【IPA調査】未経験から社内SEになる3つの入口|大企業の40.8%は他部門からの異動でIT人材を確保(2019年度)

社内SEに興味はあっても、IT職の経験がないと一歩を踏み出しにくいですよね。次のような悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。
- IT職の経験がなくても、社内SEに応募していいの?
- 転職サイトには「未経験歓迎」とあるけど、本当に採用されている?
- 文系出身だと不利にならない?
結論から言うと、未経験から社内SEになる入口はあります。ただし、中途採用の主流はIT経験者です。IT職以外から目指すなら、企業規模に合った入口を選ぶほうが現実的です。
この記事では、IPA(情報処理推進機構)の公的な調査をもとに、誰がどの経路で社内SEになっているかを整理します。なお、社内SEの仕事内容そのものは別の記事で詳しく解説しています。
この記事のポイント
- 2019年度の調査で、企業がIT人材を最も多く確保できた方法は中途採用で41.4%。ただし中途採用者の前職に「非IT部門」を挙げた企業は8.0〜11.0%にとどまる(出典: IPA「IT人材白書2020」)
- 従業員1,001名以上の企業の40.8%は、他部門からの異動でIT人材を確保している。300名以下の企業では8.4%だった(出典: IPA「IT人材白書2020」)
- 300名以下の企業が中途採用したIT人材の前職は「中小SIer」が53.2%で最多(出典: IPA「IT人材白書2020」)
未経験から社内SEになる道はあるが、中途採用の主流はIT経験者で、非IT部門出身を挙げる企業は1割前後

この記事で主に使うのは、IPA「IT人材白書2020」のユーザー企業調査(2019年度)です。ユーザー企業とは、ITを提供する側ではなく利用する側の一般企業を指します。
この調査には821社が回答しており、その企業のIT部門は社内SE・情シスの職場とほぼ重なります。まずは「社内SEがどこから採用されているか」を見ていきましょう。
ユーザー企業がIT人材を最も多く確保できた方法は中途採用の41.4%で、新卒採用の22.9%を上回る
社内SEの入口は中途採用が中心で、新卒でなければ入れない職種ではありません。
IPAの2019年度調査によると、ユーザー企業がIT人材を最も多く確保できた方法は中途採用で41.4%でした。新卒採用は22.9%で、中途採用が18.5ポイント上回っています。この設問は1つだけを選ぶ形式で、回答企業は454社です。
別の設問では、過去1年間にIT人材を確保した方法を、複数選ぶ形式で企業規模別に尋ねています。中途採用を挙げた企業は、300名以下で34.3%、301〜1,000名で37.7%、1,001名以上で58.2%でした。規模が大きい企業ほど、中途採用でIT人材を確保しています。
2つの設問は形式が違うため、数値を足したり比べたりはできません。それでも、どちらの設問でも中途採用が大きな比重を占めています。社会人になってから社内SEを目指す人にとって、入口が開いていることは確かです。
中途採用者の前職はSIerなどのIT企業と他社のIT部門が中心で、非IT部門は8.0〜11.0%にとどまる
中途採用で入っている人の多くは、IT業界や他社の情シスで経験を積んだ人です。
IPAの2019年度調査では、中途採用したIT人材の直前の勤務先を企業規模別に尋ねています。結果は次の表のとおりです。
| 中途採用者の前職 | 300名以下 | 301〜1,000名 | 1,001名以上 |
|---|---|---|---|
| 中小SIer(従業員300名以下のIT企業) | 53.2% | 32.6% | 25.0% |
| 他社のIT部門 | 25.7% | 43.0% | 42.9% |
| 他社の非IT部門 | 11.0% | 9.3% | 8.0% |
※複数選択。数値はその前職の人を採用した企業の割合で、採用した人数の比率ではありません。「他社のIT部門」「他社の非IT部門」は、原典ではそれぞれ「ユーザー企業のIT部門」「ユーザー企業のIT部門以外」です。原典には、表に載せていない大手ベンダー(従業員1,001名以上のIT企業)や中堅SIer(同301〜1,000名のIT企業)などの区分もあり、1,001名以上の企業では大手ベンダーを挙げた企業も多く見られます。

