【IPA調査】ヘルプデスク効率化は「増員」より「仕組み」|2025年度時点でDX人材の質不足は88.8%

リード文・この記事のポイント
社内のヘルプデスクを担当していて、こんな状態になっていませんか。
- 「プリンタが動かない」の一言で作業が中断され、本来の仕事が進まない
- 同じ質問に何度も答えているが、まとめる時間が取れない
- 人を増やしてほしいと言っても、根拠になる数字が出せない
結論から書きます。ヘルプデスクの効率化は、増員だけでは進みにくく、仕組みで支える必要があります。 そして仕組みを作る最初の一歩は、ツール選びではなく、問い合わせを記録して数えることです。
この記事では、IPAと総務省の公的調査だけを根拠に、その理由と進め方を整理します。ベンダーの導入事例にある削減率や、出所のはっきりしない相場感は使いません。
この記事のポイント
- 情報セキュリティに専門部署や担当者を置く中小企業等は2024年時点で9.3%、69.7%は組織的に対応していない(出典: IPA「中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査2024」)
- DX人材が不足していると答えた企業は「質」で2024年度86.1%から2025年度88.8%へ増えた。一方で「大幅に不足」に限れば量・質とも減っており、IPAは不足感に一服感がみられるとしている(出典: IPA「DX動向2026」。DXに取組んでいると回答した企業が対象)
- ヘルプデスクの問い合わせ件数や一次解決率には、参照できる公的な定量データが乏しい。比較基準は自社の記録で作るしかない
この記事を読み終えると、自社のヘルプデスクがいまどの段階にいて、次に何へ着手すべきかを、社内で説明できる形に整理できます。
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社内ヘルプデスクは、専任ではなく兼務で担われているのが実態

まず前提を確認します。中小企業でIT関連の窓口を専任で持てている会社は、ごく一部です。 多くの会社では、別の業務を持つ人が片手間で問い合わせを受けています。
IPA「中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査2024」を見ます。情報セキュリティ対策に専門部署または担当者がある中小企業等は、2024年時点で9.3%でした。兼務で担当者が任命されている企業は21.0%です。
つまり、担当者が決まっている会社に限っても、その多くは兼務です。あなたが感じている「本業の合間に問い合わせをさばいている」状態は、例外ではありません。
このセクションでは、体制の薄さを規模別に見ていきます。
注意
この調査の設問は「情報セキュリティ対策の体制」を尋ねたもので、ヘルプデスクの体制を直接測ったものではありません。セキュリティ担当は置いていなくても、PCの設定やアカウント発行を実務として担う人がいる会社は十分あり得ます。ここでは社内IT体制の薄さを示す参考値として読んでください。
専門部署や担当者がいる中小企業は2024年時点で9.3%、兼務での任命が21.0%
体制の全体像から押さえます。専任で担当を置けている中小企業等は1割に届かず、7割近くは組織として担当を決めていません。
IPAの同調査は2024年10〜11月に実施されました。中小企業等の情報セキュリティ対策の体制は次のとおりです。
| 体制 | 割合(2024年・中小企業等) |
|---|---|
| 専門部署(担当者)がある | 9.3% |
| 兼務だが、担当者が任命されている | 21.0% |
| 組織的には行っていない | 69.7% |
出典: IPA「中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査2024」(対象は中小企業等の経営層および情報システム/情報セキュリティ担当マネージャ、有効回答4,191件)
専任9.3%に対し、兼務は21.0%です。兼務の割合は専任の2倍以上にあたります。PCのキッティングのような定型作業がきつくなる背景にも、この兼務前提の体制があります。
ヘルプデスクも同じ構造です。専任の窓口がない以上、問い合わせは誰かの本業を止めながら処理されることになります。
小規模企業者では84.5%が担当者を決めておらず、101名以上との差は70.9ポイント
規模で分けると、体制の差はさらにはっきりします。小規模企業者では84.5%が組織として担当を決めていません。
同じIPA調査で、「組織的には行っていない」と回答した割合は規模別に次のようになっています。小規模企業者は商業・サービス業で1〜5名、製造業その他で1〜20名の企業を指します。
| 企業規模 | 「組織的には行っていない」割合(2024年) |
|---|---|
| 小規模企業者(n=2,775) | 84.5% |
| 中小企業・100名以下(n=1,121) | 47.6% |
| 中小企業・101名以上(n=295) | 13.6% |
| 全体(n=4,191) | 69.7% |
出典: IPA「中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査2024」

