの上昇にとどまります(本記事による計算値)。
途中の年の動きも緩やかです。2023年調査は11.6%、2024年調査は13.5%と、少しずつ上がってきました。
この設問は複数回答で、分母はクラウドサービスを利用している企業です。クラウドを使っている企業に限っても、購買をクラウドで扱う企業は16.7%という水準にとどまります。
用途間の差は3年で35.0ポイントから39.6ポイントへ広がった
3つの区分の伸び幅を並べると、差が見えてきます。2022年調査から2025年調査の伸びは、給与・財務会計・人事が9.8ポイント、社内情報共有・ポータルが8.5ポイントでした。購買は5.2ポイントで、この3区分の中では最も小さい値です(いずれも本記事による計算値)。ただし、17区分全体で見れば購買より伸びが小さい区分もあります。
その結果、給与・財務会計・人事と購買の開きも広がりました。2022年調査は46.5%対11.5%で35.0ポイント、2025年調査は56.3%対16.7%で39.6ポイントの差です(いずれも本記事による計算値)。

この数値から読み取れるのは、クラウド化が情報共有と定型的な管理業務に偏って進み、申請から承認・発注に至る流れを含む業務が後回しになっている構図です。社内情報共有・ポータルが61.4%まで来ている一方で、購買が16.7%という位置にあることは、この見方を支えています。
ただし、断定はできません。「購買」に電子稟議や申請承認を含めて回答しているとは限りません。2024年の給与、財務会計、人事には52.0%と52.1%の2系統があり、集計基準で値が動きます。伸び幅の差自体も4.6ポイント(本記事による計算値)であり、差の広がりは傾向として捉えるのが妥当です。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-3
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クラウド利用率が伸びた3年間にテレワーク導入率は下がり、両者は連動していない

「クラウドを入れれば働き方が変わる」という説明は、統計を見る限り単純すぎます。2021年調査から2024年調査で、クラウド利用率は70.4%から80.6%へ上がりました。同じ期間にテレワーク導入率は51.8%から47.3%へ下がっています。
2025年調査ではクラウド利用率83.5%、テレワーク導入率50.1%です。ツールが入ったことと、業務が場所に依存しなくなったことは、別々に進んでいます。
この2つの指標は同じ調査の中で公表されているため、並べて比べられます。ただし原因は特定できないため、ここでは事実の対比として扱います。
クラウド利用率が10.2ポイント伸びた3年間に、テレワーク導入率は4.5ポイント下がった
まず数字を確認します。2021年調査から2024年調査で、クラウド利用率は10.2ポイント上昇、テレワーク導入率は4.5ポイント低下しました(いずれも本記事による計算値)。
テレワーク導入率は、2019年調査から2020年調査で急増したあと、5割前後で足踏みしています。推移は次のとおりです。

| 調査年 | テレワークを導入している企業の割合 |
|---|---|
| 2019年 | 20.1% |
| 2020年 | 47.4% |
| 2021年 | 51.8% |
| 2022年 | 51.7% |
| 2023年 | 49.9% |
| 2024年 | 47.3% |
| 2025年 | 50.1% |
出典: 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1より作成。いずれも常用雇用者100人以上の企業が対象です。
この推移から読み取れるのは、クラウドの普及とテレワークの定着が同じ方向に動いていないという点です。ただし、感染症対策として一時的に導入した企業が出社に戻した結果という説明が最も素直で、業務プロセスの問題とは独立に起きた可能性があります。2つの線が逆に動いたという事実の指摘にとどめます。
テレワークを導入しない理由では「業務の進行が難しいから」が33.6%を占める
テレワークを導入しない理由の最多は、業務の性質に関するものです。2024年調査では「テレワークに適した仕事がないから」が77.2%で、これは業種による部分が大きいと考えられます。
そのうえで、業務の進め方に関する回答も一定数あります。上位に挙がった理由は次のとおりです。
- テレワークに適した仕事がないから: 77.2%(2024年調査)
- 業務の進行が難しいから: 33.6%(2024年調査)
- 文書の電子化が進んでいないから: 12.2%(2024年調査)
承認や回覧をどう回すかは、テレワークを検討する段階で必ず出てくる論点です。 申請が止まる場所を洗い出すと、クラウド化の優先順位を決めやすくなります。
注意
この設問の回答者は、テレワークを導入しておらず導入予定もない企業に限られます(2024年調査、回答企業1,012社)。全企業の姿ではないため、「3割の企業が承認に困っている」という読み方はできません。
情報通信業と運輸業・郵便業の差は、クラウド利用率で16.5ポイント、テレワーク導入率で60.3ポイント
業種別に見ると、2つの指標の開き方がまったく違います。2025年調査のクラウド利用率は、情報通信業94.8%に対し運輸業・郵便業78.3%で、差は16.5ポイントです(本記事による計算値)。
同じ2業種のテレワーク導入率は、情報通信業92.8%に対し運輸業・郵便業32.5%で、差は60.3ポイントあります。クラウド利用率の16.5ポイントと比べると約3.7倍の開きです(いずれも本記事による計算値)。
| 産業分類 | クラウド利用率 | テレワーク導入率 |
|---|---|---|
| 情報通信業 | 94.8% | 92.8% |
| サービス業、その他 | 79.3% | 43.3% |
| 運輸業・郵便業 | 78.3% | 32.5% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2より作成(2025年調査、無回答を除く集計)。回答企業数は情報通信業270社、サービス業、その他380社、運輸業・郵便業372社です。