出典: IPA「IT人材白書2020」
この数値から読み取れるのは、「中途採用が多い」ことと「未経験者が多く採られている」ことは別の話だという点です。非IT部門の出身者を採用した企業は、どの規模でも1割前後でした。中途採用の主流は、IT経験者同士の移動だと考えられます。
ただし、SIer出身でも営業職など技術職ではなかった人が含まれる可能性があります。前職の業界と、IT業務の経験の有無は一致しない点に注意が必要です。
注意
「非IT部門」は、他社の営業や経理などから中途で採用された人を指します。自社の他部門からの異動は、別の設問で集計されています。また、数値は複数選択の企業の割合です。「中途採用者の1割が未経験者」という意味ではありません。
出典: IPA「IT人材白書2020」
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社内SEの人手不足感は2015〜2019年度に毎年強まったが、企業が強く求めているのはスキルの合う人

「IT人材は不足しているから、未経験でもチャンスがある」という話を聞いたことがあるかもしれません。ここでは、同じ調査の5年分の推移から、その見方がどこまで当てはまるかを確かめます。
IT人材の量が「大幅に不足」とする企業は2015年度20.5%から2019年度33.0%へ毎年上がった
社内SEの人手が足りないという企業の実感は、2019年度まで毎年強まっていました。
IPAの調査で、IT人材の量が「大幅に不足している」と答えたユーザー企業の割合は次のように推移しています。2015年度は20.5%、2016年度は24.7%、2017年度は29.3%でした。その後、2018年度は31.1%、2019年度は33.0%と上がり続けています。

出典: IPA「IT人材白書2020」
ただし、伸び幅は少しずつ小さくなっています。2016・2017年度は前年から4ポイント台の上昇でしたが、2018・2019年度は2ポイント前後でした。
この推移から読み取れるのは、人が足りないこと自体は未経験者にとって追い風だという点です。なお、この数値は企業の主観的な評価で、実際の欠員数ではありません。また、この調査の最新値は2019年度で、それ以降の推移は分かりません。
質の「大幅な不足」は5年間を通じて量を上回り、2019年度は39.5%で量より6.5ポイント高い
企業がより強く感じているのは、人数よりも「スキルの合う人がいない」という不足です。
同じ調査で、IT人材の質が「大幅に不足している」とした企業の割合も見てみましょう。2015年度は30.3%、2016年度は33.2%、2017年度は32.9%でした。2018年度は33.8%で、2019年度は39.5%へ5.7ポイント上がっています。
2019年度は、質の不足(39.5%)が量の不足(33.0%)を6.5ポイント上回りました。5年間のどの年度でも、質の不足感のほうが高い水準です。
この数値と、前のセクションで見た「中途採用は経験者が中心」という結果は、同じ方向を向いています。企業が「すぐに戦力になる人」を求めていると考えると、説明がつくためです。
ただし、2つは別の設問なので、因果関係までは示せません。それでも、未経験者は「人が足りないから誰でも採る」状況ではなく、経験者と同じ枠で比べられる場面が多いと考えておくのが安全です。
注意
ここで紹介した不足感の数値は、2019年度調査が最新です。2020年度以降に不足がさらに進んだかどうかは、この調査からは分かりません。また、毎年の回答企業は同じではありません。
出典: IPA「IT人材白書2020」
未経験からの入口は「中途で直接」「SIer経由」「社内異動」の3つで、企業規模によって広さが違う