小規模企業者では専任4.4%と兼務11.1%を足しても15.5%にとどまります。「組織的には行っていない」の割合で見ると、小規模企業者84.5%と101名以上13.6%の差は70.9ポイントです。
この数値から読み取れるのは、「ひとり情シス」より手前の層が大きいという点です。1人でも任命されていれば窓口は存在しますが、誰の仕事でもないまま問い合わせだけが発生している会社のほうが、数のうえでは多いことになります。ただしこの調査では小規模企業者が有効回答の6割超(2,775件/4,191件)を占めており、回答者構成の影響も受けます。
もしあなたの会社がこの状態なら、効率化の前に「誰が受けるのか」を決める段階にいます。ツールの検討はその後です。
企業規模が大きいほど専任化が進み、小規模ほど兼務と未対応に寄る
規模別の傾向をもう一段見ます。専任化は規模に比例し、小規模なほど兼務と未対応に寄ります。
同じIPA調査の2024年時点の値を、専任と兼務の二軸で並べると次のとおりです。
| 企業規模 | 専門部署(担当者)がある | 兼務だが担当者が任命されている |
|---|---|---|
| 小規模企業者 | 4.4% | 11.1% |
| 中小企業・100名以下 | 14.8% | 37.6% |
| 中小企業・101名以上 | 34.6% | 51.9% |
出典: IPA「中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査2024」
専任率は4.4%から34.6%へ、兼務率は11.1%から51.9%へ上がります。101名以上でも専任は3社に1社程度で、最も多いのは兼務です。
この記事の読者に多いひとり情シス・兼務情シスは、担当者は決まっているが専任ではない層にあたります。規模で言えば中小企業100名以下から101名以上が中心だと考えられます。以降のセクションは、この前提で読んでください。
出典: IPA「中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査2024」(2024年10〜11月実施、有効回答4,191件)
人を増やしても、ヘルプデスクの負荷が下がるとは限らない

「人が足りないから増やす」は、いちばん自然な発想です。ただ公的データを見ると、人数の不足感は緩んでいるのに、質の不足感は合計で見ると下がっていません。
IPA「DX動向2026」によると、DXを推進する人材の「量」が不足していると答えた企業は2025年度時点で85.5%でした。「質」が不足していると答えた企業は88.8%で、質のほうが高く出ています。
この調査は2026年4〜6月に実施されたものです。母集団はDXに取組んでいると回答した企業に限られます。なお同調査は年度単位で集計されているため、以下では「2025年度」のように年度で表記します。
このセクションでは、量と質の動きを年次で確認します。
注意
この調査が尋ねているのは「DXを推進する人材」の過不足感であり、ヘルプデスク業務の負荷そのものを測ったものではありません。また対象はDXに取組んでいると回答した企業に限られます。ヘルプデスクへの当てはめは本記事の推論であり、調査結果そのものではない点にご注意ください。
「量」の大幅不足は2023年62.1%から2025年50.1%へ12.0ポイント下がった
まず人数面から見ます。「量が大幅に不足」と答えた企業の割合は、3年連続で下がっています。
IPA「DX動向2026」で、DXを推進する人材の「量」が大幅に不足していると答えた企業の割合は次のように推移しました。いずれもDXに取組んでいると回答した企業が母数です。
| 調査年度 | 「量が大幅に不足」の割合 |
|---|---|
| 2023年度 | 62.1% |
| 2024年度 | 58.5% |
| 2025年度 | 50.1% |
出典: IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)
2023年度62.1%から2025年度50.1%へ、12.0ポイント下がりました。「やや不足」を含めた合計では2025年度も85.5%と高い水準ですが、逼迫の度合いは下がっています。
ここまでは人数の話です。次で質の動きと並べます。
「質」の不足感は2024年86.1%から2025年88.8%へ上がっている
質は違う動きをしています。同じ調査のなかで、「不足している」の合計は量が下がる一方、質は上がりました。
DXを推進する人材の「質」が不足している(やや不足+大幅に不足)と答えた企業は、2024年度86.1%から2025年度88.8%へ、2.7ポイント増えました。一方、「大幅に不足」だけを見ると2024年度58.9%から2025年度52.9%へ下がっています。
「大幅に不足」のみの割合と、「やや不足」を含めた合計は集計基準が違います。同じ系列として並べないでください。
なおIPA自身は、「大幅に不足」が減って「やや不足」が増えた点をとらえ、「質」の人材不足にも「一服感がみられる」と評価しています。合計値の上昇だけを見て不足が悪化したと読むのは、報告書の解釈とは異なります。