なお、テレワーク導入率は情報通信業が全業種で最も高い一方、クラウド利用率では情報通信業を上回る業種(金融・保険業)があります。上の16.5ポイントは業種間の最大差ではなく、この2業種を比べた差です。
この数値から読み取れるのは、クラウドの導入自体は業種を問わず広がった一方で、働く場所の自由度は業種によって分かれたままだという点です。業種の優劣ではなく、業務の性質の違いとして見てください。 各業種の回答企業数は270社から380社程度で、1〜2ポイントの差は誤差の範囲です。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙1/同 別紙2/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表4-8/総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」
クラウドの利用効果を認める企業は2025年調査で89.4%あり、効果の実感は高止まりしている

社内を説得する材料として使いやすいのが、利用企業の評価です。2025年調査では、クラウドサービスの利用効果について「非常に効果があった」「ある程度効果があった」と答えた企業が89.4%でした。
この水準は以前から変わっていません。2021年調査は88.2%、2022年調査は89.0%で、9割近くが効果を認めています。
ただし、これはクラウドサービス全般についての評価であり、ワークフロー単体の効果を示すものではありません。印刷や郵送のコスト削減、承認状況の可視化といった効果は一般によく挙げられますが、公的な数値の裏づけは今回の参照範囲にありません。
効果ありの回答は2021年88.2%、2022年89.0%、2025年89.4%とほぼ動かない
注目したいのは、利用企業が増えても評価が下がっていない点です。クラウド利用率は2021年調査の70.4%から2025年調査の83.5%まで広がりましたが、効果ありの回答は88.2%から89.4%とほぼ横ばいです。
後から導入した企業が母数に加わっても、評価の水準は保たれています。2022年調査の89.0%も同じ範囲に収まっています。
ここから読み取れるのは、クラウドの効果が一部の先進的な企業に限られたものではないという点です。「うちには早い」という反論に対しては、この推移が返す材料になります。
なお、この設問はクラウドサービスを利用している企業への質問です。導入を決めた側が肯定的に答えやすい選択バイアスがある点は、社内で共有するときに添えてください。
承認の電子化は、社内情報共有・ポータルの61.4%と同じ流れの延長にある
承認のクラウド化は、まったく新しい取り組みではありません。社内情報共有・ポータルの利用は2024年調査の57.6%から2025年調査の61.4%へ伸びており、申請書や稟議書の電子的な保管はすでに進んでいます。
給与・財務会計・人事も2025年調査で56.3%まで来ています。文書を置く場所と、経費や人事の処理は、多くの企業でクラウドに移っています。
この状況から見えてくるのは、情報共有の基盤がある企業ほど、承認の手続きだけが紙に取り残されているという構図です。ポータルに掲示された申請書を印刷して回す運用が残っているなら、着手する余地はまだあります。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-5/同 別紙1/総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」/総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」
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導入をためらう理由の最多は「必要がない」で2025年調査46.5%

社内で反対されたとき、相手の言い分を先に知っておくと話が早く進みます。クラウドサービスを利用しない理由の最多は「必要がない」で、2025年調査では46.5%でした。
次に多いのがコストと安全性に関する理由です。「クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい」は28.7%、「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」は26.6%で、いずれも2025年調査の値です。
これらは反対のための口実ではなく、統計に表れた実際の判断です。 一つずつ材料を用意して答えるほうが、説得は進みます。
「必要がない」46.5%、「既存システムの改修コストが大きい」28.7%、「セキュリティに不安」26.6%
非利用理由の上位3項目を整理すると、次のようになります。いずれもクラウドサービスを利用していない企業への質問です。