ここまでのデータを整理すると、未経験から社内SEになる入口は大きく3つあります。中途採用で直接入る道、SIerなどで経験を積んでから移る道、社内の他部門から異動する道です。
それぞれの入口の広さは、企業規模によって大きく変わります。2019年度調査の数値を規模別にまとめると、次のとおりです。
| 項目(2019年度) | 300名以下 | 301〜1,000名 | 1,001名以上 |
|---|---|---|---|
| 専任のIT部門を設置している企業 | 60.8% | 89.2% | 97.6% |
| 中途採用でIT人材を確保した企業 | 34.3% | 37.7% | 58.2% |
| 他部門からの異動でIT人材を確保した企業 | 8.4% | 21.2% | 40.8% |
| 中途採用者の前職に中小SIerを挙げた企業 | 53.2% | 32.6% | 25.0% |
※獲得方法(中途採用・異動)は、過去1年間の実績を複数選択で尋ねた設問です。獲得方法と中途採用者の前職は、分母が異なる設問です。数値の大小を行どうしで比べることはできません。
出典: IPA「IT人材白書2020」
以下では、規模ごとの特徴を順に見ていきます。
従業員1,001名以上の企業の40.8%は他部門からの異動でIT人材を確保しており、300名以下の約4.9倍
大企業では、社内の他部門からの異動がIT人材を確保する大きな手段になっています。
IPAの2019年度調査で、過去1年間に他部門からの異動でIT人材を確保した企業の割合は、300名以下で8.4%でした。301〜1,000名では21.2%、1,001名以上では40.8%です。最も大きい規模と小さい規模では、約4.9倍の差があります。
規模による差は、ほかの獲得方法より大きくなっています。中途採用の規模差は約1.7倍です。新卒採用は300名以下が22.0%、301〜1,000名が22.9%、1,001名以上が47.3%で、差は約2倍でした。

出典: IPA「IT人材白書2020」
一方で、1,001名以上の企業でも、中途採用者の前職に非IT部門を挙げた企業は8.0%でした。この2つの数値から読み取れるのは、次の点です。大企業の情シスに非IT職種から入るなら、外からの転職より社内異動のほうが入りやすい可能性が高いと考えられます。
ただし、2つは分母が違う設問なので、言えるのは傾向の向きまでです。また、異動した人がもともとIT経験を持っていたかどうかは分かりません。
300名以下の企業が中途採用したIT人材の前職は中小SIerが53.2%で、SIerで経験を積んでから移る道がはっきりしている
中小企業の社内SEには、SIerでの経験を経て移る人が多く見られます。
IPAの2019年度調査で、300名以下の企業が中途採用したIT人材の前職は、中小SIerが53.2%でした。1,001名以上の企業の25.0%と比べると、2倍強です。反対に、1,001名以上では他社のIT部門が42.9%で、300名以下の25.7%を17.2ポイント上回ります。
同じ2019年度の推計では、国内のIT人材は125.3万人でした。このうちIT企業側が95.9万人、ユーザー企業側が29.4万人です。つまり、IT人材の約4人に3人はIT企業側にいます。

この数値から読み取れるのは、入口の多いIT企業で経験を積み、中小企業の情シスへ移るという2段階の道筋です。ただし、IT企業に人が多いことがSIer経由の多さの原因だとまでは言えません。SIerで何年経験すれば移れるかも、データからは分かりません。
従業員300名以下の企業の約4割には専任のIT部門がなく、情シスへの異動という入口自体が無いことが多い
中小企業では、情シスという部署そのものが無いことが珍しくありません。
IPAの2019年度調査で、専任のIT部門を置いている企業は全体で78.6%でした。規模別では、300名以下が60.8%、301〜1,000名が89.2%、1,001名以上が97.6%です。300名以下の企業では、約4割がIT部門を持っていません。

出典: IPA「IT人材白書2020」
ここでいう専任のIT部門が、いわゆる情シスです。呼び方の違いが気になる方は、情シスと社内SEの違いもあわせて確認してみてください。300名以下の企業では、他部門からの異動でIT人材を確保した企業も8.4%にとどまります。
ここからは仮説ですが、中小企業では「IT部門の無い会社でIT業務を担う」ことや「中途採用に応募する」ことが入口になると考えられます。300名以下でも、中途採用でIT人材を確保した企業は34.3%ありました。
注意
IT部門が無い企業に限って、誰がどのようにIT業務を担っているかを示す集計は、この調査にはありません。他の業務と兼務しているのか、外部に委託しているのかを示す公的データも、今回は確認できていません。
出典: IPA「IT人材白書2020」
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学校でITを専攻していないことは決定的な壁ではなく、先端IT業務の従事者でも30.2%は文系出身