出典: IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)
この2つの動きから読み取れるのは、情シスが抱える課題の中身が人数から中身へ移りつつある点です。1人増やすことでは埋まらない、対応できる業務範囲の広さが課題として残っています。
ただし別の説明も成り立ちます。母集団がDXに取組む企業に限られるため、着手企業の裾野が広がって回答企業の構成が変わり、量の不足感だけが下がって見えている可能性があります。
従業員100人以下でも質の不足感は7割超、301人以上では9割超
規模が小さければ不足感も軽い、とは言えません。100人以下の企業でも、質の不足感は量より高く出ています。
IPA「DX動向2026」の2025年度調査を従業員規模別に見ると、不足していると答えた企業の割合は次のとおりです。報告書の表記に合わせた概数である点にご注意ください。
- 従業員301人以上: 「量」が不足 9割超、「質」が不足 9割超
- 従業員100人以下: 「量」が不足 6割超、「質」が不足 7割超
出典: IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)
いずれも「6割超」「7割超」という概数表記のため、丸め方によっては量と質の差が小さい可能性もあります。それでも100人以下で質のほうが高い点は変わりません。
ここから先は推論です。増員が現実的でない会社では、ヘルプデスクの負荷を下げる方法は、問い合わせの総量そのものを減らす設計に寄っていくと考えられます。1件あたりの対応を速くするより、同じ質問が繰り返し来ない状態を作るほうが効きやすいと読めます。
出典: IPA「DX動向2026」(2026年4〜6月実施、有効回答1,799社。DXに取組んでいると回答した企業が対象)
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効率化の第一歩は、問い合わせを記録して種類ごとに数えること

では何から始めるか。最初にやるべきは、問い合わせを記録して種類ごとに数えることです。 予算も承認も要らず、今日から着手できます。
根拠になるデータがあります。IPA「DX動向2026」の2025年度調査では、必要なスキルを把握できていない企業のほうが、人材の質が「大幅に不足」と答える割合が高く出ました。把握できていない企業で64.0%、把握できている企業で40.6%です。
何が足りないかを言葉にできていない状態そのものが、不足感を押し上げている可能性があります。ヘルプデスクも同じで、記録がなければ「とにかく忙しい」以上の説明ができません。
ポイント: 最低限記録したい6項目
- 受付日時: 曜日や時間帯の偏りが見えます
- 受付チャネル: 口頭・メール・チャットのどれで来たか
- 依頼者の部署: 特定部署に集中していないかを確認できます
- 分類: パスワード、アカウント、端末、ソフト、ネットワークなど数種類で十分です
- 対応にかかった時間: 5分単位の概算で構いません
- 一次解決したかどうか: その場で終わったか、持ち帰ったか
必要なスキルを把握できていない企業は「大幅に不足」が64.0%、把握できている企業は40.6%
もう少し詳しく見ます。把握できているかどうかで、不足感は23.4ポイント開きます。
IPA「DX動向2026」の2025年度調査を見ます。DXを推進する人材の「質」が大幅に不足していると答えた企業の割合は、必要なスキルの把握状況別に次のとおりです。
| 必要なスキルの把握状況 | 「質が大幅に不足」の割合(2025年度) |
|---|---|
| 把握している | 40.6% |
| 全体 | 52.9% |
| 把握できていない | 64.0% |
出典: IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)