| 利用しない理由 | 割合 | 調査年 |
|---|---|---|
| 必要がない | 46.5% | 2025年 |
| クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい | 28.7% | 2025年 |
| 情報漏えいなどセキュリティに不安がある | 26.6% | 2025年 |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6より作成。2025年調査でクラウドサービスを利用していないと回答した企業は150社です。
注意
上の3項目は、2025年調査でクラウドサービスを利用していないと回答した150社の回答です(複数回答)。全企業に占める割合ではないため、「4割以上の企業がクラウドを必要ないと考えている」という読み方はできません。
「必要がない」という判断と、利用企業の89.4%が効果を認める事実は食い違う
ここで2つの数値を並べてみます。クラウドを利用しない理由の最多は「必要がない」46.5%である一方、利用企業で効果があったと答えた割合は2025年調査で89.4%です。
利用率が2021年調査の70.4%から2025年調査の83.5%へ広がっても、効果の評価は下がっていません。
この対比から読み取れるのは、未導入の理由が必要性の欠如というより、検討そのものが始まっていない状態にある可能性です。ただし2つは別々の母集団への質問であり、同じ企業の判断の前後を比べたものではありません。
非利用理由の回答企業は150社と少なく、業務の性質上、本当に必要がない企業も含まれます。クラウド導入の判断を社内で進めるときは、89.4%という数値を「使った企業の評価」として示すのが正確です。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2/同 別紙1/総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」
資本金規模によるクラウド利用率の差は2025年時点で25.0ポイント残っている

全体の83.5%という数値は、規模の大きい企業に引き上げられた平均です。2025年調査を資本金規模別に見ると、資本金1000万〜3000万円未満の企業は74.8%、50億円以上の企業は99.8%でした。
資本金1000万円未満の企業も75.4%で、上位の区分とは差があります。資本金3000万円未満の2区分は、全体の83.5%を8ポイント以上下回っています(本記事による計算値)。
別系統のデータでも似た傾向が出ています。IPAの2025年調査では、DXに取り組む企業の割合は従業員100人以下で41.6%、1,001人以上で98.7%でした。
資本金1000万〜3000万円未満は74.8%、50億円以上は99.8%(2025年調査)
区分ごとに並べると、規模による段差が見えます。2025年調査で最も低いのは資本金1000万〜3000万円未満の74.8%でした。最も高い50億円以上の99.8%との差は25.0ポイントです(本記事による計算値)。ただし資本金1000万円未満は75.4%で、1000万〜3000万円未満よりわずかに高く、きれいな一直線ではありません。

| 資本金規模 | クラウド利用率 |
|---|---|
| 1000万円未満 | 75.4% |
| 1000万〜3000万円未満 | 74.8% |
| 3000万〜5000万円未満 | 84.1% |
| 5000万〜1億円未満 | 83.1% |
| 1億〜5億円未満 | 92.3% |
| 5億〜10億円未満 | 92.5% |
| 10億〜50億円未満 | 97.5% |
| 50億円以上 | 99.8% |
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-2より作成(2025年調査、無回答を除く集計)。各区分の回答企業数は65社から589社までばらつきがあります。
規模が小さいほど利用率が低い傾向は読み取れますが、「資本金が小さいほど低い」という関係は厳密には成り立っていません。1000万円未満の区分は回答企業が100社のため、1〜2ポイントの差に意味を持たせないでください。
2024年の38.3ポイント差と比べても、差が埋まりつつあるとは言えない
前年と比べると、差は縮んで見えます。2024年調査では資本金1000万円未満が61.5%、50億円以上が99.8%で、開きは38.3ポイントでした(本記事による計算値)。
2025年調査の25.0ポイントと並べれば13.3ポイント縮んだことになります(本記事による計算値)。ただし2024年調査の1000万〜3000万円未満は72.6%で、こちらは2025年調査の74.8%とほとんど変わりません。
ここから読み取れるのは、差が埋まりつつあるとは現時点の数字では言えないという点です。最小区分の回答企業数は2024年調査で122社、2025年調査で100社しかなく、1年の変動から傾向は語れません。
注意
この調査の対象は常用雇用者100人以上の企業です。ここでいう「資本金1000万円未満」は、従業員100人以上でありながら資本金が小さいという特殊な層を指します。一般的な小規模事業者の姿とは異なる点に注意してください。
従業員100人以下のDX取組率は41.6%で、1,001人以上との差は57.1ポイント
規模の小さい企業の状況は、IPAの調査からも見えます。2025年調査で何らかの形でDXに取り組む企業は全体で75.7%、従業員100人以下では41.6%、1,001人以上では98.7%でした。差は57.1ポイントです(本記事による計算値)。
調査主体も指標も総務省とは異なるため、資本金規模別の数値と同じ軸には並べられません。ここでは別系統の傍証として見てください。
体制の面でも制約があります。DXに取り組んでいると回答した企業のうち、DXを推進する人材の「量」が不足していると答えた企業は、2025年調査で85.5%にのぼります。
人を増やしてから始めるのではなく、いまの人数で回せる範囲から着手するほうが現実的です。承認ルートが単純な申請を1種類だけ載せ替えるところから始めれば、担当者が1人でも進められます。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-2/同 別紙1/IPA「DX動向2026」
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選定時に確認する項目は、公的データが示す4つの論点に整理できる