文系出身で、社内SEを目指してよいのか迷っている方もいるでしょう。社内SEに限った専攻のデータは見つかりませんでした。そこで、IT業務に就く人の専攻を調べた別の調査を紹介します。
先端IT従事者の最終学歴の専攻はIT・情報系36.0%、文系30.2%で、差は5.8ポイントしかない
先端的なIT業務に就いている人でも、約3割は文系の出身です。
ここで紹介するのは、社内SEではなく「先端IT従事者」を対象にした調査です。先端IT従事者とは、データサイエンスやAI、IoTなど先端的なIT業務に就いている人を指します。IPAが2019年12月に、先端IT従事者500名などを対象に行いました。
この調査で、先端IT従事者の最終学歴の専攻は、IT・情報系が36.0%でした。IT・情報系以外の文系は30.2%で、両者の差は5.8ポイントです。
この数値から読み取れるのは、先端的なIT業務でも文系出身者が珍しくないという点です。学校でITを専攻していないことは、IT業務に就くうえで決定的な壁にはなっていないと考えられます。
先端IT非従事者では文系が34.6%と情報系の25.4%を上回り、専攻と業務内容には一定の関係もある
専攻と業務内容には関係がありますが、文系出身でIT業務に就いている人も多くいます。
同じ2019年12月の調査では、先端以外のIT業務に携わる人(先端IT非従事者)500名にも専攻を尋ねています。その結果、文系が34.6%、IT・情報系が25.4%でした。
IT・情報系の出身者の割合を比べると、先端IT従事者(36.0%)のほうが非従事者より10.6ポイント高くなっています。先端的な業務ほど、情報系出身者がやや多いことが分かります。

出典: IPA「IT人材白書2020」
とはいえ、先端領域でも文系出身が3割を占めている点は変わりません。社内SEに限ったデータではありませんが、文系であることを理由に、社内SEを諦める必要はないでしょう。
注意
ここでの「文系出身」は学校での専攻の話で、仕事でIT未経験だったことを意味しません。文系出身者も、入社後の研修や実務を経て今の業務に就いている可能性が高いと考えられます。「文系で未経験でも、すぐにIT業務に就ける」という根拠にはならない点に注意してください。
出典: IPA「IT人材白書2020」
社内SE・情シスのIT人材の3割前後は指導を受けながら働く層で、その割合は2016〜2019年度で大きく変わっていない

未経験で入社した場合、最初から一人で業務をこなせるのか不安に感じる方も多いでしょう。ここでは、ユーザー企業のIT人材がどのレベルの人で構成されているかを見ていきます。
「指導や補助が必要な人材(レベル1〜2)」の比率は2016〜2019年度に28.1〜32.5%で推移している
2016〜2019年度を通じて、ユーザー企業のIT人材の3割前後は指導や補助を受けながら働く人です。
IPAの調査で、IT人材のレベルを把握しているユーザー企業に尋ねた結果、IT人材に占める「指導や補助が必要な人材(レベル1〜2)」の比率は次のとおりです。2016年度は28.5%、2017年度は29.9%でした。2018年度は32.5%、2019年度は28.1%です。