把握できていない企業と把握している企業の差は、23.4ポイントです。
この差から読み取れるのは、不足感の一部が人数やスキルの絶対量ではなく、言語化できていない状態から生じている可能性です。何が足りないか分かっていれば、社員のセキュリティリテラシーを含めた教育計画も具体的に組めます。
ただし因果は双方向にあり得ます。IPA自身もこの結果を「スキルの把握状況が人材の『量』『質』の適切な把握や確保と関連している」と、関連の記述にとどめています。把握できているから不足感が低いのではなく、人材が充実している企業ほどスキル把握にも手が回る、という順序も成立します。
ヘルプデスクの問い合わせ件数や一次解決率を示す公的データは見当たらない
ここで正直に書いておきます。ヘルプデスクの負荷そのものを示す公的な定量データは、参照できるものが乏しい状態です。
公的調査は「体制」や「導入の障壁」については細かい数字を持っています。中小企業の情報セキュリティ体制は専任9.3%、兼務21.0%、組織的には行っていない69.7%という3区分で2024年時点の集計があります。
一方で、次の項目にあたる公的な数値は見当たりません。
- 1社あたりの月間問い合わせ件数
- 一次解決率(その場で解決した割合)
- 1件あたりの平均対応時間
- FAQサイトやチャットボットの導入率
出典: IPA「中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査2024」
ここで言えるのは、体制は測られているのに業務量は測られていない、という非対称です。ヘルプデスクは、公的データでは業界平均と自社を比べにくい領域です。
だからこそ、比較基準は自社の記録で作るしかありません。先月と今月を比べられる形で数えておけば、それがそのまま社内説明の材料になります。
注意
ここで述べているのは「本記事で参照した公的調査には見当たらない」という範囲の話です。民間調査会社の定量調査や、公的資料の本文中に記載があるものの統計表として整理されていないデータが存在する可能性は残ります。「公的統計として整備されていない」と断定しているわけではありません。
出典: IPA「DX動向2026」(DXに取組んでいると回答した企業が対象)/IPA「中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査2024」
問い合わせ窓口はチャットやフォームに集約し、記録が残る形にする

記録を取ると決めたら、次は窓口の形です。口頭や個人宛メールでの受付をやめ、チャットやフォームに集約してください。 記録は、窓口の形を変えれば自動的に貯まります。
背景にあるのがテレワークの定着です。総務省「令和7年通信利用動向調査」によると、テレワークを導入している企業は2025年時点で50.1%でした。席まで来て質問するという前提が当てはまらない場面は、確実に増えています(同調査の対象は常用雇用者100人以上の企業で、導入には一部部門のみの実施も含みます)。
集約した窓口は、FAQやナレッジの材料にもなります。特別な仕組みは要りません。
ポイント: 記録をFAQへ育てる3ステップ
- 1. 窓口を1本にする: チャットの共有チャンネルか入力フォームを1つ用意し、個人宛の依頼はそこへ誘導します
- 2. 月1回、分類ごとに数える: 件数の多い分類の上位3つが、FAQにする候補です
- 3. 回答をそのまま流用する: 過去に自分が書いた回答文を貼り直し、手順を1ページにまとめます。新規に書き下ろさないのがコツです
テレワーク導入率は2019年20.1%から2025年50.1%へ、約2.5倍の水準で定着した
推移を確認します。導入率は2021年をピークにいったん下がりましたが、2025年に再び5割へ戻りました。
総務省「通信利用動向調査」によるテレワーク導入企業の割合は次のとおりです。
| 調査年 | テレワーク導入率 |
|---|---|
| 2019年 | 20.1% |
| 2020年 | 47.4% |
| 2021年 | 51.8% |
| 2022年 | 51.7% |
| 2023年 | 49.9% |
| 2024年 | 47.3% |
| 2025年 | 50.1% |
出典: 2019〜2024年は総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」、2025年は総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙1