製品ごとの機能表や料金表は、本記事では扱いません。一次データから作れないためです。代わりに、公的データが示す論点から確認項目を組み立てます。
材料になるのは、これまで見てきた数値です。1つはクラウドを利用しない理由に挙がる改修コスト28.7%とセキュリティ不安26.6%です。もう1つは、利用理由の1位である「場所、機器を選ばずに利用できるから」50.7%です。ここに用途による進み方の差を加えると、確認すべき項目が見えてきます。
なお、電子帳簿保存法への対応や電子印鑑の扱いは、多くの記事が触れる論点です。本記事では数値の裏づけが取れないため扱いません。製品を比較する際は、各ベンダーの公式情報で確認してください。
ポイント
- 連携範囲: 会計・人事・購買のどのシステムとつなぐかを先に決める
- 責任分界点と権限: 閲覧権限、代理承認、障害時の扱いを確認する
- 利用環境: 承認者が社外の端末から処理できるかを確認する
- 対象業務: すでにクラウド化が進んだ領域から順に広げる
既存システムとの連携範囲を先に決める(改修コストを理由に挙げる企業が28.7%)
最初に決めるべきは、どこまでつなぐかです。クラウドを利用しない理由の2位は「クラウドの導入に伴う既存システムの改修コストが大きい」で、2025年調査では28.7%が挙げています。
ワークフローは、会計・人事・購買のシステムと接点を持ちます。そのため、この論点は選定の途中で必ず表面化します。
判断の目安になるのが、接続先のクラウド化の状況です。2025年調査で「給与、財務会計、人事」は56.3%まで進んでいる一方、「購買」は16.7%にとどまります。前者につなぐ場合はクラウド同士の連携で済む可能性がありますが、後者は社内システムの改修を伴いやすい領域です。
責任分界点と権限設計を確認する(セキュリティ不安を挙げる企業が26.6%)
次に確認するのは、データの扱いと権限です。クラウドを利用しない理由の3位は「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」で、2025年調査では26.6%でした。
承認データには、給与や取引金額のように扱いに注意が必要な情報が含まれます。閲覧できる範囲を役職や部署でどう区切るか、承認者が不在のときに誰が代理で処理するかを、選定の段階で決めておいてください。
障害が起きたときの復旧範囲と、自社で対応すべき部分の線引きも確認しておきましょう。利用企業の89.4%が2025年調査で効果を認めている一方、運用の設計は自社で引き受ける部分が残ります。
対象業務は、すでにクラウド化が進んでいる領域から広げる
着手する順番も、統計から逆算できます。全社の稟議を一度に載せ替えるのではなく、運用実績のある領域から始める進め方をおすすめします。2025年調査の数値(いずれもクラウドサービスを利用している企業が分母)を目安にすると、次の順序が考えられます。
- 社内情報共有・ポータル61.4%: 申請書の保管や回覧から着手しやすい領域です
- 給与、財務会計、人事56.3%: 経費精算など承認ルートが短いものから載せられます
- 購買16.7%: 発注承認は社外との取引や既存システムとの接続が絡むため、後に回します
承認者が社外の端末から処理できるかも、あわせて確認してください。クラウドの利用理由の1位は「場所、機器を選ばずに利用できるから」50.7%です。
これは統計から導いた進め方であり、成功を保証するものではありません。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」図表3-6/総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」別紙2 図表4-3・4-4・4-5
まとめ
この記事で確認した内容を、社内で話す順に整理します。
- クラウドの利用は2025年調査で83.5%まで進み、論点は「どの業務を載せるか」に移りました
- 稟議・承認に近い業務は遅れており、購買は2025年調査で16.7%、給与・財務会計・人事は56.3%です
- ワークフローシステム単体の公的統計は今回の参照範囲になく、他媒体の導入率は母集団を確認してから使ってください
- 資本金1000万〜3000万円未満の利用率は2025年調査で74.8%で、規模による差はまだ残っています
- 利用企業の89.4%が効果を認めており、着手はすでにクラウド化が進んだ領域から広げるのが現実的です
まず手を付けるなら、いま社内で回っている申請書を1種類選び、承認が止まる場所を書き出してみてください。紙が残る理由が制度なのか慣習なのかが分かると、製品選びの基準もはっきりします。
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ワークフローのクラウド化は、製品を選ぶ作業より、誰がどの順番で承認するかを社内に浸透させる作業のほうが大きくなります。こうした進め方は、近くに教えてくれる先輩がいない環境では独学で身につけにくい領域です。
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- 自社カリキュラムの編成とCSVでの教育記録に対応し、社内の教育履歴として残せます
5名から利用でき、請求書払いにも対応しています。初期設定はおよそ10分で、担当者が1人でも始められます。
※出典