出典: IPA「IT人材白書2020」
同じ期間に、IT人材の量が「大幅に不足」とする企業は24.7%から33.0%に上がりました。それでも、経験の浅い人材の比率は広がっていません。
この2つの推移から読み取れるのは、企業が人手不足を未経験者の大量採用で埋めてはいないという見方と矛盾しない点です。ただし、これは比率であって人数ではありません。IT人材の総数が増えていれば、経験の浅い人の人数は増えている可能性があります。
2019年度はレベル3の自立した人材が47.1%、指導役になり得るレベル4以上が24.8%を占める
社内には、未経験者を指導できる立場の人が一定の割合でいます。
IPAの2019年度調査で、IT人材のレベルを把握しているユーザー企業(386社)が回答したレベル構成は次の表のとおりでした。
| レベル | 人材像 | 構成比(2019年度) |
|---|---|---|
| レベル1〜2 | 指導や補助が必要な人材 | 28.1% |
| レベル3 | 自立して業務を遂行できる人材 | 47.1% |
| レベル4 | 指導者・リーダー | 16.9% |
| レベル5以上 | 社内・業界をリードする人材 | 7.9% |
出典: IPA「IT人材白書2020」
指導役になり得るレベル4以上を合わせると、24.8%になります。この数値から読み取れるのは、指導を受けながら育つ層と、それを支える層が組織の中に一定の割合で定着しているという点です。
注意
レベルは各企業が自社の人材を評価した結果で、基準は企業ごとに異なります。また、回答企業は2016年度の511社から2019年度の386社へ減っており、回答企業の入れ替わりで比率が動いた可能性もあります。
出典: IPA「IT人材白書2020」
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情報セキュリティは開発を経ずに入る人が増えていた分野で、異分野からの流入が前提とされていた(2011年度調査)

社内SEが情報セキュリティの業務を担当することは多く、セキュリティ業務から社内SEの仕事に入る道もあります。ここで紹介するのは、IPAが2011年度に行った調査です。データが古い点を前提に読んでください。
注意
このセクションの数値は、すべて2011年度調査の推計です。その後に公表された推計は、対象や推計方法が異なるため、このセクションの数値と単純に比べることはできません。現在の状況をそのまま表すものではない点に注意してください。
セキュリティ業務の入口が開発・構築だった人は、1995年以前の72.7%から2004年以降は39.1%に下がった
2011年度調査のインタビュー対象者では、開発の経験を経ずにセキュリティ業務に就いた人は、後の世代ほど多くなっていました。
IPAの2011年度調査では、情報セキュリティ分野で活躍する実務者へのインタビューをもとに、最初に就いた業務を、業務を始めた時期別に整理しています。最初の業務が開発・構築だった人の割合は、1995年以前に始めた人で72.7%でした。1996〜2003年に始めた人では66.7%、2004年以降に始めた人では39.1%です。対象者は時期別に11人・27人・23人と少ないため、傾向を示す参考値として読んでください。

出典: IPA「情報セキュリティ人材の育成に関する基礎調査 報告書」(2011年度)
この推移から読み取れるのは、セキュリティ業務の入口が開発以外にも広がってきたという点です。2011年度調査の時点で、開発経験がなくてもセキュリティ業務から社内SEの仕事に関わる道はあったと言えます。ただし、2011年度より後にこの傾向が続いたかどうかは分かりません。
専門教育を受けて学校から出てくる人材は年約1,000人で、約2.2万人の不足を埋めるには足りなかった
学校からの供給だけでは、セキュリティ人材の不足を埋められない状況でした。
IPAの2011年度調査では、従業員100人以上の企業で社内向けのセキュリティ業務に就く人材の数と、学校からの供給を推計しています。主な推計値は次の表のとおりです。
| 項目(2011年度推計) | 推計値 |
|---|---|
| 社内向けセキュリティ業務の専任従事者(従業員100人以上の企業) | 約23万人 |
| 専任従事者の不足数(従業員100人以上の企業) | 約2.2万人 |
| セキュリティの専門教育を受けている学生 | 年約1,000人 |
| セキュリティ科目を受講できる学生 | 年約2万人 |
出典: IPA「情報セキュリティ人材の育成に関する基礎調査 報告書」(2011年度)/IPA「情報セキュリティ人材の育成に関する基礎調査」概要(2011年度)
専門教育を受けている学生は年約1,000人で、約2.2万人の不足と比べると大きな開きがあります。この数値から読み取れるのは、学校からの供給だけでは足りず、異分野からの人材の流入が必要とされてきたという点です。
未経験からセキュリティ分野に関わることは、2011年度の時点でも珍しいことではなかったと考えられます。
なお、セキュリティ人材の不足数はその後も推計されており、経済産業省が2016年に公表した推計では、対象範囲や推計方法を変えたうえで、2011年度調査より大きな不足数が示されています。不足数は人材の定義や推計の前提によって大きく変わるため、出典により見解が分かれる点に注意してください。
出典: IPA「情報セキュリティ人材の育成に関する基礎調査 報告書」(2011年度)/IPA「情報セキュリティ人材の育成に関する基礎調査」概要(2011年度)/総務省「我が国のサイバーセキュリティ人材の現状について」(2018年)
未経験から社内SEを目指すなら、いまの立場に合った入口を選び、資格は基礎固めに使う