ピークの2021年51.8%から2025年50.1%への下げ幅は、1.7ポイントにとどまります。2019年20.1%と比べると、2025年は約2.5倍の水準です。
注意
この調査の対象は常用雇用者100人以上の企業です。読者に多い100人未満の企業は含まれていません。また「導入している」には一部の従業員・一部の部門での実施が含まれるため、導入率の高さがそのまま在宅勤務者の多さを意味するわけではありません。
この推移から読み取れるのは、遠隔前提の問い合わせ対応が一時的な現象ではなくなったという点です。導入率はコロナ禍前の2019年の水準には戻っておらず、2021年のピークとほぼ同じ位置にあります。対面の声かけではなく、記録が残る非同期の窓口を前提に設計するのが現実的だと考えられます。
従業者2,000人以上では2025年に81.2%、情報通信業は2024年に94.3%と規模・業種の差が大きい
導入率は会社によって大きく違います。全体で5割でも、規模が大きい企業や情報通信業ではほぼ標準になっています。
総務省「令和7年通信利用動向調査」では、2025年時点の全体50.1%に対し、従業者2,000人以上の企業は81.2%でした。産業別では、総務省「令和6年通信利用動向調査」で情報通信業が2024年時点で94.3%です。
2,000人以上の値は2025年調査、情報通信業の値は2024年調査からの引用で、調査年が異なります。同じ年の比較として読まないでください。
自社がどちらに近いかで、窓口設計の優先度は変わります。出社が中心なら口頭での相談を止める工夫が先に必要ですし、在宅が多いならチャットでの受付整備が先です。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙1/総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」/総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」(いずれも常用雇用者100人以上の企業が対象)
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生成AIは資料作成の補助から広がり、問い合わせ対応への適用はルール整備が前提になる

生成AIで問い合わせに自動回答させたい、と考えている方は多いはずです。ただデータを見ると、普及の中心はいまのところ文書作成の補助にあります。
総務省「情報通信白書令和7年版」によると、日本で何らかの業務に生成AIを使っている企業は2024年度調査で55.2%でした。用途では「メールや議事録、資料作成等の補助」が47.3%です。
問い合わせ対応にAIを使うには、読ませる社内文書の範囲と、回答の責任の所在を先に決める必要があります。文書作成の補助よりハードルが高い段階です。
注意
このセクションで扱う数値は、総務省「情報通信白書令和7年版」(2024年度調査)とIPA「DX動向2026」(2025年度調査)の2つに由来します。調査主体・母集団・調査年がいずれも異なるため、同一企業群の内訳として読むことはできません。それぞれ独立した調査結果として扱ってください。
業務で生成AIを使う企業は2024年度調査で55.2%、資料作成等の補助での利用は47.3%
用途の内訳から見ます。業務利用55.2%に対し、文書作成の補助という単一用途だけで47.3%に達しています。
総務省「情報通信白書令和7年版」の2024年度調査を見ます。日本企業で何らかの業務に生成AIを利用している割合は55.2%でした。「メールや議事録、資料作成等の補助」で使用中と答えた割合は47.3%です。
この47.3%は55.2%の内訳比率ではなく、同じ回答者を分母とした別の設問の割合です。なお55.2%は、所属企業のAI活用方針を知っている回答者を基準にした推計値です。他の設問とは分母が異なる点にご注意ください。
普及の中心が定型的な文章生成にあることは、ヘルプデスクにとって悪い話ではありません。手順書やFAQの下書きを作らせる使い方なら、いまの実務の延長で始められます。
活用方針を定めた企業は2023年42.7%から2024年49.7%へ7.0ポイント増えたが、まだ約半数
一方で、社内ルールの整備は追いついていません。活用方針を定めた企業は増えているものの、まだ約半数です。
総務省「情報通信白書令和7年版」は、生成AIの活用方針を定めている企業の割合を示しています。方針とは、積極的に活用する、または領域を限定して活用する、と決めていることを指します。
その割合は2023年度調査で42.7%、2024年度調査で49.7%でした。2年間で7.0ポイント増えました。いずれも同じ調査による値です。
同白書は、中小企業では方針を明確に定めていないという回答が約半数を占め、大企業との差が大きいことも指摘しています。
社内問い合わせへの回答をAIに任せるなら、この方針づくりが先です。どの社内文書を読ませてよいか、AIの回答をそのまま社員に返してよいか。この2点を決めないまま導入すると、確認作業が増えて逆に負荷が上がります。
AI導入の課題は「専門人材の不足」50.1%、「効果やリスクの理解不足」45.8%、「ルール作成が難しい」39.7%
課題の中身も見ておきます。上位に並ぶのは技術そのものではなく、運用体制側の項目です。
IPA「DX動向2026」の2025年度調査で挙がったAI導入・運用上の課題は次のとおりです。
| AI導入・運用上の課題 | 回答割合(2025年度) |
|---|---|
| 専門人材が不足している | 50.1% |
| 生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している | 45.8% |
| 適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい | 39.7% |
出典: IPA「DX動向2026」(日本標準産業分類の19業種の企業の経営層またはICT関連事業部門が対象)

この3項目から読み取れるのは、論点が運用体制に寄っているという点です。IPAも人材不足・リテラシー不足・ガバナンス整備の遅れを三大課題と整理しています。兼務のひとり情シスにとっては、ツール選定より先に利用ルールを1枚にまとめるほうが、実行順序として早いはずです。
禁止事項と利用可能な業務、個人情報や機密情報の扱いを箇条書きにするだけで構いません。まずはA4で1枚から始めてみてください。
出典: 総務省「情報通信白書令和7年版」(2024年度調査)/IPA「DX動向2026」(2025年度調査)
外部委託とツール導入を社内で通すには、負荷を数字で示す必要がある

自分で全部やるのが無理なら、外に出すという選択肢があります。ただ外部委託もツール導入も、社内で通らなければ始まりません。
総務省「令和7年通信利用動向調査」によると、セキュリティ対策として「セキュリティ管理のアウトソーシング」を行っている企業は2025年時点で20.2%でした。IT運用の一部を外に出す動きは、緩やかながら進んでいます。
とはいえ5社に1社です。多くの会社では、外に出す提案が通っていないか、そもそも提案されていません。このセクションでは、その理由に踏み込みます。
セキュリティ管理の外部委託は2024年18.3%から2025年20.2%へ緩やかに増えている
まず実績を確認します。外部委託の実施率は上がっていますが、変化は緩やかです。
総務省「通信利用動向調査」で、セキュリティ管理のアウトソーシングを行っている企業の割合は、2024年時点で18.3%、2025年時点で20.2%でした。いずれも同調査のインターネット利用企業(常用雇用者100人以上、2025年はn=2,480)が母数です。
変化幅は1.9ポイントで、比較できるのは2年分だけです。急速に広がっていると言える動きではありません。
またこれは「セキュリティ管理」の委託であって、ヘルプデスク業務の委託を測った統計ではない点にご注意ください。ヘルプデスクの外部委託率そのものを示す公的な数値は、本記事で参照した調査には見当たりません。
2016年調査ではCISO等の58.7%が「要員は十分」、現場の54.9%が「不足」と回答した
なぜ提案が通らないのか。手がかりになる調査があります。同じ会社の体制を見ていながら、回答者の立場で結論が反対になっていました。
IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」の2016年調査で、日本のCISO等の58.7%が「セキュリティ要員(人数)は十分」と回答しました。一方、情報システム部門・セキュリティ担当部門の責任者および担当者では、54.9%が「不足している」と回答しています。