ここまでのデータをもとに、未経験から社内SEを目指すときの進め方を整理します。大切なのは、自分がいまどの立場にいるかによって、選ぶべき入口が変わることです。
ポイント
- 大企業で働いている人は、まず社内の情シスへの異動を検討する
- 中小企業の社内SEを目指す人は、SIerやIT企業で経験を積んでから移る道を考える
- 資格は基礎固めに使い、資格だけで差を付けようとしない
いま大企業で働いているなら、まず社内の情シスへの異動を検討する
大企業に勤めている人にとって、最も現実的な入口は社内異動です。
IPAの2019年度調査で、1,001名以上の企業の97.6%は専任のIT部門を置いています。そして同じ規模の企業の40.8%が、他部門からの異動でIT人材を確保していました。一方で、中途採用者の前職に非IT部門を挙げた企業は8.0%です。
2つは分母が違う設問のため数値の大小は比べられませんが、異動で確保する企業が多く、他社の非IT部門から採る企業は少ないという向きの違いはあります。ここから読み取れるのは、外から転職するより、社内で異動するほうが入りやすい可能性が高いという点です。ただし、異動の仕組みは会社によって違います。
社内公募の制度があれば、まずは応募の条件を確認してみてください。制度が無い場合は、上司との面談やキャリア面談の場で、IT部門への関心を伝えておく方法もあります。日々の業務でシステムの導入や改善に関わっておくと、異動の希望にも説得力が出るでしょう。
中小企業の社内SEを目指すなら、SIerやIT企業で実務経験を積んでから移る道が現実的
中小企業の社内SEを目指す場合は、IT企業で経験を積むことが近道になります。
IPAの2019年度調査で、300名以下の企業が中途採用したIT人材の前職は、中小SIerが53.2%でした。また、同じ2019年度の推計で、IT企業側のIT人材は95.9万人、ユーザー企業側は29.4万人です。IT企業側のほうが人材の数が多く、そのぶん入口も多いと考えられます。
さらに、300名以下の企業でIT部門を置いているのは60.8%でした。つまり、300名以下の企業の約4割には、情シスへの異動という入口がそもそもありません。
中小企業の社内SEを目指すなら、まずSIerなどで実務経験を積み、そこから移る道が現実的です。なお、SIerでどの程度の期間や職種を経験すればよいかは、データからは分かりません。
ITパスポートの2025年度合格者は13.2万人で、資格だけで差を付けるのは難しい
ITパスポートは基礎固めに役立ちますが、それだけで他の応募者と差を付けるのは難しい資格です。
IPAの統計によると、2025年度のITパスポート試験の応募者は30万7,266人でした。合格者は13万2,012人で、合格率は48.6%です。
この合格者数は、2019年度推計のユーザー企業側IT人材29.4万人の約45%に当たる規模です。年間の合格者と在籍する人数、調査年も違うため、あくまで規模感の比較です。それでも、同じ資格を持つ人が多いことは分かります。
一方、基本情報技術者試験の2025年度の合格者は5万6,370人で、合格率は38.3%でした。ITパスポートで基礎を固め、差を付けたいなら基本情報技術者以上を目指すのがよいでしょう。
出典: IPA「IT人材白書2020」/IPA「令和7年度 iパス(ITパスポート試験)の年間応募者数等について」/IPA「ITパスポート試験 推移表(令和7年度)」/IPA「基本情報技術者試験 推移表」
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「未経験で何割が採用されたか」は公的統計で測られておらず、教育体制は応募先で確かめる必要がある

ここまで公的統計をもとに社内SEの入口を見てきましたが、データで分かることには限りがあります。最後に、統計で分からない点と、それを補うために応募先で確かめたい点をまとめます。
公的統計で追えるのは前職の業種までで、IT業務の経験があったかどうかは区別されていない
「未経験者の採用率」を直接示す公的統計は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。
この記事で「未経験」に最も近いデータは2つあります。1つは、中途採用者の前職に非IT部門を挙げた企業の割合(8.0〜11.0%)です。もう1つは、他部門からの異動でIT人材を確保した企業の割合(8.4〜40.8%)です。
ただし、どちらも企業単位の集計で、採用された人がIT業務を経験していたかどうかは分かりません。レベル構成の設問も、入社経路や経験年数とは切り離して集計されています。そのため、「未経験で入った人が何年で自立するか」も統計からは読み取れません。
このほか、社内SEの年齢構成や、社内SEに限ったOJTの実施率も公的統計では確認できませんでした。情シスだけの転職市場を示す公的データも見当たりません。「未経験者の採用率は◯%」といった情報を見かけたときは、どの調査の数値なのかを確かめるようにしてください。
応募先では教育体制・配属後の担当範囲・IT部門の体制の3点を確認する
統計で分からない部分は、求人票と面接で確かめることが大切です。
IPAの2019年度調査では、300名以下の企業でIT部門を置いているのは60.8%でした。また、ユーザー企業のIT人材のうち、指導や補助が必要なレベル1〜2の層は28.1%います。自立して業務を遂行できるレベル3の層は47.1%です。
つまり、応募先によって、指導を受けられる環境があるかどうかは大きく違うと考えられます。入社してから後悔しないためにも、次の3点を事前に確かめておきましょう。
応募先で確認したい3つのポイント
- 教育体制: 指導役の先輩がいるか、研修やOJTの仕組みがあるか
- 配属後の担当範囲: 最初に任される業務は何か(ヘルプデスク、PCの管理など)
- IT部門の体制: 専任のIT部門があるか、ほかの業務との兼務か、何人で担当しているか
「社内SEはやめとけ」と言われる理由の中には、入社前に確認しておけば避けられるものもあります。特に未経験で入る場合は、ひとりで全てを任される職場かどうかを面接で必ず確かめてください。
出典: IPA「IT人材白書2020」
まとめ: 未経験から社内SEになる入口はあり、企業規模に合わせて入り方を選ぶことが近道

未経験から社内SEを目指すときに押さえておきたい点を、IPA「IT人材白書2020」の2019年度調査をもとに振り返ります。
- 中途で直接入る道: 企業がIT人材を最も多く確保できた方法は中途採用で41.4%。ただし、中途採用者の前職に非IT部門を挙げた企業は8.0〜11.0%で、主流はIT経験者
- 社内異動で入る道: 1,001名以上の企業の40.8%は、他部門からの異動でIT人材を確保している。大企業で働く人に向いた入口
- SIer経由で入る道: 300名以下の企業が中途採用したIT人材の前職は、中小SIerが53.2%。中小企業の社内SEを目指す人に向いた入口
- 企業が強く感じているのは質の不足で、2019年度は39.5%が「大幅に不足」と回答している
- 先端IT業務の従事者でも30.2%は文系出身で、専攻は決定的な壁ではない(2019年12月調査)
人手不足という言葉だけを見ると、未経験でも簡単に採用されるように感じるかもしれません。しかし、データからは、企業がスキルの合う人を求めている様子が見えてきます。
「未経験歓迎」の求人だけを探すのではなく、自分の立場から入りやすい入口を選ぶことが、社内SEへの近道です。いまの職場で異動できるか、まずはIT企業で経験を積むか、自分に合った道を考えてみてください。
出典: IPA「IT人材白書2020」
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※出典