出典: IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」(2016年調査、従業員300人以上の企業が対象。IPAの当該ページは公開終了のためアーカイブを参照)
注意
この数値は2016年の調査で、対象は従業員300人以上の企業、設問はセキュリティ要員に限定されています。ヘルプデスク要員を指すものではなく、現在の状況を示す数値でもありません。体制の不足感が構造的に続いてきたことの参考値として扱ってください。
この結果から読み取れるのは、負荷が数字で共有されていないと判断がずれるという点です。経営層は全社を俯瞰して相対的に判断し、担当者は自部門の繁忙を基準に判断します。この差は、感覚で語るかぎり埋まりません。
だから前のセクションで書いた記録が効きます。「月に何件、うち何件が同じ質問、合計で何時間」を出せれば、経営層と担当者が同じ数値をもとに議論できます。
委託先に渡す範囲も、自社の記録がなければ決められない
最後に、委託の設計です。何を外に出すかは、記録がなければ決められません。
ヘルプデスクの委託には範囲の切り方がいくつもあります。一次受けだけを出すのか、パスワード再発行など特定カテゴリだけを出すのか、時間帯で分けるのか。どれを選ぶかは、自社の問い合わせがどの分類にどれだけ集中しているかで決まります。
記録がないまま見積もりを取ると、範囲が曖昧なまま高い契約になりがちです。逆に分類別の件数が手元にあれば、「この分類の年間◯件だけ出したい」と具体的に相談できます。
ここで思い出したいのが、専任9.3%・兼務21.0%という2024年時点の体制です。全部を内製で抱える前提そのものが、多くの会社の実態と合っていません。
そして委託の効果も、本記事で参照した公的調査には比較できるベンチマークが見当たりません。委託前と委託後を比べられるのは、自社の記録だけです。記録・FAQ化・AI活用・委託範囲の検討はこの順に進みます。
出典: 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2/IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」(2016年調査)/IPA「中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査2024」
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まとめ:ヘルプデスク効率化は、記録を取るところからしか始まらない
ヘルプデスクの効率化は、増員だけでは進みにくく、仕組みで支える必要があります。 この記事で確認した根拠を整理します。
- 人材の不足感は「量」より「質」に残っている。DXに取組んでいる企業のうち、人材の質が不足していると答えた企業は2025年度時点で88.8%(IPA)
- 中小企業等で情報セキュリティに専門部署や担当者を置けているのは2024年時点で9.3%。専任の窓口がない前提で設計する必要がある
- 生成AIの業務利用は2024年度調査で55.2%まで来たが、問い合わせ対応に使うには社内ルールの整備が先になる
- ヘルプデスクの問い合わせ件数や一次解決率には、参照できる公的な定量データが乏しい
つまり、業界平均と比べて自社が遅れているかを公的データで確かめる方法がありません。比較できる相手は、先月の自分だけです。
だから最初の一歩は記録です。受付日時、チャネル、部署、分類、対応時間、一次解決の可否。この6項目を1か月分ためるだけで、FAQにする候補も、AIに任せる範囲も、外に出す範囲も見えてきます。
来月の自分が比較できるように、今月から記録を始めてみてください。表計算ソフト1枚で十分です。
出典: IPA「DX動向2026」/IPA「中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査2024」/総務省「情報通信白書令和7年版」
情シスカレッジのご紹介
この記事で見たとおり、ヘルプデスク効率化の起点は記録と仕組み化です。とはいえ兼務で問い合わせをさばきながら、まとまった学習時間を取るのは難しいですよね。
情シスカレッジは、新人・ひとり情シスのためのマイクロラーニングLMSです。短い動画で学び、小テストで理解を確認する形式なので、業務の合間に少しずつ進められます。
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記事末の出典一覧
※出典
- IPA「中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査2024」
- IPA「DX動向2026」
- IPA「企業のCISOやCSIRTに関する実態調査2017」(2016年調査・アーカイブ)
- 総務省「情報通信白書令和7年版」
- 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙1
- 総務省「令和7年通信利用動向調査」別紙2
- 総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」
- 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」

